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宿屋に戻ると、ブライアンが少し興奮したような様子で俺たちの帰りを待っていた。
「ルシファー様! 聞いてください!」
「どうしたの?」
「ラザナスが神の祠の場所を知っているそうです!」
俺が思わずラザナスに視線を向けると、ラザナスはどことなく恥ずかしそうに、しかし誇らしそうにしていた。自信があるのだろう。
買い物をしながらブライアンは俺たちの旅の目的を説明したらしい。
もちろん、インベルの死の運命の話ではなく、魔物が大量発生した原因を探す旅だということを話したそうだ。
その調査のために、神の祠に行く予定だと話せば、ラザナスは祠の場所を知っていると言ったそうなのだ。
「なぜ、ラザナスがそんなことを知っているんだ? まさか、ルシファー様の気を引くための嘘じゃないだろうな?」
インベルの言葉にラザナスは途端に不機嫌になる。
「そんなわけないだろ! 僕は将来商人になるために、父上から地図をよく見せてもらっていたんだ! それに、うちに来ていたたくさんの商人から色々な話も聞いていて、タラバ王国から来た商人から神の祠の話を聞いたことがある!」
これは本当に有力な情報かもしれない。
俺たちは一番広い俺とインベルが使っている部屋でラザナスから話を聞くことにした。
「タラバ王国には神の祠と呼ばれる場所が東西南北に一ヶ所ずつあります。魔物の大量発生に関係しているのは、英雄を導く神の祠と呼ばれている場所ではないでしょうか?」
「英雄」と聞いて、俺は「きっとそこだ!」と身を乗り出した。
「それなら」と、ラザナスは地図を開いて、一ヶ所を指差した。
「ここ、東にある祠です」
「それでは、ひとまずはここに向かってみましょう」
アルバートの言葉に俺たちは頷く。俺はラザナスに笑いかけた。
「ラザナス、助かったよ! ありがとう!」
「いえ、ルシファー様のお役に立ててよかったです」
ラザナスの頬がほのかに染まっている。どうやら照れているようだ。
こんな表情は学園では見ることができなかったからかなり新鮮だ。
「インベルはこの祠の近くで生まれたのか?」
ブライアンの言葉にインベルは浅く頷いた。
「近くというか、この祠の中に捨てられていたそうです。拾って育ててくれた村の人々はそんな俺を英雄だと思ったようですが……」
「単純な思い込みですね。その祠に捨てられていたからと言って、英雄だと決めつけるなんて」
フンッと鼻を鳴らして言うラザナスの言葉に俺は頷いた。
「そうだよな。インベルはインベルだ。英雄とか、そんなこと関係ない」
「いえ、そういう意味ではなく……僕にとっては、インベルよりルシファー様のほうが英雄です!」
そう言ったラザナスに俺は首を傾げた。
「俺が剣術の才能ないの知っているだろう?」
学園では同じクラスだったのだから、俺のへなちょこ剣を目の当たりにしているはずだ。
……いや、剣術の時間、ラザナスは隅っこで素振りをしていたかもしれない。
人目を避けるようにできるだけ隅のほうにいたようだから、もしかすると、俺のことなど見ていなかったのかもしれない。
「そういうことじゃなくて……ルシファー様は、学園にいる時から、ずっと僕に教えてくれていましたよね? お金では人の心は買えないこと、弱い者には手を差し伸べること、僕はずっとルシファー様に失礼な態度をとっていたのに、それでも、ルシファー様は僕にそういうことを教えてくれていました」
「そういうことをわかってほしいとは思っていたけれど、英雄なんて言い過ぎだ」
俺はそう否定したのだが、ブライアンがラザナスの言葉を肯定するように繰り返し頷いた。
「俺もラザナスの言うことはわかるな。俺にとってもルシファー様は英雄みたいなものだ。俺だけじゃなくて、平民の騎士にとっては、ルシファー様は忠誠心を躊躇なく捧げられる人なんです。文官には学力が必要だから平民ではなかなかなれませんが、騎士なら剣の才能があればなれます。そういう者たちにとっては、身分で差別しないルシファー様のような人は貴重なのです」
「差別なんてしないよ。騎士のみんなは国を守ってくれる存在だ。貴族とか、平民とかそんなの関係ない」
「それが、大抵の貴族はそうじゃないんですよ」
そう笑ってブライアンはアルバートへちらりと視線を送った。
アルバートはその視線から逃げるように顔を背ける。アルバートは侯爵家の四男だったはずだ。
「アルバートもブライアンを差別するのか? 二人とも仲が良さそうに見えるけど?」
「い、今はしませんよ! 子供の頃は、騎士道への理解が浅く……」
「子供の頃って、ルシファー様たちより年上だっただろ?」
「仕方ないだろ! 平民と身近で接するなんて初めてだったんだ!」
どうやら、騎士の訓練生だった頃に何かあったようだ。
しかし、そこからここまで仲良くなったのなら、今はお互いのことをよくわかっているのだろう。
「アルバートはまだ寛容に俺たち平民の騎士を受け入れてくれているほうですし、騎士ではない貴族たちは俺たちに近寄られることさえも嫌がる者もいますよ。そんな中で、騎士でもないのに俺たちと一緒に戦って、貴族の騎士たちと差別することなく平等に治療してくださったルシファー様は俺たち平民の騎士にとってはインベルと並ぶ英雄と同等……インベルが剣士なら、ルシファー様は聖者様で、英雄パーティーっていう感じなんです」
まさか、そんな風に受け止められているとは……
「俺は英雄とか、聖者とかじゃないよ?」
結果的にみんなの役に立って良かったけど、そもそも闇魔術を学んだのだって、悪役令息になるためだし……
それをこんな風に受け止められているといたたまれない。
「ルシファー様! 聞いてください!」
「どうしたの?」
「ラザナスが神の祠の場所を知っているそうです!」
俺が思わずラザナスに視線を向けると、ラザナスはどことなく恥ずかしそうに、しかし誇らしそうにしていた。自信があるのだろう。
買い物をしながらブライアンは俺たちの旅の目的を説明したらしい。
もちろん、インベルの死の運命の話ではなく、魔物が大量発生した原因を探す旅だということを話したそうだ。
その調査のために、神の祠に行く予定だと話せば、ラザナスは祠の場所を知っていると言ったそうなのだ。
「なぜ、ラザナスがそんなことを知っているんだ? まさか、ルシファー様の気を引くための嘘じゃないだろうな?」
インベルの言葉にラザナスは途端に不機嫌になる。
「そんなわけないだろ! 僕は将来商人になるために、父上から地図をよく見せてもらっていたんだ! それに、うちに来ていたたくさんの商人から色々な話も聞いていて、タラバ王国から来た商人から神の祠の話を聞いたことがある!」
これは本当に有力な情報かもしれない。
俺たちは一番広い俺とインベルが使っている部屋でラザナスから話を聞くことにした。
「タラバ王国には神の祠と呼ばれる場所が東西南北に一ヶ所ずつあります。魔物の大量発生に関係しているのは、英雄を導く神の祠と呼ばれている場所ではないでしょうか?」
「英雄」と聞いて、俺は「きっとそこだ!」と身を乗り出した。
「それなら」と、ラザナスは地図を開いて、一ヶ所を指差した。
「ここ、東にある祠です」
「それでは、ひとまずはここに向かってみましょう」
アルバートの言葉に俺たちは頷く。俺はラザナスに笑いかけた。
「ラザナス、助かったよ! ありがとう!」
「いえ、ルシファー様のお役に立ててよかったです」
ラザナスの頬がほのかに染まっている。どうやら照れているようだ。
こんな表情は学園では見ることができなかったからかなり新鮮だ。
「インベルはこの祠の近くで生まれたのか?」
ブライアンの言葉にインベルは浅く頷いた。
「近くというか、この祠の中に捨てられていたそうです。拾って育ててくれた村の人々はそんな俺を英雄だと思ったようですが……」
「単純な思い込みですね。その祠に捨てられていたからと言って、英雄だと決めつけるなんて」
フンッと鼻を鳴らして言うラザナスの言葉に俺は頷いた。
「そうだよな。インベルはインベルだ。英雄とか、そんなこと関係ない」
「いえ、そういう意味ではなく……僕にとっては、インベルよりルシファー様のほうが英雄です!」
そう言ったラザナスに俺は首を傾げた。
「俺が剣術の才能ないの知っているだろう?」
学園では同じクラスだったのだから、俺のへなちょこ剣を目の当たりにしているはずだ。
……いや、剣術の時間、ラザナスは隅っこで素振りをしていたかもしれない。
人目を避けるようにできるだけ隅のほうにいたようだから、もしかすると、俺のことなど見ていなかったのかもしれない。
「そういうことじゃなくて……ルシファー様は、学園にいる時から、ずっと僕に教えてくれていましたよね? お金では人の心は買えないこと、弱い者には手を差し伸べること、僕はずっとルシファー様に失礼な態度をとっていたのに、それでも、ルシファー様は僕にそういうことを教えてくれていました」
「そういうことをわかってほしいとは思っていたけれど、英雄なんて言い過ぎだ」
俺はそう否定したのだが、ブライアンがラザナスの言葉を肯定するように繰り返し頷いた。
「俺もラザナスの言うことはわかるな。俺にとってもルシファー様は英雄みたいなものだ。俺だけじゃなくて、平民の騎士にとっては、ルシファー様は忠誠心を躊躇なく捧げられる人なんです。文官には学力が必要だから平民ではなかなかなれませんが、騎士なら剣の才能があればなれます。そういう者たちにとっては、身分で差別しないルシファー様のような人は貴重なのです」
「差別なんてしないよ。騎士のみんなは国を守ってくれる存在だ。貴族とか、平民とかそんなの関係ない」
「それが、大抵の貴族はそうじゃないんですよ」
そう笑ってブライアンはアルバートへちらりと視線を送った。
アルバートはその視線から逃げるように顔を背ける。アルバートは侯爵家の四男だったはずだ。
「アルバートもブライアンを差別するのか? 二人とも仲が良さそうに見えるけど?」
「い、今はしませんよ! 子供の頃は、騎士道への理解が浅く……」
「子供の頃って、ルシファー様たちより年上だっただろ?」
「仕方ないだろ! 平民と身近で接するなんて初めてだったんだ!」
どうやら、騎士の訓練生だった頃に何かあったようだ。
しかし、そこからここまで仲良くなったのなら、今はお互いのことをよくわかっているのだろう。
「アルバートはまだ寛容に俺たち平民の騎士を受け入れてくれているほうですし、騎士ではない貴族たちは俺たちに近寄られることさえも嫌がる者もいますよ。そんな中で、騎士でもないのに俺たちと一緒に戦って、貴族の騎士たちと差別することなく平等に治療してくださったルシファー様は俺たち平民の騎士にとってはインベルと並ぶ英雄と同等……インベルが剣士なら、ルシファー様は聖者様で、英雄パーティーっていう感じなんです」
まさか、そんな風に受け止められているとは……
「俺は英雄とか、聖者とかじゃないよ?」
結果的にみんなの役に立って良かったけど、そもそも闇魔術を学んだのだって、悪役令息になるためだし……
それをこんな風に受け止められているといたたまれない。
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