【完結 一気読み推奨】聖女召喚に巻き込まれた聖女(仮)の婚約者ですが……え? 俺の方が聖女ってどういうこと!?

はぴねこ

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 その日は俺は王子と一緒に夕食をとることになった。食事はごくごく質素なものだった。
 神殿に仕える聖女という立場だから粗食というわけではなく、肉類なども普通に出る食事なのだが、王族の食事であっても日本のように料理が発展しているわけではないと感じた。
 王子は日本や地球に興味があるのか、前の世界ではどんな食事だったのかとか、何が好きだったのかとか色々聞いてきた。

 ちなみに、食事は食堂で取ったのだが、食堂でも王子は隣に座っていた。
 食堂には長いテーブルがあり、俺は入り口から一番奥の席に座らされ、王子はその隣に座った。
 この部屋にも祭壇のようなものがあり、お誕生日席はないため、おそらく神の前に誰かが座ることはないのだろう。この国の統治者は神々だと言っていたから。

 俺たちが座っている席から少し離れたところに神官たちが入れ替わり立ち替わり来て、食事をとり、去っていった。
 話しかけたそうな様子を見せた者たちもいたが、護衛の青年が彼らに視線を向ければ、彼らは何も言えぬまま、ただ食事を取って去るしかないようだった。

「この国の食事は質素でしょう? レンの世界の食事に比べると申し訳なくなりますね」
「確かに質素ですが、俺は元の世界でもそんなにいいものは食べていなかったので、むしろ健康的でいいと思います」

 前の世界ではコンビニ弁当やインスタントラーメンばかり食べていたから、ここの食事は手作りの上にタンパク質、脂質、炭水化物、さまざまな野菜をバランスよく摂取することができて健康的だと思う。



 翌日には早速、聖女様のお役目として神に祈りを捧げることになった。
 
「こちらが聖女様の儀式の衣装です」

 そう言って部屋に入って来たのは昨日、従者のふりをして部屋に来たジェラルドだった。
 ちなみに、王子はジェラルドのことを話したがらなかったので、いまだにジェラルドのことはよく知らない。
 しかし、今日は質素な格好ではなく、王子らしい格好に髪型だ。
 そうしていると、第一王子とよく似ている。

「ジェラルド! また巫女たちの仕事を奪ったのか!?」
「奪ったなんて人聞きが悪いな~ちょっと代わってもらっただけだよ?」

 すでに部屋に来て、一緒に朝食を食べた第一王子がジェラルドに注意をするが、ジェラルドは素知らぬ顔だ。
 生真面目な兄にヤンチャな弟という感じだろうか?

 俺はジェラルドから衣装を受け取り、衝立の奥で着替える。

「聖女様!? お着替えならば、巫女に手伝わせます!」

 王子が慌てた様子で衝立を回ってきた。

「いや、それには及ばないよ」

 すでに上半身を脱いでいた俺の姿に、王子はなぜかその顔を真っ赤にして、俺から視線を逸らした。
 同性の裸だというのに、恥ずかしいのだろうか?

「そうですか……では、私が着替えのお手伝いをします……」

 上半身を見ただけでそんなに恥ずかしがっているのに、何をどう手伝ってくれるというのだろうか?
 と、思ったが、昨日着替えた服よりも儀式服は複雑で、結局手伝ってもらうことになった。
 優しい手つきで俺の着替えを手伝ってくれる様子は、王子というよりも俺専属の付き人のようで申し訳なくなった。
 いや、その見た目の美しさはどう見ても王子なのだが。

 俺は着替えて昨日も行った聖女専用の礼拝室へと入った。
 ジェラルドも意気揚々とついて来ていたが、いざ部屋に入ろうとしたジェラルドを王子が止めた。

「まだ未成年のそなたは入れぬぞ」

 そうなんだ? とジェラルドに視線を向ければ、ちっと舌打ちした。
 ジェラルドも王子のはずだが、第一王子とは違って王子感をほぼ感じない。
 見目はいいのだが、品性をどこかに置いてきてしまったようだ。

「それじゃここで待っているから、早く出てきてね! レン!」

 愛想のいい作り笑顔で手を振るジェラルドに俺は苦笑して手を振り返した。



「これほど美しい輝きの魂というのも珍しいわね」
「かといって、順風満帆にただ健やかに生きてきたというわけでもなさそうだ」
「ちょっと、アイオロス、今回はわたくしだけで会うって決めていたでしょう?」
「だって、面白そうだったから」

 礼拝堂の中で祈り始めると、昨日とは違って石板がまばゆく光を放ち、俺はどうやら異空間へと連れてこられたようだった。
 そして、そこで美しい大地の女神 レアと、快活な少年の姿の風の神 アイオロスと出会った。

 ……出会ったというか、今はただ、神々の観察対象になっているような状態だ。
 神様に会うのなんて初めてだったものだから、俺はただ目の前に現れた二神にジロジロと見られるままに固まっていた。

「昨日祈りを捧げた時も綺麗だと思ったけれど、やっぱりすごく綺麗な魂ね」
「僕、こんなに綺麗な魂見たの初めてかも!」
「そうね。これまで色々な聖女を見てきて、みんな聖女になれるくらいには綺麗な魂だったけれど、ここまでじゃなかったわね」
「それに、これまでの子は、聖女様ってチヤホヤされるうちに魂がどんどんくすんじゃったし……」

 「どうか、君はそのままでいてね」と、アイオロスは俺の頬に触れた。
 次の瞬間、ぐらりと眩暈がした。
 それまでも神々から溢れている何か不思議な力にふわふわとした心地はしていたのだ。
 その力が、アイオロスに触れられて一気に流れ込んできたような感覚だ。

「ちょっと! 人の子には触れちゃダメよ!」

 レアの注意にアイオロスは「しまった」と慌てて手を離した。

「あまりに純真で綺麗だったからつい……」
「今日はもう人の世に戻しましょう」

 二人の会話はそこまでだった。

 再びまばゆい光に包まれて、「レン!!」と王子の声がした。

「大丈夫ですか!?」
「あ……らいじょ…ふ……」

 大丈夫ですと答えたかったけれど、うまく口を動かせなかった。
 まるで、酩酊状態のようだ。

「神々の神聖力にあてられてしまったのですね」

 酔ったような状態になった俺の体を王子は抱きしめて言った。

「扉の外で待っているジェラルドに、あなたのそのような姿を見せたくはありません」

「だから」と、王子は俺の耳元で囁いた。

「レンに口付けることを許してほしいのです」
「口付け……?」

 こんな時に、どうしてそんな冗談を?
 しかし、王子の眼差しは熱を持ち、冗談だとは思えないものだった。

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