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魔法学園編
168 精霊
「エトワール王国の人々って謙虚だよね」
ラズリがダンジョン内の素材を研究用に採取しながら言った
男性にも女性にも見える中性的な容姿のこの人物はラズリ・クロエ。
魔塔の研究者でダンジョン研究をしている妖精族だ。
魔塔主が書物の倉庫のように使っている魔法学園の図書館に置いていたダンジョンの研究書は全てラズリが書いたものだ。
私がオーロ皇帝からの依頼でダンジョンの消滅作業を行っていることに気づき、私を紹介しろと魔塔主にしつこく言ってきたそうだ。
魔塔主は最初は断っていたそうなのだが、あまりにもしつこかったので連れてきたと紹介されたのだ。
それで私はラズリに誘われて何度かダンジョンに入り、度々、ラズリのダンジョン研究の補助のようなことをしている。
「他の王族だったら絶対に自慢するよ?」
ラズリはダンジョン内の草やら花やらを採取しながら言う。
採取が終わればこのダンジョンも消滅させる予定だ。
ダンジョンを消滅させる時には中にいた魔物は消滅せずにそのまま姿を現すが、ダンジョンを形成している土や草や花、樹木やレンガや彫刻や水晶なんかは残らずに消滅する。
「ダンジョンを消滅させることができるとか、魔塔の研究に関わってるなんてレア中のレアだもん」
そういうものなのかと思いながらも私は返事を返した。
「父王も宰相も知らないですからね」
「え? なにを?」
「私がオーロ皇帝の依頼でダンジョンを消滅させていることを」
「え……」と、ラズリの手が止まった。
「嘘でしょ?」
「嘘じゃありませんよ」
そう返答を返したのは私ではなく魔塔主だ。
「リヒト様はそういう人です」
魔塔主の言葉に驚いてはいたが、ラズリはなにやらすぐに納得したようだった。
「だから、精霊も気に入ってるのかな?」
精霊という言葉に今度は私が納得した。
「精霊とは、このダンジョン内を浮遊している光の粒のような存在ですか?」
ダンジョンを消滅させた時やダンジョン内に入った時にいつもキラキラふよふよしていて不思議だと思っていたのだ。
ラズリはその目を見開いて私を凝視した。
「まさか、リヒト君は精霊が見えてるの?」
ラズリは私を君付けで呼ぶ。
魔塔主が注意したのだが、ラズリは呼び方を直す気はないようだった。
私も特に気にはならないのでそのままにしている。
ラズリの問いかけに私は「これですか?」と光の粒を指差した。
光の粒は私の指先にピトッとくっついた。
「そう! それ!!」
なぜかラズリが興奮している。
光の粒なら初めてダンジョンを消滅させた時から見えている。
みんなが見えているものだと思っていたから、気にしていなかったのだが、もしや違うのだろうか?
私は背中に張り付くようにしてついてきていたカルロとヘンリックを振り返った。
「二人には光の粒は見えないの?」
カルロもヘンリックも何も見えていないと示して頷いた。
二人だけではなく、魔塔主も周囲を見回して言った。
「私にも光の粒など見えませんよ?」
魔力的なものにはなんでも万能だと思っていた魔塔主にも見えないというのは意外だった。
「リヒト君って妖精!?」
ラズリが興奮したように私の手を取った。
「リヒト様のご両親は人間ですよ」
「それじゃ、死んでるとか!?」
ラズリの言葉に私はどきりとした。
それと同時に魔塔主がラズリの頭を叩き、カルロとヘンリックがラズリを睨んだ。
「ラズリ、君の性格が人とのコミュニケーションに向かないことは知っていますが、あまりにも無礼ですよ」
「リヒト様に対する失礼な言動はお控えください」
魔塔主とヘンリックが厳しく注意してくれる。
「ごめん。リヒト君。失礼なことを言うつもりなどなかったのだけど、精霊が見えるのは本来は肉体を持つ者には無理なはずなんだ」
妖精族は精霊が先祖のため、亜人種の中でも魂が異質で精霊を見ることができると言われているらしい。
「死んで魂の状態か、そうでなければ……肉体から魂が剥離したような状態ならあり得るかもしれないけど……」
ラズリがじっと私を探るように見てくる。
その無遠慮な視線に居心地の悪さを感じていると、カルロとヘンリックが私の前に出てくれた。
そして、魔塔主が再びラズリの頭を叩いた。
「ちょっと魔塔主! 痛いってば!」
「リヒト様、ラズリの言うことは気にしなくても大丈夫ですよ。リヒト様は光魔法の属性に一番適正がありますから、その影響かもしれません」
「え~!? 僕以外の光属性の魔塔の魔法使いだって精霊なんて見えないじゃないか?」
魔塔主はラズリの言葉を止めるように再びラズリを叩いた。
「光属性の魔法使いはそもそも数が少ないのですから、研究が進んでいません。ダンジョンの研究しかしていないあなたに何がわかると言うのですか?」
「それじゃ、私はリヒト君のことも研究するよ! 精霊が見える人間なんてすごく興味深いし!」
「「ダメです!」」と魔塔主とカルロの声が重なった。
「リヒト様は私の研究対象です!」
「リヒト様のことは僕が一番知っているんですから!」
カルロが私にぎゅーっと抱きついてくる。
今日もカルロはとても可愛い。
とても可愛いが、カルロの胸板が以前よりも成長しているような気がする……
一体、何をしたらこんなに成長するのだろうか?
ラズリがダンジョン内の素材を研究用に採取しながら言った
男性にも女性にも見える中性的な容姿のこの人物はラズリ・クロエ。
魔塔の研究者でダンジョン研究をしている妖精族だ。
魔塔主が書物の倉庫のように使っている魔法学園の図書館に置いていたダンジョンの研究書は全てラズリが書いたものだ。
私がオーロ皇帝からの依頼でダンジョンの消滅作業を行っていることに気づき、私を紹介しろと魔塔主にしつこく言ってきたそうだ。
魔塔主は最初は断っていたそうなのだが、あまりにもしつこかったので連れてきたと紹介されたのだ。
それで私はラズリに誘われて何度かダンジョンに入り、度々、ラズリのダンジョン研究の補助のようなことをしている。
「他の王族だったら絶対に自慢するよ?」
ラズリはダンジョン内の草やら花やらを採取しながら言う。
採取が終わればこのダンジョンも消滅させる予定だ。
ダンジョンを消滅させる時には中にいた魔物は消滅せずにそのまま姿を現すが、ダンジョンを形成している土や草や花、樹木やレンガや彫刻や水晶なんかは残らずに消滅する。
「ダンジョンを消滅させることができるとか、魔塔の研究に関わってるなんてレア中のレアだもん」
そういうものなのかと思いながらも私は返事を返した。
「父王も宰相も知らないですからね」
「え? なにを?」
「私がオーロ皇帝の依頼でダンジョンを消滅させていることを」
「え……」と、ラズリの手が止まった。
「嘘でしょ?」
「嘘じゃありませんよ」
そう返答を返したのは私ではなく魔塔主だ。
「リヒト様はそういう人です」
魔塔主の言葉に驚いてはいたが、ラズリはなにやらすぐに納得したようだった。
「だから、精霊も気に入ってるのかな?」
精霊という言葉に今度は私が納得した。
「精霊とは、このダンジョン内を浮遊している光の粒のような存在ですか?」
ダンジョンを消滅させた時やダンジョン内に入った時にいつもキラキラふよふよしていて不思議だと思っていたのだ。
ラズリはその目を見開いて私を凝視した。
「まさか、リヒト君は精霊が見えてるの?」
ラズリは私を君付けで呼ぶ。
魔塔主が注意したのだが、ラズリは呼び方を直す気はないようだった。
私も特に気にはならないのでそのままにしている。
ラズリの問いかけに私は「これですか?」と光の粒を指差した。
光の粒は私の指先にピトッとくっついた。
「そう! それ!!」
なぜかラズリが興奮している。
光の粒なら初めてダンジョンを消滅させた時から見えている。
みんなが見えているものだと思っていたから、気にしていなかったのだが、もしや違うのだろうか?
私は背中に張り付くようにしてついてきていたカルロとヘンリックを振り返った。
「二人には光の粒は見えないの?」
カルロもヘンリックも何も見えていないと示して頷いた。
二人だけではなく、魔塔主も周囲を見回して言った。
「私にも光の粒など見えませんよ?」
魔力的なものにはなんでも万能だと思っていた魔塔主にも見えないというのは意外だった。
「リヒト君って妖精!?」
ラズリが興奮したように私の手を取った。
「リヒト様のご両親は人間ですよ」
「それじゃ、死んでるとか!?」
ラズリの言葉に私はどきりとした。
それと同時に魔塔主がラズリの頭を叩き、カルロとヘンリックがラズリを睨んだ。
「ラズリ、君の性格が人とのコミュニケーションに向かないことは知っていますが、あまりにも無礼ですよ」
「リヒト様に対する失礼な言動はお控えください」
魔塔主とヘンリックが厳しく注意してくれる。
「ごめん。リヒト君。失礼なことを言うつもりなどなかったのだけど、精霊が見えるのは本来は肉体を持つ者には無理なはずなんだ」
妖精族は精霊が先祖のため、亜人種の中でも魂が異質で精霊を見ることができると言われているらしい。
「死んで魂の状態か、そうでなければ……肉体から魂が剥離したような状態ならあり得るかもしれないけど……」
ラズリがじっと私を探るように見てくる。
その無遠慮な視線に居心地の悪さを感じていると、カルロとヘンリックが私の前に出てくれた。
そして、魔塔主が再びラズリの頭を叩いた。
「ちょっと魔塔主! 痛いってば!」
「リヒト様、ラズリの言うことは気にしなくても大丈夫ですよ。リヒト様は光魔法の属性に一番適正がありますから、その影響かもしれません」
「え~!? 僕以外の光属性の魔塔の魔法使いだって精霊なんて見えないじゃないか?」
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「それじゃ、私はリヒト君のことも研究するよ! 精霊が見える人間なんてすごく興味深いし!」
「「ダメです!」」と魔塔主とカルロの声が重なった。
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「リヒト様のことは僕が一番知っているんですから!」
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