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二度寝から目覚めたら、なぜかインベルが同じベッドで寝ていた。
「どうしてここに?」と聞けば、二度寝してしまった俺がインベルのことを離さなかったそうだ。
部屋に戻る前に眠ってしまい、階段もあるのにインベルに運んでもらい、さらには部屋に着いてまで迷惑をかけていたとは本当に申し訳ない。
「甘えすぎてごめん」
「私はルシファー様の執事ですから、もっと頼ってください」
ベッドは一人用としては広いほうだが、男二人が寝るには狭い。
それなのに、文句も言わずにそんなことを言ってくれるとは、インベルは本当に忠誠心が厚い。
着替えて食堂に行くと、ちゃんとラザナスが来ていた。
アルバートとブライアンと同じテーブルにいた。
二人とも、ラザナスのことを気にかけてくれていたのだろう。
「あれ? ラザナス、風呂に入ったのか?」
髪も肌も先ほど見た時よりも随分ときれいになっている。服も新しいものに着替えていた。
「宿屋の主人に頼んで朝に風呂場を使わせてもらったんです」
「服も、客に貸し出すための予備のものを出してもらいました。後で体に合ったものを買いに行きましょう」
「二人とも、ありがとう」
「俺たちはルシファー様の優しさに影響されただけですよ」
そんな風に言ってくれたけれど、ラザナスのためにわざわざ宿屋の主人に話してくれるなんて、それは彼らの中にあった優しさだ。
俺は、とにかく疲れている子供は寝かせなければと思ってしまい、宿屋の主人にお願いすることまでは思い至らなかった。
けれど、彼らはわざわざラザナスのために宿屋の主人と話をして、便宜を図ってもらったのだ。
「それで、ラザナスはどうしてこの国に来たんだ? しかも、一人で」
朝食を食べて落ち着いてから、俺はラザナスにそう聞いた。
「僕は……」
ラザナスは少しずつゆっくりと話をしてくれた。
学園を追い出された後、伯爵家に戻ったが、伯爵家には王から爵位剥奪の命があったそうだ。
そして、ラザナスの父親は爵位がないのならば結婚していても仕方ないと主張し、ラザナスの母親も伯爵家を守ることができないのならば結婚は無意味と、両親は離婚したそうだ。
両親が離婚した後、ラザナスは父親によって家を追い出されたのだそうだ。
母親の実家は伯爵家から爵位は落としたものの、王の温情により男爵家として貴族の末席に名前を残したそうで、ラザナスの母親はその実家に戻ったそうだ。
それならば、どうして母親と一緒にそちらへと行かなかったのかと聞くと、母親からは家が潰れるきっかけになった子供と一緒では両親の元に戻ることもできないからと拒絶されたという。
そして、ラザナスはお小遣いとして持っていたいくつかの銀貨のみを持って隣国を目指したのだという。
まさか、王子に学園から追い出された後にラザナスがそんな目に遭っているなんて思いもしなかった。
父親から追い出され、母親からも一緒にいることを拒否されるなんて、酷すぎるだろう。
確かに、ラザナスが王子の目に留まるような行動をしなければ、ハイヤー伯爵家の貴族の品性を疑われるような数々の振る舞いが王の目に触れることはなく、爵位を剥奪されることはなかったかもしれないが、元はと言えば、ラザナスの父親であるハイヤー伯爵が貴族であるにもかかわらず、その誇りを持たずに悪徳商人のような方法で稼いでいたのが問題なのだ。
ちなみに、ラザナスの手下のようになっていた少年たちは王子が入学してからはラザナスに近づくことなく大人しくしていたこともあり、彼らが屋敷から追い出されるということはなかったようだ。
たとえ、彼らも退学させられていたとしても、ラザナスの父親のように子供をもう自分とは無関係だと放り出す親のほうが珍しいとは思うが。
「それで、行く当てがあって、隣国に来たのか?」
親戚とか友達を頼ろうと思ったのだろうか?
しかし、ラザナスは首を横に振った。
「父の元を訪れる商人から色々と話を聞いて外国に興味があったので、家を追い出されて行き場がないのならば行ってみようと思って、歩いてきたのです」
途中、魔物にも襲われたそうだが、逃げたり隠れたりして難を逃れたそうだ。
「お前、よく生きてたな」
ブライアンが呆れたように言った。
一生懸命歩いてきたのだろうが、あまりにも無計画で、無謀な行動だ。
「どうしてここに?」と聞けば、二度寝してしまった俺がインベルのことを離さなかったそうだ。
部屋に戻る前に眠ってしまい、階段もあるのにインベルに運んでもらい、さらには部屋に着いてまで迷惑をかけていたとは本当に申し訳ない。
「甘えすぎてごめん」
「私はルシファー様の執事ですから、もっと頼ってください」
ベッドは一人用としては広いほうだが、男二人が寝るには狭い。
それなのに、文句も言わずにそんなことを言ってくれるとは、インベルは本当に忠誠心が厚い。
着替えて食堂に行くと、ちゃんとラザナスが来ていた。
アルバートとブライアンと同じテーブルにいた。
二人とも、ラザナスのことを気にかけてくれていたのだろう。
「あれ? ラザナス、風呂に入ったのか?」
髪も肌も先ほど見た時よりも随分ときれいになっている。服も新しいものに着替えていた。
「宿屋の主人に頼んで朝に風呂場を使わせてもらったんです」
「服も、客に貸し出すための予備のものを出してもらいました。後で体に合ったものを買いに行きましょう」
「二人とも、ありがとう」
「俺たちはルシファー様の優しさに影響されただけですよ」
そんな風に言ってくれたけれど、ラザナスのためにわざわざ宿屋の主人に話してくれるなんて、それは彼らの中にあった優しさだ。
俺は、とにかく疲れている子供は寝かせなければと思ってしまい、宿屋の主人にお願いすることまでは思い至らなかった。
けれど、彼らはわざわざラザナスのために宿屋の主人と話をして、便宜を図ってもらったのだ。
「それで、ラザナスはどうしてこの国に来たんだ? しかも、一人で」
朝食を食べて落ち着いてから、俺はラザナスにそう聞いた。
「僕は……」
ラザナスは少しずつゆっくりと話をしてくれた。
学園を追い出された後、伯爵家に戻ったが、伯爵家には王から爵位剥奪の命があったそうだ。
そして、ラザナスの父親は爵位がないのならば結婚していても仕方ないと主張し、ラザナスの母親も伯爵家を守ることができないのならば結婚は無意味と、両親は離婚したそうだ。
両親が離婚した後、ラザナスは父親によって家を追い出されたのだそうだ。
母親の実家は伯爵家から爵位は落としたものの、王の温情により男爵家として貴族の末席に名前を残したそうで、ラザナスの母親はその実家に戻ったそうだ。
それならば、どうして母親と一緒にそちらへと行かなかったのかと聞くと、母親からは家が潰れるきっかけになった子供と一緒では両親の元に戻ることもできないからと拒絶されたという。
そして、ラザナスはお小遣いとして持っていたいくつかの銀貨のみを持って隣国を目指したのだという。
まさか、王子に学園から追い出された後にラザナスがそんな目に遭っているなんて思いもしなかった。
父親から追い出され、母親からも一緒にいることを拒否されるなんて、酷すぎるだろう。
確かに、ラザナスが王子の目に留まるような行動をしなければ、ハイヤー伯爵家の貴族の品性を疑われるような数々の振る舞いが王の目に触れることはなく、爵位を剥奪されることはなかったかもしれないが、元はと言えば、ラザナスの父親であるハイヤー伯爵が貴族であるにもかかわらず、その誇りを持たずに悪徳商人のような方法で稼いでいたのが問題なのだ。
ちなみに、ラザナスの手下のようになっていた少年たちは王子が入学してからはラザナスに近づくことなく大人しくしていたこともあり、彼らが屋敷から追い出されるということはなかったようだ。
たとえ、彼らも退学させられていたとしても、ラザナスの父親のように子供をもう自分とは無関係だと放り出す親のほうが珍しいとは思うが。
「それで、行く当てがあって、隣国に来たのか?」
親戚とか友達を頼ろうと思ったのだろうか?
しかし、ラザナスは首を横に振った。
「父の元を訪れる商人から色々と話を聞いて外国に興味があったので、家を追い出されて行き場がないのならば行ってみようと思って、歩いてきたのです」
途中、魔物にも襲われたそうだが、逃げたり隠れたりして難を逃れたそうだ。
「お前、よく生きてたな」
ブライアンが呆れたように言った。
一生懸命歩いてきたのだろうが、あまりにも無計画で、無謀な行動だ。
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