【完結。一気読みできます!】悪役令息に転生したのに、ヒーローもヒロインも不在で、拾って育てた執事が最強なんだが……なんで?!

はぴねこ

文字の大きさ
48 / 69

45

 宿屋に戻ると、ブライアンが少し興奮したような様子で俺たちの帰りを待っていた。
 
「ルシファー様! 聞いてください!」
「どうしたの?」
「ラザナスが神の祠の場所を知っているそうです!」
 
 俺が思わずラザナスに視線を向けると、ラザナスはどことなく恥ずかしそうに、しかし誇らしそうにしていた。自信があるのだろう。
 
 買い物をしながらブライアンは俺たちの旅の目的を説明したらしい。
 もちろん、インベルの死の運命の話ではなく、魔物が大量発生した原因を探す旅だということを話したそうだ。
 その調査のために、神の祠に行く予定だと話せば、ラザナスは祠の場所を知っていると言ったそうなのだ。
 
「なぜ、ラザナスがそんなことを知っているんだ? まさか、ルシファー様の気を引くための嘘じゃないだろうな?」
 
 インベルの言葉にラザナスは途端に不機嫌になる。
 
「そんなわけないだろ! 僕は将来商人になるために、父上から地図をよく見せてもらっていたんだ! それに、うちに来ていたたくさんの商人から色々な話も聞いていて、タラバ王国から来た商人から神の祠の話を聞いたことがある!」
 
 これは本当に有力な情報かもしれない。
 俺たちは一番広い俺とインベルが使っている部屋でラザナスから話を聞くことにした。
 
「タラバ王国には神の祠と呼ばれる場所が東西南北に一ヶ所ずつあります。魔物の大量発生に関係しているのは、英雄を導く神の祠と呼ばれている場所ではないでしょうか?」

「英雄」と聞いて、俺は「きっとそこだ!」と身を乗り出した。
「それなら」と、ラザナスは地図を開いて、一ヶ所を指差した。
 
「ここ、東にある祠です」
「それでは、ひとまずはここに向かってみましょう」
 
 アルバートの言葉に俺たちは頷く。俺はラザナスに笑いかけた。

「ラザナス、助かったよ! ありがとう!」
「いえ、ルシファー様のお役に立ててよかったです」
 
 ラザナスの頬がほのかに染まっている。どうやら照れているようだ。
 こんな表情は学園では見ることができなかったからかなり新鮮だ。
 
「インベルはこの祠の近くで生まれたのか?」
 
 ブライアンの言葉にインベルは浅く頷いた。
 
「近くというか、この祠の中に捨てられていたそうです。拾って育ててくれた村の人々はそんな俺を英雄だと思ったようですが……」
「単純な思い込みですね。その祠に捨てられていたからと言って、英雄だと決めつけるなんて」

 フンッと鼻を鳴らして言うラザナスの言葉に俺は頷いた。
 
「そうだよな。インベルはインベルだ。英雄とか、そんなこと関係ない」
「いえ、そういう意味ではなく……僕にとっては、インベルよりルシファー様のほうが英雄です!」
 
 そう言ったラザナスに俺は首を傾げた。
 
「俺が剣術の才能ないの知っているだろう?」
 
 学園では同じクラスだったのだから、俺のへなちょこ剣を目の当たりにしているはずだ。
 ……いや、剣術の時間、ラザナスは隅っこで素振りをしていたかもしれない。
 人目を避けるようにできるだけ隅のほうにいたようだから、もしかすると、俺のことなど見ていなかったのかもしれない。
 
「そういうことじゃなくて……ルシファー様は、学園にいる時から、ずっと僕に教えてくれていましたよね? お金では人の心は買えないこと、弱い者には手を差し伸べること、僕はずっとルシファー様に失礼な態度をとっていたのに、それでも、ルシファー様は僕にそういうことを教えてくれていました」
「そういうことをわかってほしいとは思っていたけれど、英雄なんて言い過ぎだ」

 俺はそう否定したのだが、ブライアンがラザナスの言葉を肯定するように繰り返し頷いた。

「俺もラザナスの言うことはわかるな。俺にとってもルシファー様は英雄みたいなものだ。俺だけじゃなくて、平民の騎士にとっては、ルシファー様は忠誠心を躊躇なく捧げられる人なんです。文官には学力が必要だから平民ではなかなかなれませんが、騎士なら剣の才能があればなれます。そういう者たちにとっては、身分で差別しないルシファー様のような人は貴重なのです」
「差別なんてしないよ。騎士のみんなは国を守ってくれる存在だ。貴族とか、平民とかそんなの関係ない」
「それが、大抵の貴族はそうじゃないんですよ」
 
 そう笑ってブライアンはアルバートへちらりと視線を送った。
 アルバートはその視線から逃げるように顔を背ける。アルバートは侯爵家の四男だったはずだ。
 
「アルバートもブライアンを差別するのか? 二人とも仲が良さそうに見えるけど?」
「い、今はしませんよ! 子供の頃は、騎士道への理解が浅く……」
「子供の頃って、ルシファー様たちより年上だっただろ?」
「仕方ないだろ! 平民と身近で接するなんて初めてだったんだ!」
 
 どうやら、騎士の訓練生だった頃に何かあったようだ。
 しかし、そこからここまで仲良くなったのなら、今はお互いのことをよくわかっているのだろう。
 
「アルバートはまだ寛容に俺たち平民の騎士を受け入れてくれているほうですし、騎士ではない貴族たちは俺たちに近寄られることさえも嫌がる者もいますよ。そんな中で、騎士でもないのに俺たちと一緒に戦って、貴族の騎士たちと差別することなく平等に治療してくださったルシファー様は俺たち平民の騎士にとってはインベルと並ぶ英雄と同等……インベルが剣士なら、ルシファー様は聖者様で、英雄パーティーっていう感じなんです」
 
 まさか、そんな風に受け止められているとは……
 
「俺は英雄とか、聖者とかじゃないよ?」
 
 結果的にみんなの役に立って良かったけど、そもそも闇魔術を学んだのだって、悪役令息になるためだし……
 それをこんな風に受け止められているといたたまれない。
 
感想 9

あなたにおすすめの小説

【完結】悪役に転生したので、皇太子を推して生き延びる

ざっしゅ
BL
気づけば、男の婚約者がいる悪役として転生してしまったソウタ。 この小説は、主人公である皇太子ルースが、悪役たちの陰謀によって記憶を失い、最終的に復讐を遂げるという残酷な物語だった。ソウタは、自分の命を守るため、原作の悪役としての行動を改め、記憶を失ったルースを友人として大切にする。 ソウタの献身的な行動は周囲に「ルースへの深い愛」だと噂され、ルース自身もその噂に満更でもない様子を見せ始める。

BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください

わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。 まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!? 悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。

氷の婚約者様に破談を申し出たら号泣された

楽矢
BL
【完結/番外編準備中】 目が覚めると、レースの牢獄のような天蓋付きベッドの上だった。 何も覚えていない出来損ない下級貴族ミラ。無能だクズだと冷酷な罵詈雑言を浴びせてくる氷の騎士セティアス。 記憶喪失から始まる、2人のファンタジー貴族ラブコメディ。 ---------- ※注) かっこいい攻はいません。 タイトル通りそのうち号泣しますのでご注意! 貴族描写は緩い目で雰囲気だけお読みいただけると幸いです。 ハッピーエンドです。 激重感情をこじらせた攻→受な関係がお好きな同志の方、どうぞよろしくお願いします! 全16話 完結済み 他サイトにも同作品を投稿しています。 様子を見ながらそのうち統合するかもしれません。 初めての一次創作でまだよく分かっておらず、何かおかしなことをしでかしていたら申し訳ないです! ---------- 追記:読んでくださった皆さま、本当にどうもありがとうございました!! 完結しましたが回収しきれていないエピソードが私の中でいくつかあるので笑、後日番外編をアップしたいなと現在準備中です。 詳しい更新日まだ未定ですが、もしよろしかったらゼヒまた覗いてやってくださいねー!

【完結】悪役令嬢モノのバカ王子に転生してしまったんだが、なぜかヒーローがイチャラブを求めてくる

路地裏乃猫
BL
ひょんなことから悪役令嬢モノと思しき異世界に転生した〝俺〟。それも、よりにもよって破滅が確定した〝バカ王子〟にだと?説明しよう。ここで言うバカ王子とは、いわゆる悪役令嬢モノで冒頭から理不尽な婚約破棄を主人公に告げ、最後はざまぁ要素によって何やかんやと破滅させられる例のアンポンタンのことであり――とにかく、俺はこの異世界でそのバカ王子として生き延びにゃならんのだ。つーわけで、脱☆バカ王子!を目指し、真っ当な王子としての道を歩き始めた俺だが、そんな俺になぜか、この世界ではヒロインとイチャコラをキメるはずのヒーローがぐいぐい迫ってくる!一方、俺の命を狙う謎の暗殺集団!果たして俺は、この破滅ルート満載の世界で生き延びることができるのか? いや、その前に……何だって悪役令嬢モノの世界でバカ王子の俺がヒーローに惚れられてんだ? 2025年10月に全面改稿を行ないました。 2025年10月28日・BLランキング35位ありがとうございます。 2025年10月29日・BLランキング27位ありがとうございます。 2025年10月30日・BLランキング15位ありがとうございます。 2025年11月1日 ・BLランキング13位ありがとうございます。 第13回BL大賞で奨励賞をいただきました。これもひとえに皆様の応援のおかげです。本当にありがとうございました。

​転生したら最強辺境伯に拾われました

マンスーン
BL
現代日本人・東堂裕太が目を覚ますと、そこは異世界。クズな婚約者に魔力を限界まで搾取され、ボロボロになって森に捨てられる悲惨な青年・ルカに転生していた。 ​死を覚悟した裕太だったが、そんな彼を拾い上げたのは、帝国最強の武力を誇り「氷の死神」と恐れられる辺境伯・ラーク。

妹を救うためにヒロインを口説いたら、王子に求愛されました。

藤原遊
BL
乙女ゲームの悪役令息に転生したアラン。 妹リリィが「悪役令嬢として断罪される」未来を変えるため、 彼は決意する――ヒロインを先に口説けば、妹は破滅しない、と。 だがその“奇行”を見ていた王太子シリウスが、 なぜかアラン本人に興味を持ち始める。 「君は、なぜそこまで必死なんだ?」 「妹のためです!」 ……噛み合わないはずの会話が、少しずつ心を動かしていく。 妹は完璧令嬢、でも内心は隠れ腐女子。 ヒロインは巻き込まれて腐女子覚醒。 そして王子と悪役令息は、誰も知らない“仮面の恋”へ――。 断罪回避から始まる勘違い転生BL×宮廷ラブストーリー。 誰も不幸にならない、偽りと真実のハッピーエンド。

この俺が正ヒロインとして殿方に求愛されるわけがない!

ゆずまめ鯉
BL
五歳の頃の授業中、頭に衝撃を受けたことから、自分が、前世の妹が遊んでいた乙女ゲームの世界にいることに気づいてしまったニエル・ガルフィオン。 ニエルの外見はどこからどう見ても金髪碧眼の美少年。しかもヒロインとはくっつかないモブキャラだったので、伯爵家次男として悠々自適に暮らそうとしていた。 これなら異性にもモテると信じて疑わなかった。 ところが、正ヒロインであるイリーナと結ばれるはずのチート級メインキャラであるユージン・アイアンズが熱心に構うのは、モブで攻略対象外のニエルで……!? ユージン・アイアンズ(19)×ニエル・ガルフィオン(19) 公爵家嫡男と伯爵家次男の同い年の乙女ゲー転生BLです。

推しの運命を変えるため、モブの俺は嫌われ役を演じた

月冬
BL
乙女ゲームの世界に転生した俺は、ただのモブキャラ。 推しキャラのレオンは、本来なら主人公と結ばれる攻略対象だった。 だから距離を置くつもりだったのに―― 気づけば、孤独だった彼の隣にいた。 「モブは選ばれない」 そう思っていたのに、 なぜかシナリオがどんどん壊れていく。 これは、 推しの未来を知るモブが、運命を変えてしまう物語。