1 / 63
プロローグ
「ルシファー様、こちらはマリアージュ・スールのウーバ・ハイランズです」
そう言って、端正な顔立ちの青年が俺の前にティーカップを置く。何やら呪文のような名前を言っていたが、要するに最高級茶葉という理解で間違いないだろう。
「ありがとう」
俺は紅茶を一口飲み、口内に広がる香りと深い味わいを堪能する。
「また腕を上げたみたいだね」
「ルシファー様に美味しい紅茶を飲んでいただきたい一心で精進しております」
実に爽やかな品性漂う笑顔だ。
真っ白なシャツに黒い執事服を身に纏った青年は俺の専属の執事だ。
俺は白い皿に並べられたクッキーを一枚手に取り、一口噛んだ。それはサクッといい食感がして、次いで、甘い香りが口内を満たした。
「このクッキーも美味しいね」
「はい。丹精込めて作らせていただきました」
やはりか……と、俺は笑顔のまま執事を見る。
「執事の仕事だけでも忙しいんだから、おやつは厨房の者に任せたらいいと思うよ?」
「ルシファー様のお身体を構成するものを他の者に任せるなどできません。しかし、まだ料理は修行中ですから、料理長にルシファー様のお食事を作る栄誉は譲っておりますが……」
そこでなぜか彼は悔しそうな表情を見せる。
「いや、本当に忙しいんだから、無理しないで……」
その時、外から騎士たちの声が響いた。
「ワイバーンだ! ワイバーンが出たぞ!!」
その声に急いでベランダに出て空を見ると、確かに一匹のワイバーンの姿を見つけることができた。それも、こちらに向かってきているようだ。
大きな翼を羽ばたかせて急速にこちらへと向かってきたワイバーンは、まるでいい標的でも見つけたかのようにその口を開き、何かを溜めるように頭を上に向けた。おそらく火を吹くのだろう。
チッ! と、舌打ちが聞こえて隣を見れば、執事の端正な顔が歪み、額に深いしわが刻まれていた。
しかし、執事は俺の視線に気づくと、すぐにその表情を取り繕った。
「ルシファー様、少しの間、お傍を離れることをお許しください」
「ああ。気をつけてな」
執事はベランダの柵に足をかけて踏み込むと、ワイバーンへ向かって一気に跳躍した。
まるで飛行魔術でも使っているかのような跳躍力だ。
ワイバーンの口から放たれた火球をいつの間にか手にしていた剣で切り裂き、ワイバーンの上顎というか、鼻の上に左手をかけると一回転してワイバーンの頭の上に着地した。
そして、剣を振りかぶると、ワイバーンの頭頂部に突き刺した。
ワイバーンは痛ましい悲鳴をあげて上空から落下し、騎士たちは歓声を上げた。
「……」
ワイバーンの頭から地面に着地して騎士団長と一言二言言葉を交わした執事を見ていると、執事は不意に俺の方へと視線を向けて笑顔で手を振ってくれた。
俺はその執事になんとも言えない気持ちで手を振り返す。
彼と出会ったのは俺がまだ六歳の頃だった。
俺は彼を弟のように可愛がり、その成長を見守ってきたのだが……どうして、こんな"とんでも執事”に育ってしまったのだろうか?
そう言って、端正な顔立ちの青年が俺の前にティーカップを置く。何やら呪文のような名前を言っていたが、要するに最高級茶葉という理解で間違いないだろう。
「ありがとう」
俺は紅茶を一口飲み、口内に広がる香りと深い味わいを堪能する。
「また腕を上げたみたいだね」
「ルシファー様に美味しい紅茶を飲んでいただきたい一心で精進しております」
実に爽やかな品性漂う笑顔だ。
真っ白なシャツに黒い執事服を身に纏った青年は俺の専属の執事だ。
俺は白い皿に並べられたクッキーを一枚手に取り、一口噛んだ。それはサクッといい食感がして、次いで、甘い香りが口内を満たした。
「このクッキーも美味しいね」
「はい。丹精込めて作らせていただきました」
やはりか……と、俺は笑顔のまま執事を見る。
「執事の仕事だけでも忙しいんだから、おやつは厨房の者に任せたらいいと思うよ?」
「ルシファー様のお身体を構成するものを他の者に任せるなどできません。しかし、まだ料理は修行中ですから、料理長にルシファー様のお食事を作る栄誉は譲っておりますが……」
そこでなぜか彼は悔しそうな表情を見せる。
「いや、本当に忙しいんだから、無理しないで……」
その時、外から騎士たちの声が響いた。
「ワイバーンだ! ワイバーンが出たぞ!!」
その声に急いでベランダに出て空を見ると、確かに一匹のワイバーンの姿を見つけることができた。それも、こちらに向かってきているようだ。
大きな翼を羽ばたかせて急速にこちらへと向かってきたワイバーンは、まるでいい標的でも見つけたかのようにその口を開き、何かを溜めるように頭を上に向けた。おそらく火を吹くのだろう。
チッ! と、舌打ちが聞こえて隣を見れば、執事の端正な顔が歪み、額に深いしわが刻まれていた。
しかし、執事は俺の視線に気づくと、すぐにその表情を取り繕った。
「ルシファー様、少しの間、お傍を離れることをお許しください」
「ああ。気をつけてな」
執事はベランダの柵に足をかけて踏み込むと、ワイバーンへ向かって一気に跳躍した。
まるで飛行魔術でも使っているかのような跳躍力だ。
ワイバーンの口から放たれた火球をいつの間にか手にしていた剣で切り裂き、ワイバーンの上顎というか、鼻の上に左手をかけると一回転してワイバーンの頭の上に着地した。
そして、剣を振りかぶると、ワイバーンの頭頂部に突き刺した。
ワイバーンは痛ましい悲鳴をあげて上空から落下し、騎士たちは歓声を上げた。
「……」
ワイバーンの頭から地面に着地して騎士団長と一言二言言葉を交わした執事を見ていると、執事は不意に俺の方へと視線を向けて笑顔で手を振ってくれた。
俺はその執事になんとも言えない気持ちで手を振り返す。
彼と出会ったのは俺がまだ六歳の頃だった。
俺は彼を弟のように可愛がり、その成長を見守ってきたのだが……どうして、こんな"とんでも執事”に育ってしまったのだろうか?
あなたにおすすめの小説
転生したら最強辺境伯に拾われました
マンスーン
BL
現代日本人・東堂裕太が目を覚ますと、そこは異世界。クズな婚約者に魔力を限界まで搾取され、ボロボロになって森に捨てられる悲惨な青年・ルカに転生していた。
死を覚悟した裕太だったが、そんな彼を拾い上げたのは、帝国最強の武力を誇り「氷の死神」と恐れられる辺境伯・ラーク。
【完結】流行りの悪役転生したけど、推しを甘やかして育てすぎた。
時々雨
BL
前世好きだったBL小説に流行りの悪役令息に転生した腐男子。今世、ルアネが周りの人間から好意を向けられて、僕は生で殿下とヒロインちゃん(男)のイチャイチャを見たいだけなのにどうしてこうなった!?
※表紙のイラストはたかだ。様
※エブリスタ、pixivにも掲載してます
◆この話のスピンオフ、兄達の話「偏屈な幼馴染み第二王子の愛が重すぎる!」もあります。そちらも気になったら覗いてみてください。
◆2部は色々落ち着いたら…書くと思います
氷の婚約者様に破談を申し出たら号泣された
楽矢
BL
目が覚めると、レースの牢獄のような天蓋付きベッドの上だった。
何も覚えていない出来損ない下級貴族ミラ。無能だクズだと冷酷な罵詈雑言を浴びせてくる氷の騎士セティアス。
記憶喪失から始まる、2人のファンタジー貴族ラブコメディ。
----------
※注)
かっこいい攻はいません。
タイトル通りそのうち号泣しますのでご注意!
貴族描写は緩い目で雰囲気だけお読みいただけると幸いです。
ハッピーエンドです。
激重感情をこじらせた攻→受な関係がお好きな同志の方、どうぞよろしくお願いします!
全16話 完結済み/数日おきに予定
他サイトにも同作品を投稿しています。
様子を見ながらそのうち統合するかもしれません。
初めての一次創作でまだよく分かっておらず、何かおかしなことをしでかしていたら申し訳ないです!
過労で倒れかけの騎士団長を「カツ丼」で救ったら、なぜか溺愛され始めました。
水凪しおん
BL
王都の下町で、亡き両親が残した小さな食堂をたった一人で切り盛りする青年、ルカ。
孤独な日々の中で料理だけを生きがいにする彼の店に、ある冷たい雨の夜、全身を濡らし極限まで疲弊した若き騎士団長、レオンハルトが倒れ込むようにやってきた。
固形物さえ受け付けないほど疲労困憊の彼を救うため、ルカが工夫を凝らして生み出したのは、異世界の食材を組み合わせた黄金色の絶品料理「カツ丼」だった。
その圧倒的な美味しさと温もりに心身ともに救われたレオンハルトは、ルカの料理と彼自身に深く魅了され、足繁く店に通うようになる。
カツ丼の噂はまたたく間に王都の騎士たちや人々の間に広がり、食堂は大繁盛。
しかし、その人気を妬む大商会の悪意ある圧力がルカを襲う。
愛する人の居場所を守るため、レオンハルトは権力を振るって不正を暴き、ルカもまた自らの足で立つために「ルカ商会」を設立する決意を固める。
美味しいご飯が傷ついた心を癒やし、やがて二人の絆を「永遠の伴侶」へと変えていく。
胃袋から始まり、下町の小さな食堂から王都の食を支える大商会へと成り上がる、心温まる異世界お料理&溺愛ファンタジー!
推しの完璧超人お兄様になっちゃった
紫 もくれん
BL
『君の心臓にたどりつけたら』というゲーム。体が弱くて一生の大半をベットの上で過ごした僕が命を賭けてやり込んだゲーム。
そのクラウス・フォン・シルヴェスターという推しの大好きな完璧超人兄貴に成り代わってしまった。
ずっと好きで好きでたまらなかった推し。その推しに好かれるためならなんだってできるよ。
そんなBLゲーム世界で生きる僕のお話。
義兄の愛が重すぎて、悪役令息できないのですが…!
ずー子
BL
戦争に負けた貴族の子息であるレイナードは、人質として異国のアドラー家に送り込まれる。彼の使命は内情を探り、敗戦国として奪われたものを取り返すこと。アドラー家が更なる力を付けないように監視を託されたレイナード。まずは好かれようと努力した結果は実を結び、新しい家族から絶大な信頼を得て、特に気難しいと言われている長男ヴィルヘルムからは「右腕」と言われるように。だけど、内心罪悪感が募る日々。正直「もう楽になりたい」と思っているのに。
「安心しろ。結婚なんかしない。僕が一番大切なのはお前だよ」
なんだか義兄の様子がおかしいのですが…?
このままじゃ、スパイも悪役令息も出来そうにないよ!
ファンタジーラブコメBLです。
平日毎日更新を目標に頑張ってます。応援や感想頂けると励みになります。
※(2025/4/20)第一章終わりました。少しお休みして、プロットが出来上がりましたらまた再開しますね。お付き合い頂き、本当にありがとうございました!
えちち話(セルフ二次創作)も反応ありがとうございます。少しお休みするのもあるので、このまま読めるようにしておきますね。
※♡、ブクマ、エールありがとうございます!すごく嬉しいです!
※表紙作りました!絵は描いた。ロゴをスコシプラス様に作って頂きました。可愛すぎてにこにこです♡
【登場人物】
攻→ヴィルヘルム
完璧超人。真面目で自信家。良き跡継ぎ、良き兄、良き息子であろうとし続ける、実直な男だが、興味関心がない相手にはどこまでも無関心で辛辣。当初は異国の使者だと思っていたレイナードを警戒していたが…
受→レイナード
和平交渉の一環で異国のアドラー家に人質として出された。主人公。立ち位置をよく理解しており、計算せずとも人から好かれる。常に兄を立てて陰で支える立場にいる。課せられた使命と現状に悩みつつある上に、義兄の様子もおかしくて、いろんな意味で気苦労の絶えない。
BLゲームの悪役に転生したら攻略対象者が全員ヒロインに洗脳されてた
さ
BL
主人公のレオンは、幼少期に前世の記憶を思い出し、この世界がBLゲームで、自身は断罪される悪役だと気づく。
断罪を回避するため、極力攻略対象者たちと関わらないように生きてきた。
ーーそれなのに。
婚約者に婚約は破棄され、
気づけば断罪寸前の立場に。
しかも理由もわからないまま、
何もしていないはずの攻略対象者達に嫌悪を向けられてーー。
※最終的にハッピーエンド
※愛され悪役令息