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魔法学園<二年生>編
242 リハビリ期間 02
「よく来たなリヒト」
ここはルシエンテ帝国城のオーロ皇帝の執務室だ。
オーロ皇帝と皇太子への招待状を私が書いた結果、呼ばれてしまった。
「随分と暇を持て余しているようだな」
仕事をさせてもらえず、剣の訓練もさせてもらえない状態だと気軽に書いてしまった。
「筋力が落ちているだけで健康に問題はないのだろう? それならば、我が国の騎士団のリハビリを受ければいいだろう」
「ルシエンテ帝国騎士団のリハビリですか?」
「魔物討伐で深傷を負った者が復帰する前に受けるリハビリだ」
「特別な訓練ならば秘匿しておいた方がいいのではないですか?」
「リハビリはただのリハビリだ。気にせずに受けろ」
「久しぶりに私も剣術を学ぼうと思うから一緒にやろう!」と言うのは皇太子のラルスだ。
帝国の次期皇帝が剣術を「久しぶり」とか言っていていいのだろうか?
護衛がいて守られる立場だと言えども、ある程度自衛ができなければすぐに暗殺者に殺されそうだ。
城にいる限りは強固な結界が張ってあるし、結界を突破しても皇帝の部屋にたどり着く前に何かの魔導具が発動しそうではあるが、公務で外泊することだってあるだろうに。
「リヒト様!」
オーロ皇帝の執務室から騎士団の訓練場までラルスと一緒に歩いているとナタリアに声をかけられた。
「ナタリア様。ご迷惑をおかけしました」
私が休んでいる間、クラス長として二年生をしっかりとまとめてくれたようだ。
私の言葉にナタリアは不満そうな表情を見せる。
「迷惑などとは思っておりませんわ! でも、とても心配しましたわ!」
「ご心配をおかけしてすみません」
「お目覚めになってよかったです! これから騎士団のリハビリですか?」
「はい」
「わたくしも見学してもよろしいですか?」
私はなんとも答えられなかったため、ラルスに視線を向けた。
「もちろん、構わないよ」
ラルスはそう答えた。
学年対抗戦の時も思ったが、ラルスとナタリアの関係性はよくなっているようだ。
今後も叔父と姪として仲良くしてもらいたい。
「リヒト様は現在リハビリが必要な状況だと聞きましたが、普通に動くことができているように見えますが」
ルシエンテ帝国の騎士団長にそのように言われて私は腕の魔導具を服の上からさすった。
「魔塔が提供してくれた筋力強化の魔導具をつけています」
「筋力強化の魔導具!? そのようなものが開発されたのですか!?」
「最近開発されたものなのでしょうか?」
すでにルシエンテ帝国には提供されているものだと思っていた。
「おそらくそうですね。我々にはこれまで一度も提供されたことはありませんから」
「なるほど。それでは、私はまた魔塔の体のいい実験体になっていたということですね」
どのような魔導具であろうとも試用期間は必要だろう。
筋力強化の魔導具ができたタイミングで、私の筋力が著しく低下したということだろう。
「帝国の騎士に不完全なものを渡すわけにはいきませんからね」
「おそらく、魔塔の意図はそうしたものではないかと思いますが……」
ルシエンテ帝国の騎士団長とは帝国に滞在していた時にエトワール王国の騎士たちが訓練を受けたと聞いている。
私は挨拶をしたり、お礼を伝える程度の会話しかしたことはなかったのだが、なんというか、高潔な騎士といった感じの格好いい人だ。
「筋力強化の魔導具が付いていても本来の筋力がかなり弱っているということですから、リヒト様には我々が考案したルシエンテ帝国騎士団のリハビリを受けていただきますが、無理は厳禁です」
騎士団長が自ら剣術の型を教えてくれ、それをゆっくりと体に負担のない速度で繰り返して体に染み込ませていく。
怪我などで長期間休んだ騎士の体に、剣を振るう動きを思い出させるようなリハビリだった。
ゆっくりと繰り返されるその動きはまるで演舞のようでもあった。
ゆっくりゆっくり、衰えた筋力に無理がないように、ゆっくりと同じ動作を繰り返す。
筋力強化の魔導具をつけているから辛くはないものの、その代わり、筋力の衰えてしまった自分の体にどれくらいの負荷がかかっているかわからないから、本当にゆっくりとした動作だ。
今日はまだ真剣どころか木剣も持たせてもらえなかったけれど、手の先に剣があることを想像してゆっくりと動かす。
集中して同じ動作を繰り返していると、「む、むり! もう無理だよ~!」というラルスの情けない声が聞こえてきた。
その声を無視して続けようとしたら、「「リヒト様!」」とカルロとナタリアに止められた。
「叔父様が無理ですって」
「リヒト様、もうリハビリの時間は終了です」
最初は二人が何を言っているのかわからなかったけれど、どうやら、ラルスが私と一緒に来たのは衰えた筋力でリハビリをする訓練の目安にするためだったようだ。
皇太子の扱いがそれでいいのだろうかと思ったが、ラルス本人が意気揚々と付いてきたのだからいいのだろう……たぶん。
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