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「着実にクラスメイトと打ち解けてきましたね」
寮の部屋でくつろいでいると、お茶を淹れながらインベルがそんなことを言った。
「そうだな。公爵だからと特別扱いしたり、怖がられたりしなくてよかった」
俺の言葉にインベルがくすくすと笑う。
「やはり、ルシファー様に悪役は無理なようですね」
「っ!?」
インベルの言葉に俺は重大なミスを犯していることに気づく。
俺は完全に学園に来た目的を忘れていた。
「インベルがその辺はフォローしてくれると思ったのに!!」
「私はちゃんと自分の役目をまっとうしていますよ?」
「え?」
「クラスメイトが慣れてきたのはルシファー様だけです。私のことはみんな怖がっているでしょう?」
言われてみれば、確かに、女生徒も男子生徒も話しかけてくるのは俺に対してだけだ。
インベルが俺のそばにいる時は、みんな少し遠巻きに挨拶する程度だ。
「でも、インベルは具体的に何かしているわけじゃないよな?」
インベルは基本的には俺のそばにいる。教室の中ではそれぞれの席に座っているから、少し距離があり、その間にクラスメイトたちは話しかけてくれる感じだ。
だから、インベルが特定の生徒をどこかに呼び出してカツアゲしているわけでもないし、待ち伏せして意地悪なことを言っているわけでもない。
インベルは常に俺の目の届くところにいて、特に何をしている様子でもないのだが?
「どうやってみんなに怖がられているんだ?」
何もせずとも怖がられる方法があるのならば、悪役である俺はその方法を習得するべきではないだろうか?
「ルシファー様は想定通り、お人好しを振りまいてクラスメイトのほとんどの生徒に好かれていますし、みんな、ルシファー様と仲良くなりたいと思っています」
「突然の賛辞? どうした? ……いや、悪役になる予定だったのに、お人好しを振り撒いているというのは賛辞じゃなくて嫌味か?」
首を傾げた俺の頬に手を当てて、インベルは傾いた俺の顔を戻す。
「心からの称賛ですよ」
そうインベルは笑う。
「そんなルシファー様の執事で、人を寄り付けない雰囲気を発している俺はみんなにとって邪魔者なのです」
「え!? そうなのか!?」
「はい。ルシファー様のそばにべったりくっついて、睨みを利かせて、生徒たちを寄り付かせないようにしているのです」
「インベル、そんなことしてたのか……」
にこりと微笑を作ったインベルは恭しく俺の手を取って、手の甲にキスをした。
「事実、ルシファー様は私の主人で、本来は私だけのものですからね」
主人というのは、執事だけのものだっただろうか?
「そんなご主人様を皆様に貸し出しているだけということを、皆様には理解してもらわなければいけません」
主人と執事の関係性についての認識が俺とインベルでは違うようだ。
しかし、インベルは優秀な執事であるセバスチャンに育てられているのだから、もしや、インベルの認識の方が正しいのだろうか?
俺が自分の疑問に首を傾げていると、扉をノックする音が聞こえた。
インベルが扉へと向かう。
外から俺の姿が見えないように、インベルは立ち位置に気をつけつつ扉を開けた。
「君は……ルシファー様に何か用が?」
インベルが来訪者の要件を聞いて、一度扉を閉めた。
「ルシファー様、クラスメイトのラザナス・ハイヤーがお会いになりたいそうです」
「ラザナス?」
俺はクラスメイトの顔を思い出そうとする。ラザナス・ハイヤーという名前に聞き覚えはある。しかし、はっきりと顔を思い出すことができない。
「……すまない。どんな家の子だ?」
俺は人を覚えるのが苦手で、何度か話したことがある子のことでもすぐには思い出せない。
もちろん、姿を見れば、流石に顔を見たことはある程度には思い出せるはずなのだが、残念ながら、扉はインベルによって閉じられてしまった。
「ラザナス・ハイヤーはハイヤー伯爵家の嫡男です。ハイヤー伯爵家は別名、成金伯爵と呼ばれており、元は平民でしたが商売で財をなし、男爵の爵位を買い、その後、今の当主が貧しいハイヤー伯爵家の一人娘と結婚して伯爵家となりました」
「ああ! 一度、上級生に囲まれているところに通りかかったことがある!」
「はい。上級生にカツアゲされそうになっていたのを、ルシファー様が助けた少年です」
「カツアゲ!? あれ、カツアゲされそうになってたのか!?」
「はい。彼は上級生から定期的にお金を巻き上げられていました」
「お金持ちというのも大変なんだな……」
「しかし、彼も育ちのせいか性格が捻じ曲がってはいそうですので、油断はされない方がいいでしょう」
「お会いになられますか?」と、インベルがあらためて聞いてくる。
おそらく、本来ならばインベルは俺に聞くまでもなく断るタイプの相手なのだろう。
それでも、俺にそんな人物と会うかどうかを聞いてくるということは、俺がこの学園に来た目的、悪役になるために必要な人物だからだ。
俺はインベルをまっすぐに見つめて返事をした。
「会うよ」
寮の部屋でくつろいでいると、お茶を淹れながらインベルがそんなことを言った。
「そうだな。公爵だからと特別扱いしたり、怖がられたりしなくてよかった」
俺の言葉にインベルがくすくすと笑う。
「やはり、ルシファー様に悪役は無理なようですね」
「っ!?」
インベルの言葉に俺は重大なミスを犯していることに気づく。
俺は完全に学園に来た目的を忘れていた。
「インベルがその辺はフォローしてくれると思ったのに!!」
「私はちゃんと自分の役目をまっとうしていますよ?」
「え?」
「クラスメイトが慣れてきたのはルシファー様だけです。私のことはみんな怖がっているでしょう?」
言われてみれば、確かに、女生徒も男子生徒も話しかけてくるのは俺に対してだけだ。
インベルが俺のそばにいる時は、みんな少し遠巻きに挨拶する程度だ。
「でも、インベルは具体的に何かしているわけじゃないよな?」
インベルは基本的には俺のそばにいる。教室の中ではそれぞれの席に座っているから、少し距離があり、その間にクラスメイトたちは話しかけてくれる感じだ。
だから、インベルが特定の生徒をどこかに呼び出してカツアゲしているわけでもないし、待ち伏せして意地悪なことを言っているわけでもない。
インベルは常に俺の目の届くところにいて、特に何をしている様子でもないのだが?
「どうやってみんなに怖がられているんだ?」
何もせずとも怖がられる方法があるのならば、悪役である俺はその方法を習得するべきではないだろうか?
「ルシファー様は想定通り、お人好しを振りまいてクラスメイトのほとんどの生徒に好かれていますし、みんな、ルシファー様と仲良くなりたいと思っています」
「突然の賛辞? どうした? ……いや、悪役になる予定だったのに、お人好しを振り撒いているというのは賛辞じゃなくて嫌味か?」
首を傾げた俺の頬に手を当てて、インベルは傾いた俺の顔を戻す。
「心からの称賛ですよ」
そうインベルは笑う。
「そんなルシファー様の執事で、人を寄り付けない雰囲気を発している俺はみんなにとって邪魔者なのです」
「え!? そうなのか!?」
「はい。ルシファー様のそばにべったりくっついて、睨みを利かせて、生徒たちを寄り付かせないようにしているのです」
「インベル、そんなことしてたのか……」
にこりと微笑を作ったインベルは恭しく俺の手を取って、手の甲にキスをした。
「事実、ルシファー様は私の主人で、本来は私だけのものですからね」
主人というのは、執事だけのものだっただろうか?
「そんなご主人様を皆様に貸し出しているだけということを、皆様には理解してもらわなければいけません」
主人と執事の関係性についての認識が俺とインベルでは違うようだ。
しかし、インベルは優秀な執事であるセバスチャンに育てられているのだから、もしや、インベルの認識の方が正しいのだろうか?
俺が自分の疑問に首を傾げていると、扉をノックする音が聞こえた。
インベルが扉へと向かう。
外から俺の姿が見えないように、インベルは立ち位置に気をつけつつ扉を開けた。
「君は……ルシファー様に何か用が?」
インベルが来訪者の要件を聞いて、一度扉を閉めた。
「ルシファー様、クラスメイトのラザナス・ハイヤーがお会いになりたいそうです」
「ラザナス?」
俺はクラスメイトの顔を思い出そうとする。ラザナス・ハイヤーという名前に聞き覚えはある。しかし、はっきりと顔を思い出すことができない。
「……すまない。どんな家の子だ?」
俺は人を覚えるのが苦手で、何度か話したことがある子のことでもすぐには思い出せない。
もちろん、姿を見れば、流石に顔を見たことはある程度には思い出せるはずなのだが、残念ながら、扉はインベルによって閉じられてしまった。
「ラザナス・ハイヤーはハイヤー伯爵家の嫡男です。ハイヤー伯爵家は別名、成金伯爵と呼ばれており、元は平民でしたが商売で財をなし、男爵の爵位を買い、その後、今の当主が貧しいハイヤー伯爵家の一人娘と結婚して伯爵家となりました」
「ああ! 一度、上級生に囲まれているところに通りかかったことがある!」
「はい。上級生にカツアゲされそうになっていたのを、ルシファー様が助けた少年です」
「カツアゲ!? あれ、カツアゲされそうになってたのか!?」
「はい。彼は上級生から定期的にお金を巻き上げられていました」
「お金持ちというのも大変なんだな……」
「しかし、彼も育ちのせいか性格が捻じ曲がってはいそうですので、油断はされない方がいいでしょう」
「お会いになられますか?」と、インベルがあらためて聞いてくる。
おそらく、本来ならばインベルは俺に聞くまでもなく断るタイプの相手なのだろう。
それでも、俺にそんな人物と会うかどうかを聞いてくるということは、俺がこの学園に来た目的、悪役になるために必要な人物だからだ。
俺はインベルをまっすぐに見つめて返事をした。
「会うよ」
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