266 / 292
魔法学園<二年生>編
264 適任者 05
集まった人々の多さに愕然としている私の隣に大きな気配が立った。
「其方がこれまで隠していたものを披露すると言えばまぁ、こうなるであろうな」
「オーロ皇帝はどうしてここにいるのですか?」
「アニーアの女王の報告の中に面白いものが見れそうだと書いてあったからな」
アニーア王国の女王は我々との晩餐の後にすぐ国に帰っていたが、その後、オーロ皇帝に余計な報告をしたようだ。
「そういえば、今、我が帝国内の王国の王族や貴族たちの間ではある噂が流れているそうだぞ?」
「噂、ですか?」
「ああ。これまで私が見逃していた悪事もリヒトは見逃してはくれず、私がリヒトに裁定者としての権限を認めたという噂らしい」
「完全なる誤解ではないですか」
「そうでもなかろう」とオーロ皇帝が笑った。
「ハンスギア王国の王族がバカなのは問題だとは思っていたが、魔獣が狩られることは私は特に何も思っていなかった。バカな王族を構っている時間はなかったから放置していたが、その結果、国民は私が思っていたよりもひどい状況のようだから、私が放置していたバカを処罰してくれたリヒトを神のように崇める国民もいるだろう。それに、其方に王族を罰する許可を与えたのは私だからな、裁定者としての権限を与えたというのもあながち間違いではない」
大きな手が私の頭を撫でた。
「そういうことだから、ハンスギア王国のことは最後まで面倒を見てくれ」
そう言ったオーロ皇帝を私はジト目で見る。
「王と王妃の最終的な断罪は私がまだ子供だからとオーロ皇帝が預かってくれたのですから、ハンスギア王国の後の問題もオーロ皇帝が処理していただければいいと思います。私は子供ですので」
「子供とは言ってもあと二年で成人ではないか? 成人した時のために重鎮や役職を持つ貴族たちの見直しなど、国政改革を経験しておいて損はないだろう」
「オーロ皇帝の直轄地としてしまえば一番楽だと思います」
「まだ若いのに楽をしようとするな」
高らかにオーロ皇帝は笑った。
私の頭をぐしゃぐしゃと撫でるオーロ皇帝の手を魔塔主が掴んで止める。
「リヒト様、舞台は整いましたよ」
オーロ皇帝のせいで私の髪が乱れていたのか、カルロが櫛で整えてくれる。
「魔塔主が整えたのは、光の聖剣のデータを取るための準備でしょう?」
そのために魔塔主は魔塔の魔法使いたちとオルニスの者たちを揃えたのだ。
なんか見たことのない魔導具が色々と用意されている。
「細かいことを気にする必要はありませんよ」
国ひとつを簡単に吹き飛ばすことができる魔法使いとは思えないほどの爽やかないいい笑顔である。
「リヒト様、本当によろしいのでしょうか?」
騎士団長は言葉とは裏腹にワクワクした様子だ。
「ハンスギア王国の騎士団を使うために披露するのならば、我が国の騎士団に見せて欲しいと言ったのは騎士団長ではないですか?」
「要望を聞き入れていただいたこと深く感謝しております」
第五補佐官にはハンスギア王国の建国神話について調べてもらった。
案の定、ハンスギア王国の建国神話もエトワール王国の建国神話とさして変わらず、光の聖剣を持った者が国を創っていた。
ハンスギア王国の自滅に自国の騎士団を巻き込むつもりのなかった私は、ハンスギア王国の問題はできるだけハンスギア王国の者たちに解決してもらうことにしたのだ。
つまり、ハンスギア王国の貴族を鎮静化させるための軍事制圧が必要ならば、それを行うのはハンスギア王国の武力を使えばいいだろうという結論を得て、騎士団憧れの建国神話の英雄の力を借りることにしたのである。
第五補佐官からハンスギア王国の建国神話についての報告を受けたのが昨日の昼過ぎであり、その後に両親にハンスギア王国の騎士たちを使うために光の聖剣を彼らに見せることにしたという報告をすれば、父上と母上は自分たちも見たいと言い出し、宰相が他国の騎士が先にエトワール王国の王子である私の光の聖剣を見るのはおかしいと言い出し、騎士団長を呼び出して話をしたところ、このような場を設けることになってしまった……
私が想像していたよりもずっと、光の聖剣とはすごい威力があるようだ。
魔法の攻撃力という意味ではなく、権威的な意味で。
「リヒト様、浮遊で後ろの騎士たちにもリヒト様の姿が見えるようにしないとですよ。光の聖剣の大きさも大剣でお願いします。後ろにいる者たちにも見えるように」
魔塔主が色々と細かい注文をしてくる。
魔塔主のことは面倒ではあったが、我が国の騎士たちの期待には応えたいと思った。
私は素直に浮遊の魔法で訓練場全てが見渡せる高さまで昇り、手のひらに光属性の魔力を集めるように意識を集中させた。
ただの光の塊ではなく、できるだけ彼らには美しい剣を見せてあげたいと思った。
私の手に光の聖剣が現れると、歓声が響き渡った。
「其方がこれまで隠していたものを披露すると言えばまぁ、こうなるであろうな」
「オーロ皇帝はどうしてここにいるのですか?」
「アニーアの女王の報告の中に面白いものが見れそうだと書いてあったからな」
アニーア王国の女王は我々との晩餐の後にすぐ国に帰っていたが、その後、オーロ皇帝に余計な報告をしたようだ。
「そういえば、今、我が帝国内の王国の王族や貴族たちの間ではある噂が流れているそうだぞ?」
「噂、ですか?」
「ああ。これまで私が見逃していた悪事もリヒトは見逃してはくれず、私がリヒトに裁定者としての権限を認めたという噂らしい」
「完全なる誤解ではないですか」
「そうでもなかろう」とオーロ皇帝が笑った。
「ハンスギア王国の王族がバカなのは問題だとは思っていたが、魔獣が狩られることは私は特に何も思っていなかった。バカな王族を構っている時間はなかったから放置していたが、その結果、国民は私が思っていたよりもひどい状況のようだから、私が放置していたバカを処罰してくれたリヒトを神のように崇める国民もいるだろう。それに、其方に王族を罰する許可を与えたのは私だからな、裁定者としての権限を与えたというのもあながち間違いではない」
大きな手が私の頭を撫でた。
「そういうことだから、ハンスギア王国のことは最後まで面倒を見てくれ」
そう言ったオーロ皇帝を私はジト目で見る。
「王と王妃の最終的な断罪は私がまだ子供だからとオーロ皇帝が預かってくれたのですから、ハンスギア王国の後の問題もオーロ皇帝が処理していただければいいと思います。私は子供ですので」
「子供とは言ってもあと二年で成人ではないか? 成人した時のために重鎮や役職を持つ貴族たちの見直しなど、国政改革を経験しておいて損はないだろう」
「オーロ皇帝の直轄地としてしまえば一番楽だと思います」
「まだ若いのに楽をしようとするな」
高らかにオーロ皇帝は笑った。
私の頭をぐしゃぐしゃと撫でるオーロ皇帝の手を魔塔主が掴んで止める。
「リヒト様、舞台は整いましたよ」
オーロ皇帝のせいで私の髪が乱れていたのか、カルロが櫛で整えてくれる。
「魔塔主が整えたのは、光の聖剣のデータを取るための準備でしょう?」
そのために魔塔主は魔塔の魔法使いたちとオルニスの者たちを揃えたのだ。
なんか見たことのない魔導具が色々と用意されている。
「細かいことを気にする必要はありませんよ」
国ひとつを簡単に吹き飛ばすことができる魔法使いとは思えないほどの爽やかないいい笑顔である。
「リヒト様、本当によろしいのでしょうか?」
騎士団長は言葉とは裏腹にワクワクした様子だ。
「ハンスギア王国の騎士団を使うために披露するのならば、我が国の騎士団に見せて欲しいと言ったのは騎士団長ではないですか?」
「要望を聞き入れていただいたこと深く感謝しております」
第五補佐官にはハンスギア王国の建国神話について調べてもらった。
案の定、ハンスギア王国の建国神話もエトワール王国の建国神話とさして変わらず、光の聖剣を持った者が国を創っていた。
ハンスギア王国の自滅に自国の騎士団を巻き込むつもりのなかった私は、ハンスギア王国の問題はできるだけハンスギア王国の者たちに解決してもらうことにしたのだ。
つまり、ハンスギア王国の貴族を鎮静化させるための軍事制圧が必要ならば、それを行うのはハンスギア王国の武力を使えばいいだろうという結論を得て、騎士団憧れの建国神話の英雄の力を借りることにしたのである。
第五補佐官からハンスギア王国の建国神話についての報告を受けたのが昨日の昼過ぎであり、その後に両親にハンスギア王国の騎士たちを使うために光の聖剣を彼らに見せることにしたという報告をすれば、父上と母上は自分たちも見たいと言い出し、宰相が他国の騎士が先にエトワール王国の王子である私の光の聖剣を見るのはおかしいと言い出し、騎士団長を呼び出して話をしたところ、このような場を設けることになってしまった……
私が想像していたよりもずっと、光の聖剣とはすごい威力があるようだ。
魔法の攻撃力という意味ではなく、権威的な意味で。
「リヒト様、浮遊で後ろの騎士たちにもリヒト様の姿が見えるようにしないとですよ。光の聖剣の大きさも大剣でお願いします。後ろにいる者たちにも見えるように」
魔塔主が色々と細かい注文をしてくる。
魔塔主のことは面倒ではあったが、我が国の騎士たちの期待には応えたいと思った。
私は素直に浮遊の魔法で訓練場全てが見渡せる高さまで昇り、手のひらに光属性の魔力を集めるように意識を集中させた。
ただの光の塊ではなく、できるだけ彼らには美しい剣を見せてあげたいと思った。
私の手に光の聖剣が現れると、歓声が響き渡った。
あなたにおすすめの小説
人気アイドルの俺、なぜかメンバー全員に好かれてます
七瀬
BL
デビュー4年目の人気アイドルグループ「ECLIPSE(エクリプス)」に所属する芹沢 美澄(せりざわみすみ)は、昔からどこか抜けていてマイペースな性格。
歌もダンスも決して一番ではないはずなのに、なぜかファンからもメンバーからも目を離されない存在だった。
世話焼きな幼なじみ、明るく距離の近い同い年、しっかり者で面倒見のいい年上、掴みどころのない自由人、そして無言で隣にいるリーダー——。
気づけば、美澄の周りにはいつも誰かがいて、当たり前のように甘やかされていく。
公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜
上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。
体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。
両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。
せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない?
しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……?
どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに?
偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも?
……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない??
―――
病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。
※別名義で連載していた作品になります。
(名義を統合しこちらに移動することになりました)
妖精です、囲われてます
うあゆ
BL
僕は妖精
森で気ままに暮らしていました。
ふと気づいたら人間に囲まれてました。
でもこの人間のそばはとても心地いいし、森に帰るタイミング見つからないなぁ、なんて思いながらダラダラ暮らしてます。
__________
妖精の前だけはドロ甘の冷徹公爵×引きこもり妖精
なんやかんやお互い幸せに暮らします。
【完結】転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
冷遇された第七皇子はいずれぎゃふんと言わせたい! 赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていました
taki210
ファンタジー
旧題:娼婦の子供と冷遇された第七皇子、赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていた件
『穢らわしい娼婦の子供』
『ロクに魔法も使えない出来損ない』
『皇帝になれない無能皇子』
皇帝ガレスと娼婦ソーニャの間に生まれた第七皇子ルクスは、魔力が少ないからという理由で無能皇子と呼ばれ冷遇されていた。
だが実はルクスの中身は転生者であり、自分と母親の身を守るために、ルクスは魔法を極めることに。
毎日人知れず死に物狂いの努力を続けた結果、ルクスの体内魔力量は拡張されていき、魔法の威力もどんどん向上していき……
『なんだあの威力の魔法は…?』
『モンスターの群れをたった一人で壊滅させただと…?』
『どうやってあの年齢であの強さを手に入れたんだ…?』
『あいつを無能皇子と呼んだ奴はとんだ大間抜けだ…』
そして気がつけば周囲を畏怖させてしまうほどの魔法使いの逸材へと成長していたのだった。
虚ろな檻と翡翠の魔石
篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」
不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。
待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。
しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。
「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」
記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。