不憫な推しキャラを救おうとしただけなのに【幼児ブロマンス期→BL期 成長物語】

はぴねこ

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周遊編

116 オルニス国再び 06

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 もちろん、城から見ていても美しい光景だが、これは外から鑑賞した方がもっと美しいに違いない。
 魔塔主はやけに穏やかに微笑んで、私のわがままを叶えてくれた。

 次の瞬間には浮き上がる天空都市がよく見えるところへと転移していた。
 そこは森の中でも小高くなった丘で、宙に浮いたオルニス国全体が見える距離にあった。
 そこから見たオルニスはまさに巨大な水晶の塊が空中で日の光を反射してきらめているように見え、とても美しかった。
 知らない者が見たらあれを国とは思わないかもしれない。

「ここは、まるで天空都市を鑑賞するために用意された場所のようですね」
「さすがリヒト王子は鋭いですね」

 魔塔主は楽しそうに笑った。

「この場所はまさに、人間たちがオルニス国を見張るために森を切り開き、土を盛り、踏み固めた場所なのですよ。短い人生だというのに、何十年もかけてこのような場所を作り、さらに数百年をかけて大きくした場所なのですから笑えますよね」

「人とは実に愚かな種族です」と魔塔主はクックッと蔑むように笑った。
 私はその言葉に驚いて周囲を見たが、この場所は本当に森に溶け込んでいるように見えた。
 しかし、森の中にこのような場所があるのはここだけなので、魔塔主の話の通り、人工的なものなのだろう。

「確かに、見張りのために作られたものなのかもしれませんが、もしかすると、ただ単にあの美しいものをよく見てみたいという思いから作ったのかもしれません」

 魔塔主が私の横顔に視線を向けているのを感じる。

「だって、あれほどまでに美しいのですから」

 沈む太陽の光を受けてとても美しく輝いている天空都市は、きっと朝日を受ければまた違った美しさを見せてくれるのではないだろうか?

「次は、朝日に煌めく天空都市をカルロと一緒に見たいです」

 ほぼ無意識にそう言葉をこぼして、私は今更ながらにカルロがいないことを実感した。

 カルロだけではなく、グレデン卿もヘンリックもシュライグもオルニスの城の中において来てしまったことに私はその時初めて気づいた。
 天空都市に興奮して彼らのことを私が一瞬忘れても、魔塔主が意識すれば彼らも一緒に転移できたはずだ。
 だから、魔塔主が彼らのことをおいてきたのだろうが、それでも魔塔主のことを責めることはできないだろう。
 私が彼らの主で、私は確かに外から天空都市を見たいと思ったその瞬間、彼らのことを忘れてしまっていたのだから。

 さらに魔塔主の手を自分からいつまでも握っていたことに気づいて、私は慌ててその手を離した。

「従者君がいなくて寂しくなりましたか?」
「カルロと色々な景色を一緒に見たいと思っていたのに、あんなふうに手放してしまって私は愚か者ですね」
「あのようなことを言われれば誰だって嫌悪するでしょう。従者君には想像力が足りなかったのです」
「そうだとしても、私は逃げるのではなく、丁寧に教えるべきでした」

 カルロが犠牲を払ったところで嬉しくはない。
 むしろ、私はそのような行動をさせてしまったことをひどく後悔するだろうと、そう冷静に、丁寧に話をして理解してもらうべきだった。

「カルロはエトワール王国の城にいるのですよね? 魔法が使えるとは言えまだ子供ですから、警護は厳重にお願いします」

「わかっています」と魔塔主は答えた。

「護衛騎士からもそのようにお願いされましたし、リヒト様の乳母もリヒト様が従者君のことをとても気にかけるだろうと言っていましたから、私の方でも見張りの魔法使いを一人手配しておきました」

 魔塔主の報告に私は少し驚いた。
 私がカルロの身の安全を第一に考えていたとは言え、これまではグレデン卿も乳母も私が指示しなければ特別に動くことはなかったのに、今回は自主的にカルロのために動いてくれたようだ。

 二人とも私が動揺から冷静な判断を失っていたことに気づいていたのだろう。
 そう思うと、大人気なかった自分の行動が非常に恥ずかしい。
 グレデン卿もヴィント侯爵も前世の私よりもずっと年下だというのに、私はまだまだ未熟者のようだ。
 そうだ。年齢のことを考えれば、私は幼いカルロのあのような発言にももっと寛容であるべきだったのだ。

「リヒト様は、倒れる直前に呟いた言葉は覚えていますか?」

 魔塔主の質問に私は首を傾げた。

「倒れる直前ですか?」

 私は少し考えたが、思い出すことができなかった。
 あの時は、カルロの理解できない言葉に動揺して、自分でも驚くほどにショックを受けていたようだった。
 まさか、あのように意識を失ってしまうなど思ってもいなかった。

「私は何か言ったのですか?」
「何か呟かれたようなのですが、声が小さくて聞き取れなかったので、何をおっしゃったのか気になったのです」

 私はもう一度思い出そうとしたが、思い出せるのは酷く不快な気持ちになり、冷静な思考ができなくなったことだけだ。
 私は首を横に振った。

「すみません。思い出せません」
「そうですか。覚えていないのであれば、きっとそれほど重要なことではなかったのでしょう」

 すっかり日が沈んで月明かりを反射している天空都市の城に戻った。
 魔力を十分に蓄えた天空都市はしばらくは宙に浮いているということだった。

 翌朝早朝にまたあの丘から天空都市を見てみようかとも思ったが、それはカルロがいる時の楽しみにとっておくことにした。




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