【完結 一気読み推奨】聖女召喚に巻き込まれた聖女(仮)の婚約者ですが……え? 俺の方が聖女ってどういうこと!?

はぴねこ

文字の大きさ
9 / 11

09


「ねぇ、どうして、みんな、今日も集まっているのよ?」

 そうため息混じりに言ったのは大地の神 レアだった。

 俺が聖女召喚されてからもうひと月が経つ。
 その間に全ての神々と会い、神々の加護は寵愛へと変化して、俺の手首にあった七色の印はそれぞれ模様を広げて今では手首に巻き付くように描かれた刺青のようになっている。

「仕方ないだろう? レンの純粋な魂の煌めきは我々神にさえ安らぎを与えてくれるのだから」

 そう言ったのは水の神、オケアノスだ。オケアノスはフラウィアンに並ぶほどの美形だ。
 ……いや、この場合、神と並ぶほどの美形であるフラウィアンがすごいのだろう。

「ああ。レンの傍は心が安らぐのだ」

 そう言って俺の肩を抱き寄せたのは火の神 ヘパイストスだ。

「ヘパイストスは心が安らいじゃダメじゃない? 火の神の性質として、それでいいの? 鎮火の神とかになっちゃわない?」

 そう皮肉を言っているのは少年の姿をした風の神 アイオロスだ。
 アイオロスはジェラルドに似たところがあり、以前にそれを話したところ、ジェラルドはアイオロスにとってお気に入りの人間なのだそうだ。

「ところでレン、フラウィアンとの仲は進展している?」

 そんなことを聞いてきたのは、まさにフラウィアンと婚約するきっかけになった純潔の神 フォルトゥーナだ。
 フォルトゥーナは十代半ばの清純な少女の見た目をしている。
 しかし、その話し方は非常に成熟し、見た目とのギャップを感じさせた。

「わたくしも恋バナが聞きたいわ!」

 光の神 ティアが期待に瞳を煌めかせた。
 ティアはフォルトゥーナよりもさらに幼い少女の姿をした神ではあるが、愛や恋などの話が好きで、俺とフラウィアンの関係を進展させようとしているのか、無邪気に俺に触れては神聖力で俺を酩酊させて、フラウィアンに迷惑をかけるのもこの神だった。

 俺は光の神 ティアが急に抱きついてこないように慎重に距離を取り、神々の中では一番物静かで冷静な闇の神 エレボスの隣に避難した。

「フラウィアンとは婚約者として適切な関係を保ち、お付き合いさせていただいております」

 ティアが私に触れるたびに酩酊状態になってしまうために、これまで何度もフラウィアンには口付けられ、この前など、肌に直接触れられてしまったから、清く正しくとまでは言えないかもしれないけれど……

 そんな話をこの場でする気などないし、そもそも神々は我々のことを勝手に覗き見ているはずなのだ。
 わざわざ言葉にする必要はないだろう。

「フラウィアンに熱烈にキスされて、あの大きな手で背中を撫でられていたわよね? そういう話をレンの口から直接聞きたいのに!」
「ティ、ティア様は可愛らしいお姿をしているのに、そのようなお話をされて、恥ずかしくはないのですか?」

 俺の頬はへパイストスの火にでも焼かれたかのように熱いというのに!

「恥ずかしくないわ。愛や恋がなければ、生物などあっという間にこの地にいなくなってしまうもの。ふれあいは神には必要ないけれど、生物たちにとっては尊い営みじゃない?」

 品性のかけらもない幼女神かと思っていたが、そういうわけではなさそうだ。

「だから、さっさとやることやって、フラウィアンをどろどろに溺れさせたらいいと思うわ!」

 いや、やはり、品性のかけらもない神だった。
 だんだん、幼女の姿も小悪魔に見えてきたな。

「ティア、フラウィアンは純粋な子よ。邪な目で見るのはやめてちょうだい」

 フラウィアンがお気に入りだという純潔の神 フォルトゥーナがティアを諌めた。

「あの、フォルトゥーナ様はお気に入りのフラウィアンには純潔のままでいてほしいのではないですか?」

 ティアほどに露骨ではないものの、フォルトゥーナも会えば必ずフラウィアンとの進展を聞いてくる。

「もしや、結婚しても、清い関係を保てばいいということですか?」

 フォルトゥーナは純潔の神だ。
 もしかすると、プラトニックな関係を求めているのかもしれない。
 しかし、だとすると、無闇に俺たちの関係を進展させようとすることは危険だ。

 最初のキスだって、王子はその目に熱を持っていたけれど、今では俺を落ち着かせるためだけではなく、それ以上に、一緒に神聖力に当てられてしまったかのように吐息を熱くするのだ。

 以前、フラウィアンの父親である聖王から婚前交渉は禁じられているというようなことを残念そうに言っていたから、フォルトゥーナが望むように俺たちの関係が進展して結婚してしまえば、プラトニックな関係は保てないだろう。

「別段、プラトニックな関係を望んでいるというわけではないわ。ティアのように淫らな関係を薦めるつもりはないけれど、二人が思い合っているのならば、肉体的な関係を持ったところでレンの魂もフラウィアンの魂も汚れることはないもの」

「それに」とフォルトゥーナの言葉は続く。

「今のフラウィアンが心の奥に押さえつけている劣情の方が危険だわ」

 劣情とか、純粋無垢な少女の姿の神様からは聞きたくなかった。

 それに、フラウィアンがそうしたものを心に秘めているということも知りたくなかった……
 決して、それで軽蔑したりはしないけれど、恥ずかしいし、気まずい。

「今日のところはもう帰るといい。神域にいるだけで、其方の中には神聖力が溜まってしまうだろう?」

 闇の神 エレボスの言葉に俺はホッと息をつき、エレボスに微笑んでお礼を伝えた。

「お心遣い、ありがとうございます」

 すると、エレボスも珍しくその口元を綻ばせて、俺の頭を撫でた。

「エレボス様……」

 初めてエレボスにそうして触れられて俺は驚いた。

 そして、次の瞬間には神聖力が体内に溜まりすぎて、またしても酩酊状態になってしまった。
 それも、いつもよりも酷い気がする。

「すまない!」とエレボスは慌てて俺の頭から手を離してくれたがもう遅かった。

 次の瞬間には神域から礼拝堂の中に戻されたが、俺は立っていられる状態ではなく、その場にへたり込んでしまった。

「レン!」

 いつも通りに礼拝堂の中で待ってくれていたフラウィアンが俺に駆け寄り、俺の体を支えてくれた。

「大丈夫ですか!?」
「フラウィアン……」

 なんとか彼の名前を呼んだけれど、それ以上話すことはできなくて、俺は意識を手放した。

感想 0

あなたにおすすめの小説

結婚間近だったのに、殿下の皇太子妃に選ばれたのは僕だった

BL
皇太子妃を輩出する家系に産まれた主人公は半ば政略的な結婚を控えていた。 にも関わらず、皇太子が皇妃に選んだのは皇太子妃争いに参加していない見目のよくない五男の主人公だった、というお話。

死ぬだけの悪役令息に転生したら、待っていたのは攻略対象達からの溺愛でした。

きうい
BL
 病でで死んでしまった優は、気が付いたら読んでいた小説の悪役令息として転生していた。    それもどのルートでも十五歳という歳になると、死ぬ運命にある悪役———フィオレン・オーレリウス。  前世で家族に恵まれず、家族愛とは程遠い世界で生きてきた優は、愛されたいという願望を捨て、ひとりで生きることを決意する。  しかし、家族に対して表情と感情を隠し、言葉も発さず、一人で生きて行く術を身につけようと家族から距離をとるフィオレンとは裏腹に、家族や攻略対象達は異常なほどの愛を注ぐ。  フィオレンの知らない所で、小説のシナリオとは正反対の道を辿ることになるも、愛に無頓着で無自覚なフィオレンは溺愛されていき………?

僕の事を嫌いな騎士の一途すぎる最愛は…

BL
記憶喪失の中目覚めると、知らない騎士の家で寝ていた。だけど騎士は受けを酷く嫌っているらしい。 騎士×???

処刑エンドの悪役公爵、隠居したいのに溺愛されてます

ひなた翠
BL
目が覚めたら、やり込んだBLゲームの悪役公爵になっていた。 しかも手には鞭。目の前には涙を浮かべた美少年。 ——このままじゃ、王太子に処刑される。 前世は冴えない社畜サラリーマン。今世は冷徹な美貌を持つ高位貴族のアルファ。 中身と外見の落差に戸惑う暇もなく、エリオットは処刑回避のための「隠居計画」を立てる。 囚われのオメガ・レオンを王太子カイルに引き渡し、爵位も領地も全部手放して、ひっそり消える——はずだった。 ところが動くほど状況は悪化していく。 レオンを自由にしようとすれば「傍にいたい」と縋りつかれ、 カイルに会えば「お前の匂いは甘い」と迫られ、 隠居を申し出れば「逃げるな」と退路を塞がれる。 しかもなぜか、子供の頃から飲んでいた「ビタミン剤」を忘れるたび、身体がおかしくなる。 周囲のアルファたちの視線が絡みつき、カイルの目の色が変わり—— 自分でも知らなかった秘密が暴かれたとき、逃げ場はもう、どこにもなかった。 誰にも愛されなかった男が、異世界で「本当の自分」を知り、運命の番と出会う—— ギャップ萌え×じれったさ×匂いフェチ全開の、オメガバース転生BL。

守銭奴オメガ、嫁いだアルファに見向きもされないから働く!

おもちDX
BL
お嫁に来たけど夫に見向きもされない。貧乏育ちのオメガはこっそりと働き始め、発情期は「ちゃちゃっとパッと」終わらせるよう夫に頼む。しかしそれから夫が構ってくるようになり…? 無愛想な辺境伯のアルファ×守銭奴オメガ 政略結婚の夫婦がお互いの性格を知るところから始まるラブストーリー。 ハッピーエンドのオメガバースです

竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜

レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」 魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。 彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。

婚約破棄させた愛し合う2人にザマァされた俺。とその後

結人
BL
王太子妃になるために頑張ってた公爵家の三男アランが愛する2人の愛でザマァされ…溺愛される話。 ※男しかいない世界で男同士でも結婚できます。子供はなんかしたら作ることができます。きっと…。 全5話完結。予約更新します。

【完結】転生した悪役令息は、お望み通り近付きません

カシナシ
BL
「お前など、愛す価値もない」 ディディア・ファントム侯爵令息が階段から落ちる時見たのは、婚約者が従兄弟を抱きしめている姿。 (これって、ディディアーーBLゲームの悪役令息じゃないか!) 妹の笑顔を見るためにやりこんでいたBLゲーム。引くほどレベルを上げた主人公のスキルが、なぜかディディアに転生してそのまま引き継いでいる。 スキルなしとして家族に『失敗作』と蔑まれていたのは、そのスキルのレベルが高すぎたかららしい。 スキルと自分を取り戻したディディアは、婚約者を追いかけまわすのを辞め、自立に向けて淡々と準備をする。 もちろん元婚約者と従兄弟には近付かないので、絡んでこないでいただけます? 十万文字程度。 3/7 完結しました! ※主人公:マイペース美人受け ※女性向けHOTランキング1位、ありがとうございました。完結までの12日間に渡り、ほとんど2〜5位と食い込めた作品となりました!あああありがとうございます……!。゚(゚´Д`゚)゚。 たくさんの閲覧、イイね、エール、感想は、作者の血肉になります……!(o´ω`o)ありがとうございます!(●′ω`人′ω`●)