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魔法学園<二年生>編
228 怪しい隣国 05(第四補佐官視点)
「オルニスを抹消する理由は分かりましたが、ヴィア王国への対応としては不十分です」
先ほどから第一補佐官の言葉が物騒だ。
そもそもリヒト様はオルニスを受け入れる気などなかったところを無理やり押しかけてきた上に今回の騒動である。
確かに、オルニスの配置場所を指定したのはリヒト様だが、本来はやはりリヒト様が責任を感じて謝るようなことではない。
オルニスがリヒト様に頼らずに自立してくれれば問題はないはずなのだ。
「もちろん、ヴィア王国の騎士が本当にエトワール王国へ侵攻してきた時にはオルニスの魔法で防衛してもらいます」
あれ? 先ほどの金貨の例え話と違うのではないだろうか?
私以外にも疑問を顔に浮かべる者たちがいる中で、カルロが澄ましているのが面白くない。
まぁ、カルロの場合、リヒト様のお考えを全て理解しているというよりは、オルニス国にもヴィア王国にも興味がなく、ただ単にリヒト様を全肯定する以外に思考を使っていない故な気がする。
疑問を顔に浮かべる面々に気づいたリヒト様がにこりと微笑んで説明してくださる。
「革袋の中の金貨を取ろうとするのはただの泥棒ですから」
なるほど。
「では、我々は姿を隠し、それでもエトワール王国に侵入してきたヴィア王国の騎士に対しては過剰攻撃いたします」
改めて姿勢を正して首長代理が言った。
なぜそこで過剰に攻撃しようと思ったのか。
「過剰防衛でお願いします」
どうやら正しかったようだ。
しかし、言い回しは大切だ。
「万が一防衛をしなければいけなくなった時には、しっかりとオルニスの軍事力を見せつけてください」
そのためには過剰な対応であっても問題ないということか。
確かに、騎士たちがエトワール王国に一歩踏み込んだタイミングで叩いておけば、ヴィア王国の国民たちが勝てもしない戦いに駆り出されることもないかもしれない……いや、愚かな王にそれは期待しすぎだろうか?
オルニスの首長代理と補佐役は早速天空都市を消すための研究をすると張り切って帰っていった。
「では、私は情報ギルドを使ってエラーレ王国の末路を、ヴィア王国の国内に広めます」
「と、言いますと?」と、第一補佐官がリヒト様に尋ねた。
「エラーレ王国の失態と帝国からの処罰に関しては帝国内の王国には知らせがいっているはずですが、それを王が下の者に知らせていなければ貴族も国民も知らないでしょうから」
リヒト様が再び爽やかににこりと微笑んだ。
「彼らが困らないように、教えてあげようと思います」
この場合の彼らというのは王族ではなく、貴族や平民たちだ。
他国の情報弱者のことまで気にかけられるとはお優しい。
さすがリヒト様です!
結論から言えば、数日後にはオルニスの天空都市が一夜にして消え、ヴィア王国の騎士たちは困惑することとなった。
ヴィア王国の騎士たちがエトワール王国の国境を越えてまでオルニスを探すのか、さすがに騎士が集団で国境を越えるのはまずいのではないかと上層部で議論を重ねている間に、ヴィア王国内にはエラーレ王国の末路が広まり、さらには、ヴィア王が前エラーレ王と同じ轍を踏もうとしているという噂が貴族や平民の間で広まった。
当然、大多数の貴族や国民たちはオルニス国及びエトワール王国への侵攻を反対した。
ヴィア王はそうした国民たちの声を無視して、オルニス国捜索を騎士団に指示したそうだが、エトワール王国との国境の森の中に潜む騎士たちを戦争に駆り出される可能性の高い村人や農民たちが協力して森から追い出した。
ヴィア王国内は内乱のような状態になったが、必ずしも王族と騎士たちが優勢とはならなかったのは、エトワール王国の情報ギルドの働きがあったことをヴィア王国の人々が知ることはない。
早々に内乱を収めるためにヴィア王国の上級貴族たちはオーロ皇帝に嘆願書を送ったようだ。
その結果、現ヴィア王国の国王はその地位を剥奪され、オーロ皇帝がヴィア王国を無血開城した際に交渉した者に管理を任せたいという話になったため、レイアント様がヴィア王国の公爵に返り咲き、その過程を経てオーロ皇帝の正式な任命により王位を預かることとなった。
こうして、ヴィア王国の一件は終息した。
さらに、新たなヴィア王国の国王であるレイアント王より、エトワール王国とヴィア王国の国境である森のヴィア王国側の森をエトワール王国に友好の証として譲渡すると申し入れがあった。
国境の森全体がエトワール王国の国土となった方がオルニス国のエルフたちも活動しやすいため、エトワール側もその申し入れを受け入れ、ヴィア王国との友好条約を結んだ。
このような国際問題を解決しつつも、リヒト様は学園生活も変わらずにお過ごしになっておられたのだから素晴らしい。
今回の天空都市透明化により、オルニス国の魔導工学の質の高さを知ることができたし、きっといつかできるであろうリヒト様のホムンクルスの完成を私は楽しみに待つこととする。
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