不憫な推しキャラを救おうとしただけなのに【幼児ブロマンス期→BL期 成長物語】

はぴねこ

文字の大きさ
36 / 292
帝国編

36 盗まれた青い花 01

 その後も私たちはいくつかの武器屋を周った。
 ほとんどは新品を扱う武器屋だが、中には中古品を扱う武器屋もあった。
 剣を多く扱う武器屋が多数ある中で、弓やクロスボウ、スローイングナイフなど剣や槍以外の武器を専門で扱っている武器屋もあって見応えがあった。

「お昼にしょう」と入った鍛冶屋の通りにあるお店ではガタイのいい男たちが昼食を食べていた。
 彼らが鍛治職人ならばドワーフが混じっているのではないかと店内を見回したが、背が低く、豊富な髭を蓄えた男はいなかった。

「リト? どうしたの?」

 少し残念そうな表情が出てしまっていたようで、ハバルが私の顔を覗き込んだ。

「ドワーフがいるかなと思ってたんだけど、いなくて少し残念だっただけ」

 私の言葉にハバルもハンザスも不思議そうな顔をした。

「ドワーフならたくさんいるじゃないか?」
「通りを歩いている時も何人ともすれ違ったし、武器屋にもいただろ?」

 ハバルに続いてハンザスが言う。

「ドワーフは筋肉質な屈強な体と少し尖った耳の形が特徴的だ」

 ハバルが教えてくれた特徴に当てはまる人はお店の中にいるほとんどの人間だった。
 一般的な男性よりも二回りくらい腕が太くて、筋骨隆々といった感じで、耳の先が少し尖っている人々。
 どうやら、さっきから見ていた彼らがドワーフだったようだ。

 私の知っている背の低いドワーフはこの世界にはいないのだろうか?

「あの、ドワーフはもっと背が低いものだと思っていたんだけど……」
「おや、あんた、まだちっちゃいのに物知りだね」

 そう声をかけてきたのは店のおかみさんだった。
 料理を運んできてくれたのだ。

「あたしたちのとおーいとおーいご先祖様たちはあんたみたいな背丈だったらしいよ。人間と結婚する者が増えて、ご先祖様たちの姿の者はほとんどいないけどね」

「今じゃあの偏屈爺さんぐらいなもんじゃないか?」と、隣の席の男性が話に入ってきた。

「坊主! ドワーフの昔の姿が見たいなら、この通りの端っこにある煤だらけの工房に行ってみるといいぞ!」

 他の男性にそう言われて、私は子供らしい笑顔で笑っておいた。

 通りの端っこは左右二箇所あるわけだが、繁華街に続く方ならば煤だらけの工房はないだろう。
 街の見た目を気にする者に注意されたり、外観を保つために強制的に綺麗にされてしまうはずだ。
 つまり、繁華街とは逆側にある。

 そこがどんな場所かわかっていれば、常識のある大人ならば子供に行ってこいなどと言うことはないはずだ。
 つまり、気軽に行ってみるといいなんて言った男は非常識なバカか、考えなしのバカだ。

 案の定、ハンザスは渋い顔をしているし、おかみさんも「余計なことを言うんじゃないよ!」と男を怒っている。

「坊や、あそこは行っちゃいけないよ。人通りも少なくて、ガラの悪いもんがいることもあるからね」

「うん! ありがとう!」と私はおかみさんに今度は本心から笑顔を見せた。
 良心的な人には心からお礼を述べるべきだと思うから。

「かわいいね! この子!! うちの子のために作っておいたおやつだけど、持ってくるから食べてお行き」

 おかみさんが急いでキッチンへと戻っていく。

「さすが。リトは人たらしだね」

 ハバルにそう小声で言われたが、特にそういうつもりはなかったのだが。

 先ほどおかみさんが持ってきてくれた料理はステーキだった。
 ちなみに、注文もしていないのにどうして料理が出てきたのか不思議だったのだが、ハンザス曰く、ここはステーキと添え物のじゃがいも料理しか出てこないメニューのないお店だそうだ。
 店に客が入ってきて席に着いたら調理開始で、すぐに料理が出てくるそうだ。
 ステーキは柔らかくて、すごく美味しかった。

「元鍛冶屋の店主が肉を切って焼いているんだ」
「包丁の切れ味で食材の味が変わるって言うもんね。元鍛冶屋なら火加減も上手そう」

 あれ? 包丁の話を聞いたのは前世だったかな?
 そんなことを考えながら顔を上げると、周囲のドワーフたちが私に注目して動きを止めていた。
 また子供らしからぬことを言ってしまったのかと緊張したが、ドワーフたちはワッと笑い出した。

「坊主は本当に物知りだな!!」
「刃物の切れ味の違いで肉も魚も味が変わるからな!」
「かぁちゃんに包丁の手入れをよくするように言っておけよ!」

 がはははっと笑う男たちの笑い声の中、私もから笑いをした。

 きっとエトワール王国の城のシェフもルシエンテ帝国の城のシェフも毎日、包丁を研いでいると思いますよ。

「あんたたち、馬鹿笑いしてどうしたんだい?」

 戻ってきたおかみさんの手には大皿があり、大量のドーナツが盛られていた。
 王宮でドーナツを見ることがなかったからこの世界にはないのかと思っていたけれど、庶民のおやつだったようだ。

「ほら。これもお食べ」

 テーブルの上にドンッとお皿が置かれて私は困ってしまった。
 今食べているステーキも大人サイズで私では全て食べきれそうにないのに、さらにドーナツを食べるのは無理だった。

「ありがとう。でも、こんなに食べれないよ」
「じゃ、帰りに袋に入れてあげるわ! 持って帰んな!」

 そうして、私はドーナツが入った紙袋を抱えてお忍びを続けることになったのだ。
 とは言っても、途中からハバルが持ってくれていたが。

「まと……」

 魔塔主がドーナツを食べるようならあげようかと思い、ハバルに聞こうと思ったのだが、鍛冶屋や武器屋がある通りよりも人通りのある通りまで来てしまっているので先ほどよりも言葉に気をつけなければいけないだろう。
 ここで魔塔主などという言葉を出せば、魔塔主と知り合いというだけで身分を明かしているようなものだ。

「えっと、兄さんの上司って、甘いもの好きだったよね?」

 ハバルはすぐに私が何を言いたいのか理解してくれたようだ。

「そうだね。でも、かなりの甘党だから、これはどうだろう?」
「それに蜂蜜をかけたら、兄さんの上司の大好物にかなり近くなると思うよ」
「なるほど……それじゃ、蜂蜜も買っていこう」

 これでせっかくの頂き物を無駄にすることはなさそうだ。

「上司以外にも欲しい人がいたら分けてもいい?」
「もちろん。みんなで美味しく食べて」
「二人とも、花屋はあっちだ」

 ハンザス先生の言葉に私は首を傾げた。

「花屋?」
「蜂蜜を買うのだろう?」

 どうやら、この世界では花屋が蜂蜜も取り扱っているようだ。
 大人しくハンザスの後に続くと、花屋の店先に蜂蜜を入れた瓶が並んでいた。

 もしや、花農家が養蜂業もしているということだろうか?
 そして、花屋が蜂蜜も買い取って売る。
 理に叶っているといえばそうなのかな?
 ミツバチがいないと花も咲かないわけだから。

 ハバルが蜂蜜を見ている間に私はこの世界でどのような花が売り物として売られているのかを見る。
 そして、鉢植えの青い花に目が止まった。

「あの、これはどこから仕入れた花ですか?」

 私は近くにいた店員に声をかけて聞いた。
 本来ならばそんなことは聞くまでもなく、花の鉢には仕入れ先がまるでブランドのロゴのように書いてあった。
 しかし、私はその仕入れ先が本当なのかどうかを確認しなければいけなかったのだ。

「それはティニ公国でしか咲かない珍しい青い花だよ」
「ティニ公国でしか咲かない?」
「ああ。最近、商業ギルドの転送魔導具で入手できるようになった貴重な花だよ」
「なるほど。そうですか……」

 ハバルが蜂蜜を買って店を出た。

「リト、あの花がどうかしたのか?」
「いいえ」

 私は穏やかに微笑んだ。
 本心を悟られないように。
 そして、花のことは一旦忘れた。

 これもノアールの教えだ。
 本心を悟られないためには、相手が知りたがっている情報を自分が知っているということを忘れることだと。
 相手の知りたい情報に意識が向きすぎるとどうしてもボロが出る。

 だから、私は今の心情を知られないように青く美しい花のことを一旦忘れることにした。
 非常に不愉快な気持ちと一緒に。





↓↓↓ いいね♡は1~10まで押すことができます。面白さをお気軽に10段階評価でどうぞ!! ↓↓↓
感想 30

あなたにおすすめの小説

人気アイドルの俺、なぜかメンバー全員に好かれてます

七瀬
BL
デビュー4年目の人気アイドルグループ「ECLIPSE(エクリプス)」に所属する芹沢 美澄(せりざわみすみ)は、昔からどこか抜けていてマイペースな性格。 歌もダンスも決して一番ではないはずなのに、なぜかファンからもメンバーからも目を離されない存在だった。 世話焼きな幼なじみ、明るく距離の近い同い年、しっかり者で面倒見のいい年上、掴みどころのない自由人、そして無言で隣にいるリーダー——。 気づけば、美澄の周りにはいつも誰かがいて、当たり前のように甘やかされていく。

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

冷遇された第七皇子はいずれぎゃふんと言わせたい! 赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていました

taki210
ファンタジー
旧題:娼婦の子供と冷遇された第七皇子、赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていた件 『穢らわしい娼婦の子供』 『ロクに魔法も使えない出来損ない』 『皇帝になれない無能皇子』 皇帝ガレスと娼婦ソーニャの間に生まれた第七皇子ルクスは、魔力が少ないからという理由で無能皇子と呼ばれ冷遇されていた。 だが実はルクスの中身は転生者であり、自分と母親の身を守るために、ルクスは魔法を極めることに。 毎日人知れず死に物狂いの努力を続けた結果、ルクスの体内魔力量は拡張されていき、魔法の威力もどんどん向上していき…… 『なんだあの威力の魔法は…?』 『モンスターの群れをたった一人で壊滅させただと…?』 『どうやってあの年齢であの強さを手に入れたんだ…?』 『あいつを無能皇子と呼んだ奴はとんだ大間抜けだ…』 そして気がつけば周囲を畏怖させてしまうほどの魔法使いの逸材へと成長していたのだった。

妖精です、囲われてます

うあゆ
BL
僕は妖精 森で気ままに暮らしていました。 ふと気づいたら人間に囲まれてました。 でもこの人間のそばはとても心地いいし、森に帰るタイミング見つからないなぁ、なんて思いながらダラダラ暮らしてます。 __________ 妖精の前だけはドロ甘の冷徹公爵×引きこもり妖精 なんやかんやお互い幸せに暮らします。

異世界転生してひっそり薬草売りをしていたのに、チート能力のせいでみんなから溺愛されてます

ひと息
BL
突然の過労死。そして転生。 休む間もなく働き、あっけなく死んでしまった廉(れん)は、気が付くと神を名乗る男と出会う。 転生するなら?そんなの、のんびりした暮らしに決まってる。 そして転生した先では、廉の思い描いたスローライフが待っていた・・・はずだったのに・・・ 知らぬ間にチート能力を授けられ、知らぬ間に噂が広まりみんなから溺愛されてしまって・・・!?

キュートなモブ令息に転生したボク。可愛さと前世の知識で悪役令息なお義兄さまを守りますっ!

をち。「もう我慢なんて」書籍発売中
BL
これは、あざと可愛い悪役令息の義弟VS.あざと主人公のおはなし。 ボクの名前は、クリストファー。 突然だけど、ボクには前世の記憶がある。 ジルベスターお義兄さまと初めて会ったとき、そのご尊顔を見て 「あああ!《《この人》》、知ってるう!悪役令息っ!」 と思い出したのだ。 あ、この人ゲームの悪役じゃん、って。 そう、俺が今いるこの世界は、ゲームの中の世界だったの! そして、ボクは悪役令息ジルベスターの義弟に転生していたのだ! しかも、モブ。 繰り返します。ボクはモブ!!「完全なるモブ」なのだ! ゲームの中のボクには、モブすぎて名前もキャラデザもなかった。 どおりで今まで毎日自分の顔をみてもなんにも思い出さなかったわけだ! ちなみに、ジルベスターお義兄さまは悪役ながら非常に人気があった。 その理由の第一は、ビジュアル! 夜空に輝く月みたいにキラキラした銀髪。夜の闇を思わせる深い紺碧の瞳。 涼やかに切れ上がった眦はサイコーにクール!! イケメンではなく美形!ビューティフル!ワンダフォー! ありとあらゆる美辞麗句を並び立てたくなるくらいに美しい姿かたちなのだ! 当然ながらボクもそのビジュアルにノックアウトされた。 ネップリももちろんコンプリートしたし、アクスタももちろん手に入れた! そんなボクの推しジルベスターは、その無表情のせいで「人を馬鹿にしている」「心がない」「冷酷」といわれ、悪役令息と呼ばれていた。 でもボクにはわかっていた。全部誤解なんだって。 ジルベスターは優しい人なんだって。 あの無表情の下には確かに温かなものが隠れてるはずなの! なのに誰もそれを理解しようとしなかった。 そして最後に断罪されてしまうのだ!あのピンク頭に惑わされたあんぽんたんたちのせいで!! ジルベスターが断罪されたときには悔し涙にぬれた。 なんとかジルベスターを救おうとすべてのルートを試し、ゲームをやり込みまくった。 でも何をしてもジルベスターは断罪された。 ボクはこの世界で大声で叫ぶ。 ボクのお義兄様はカッコよくて優しい最高のお義兄様なんだからっ! ゲームの世界ならいざしらず、このボクがついてるからには断罪なんてさせないっ! 最高に可愛いハイスぺモブ令息に転生したボクは、可愛さと前世の知識を武器にお義兄さまを守りますっ! ※表紙その他のイラストはAIにて作成致しております。(文字指定のみで作成しております) ⭐︎⭐︎⭐︎ ご拝読頂きありがとうございます! コメント、エール、いいねお待ちしております♡ 「もう我慢なんてしません!家族からうとまれていた俺は、家を出て冒険者になります!」書籍発売中! 連載続いておりますので、そちらもぜひ♡

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。 ★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

虚ろな檻と翡翠の魔石

篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」 不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。 待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。 しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。 「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」 記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。