片想いの相手が「そろそろ恋愛したい」と言ったので、用済みの俺はニートになることにしました。

はぴねこ

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 高校生の頃、片想いの親友に告白した。
 彼はノンケだったから玉砕して友人関係も終わるものだと思っていた。
 もしかすると気持ち悪いと軽蔑される覚悟までしていたのに、彼は「今は恋愛をしている時間がないんだ」と自分の夢を語ってくれた。
 彼は会社を興した祖父のことをとても尊敬していて、自分も起業したいと熱く語ってくれた。

 そして、俺の手を握って「できれば親友のお前には俺の右腕になってほしい」と言われた。
 同性愛者の俺のことを気持ち悪いと遠ざけることもせずに、親友のままでいてくれた彼に俺は感謝して、同じ大学に進学して、大学の頃に彼と一緒にゲームを作成する会社を起業した。
 あれから二十年間、本当に二人三脚で駆け抜けてきた。

 そして、昨年売り出したVRMMOが世界的に大ヒットし、ゲーム大賞を取ったことを祝うパーティーで親友が語った言葉に俺の覚悟も決まった。

「俺もそろそろ恋愛したい」

 親友のその言葉に、俺は、長年の片想いを終わらせる覚悟をした。

 その日のうちに退職届を書いて、社長の机の上に置いた。
 いつかこうなる日が来るだろうと思っていたから、私物はデスクに置いていない。
 秘書課の書類は全て全員が共有できるように整理してあるから、俺が突然いなくなっても困ることはない。

 副社長や経理部長の話もあったが、そんな立場になったらこんな風に消えることはできないと思って、秘書業務だけをやってきた。
 もちろん、スケジュールは全て秘書課の全員と共有している。
 社長の好みや苦手なものなども共有し、長年一緒にいる俺しか知らないこととかそんなものもない。

 自分が消える準備をしていたなんて、随分と無責任だと思われそうだが、俺は俺のことをわかっていた。
 告白したあの日、俺は親友に振られる覚悟はできていたけれど、親友が誰かと肩を並べて歩き、手を繋ぎ、微笑み合う姿を見る覚悟はできそうになかった。

 親友に「右腕になってほしい」とは言われたけれど、彼の左手の薬指に指輪がはまる日を常に恐れていた。
 長年恐れていたそんな日がもうすぐ来るのだ。



 一人会社を出た俺は、夜遅くまでやっているスーパーに寄って、日持ちのする食品を買い込んで帰った。
 セキュリティはしっかりしている一人暮らし用のワンルームマンションに帰宅して、シャワーを浴びると着古したゆるゆるのスウェットに着替えて、VRMMOのために作られたVRチェアに座った。

 従来のVRチェアよりも、体全体が包まれるような構造になっていて、もはやVRMMO専用マシーンと言ってもいいような形状をしている。
 近年発売されたVRMMO専用のこのマシーンは、我が社とゲーム機器会社での共同で開発したもので、長時間ゲームをしても体が疲れにくい構造になっている。

 そういえば、ゲーム機器会社の若手社長から今度一緒に飲もうと声をかけてもらっていたが、実現する前に退職してしまった。
 その彼とは先ほどもパーティーで社長は笑顔で会話していたからきっとこの先もうまいこと関係を保ってくれることだろう。

 自分勝手に辞めてしまったから退職金は期待できないけど、これまでの貯金で十分暮らしていけるはずだ。
 しばらくしたらまたどこかで働かないといけないかもしれないけれど、しばらくはニートでいいと思う。

「このゲームを思う存分にやってみたかったんだよな」

 俺たちの二十年間が詰まっているようなゲーム、『異世界 アルカディア』に俺はログインした。



 目を開けると、見慣れた木造りの天井が見えた。
 ここは独身の冒険者ギルド職員のための寮だ。

 さて、まずはここでも退職届を出すところから始めないといけないな。


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