【完結。一気読みできます!】悪役令息に転生したのに、ヒーローもヒロインも不在で、拾って育てた執事が最強なんだが……なんで?!

はぴねこ

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「それなら、やっぱり、俺たちと行動しよう」
「ルシファー様、この先の旅は危険を伴うかもしれませんし……」
 
 インベルはラザナスの同行は反対のようだ。
 確かに、インベルの言うとおり、ラザナスを同行させた結果、危険に巻き込んでしまうかもしれない。
 
「それなら、どこか、ラザナスが留まってもいいと思えるところがあったら、そこで仕事を探してみてもいいだろう」
 
 ラザナスはまだ十歳だが、この世界ではもっと小さな頃から雑用のような仕事をする子供もいるし、十歳で文字の読み書きも基本の計算もできるラザナスは引く手あまたではないだろうか?
 元貴族ということを隠して、住み込みで働き先を探せば雇ってくれるところもあるはずだ。
 
「もしだったら、この街でいい仕事がないか探してみる?」
 
 そうラザナスに聞くと、しばらく考えているような様子を見せてから、俺の目を見た。
 
「僕も、ルシファー様と一緒に旅に行きたいです」
 
 外国に憧れて旅に出たと言っていたし、もっと他のところも見たいのかもしれない。
 
「それじゃ、途中まで一緒に行こう」
「いえ、最後まで……ルシファー様の使命が終わるまで同行したいです!」
「俺の使命ってわけでもないけど……さっき、インベルが言ったように危険を伴う旅かもしれないんだ」
「でも、その旅に、ルシファー様も行くんですよね? 僕はルシファー様の盾くらいにはなれます!」
「何を言っているんだ? ラザナス? ルシファー様を守るのは私です!」
 
 インベルがラザナスを睨み、ラザナスは怯む。
 けれど、ラザナスはグッと堪えて、インベルを睨み返した。
 
「インベルは僕に友好の証を贈ってくれていたんですよね? 毒ではなく? 敵ではなく、友達だと言ってくれるならば、困っている友達が旅に同行しても問題はないでしょう?」
 
 ラザナスの言葉にインベルがにこりと笑うが、そのこめかみに青筋が浮いているような気がする……
 
「友好の証を贈っていた相手だからこそ、危険な旅へは同行させられません」
「ルシファー様は連れて行くのにですか? そんなに危険な旅なら、僕はルシファー様と一緒にここで待っていますよ」
「ルシファー様は私の主人です! 他の者になど任せられません!!」
 
 二人のじゃれあいのような言い合いを見守っていると、アルバートがパンッパンッと手を叩いた。
 
「二人とも、この街では買い出しをしなければいけない。もう一泊はするが、明日は早朝から出立する予定だから買い物ができるのは今日だけだ。そんな言い合いで悠長にしている時間はない」

 本来は俺が二人の言い合いを止めなければいけないのに、インベルの子供らしい様子が微笑ましくて見守ってしまった。
 
 ラザナスも以前のような傲慢に人を見下すような言い方ではなく、年齢相応の言い合いで以前よりもずっと子供らしくてなんだかホッとしてしまったのだ。
 やはり、以前の態度は父親の影響が強かったのだろう。

「すまない。アルバート」
「いいえ。ルシファー様のせいではないですよ。とにかく、計画的に買い物を済ませましょう」
 
 俺の謝罪にアルバートは優しい笑顔を見せてくれた。
 騎士であり、俺の護衛ではあるが、今は俺たちは主人と騎士ではなく、旅の常識を知らない子供と保護者の関係でもある。
 俺が宰相の息子だからと気を遣うばかりではなく、きちんと大人として導いてくれようとしてくれるのはありがたい。
 
「すみません」と、しおらしくなるインベルの頭を撫でて、俺たちは買い物のために宿屋を出る。
 
 
 
「二手に分かれて買い物に行きましょう」
 
 ブライアンはそう言って、ラザナスの肩を掴んだ。
 
「俺はこいつの服や靴、旅に必要なものを揃えに行きます。それから肉とか肉を見に行く」
 
 旅で消費する肉とは、前世のジャーキーのような乾燥肉である。
 
「肉ばかり買うなよ? 水も買ってくれ」
「それなら馬も連れて行こうかな」
 
 馬に水の入った革袋をくくりつけて運ぶのだろう。旅の間は馬車の荷物入れの中に入れておけばいい。
 
「我々は焚き火の魔法陣と水を生む魔法陣、それから肉以外の食糧を調達しにいきましょう」
 
 アルバートの言葉に俺は頷く。
 領地の街と王都しか知らない俺は他国の街を見るのを楽しみにしていた。

 アルバートの背について歩き出すと、インベルが俺の手を握ってきた。
 俺がインベルを見上げると、インベルは微笑んだ。
 
「初めての街ですから」
 
 それはつまり、俺が迷子にならないようにということだろう。
 
「子供じゃないんだから、はぐれたりしないぞ?」
「はぐれることを心配しているのではありません」
「じゃ、なんだ?」
「ルシファー様はお美しいので、攫われることが心配なのです」
 
 そう爽やかに笑うインベルのほうがよほど見目がいいと思う。
 なんだか強者の雰囲気が漂っているから、攫おうと思う者はいないかもしれないが、見惚れている女性は多いのだ。
 
 前世の俺が客観的にルシファーの見た目を評するなら、白い髪と赤い目はいかにも悪役キャラクター要素が強くて目立つような気はするけれど、実際にはこの世界の人々はそれほどこの見た目に注目することはないから、攫われて、見世物小屋に売られるようなことも、きっとないだろう。
 
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