【第二部開始】悪役令息に転生したのに、ヒーローもヒロインも不在で、拾って育てた執事が最強なんだが……なんで?!

はぴねこ

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 それからしばらくして学園の授業が始まった。
 授業の内容は予想していた通り、すでに家庭教師から教わったものばかりだった。
 すでに知っている内容だったために俺は授業に集中する必要がなく、その代わり、授業を受ける他の生徒たちを観察して、ゲームのヒロインとヒーローを探そうとした。
 
 しかし、それらしき人物をクラスの中に見つけることはできなかった。
 クラリスにそれとなく聞いてみたが、裕福ではない下級貴族、領地運営がうまくいっていない領地などは割とよくあるらしく、選択肢を狭めることはできなかった。
 クラスメイトを観察し、クラリスの話を参考にすると、ヒロインを探す範囲を他クラスにも広げたほうがいいのかもしれない。
 前世の弟の話を聞く限りは、同じクラスの人物なのかと勝手に思っていたのだが、どうやら違ったようだ。
 
 つまり、ルシファーはわざわざ他のクラスの男爵令嬢をいじめていたということだろうか?
 もしくは、ゲームではヒロインにフォーカスして物語を描いていたが、ルシファーは複数の少年少女をいじめていたのだろうか?
 だとすると、俺もそのように振る舞うべきなのだろうか?

 うーん……しかし、今現在、俺にわざわざ話しかけてくる同級生はいない。
 クラリスとマルローが同じクラスにいて、二人とはよく話をするけれど、他の令嬢令息はなかなか近寄ってきてくれない。
 他の者と全く接点がないのに急にいじめるというのも無理がある。

 そのため、インベルも今の所まったく行動していない。
 はぁっと思わずため息をつくと、「ルシファーくん」と先生に呼ばれた。
 
「この問題を解いてみたまえ」
 
 そう先生が黒板に書いたのは、最近読んだ算術の論文に書かれていた公式だ。
 まさか、この学園でこの公式に出会えるとは思わなかった!
 俺は黒板の前に立つと、論文の内容を思い出しながら式を書いていく。
 
「できました」
 
 そう先生を見れば、どういうわけか彼は青い顔をしていた。
 
「ルシファーくんはぼんやりしているようだったので、授業がつまらないのかと思いましたが……」
「先生はよくこうして最新の問題も出してくれますから面白いです」
 
 ただ、他の生徒たちの学習進度を考えると、この問題はまだまだ早いと思うが……
 まぁ、自分のレベルに合わずに難解に感じる問題というのは、少しワクワクするものだから、先生は生徒たちに算術への興味を促すために時折このような難しい問題をわざと出すのかもしれない。

 そのせいでこの先生は他の生徒たちによく陰口を言われているが、自分自身の評判を犠牲にしてまで生徒たちに算術の楽しさをわかってほしいのだろう。
 やり方は間違っていると思うが、志は素晴らしいと思う。
 
「ルシファー様はどのような問題でもあっという間に解いてしまいますね!」
「本当にルシファー様はすごいです!」
 
 授業が終わると、クラリスとマルローがその目をキラキラとさせて話しかけてくれた。
 
「たまたま父上のところに届いていた論文を目に通していたから」
 
 それに、この世界の算術は前世のものと比べるとまだまだ発展途上のため、高校生レベルの知識があれば割と理解できてしまうのだ。
 
「あの先生はいつもルシファー様に意地悪ばかりしますわ」
 
 クラリスの友達なのか、他の令嬢たちも周りに集まってきてそう言った。
 
「意地悪?」と俺は首を傾げる。
 
「上級生でも解けないような最新の算術の問題を出して、いつもルシファー様を指名されるではないですか?」
「それは、みんなに算術に興味を持ってもらいたいからじゃないかな? それに、私だったら、父上の伝手で最新の論文を読んでいるかもしれないと思ってのことだろう」
 
 事実、家庭教師たちが前世の記憶でずるしている俺のことを天才だと囃し立てて、最新の論文を取り寄せてくれるように父上にお願いしていたりする。
 父上ならば国境を超えて、さまざまな学術論文を取り寄せることが可能なため、家庭教師たちは自分たちが最新の論文を読みたいだけの可能性もあるが、しかし、自分たちが読んだ上でちゃんと俺にもその内容を教えてくれる。
 
「ルシファー様って考えが大人ですし、お優しいですよね」
「全然威張らないですし、僕みたいな出来損ないにも優しくしてくださって、僕、ルシファー様と同じクラスで本当に良かったです!」
 
 学園に入学したら俺は悪役令息になるからクラリス嬢との友情は失われ、周囲の者たちからは嫌われる予定だったのだが……俺はどうやら、うまく悪役令息を演じることができていないようだ。
 
「そ、そんなことないよな? インベル」
 
 これは、インベルに助けを求めて、俺が悪いやつだという印象を与える発言をしてもらわなければ。
 しかし、インベルはどことなく誇らしげに、機嫌よくにこりと微笑んだ。
 
「ルシファー様は大変お優しいですから、悪い人々に利用されないか心配になります」
 
 おかしい。インベルに、俺が悪いやつだという印象操作をお願いしていたはずなのに。
 いや、これもこれから先、俺が悪役になった時に必要な要素なのだろうか?
 例えば、最初に優しそうという印象を与えておいて、周囲の人間を騙しやすくするとか?
 
「ルシファー様のお父様である公爵閣下もお優しいですものね」
「俺はともかくとして、父上が優しく、この国のことを、民のことを思っているのは確かだ」
 
 クラリスの言葉を俺は肯定する。俺はともかく、父上は善人だ。
 この先、俺がやらかしていつか刑罰を受けるようなことがあっても、父上のこと、公爵家のことはどうか責めないでほしい。
 
「ルシファー様はお父様のことを尊敬されているのですね」
「父上のこともだけど、母上のことも尊敬しているよ。俺の両親は本当に素晴らしい二人だから」
 
 マルローの言葉に俺は頷いた。
 母上も優しくて素晴らしい人だ。だから、俺が国外追放になってもどうか両親と弟、使用人たちのことは悪く思わないでほしい!
 
 女生徒たちは徐々に俺という学園の異物に慣れたのか、よく話しかけてくれるようになった。
 マルロー以外の男子生徒たちは最初こそ遠巻きにしていたが、マルローや女生徒たちの様子から徐々に挨拶をしてくれたり、一言、二言と話してくれるようになった。
 
 
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