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43 インベル視点
まさか、旅の途中でラザナスなんてお荷物を拾うことになるとは思わなかった。
実のところ、門で見かけた時にすぐにラザナスだと気づいた。
しかし、それをルシファー様が知れば、お優しいルシファー様がどのような行動に出るかはわかっていたから言わなかったのだ。
結局、ルシファー様がラザナスだと気づいてしまって保護してしまったけれど、俺は早々にラザナスを引き離すつもりでいた。
だから、ルシファー様が眠っておられる間にラザナスの部屋へと行き、ルシファー様が起きる前にさっさと宿屋から出て行くように言ったのだ。
だが、まさか、ルシファー様が俺を探しにラザナスの部屋まで来てしまうとは思わなかった。
俺を探しに来たのだと聞いて嬉しかったけれど、困った。
ラザナスを追い出す機会を逸してしまった。
そう思いながらも、俺は俺を頼ってそのまま眠ってしまったルシファー様を抱きしめて、ベッドに横たえた後も離れがたくて同じベッドで横になった。
そして、ルシファー様のいい匂いに包まれて、熟睡してしまった。
旅の間中、ルシファー様に何かあってはならないと気を張っていたし、宿に着いてからもラザナスを追い出すことばかり考えて眠れなかった。
そんな俺の体にルシファー様の甘い香りはある種の麻痺毒のように作用し、体が弛緩して、思考も手放され、深く深くベッドに沈んでしまったのだ。
腕の中でモゾモゾと身動ぐルシファー様の気配でやっと目覚めることができた。
朝食後に街に出ると、人々の目がルシファー様に注目した。
領地でも、学園の中でも人目を集めていたせいか、ルシファー様はこうした人の目に鈍感だ。
どれほど多くの人たちに見つめられても気にならない……というか、気づいていないようだ。
たまに気づくと、「白い髪と赤い目だから目立っちゃったかな?」と言うくらい。
確かに、白い髪と赤い目は珍しい。
けれど、白っぽい髪の子供や、赤茶色の目の人々がいないわけではないのだ。
だから、その見た目の特徴を気にする者はそれほどいない。
しかし、ルシファー様は顔立ちが神々が総力を合わせて作り上げたのではないかというほどに美しいのだ。
ご本人は俺のことを格好いいと言ってくださるが、誰もルシファー様の美しさには敵わない。
これまで繰り返してきた人生の中で出会ったルシファーも綺麗な見目をしていたが、ルシファー様ほどではない。
だから、この美しさは内面のお心が作り出しているものでもあるのだろう。
とにかく、そんな美しいルシファー様に人目が集まっている。
俺はさり気なくルシファー様のマントのフードを被せる。
ルシファー様は不思議そうな表情をされたが、それに対して俺は微笑んだ。
「日差しが強くなってまいりましたので、白い肌には少し刺激が強いかと」
「ああ、日焼けしたら痛いもんな。ありがとう」
ルシファー様は納得されてお礼を言ってくれた。
可愛い。こんなに可愛い人をこんなに大勢の目がある場所に晒してしまうのは危険だろう。
この旅で本当に神と対話することができたなら、俺の寿命の話と、どうしたらルシファー様を独り占めすることができるのかを聞きたい。
こんなに愛らしい人を俺はルシファー様以外に知らない。
俺は深くため息をついた。
「どうした?」
「いえ、ちょっと厄介な者のことを思い出してしまいまして」
「厄介な者? インベルにもそのような人がいるのか?」
「ええ。最大のライバルと言いますか……」
滅ぼしたい敵と言うか……
「そんなに強いのか? すごいな! 誰なんだ?」
「俺以外に興味を持たれると困るので、ルシファー様には教えません」
屋敷でルシファー様を待つであろう、ルシファー様の弟を亡き者にするのは、やはり問題があるだろう。
そんなことをすれば、師匠もルシファー様の父上も、俺からルシファー様を取り上げてしまうに違いない。
処分できないのならば、会わせないのが一番いい。
「確かに興味深いけど、それはインベルへの関心ゆえだ」
そう微笑んで俺の心を乱すルシファー様に俺はわからなくなる。
この方は天使のようにお優しいのに、時に甘く誘惑する悪魔のように魅惑的なのだ。
一体、どういうことなのだろうか?
そこでふと思った。
もしや、ルシファー様は、清純なる天使から魅惑の悪魔になられた方なのではないだろうか?
それならば、二つの要素を合わせ持つことも可能だろう!
買い物の途中で堕天使様に似合いそうな衣装を色々とおすすめしたが、着替えは十分持ってきているからいらないと言われてしまった。
ちょっと肌が透ける感じの寝巻きとかいいと思ったのだが……もちろん、他の誰にも見せるつもりはない。
もしかすると、ルシファー様は天界から下界に降りるために……そのお優しい心ゆえに堕天してくださったのかもしれない。
そして、俺は、そんなお心優しい堕天使様の執事……最もお近くに侍らせていただくことを許されたのが、英雄という使命のおかげならば、神様に感謝できるような気もする。
これまでの繰り返される魔物討伐の役目さえも、今回の人生のためならば、受け入れられるような気がする。
「インベル? どうした?」
ルシファー様に似合いそうな薄衣の寝巻きを見つめながら、真剣にそんなことを考えているとルシファー様に首を傾げられた。
「いえ、なんでもありません」
「それはラザナスのための寝巻きか? 肌触りは良さそうだが、まだ夜は冷えるかもしれないな」
「私はルシファー様のことしか考えておりません!!」
「インベルが友達思いなのは知っているから、隠さなくてもいいのに」
そう小さな子供を見るような眼差しを向けてくるルシファー様はやはり天使だった。
これはあれだ。堕天しようとしても、天界がそれを許さなかった気がする。
「ルシファー様、インベルは大したことは考えていません。だから、先に行きますよ」
アルバートが呆れたような眼差しを俺に向けて、ルシファー様を誘導して離れていく。
俺は寝巻きを衣装店の棚に戻して、ルシファー様を追いかけた。
実のところ、門で見かけた時にすぐにラザナスだと気づいた。
しかし、それをルシファー様が知れば、お優しいルシファー様がどのような行動に出るかはわかっていたから言わなかったのだ。
結局、ルシファー様がラザナスだと気づいてしまって保護してしまったけれど、俺は早々にラザナスを引き離すつもりでいた。
だから、ルシファー様が眠っておられる間にラザナスの部屋へと行き、ルシファー様が起きる前にさっさと宿屋から出て行くように言ったのだ。
だが、まさか、ルシファー様が俺を探しにラザナスの部屋まで来てしまうとは思わなかった。
俺を探しに来たのだと聞いて嬉しかったけれど、困った。
ラザナスを追い出す機会を逸してしまった。
そう思いながらも、俺は俺を頼ってそのまま眠ってしまったルシファー様を抱きしめて、ベッドに横たえた後も離れがたくて同じベッドで横になった。
そして、ルシファー様のいい匂いに包まれて、熟睡してしまった。
旅の間中、ルシファー様に何かあってはならないと気を張っていたし、宿に着いてからもラザナスを追い出すことばかり考えて眠れなかった。
そんな俺の体にルシファー様の甘い香りはある種の麻痺毒のように作用し、体が弛緩して、思考も手放され、深く深くベッドに沈んでしまったのだ。
腕の中でモゾモゾと身動ぐルシファー様の気配でやっと目覚めることができた。
朝食後に街に出ると、人々の目がルシファー様に注目した。
領地でも、学園の中でも人目を集めていたせいか、ルシファー様はこうした人の目に鈍感だ。
どれほど多くの人たちに見つめられても気にならない……というか、気づいていないようだ。
たまに気づくと、「白い髪と赤い目だから目立っちゃったかな?」と言うくらい。
確かに、白い髪と赤い目は珍しい。
けれど、白っぽい髪の子供や、赤茶色の目の人々がいないわけではないのだ。
だから、その見た目の特徴を気にする者はそれほどいない。
しかし、ルシファー様は顔立ちが神々が総力を合わせて作り上げたのではないかというほどに美しいのだ。
ご本人は俺のことを格好いいと言ってくださるが、誰もルシファー様の美しさには敵わない。
これまで繰り返してきた人生の中で出会ったルシファーも綺麗な見目をしていたが、ルシファー様ほどではない。
だから、この美しさは内面のお心が作り出しているものでもあるのだろう。
とにかく、そんな美しいルシファー様に人目が集まっている。
俺はさり気なくルシファー様のマントのフードを被せる。
ルシファー様は不思議そうな表情をされたが、それに対して俺は微笑んだ。
「日差しが強くなってまいりましたので、白い肌には少し刺激が強いかと」
「ああ、日焼けしたら痛いもんな。ありがとう」
ルシファー様は納得されてお礼を言ってくれた。
可愛い。こんなに可愛い人をこんなに大勢の目がある場所に晒してしまうのは危険だろう。
この旅で本当に神と対話することができたなら、俺の寿命の話と、どうしたらルシファー様を独り占めすることができるのかを聞きたい。
こんなに愛らしい人を俺はルシファー様以外に知らない。
俺は深くため息をついた。
「どうした?」
「いえ、ちょっと厄介な者のことを思い出してしまいまして」
「厄介な者? インベルにもそのような人がいるのか?」
「ええ。最大のライバルと言いますか……」
滅ぼしたい敵と言うか……
「そんなに強いのか? すごいな! 誰なんだ?」
「俺以外に興味を持たれると困るので、ルシファー様には教えません」
屋敷でルシファー様を待つであろう、ルシファー様の弟を亡き者にするのは、やはり問題があるだろう。
そんなことをすれば、師匠もルシファー様の父上も、俺からルシファー様を取り上げてしまうに違いない。
処分できないのならば、会わせないのが一番いい。
「確かに興味深いけど、それはインベルへの関心ゆえだ」
そう微笑んで俺の心を乱すルシファー様に俺はわからなくなる。
この方は天使のようにお優しいのに、時に甘く誘惑する悪魔のように魅惑的なのだ。
一体、どういうことなのだろうか?
そこでふと思った。
もしや、ルシファー様は、清純なる天使から魅惑の悪魔になられた方なのではないだろうか?
それならば、二つの要素を合わせ持つことも可能だろう!
買い物の途中で堕天使様に似合いそうな衣装を色々とおすすめしたが、着替えは十分持ってきているからいらないと言われてしまった。
ちょっと肌が透ける感じの寝巻きとかいいと思ったのだが……もちろん、他の誰にも見せるつもりはない。
もしかすると、ルシファー様は天界から下界に降りるために……そのお優しい心ゆえに堕天してくださったのかもしれない。
そして、俺は、そんなお心優しい堕天使様の執事……最もお近くに侍らせていただくことを許されたのが、英雄という使命のおかげならば、神様に感謝できるような気もする。
これまでの繰り返される魔物討伐の役目さえも、今回の人生のためならば、受け入れられるような気がする。
「インベル? どうした?」
ルシファー様に似合いそうな薄衣の寝巻きを見つめながら、真剣にそんなことを考えているとルシファー様に首を傾げられた。
「いえ、なんでもありません」
「それはラザナスのための寝巻きか? 肌触りは良さそうだが、まだ夜は冷えるかもしれないな」
「私はルシファー様のことしか考えておりません!!」
「インベルが友達思いなのは知っているから、隠さなくてもいいのに」
そう小さな子供を見るような眼差しを向けてくるルシファー様はやはり天使だった。
これはあれだ。堕天しようとしても、天界がそれを許さなかった気がする。
「ルシファー様、インベルは大したことは考えていません。だから、先に行きますよ」
アルバートが呆れたような眼差しを俺に向けて、ルシファー様を誘導して離れていく。
俺は寝巻きを衣装店の棚に戻して、ルシファー様を追いかけた。
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