1 / 3
01
しおりを挟む
高校生の頃、片想いの親友に告白した。
彼はノンケだったから玉砕して友人関係も終わるものだと思っていた。
もしかすると気持ち悪いと軽蔑される覚悟までしていたのに、彼は「今は恋愛をしている時間がないんだ」と自分の夢を語ってくれた。
彼は会社を興した祖父のことをとても尊敬していて、自分も起業したいと熱く語ってくれた。
そして、俺の手を握って「できれば親友のお前には俺の右腕になってほしい」と言われた。
同性愛者の俺のことを気持ち悪いと遠ざけることもせずに、親友のままでいてくれた彼に俺は感謝して、同じ大学に進学して、大学の頃に彼と一緒にゲームを作成する会社を起業した。
あれから二十年間、本当に二人三脚で駆け抜けてきた。
そして、昨年売り出したVRMMOが世界的に大ヒットし、ゲーム大賞を取ったことを祝うパーティーで親友が語った言葉に俺の覚悟も決まった。
「俺もそろそろ恋愛したい」
親友のその言葉に、俺は、長年の片想いを終わらせる覚悟をした。
その日のうちに退職届を書いて、社長の机の上に置いた。
いつかこうなる日が来るだろうと思っていたから、私物はデスクに置いていない。
秘書課の書類は全て全員が共有できるように整理してあるから、俺が突然いなくなっても困ることはない。
副社長や経理部長の話もあったが、そんな立場になったらこんな風に消えることはできないと思って、秘書業務だけをやってきた。
もちろん、スケジュールは全て秘書課の全員と共有している。
社長の好みや苦手なものなども共有し、長年一緒にいる俺しか知らないこととかそんなものもない。
自分が消える準備をしていたなんて、随分と無責任だと思われそうだが、俺は俺のことをわかっていた。
告白したあの日、俺は親友に振られる覚悟はできていたけれど、親友が誰かと肩を並べて歩き、手を繋ぎ、微笑み合う姿を見る覚悟はできそうになかった。
親友に「右腕になってほしい」とは言われたけれど、彼の左手の薬指に指輪がはまる日を常に恐れていた。
長年恐れていたそんな日がもうすぐ来るのだ。
一人会社を出た俺は、夜遅くまでやっているスーパーに寄って、日持ちのする食品を買い込んで帰った。
セキュリティはしっかりしている一人暮らし用のワンルームマンションに帰宅して、シャワーを浴びると着古したゆるゆるのスウェットに着替えて、VRMMOのために作られたVRチェアに座った。
従来のVRチェアよりも、体全体が包まれるような構造になっていて、もはやVRMMO専用マシーンと言ってもいいような形状をしている。
近年発売されたVRMMO専用のこのマシーンは、我が社とゲーム機器会社での共同で開発したもので、長時間ゲームをしても体が疲れにくい構造になっている。
そういえば、ゲーム機器会社の若手社長から今度一緒に飲もうと声をかけてもらっていたが、実現する前に退職してしまった。
その彼とは先ほどもパーティーで社長は笑顔で会話していたからきっとこの先もうまいこと関係を保ってくれることだろう。
自分勝手に辞めてしまったから退職金は期待できないけど、これまでの貯金で十分暮らしていけるはずだ。
しばらくしたらまたどこかで働かないといけないかもしれないけれど、しばらくはニートでいいと思う。
「このゲームを思う存分にやってみたかったんだよな」
俺たちの二十年間が詰まっているようなゲーム、『異世界 アルカディア』に俺はログインした。
目を開けると、見慣れた木造りの天井が見えた。
ここは独身の冒険者ギルド職員のための寮だ。
さて、まずはここでも退職届を出すところから始めないといけないな。
彼はノンケだったから玉砕して友人関係も終わるものだと思っていた。
もしかすると気持ち悪いと軽蔑される覚悟までしていたのに、彼は「今は恋愛をしている時間がないんだ」と自分の夢を語ってくれた。
彼は会社を興した祖父のことをとても尊敬していて、自分も起業したいと熱く語ってくれた。
そして、俺の手を握って「できれば親友のお前には俺の右腕になってほしい」と言われた。
同性愛者の俺のことを気持ち悪いと遠ざけることもせずに、親友のままでいてくれた彼に俺は感謝して、同じ大学に進学して、大学の頃に彼と一緒にゲームを作成する会社を起業した。
あれから二十年間、本当に二人三脚で駆け抜けてきた。
そして、昨年売り出したVRMMOが世界的に大ヒットし、ゲーム大賞を取ったことを祝うパーティーで親友が語った言葉に俺の覚悟も決まった。
「俺もそろそろ恋愛したい」
親友のその言葉に、俺は、長年の片想いを終わらせる覚悟をした。
その日のうちに退職届を書いて、社長の机の上に置いた。
いつかこうなる日が来るだろうと思っていたから、私物はデスクに置いていない。
秘書課の書類は全て全員が共有できるように整理してあるから、俺が突然いなくなっても困ることはない。
副社長や経理部長の話もあったが、そんな立場になったらこんな風に消えることはできないと思って、秘書業務だけをやってきた。
もちろん、スケジュールは全て秘書課の全員と共有している。
社長の好みや苦手なものなども共有し、長年一緒にいる俺しか知らないこととかそんなものもない。
自分が消える準備をしていたなんて、随分と無責任だと思われそうだが、俺は俺のことをわかっていた。
告白したあの日、俺は親友に振られる覚悟はできていたけれど、親友が誰かと肩を並べて歩き、手を繋ぎ、微笑み合う姿を見る覚悟はできそうになかった。
親友に「右腕になってほしい」とは言われたけれど、彼の左手の薬指に指輪がはまる日を常に恐れていた。
長年恐れていたそんな日がもうすぐ来るのだ。
一人会社を出た俺は、夜遅くまでやっているスーパーに寄って、日持ちのする食品を買い込んで帰った。
セキュリティはしっかりしている一人暮らし用のワンルームマンションに帰宅して、シャワーを浴びると着古したゆるゆるのスウェットに着替えて、VRMMOのために作られたVRチェアに座った。
従来のVRチェアよりも、体全体が包まれるような構造になっていて、もはやVRMMO専用マシーンと言ってもいいような形状をしている。
近年発売されたVRMMO専用のこのマシーンは、我が社とゲーム機器会社での共同で開発したもので、長時間ゲームをしても体が疲れにくい構造になっている。
そういえば、ゲーム機器会社の若手社長から今度一緒に飲もうと声をかけてもらっていたが、実現する前に退職してしまった。
その彼とは先ほどもパーティーで社長は笑顔で会話していたからきっとこの先もうまいこと関係を保ってくれることだろう。
自分勝手に辞めてしまったから退職金は期待できないけど、これまでの貯金で十分暮らしていけるはずだ。
しばらくしたらまたどこかで働かないといけないかもしれないけれど、しばらくはニートでいいと思う。
「このゲームを思う存分にやってみたかったんだよな」
俺たちの二十年間が詰まっているようなゲーム、『異世界 アルカディア』に俺はログインした。
目を開けると、見慣れた木造りの天井が見えた。
ここは独身の冒険者ギルド職員のための寮だ。
さて、まずはここでも退職届を出すところから始めないといけないな。
46
あなたにおすすめの小説
【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
【bl】砕かれた誇り
perari
BL
アルファの幼馴染と淫らに絡んだあと、彼は医者を呼んで、私の印を消させた。
「来月結婚するんだ。君に誤解はさせたくない。」
「あいつは嫉妬深い。泣かせるわけにはいかない。」
「君ももう年頃の残り物のオメガだろ? 俺の印をつけたまま、他のアルファとお見合いするなんてありえない。」
彼は冷たく、けれどどこか薄情な笑みを浮かべながら、一枚の小切手を私に投げ渡す。
「長い間、俺に従ってきたんだから、君を傷つけたりはしない。」
「結婚の日には招待状を送る。必ず来て、席につけよ。」
---
いくつかのコメントを拝見し、大変申し訳なく思っております。
私は現在日本語を勉強しており、この文章はAI作品ではありませんが、
一部に翻訳ソフトを使用しています。
もし読んでくださる中で日本語のおかしな点をご指摘いただけましたら、
本当にありがたく思います。
番に見つからない街で、子供を育てている
はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。
異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。
現世の記憶は失われているが、
この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。
街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、
ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。
だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。
再会は望まない。
今はただ、この子との生活を守りたい。
これは、番から逃げたオメガが、
選び直すまでの物語。
*本編完結しました
美澄の顔には抗えない。
米奏よぞら
BL
スパダリ美形攻め×流され面食い受け
高校時代に一目惚れした相手と勢いで付き合ったはいいものの、徐々に相手の熱が冷めていっていることに限界を感じた主人公のお話です。
※なろう、カクヨムでも掲載中です。
愛などもう求めない
一寸光陰
BL
とある国の皇子、ヴェリテは長い長い夢を見た。夢ではヴェリテは偽物の皇子だと罪にかけられてしまう。情を交わした婚約者は真の皇子であるファクティスの側につき、兄は睨みつけてくる。そして、とうとう父親である皇帝は処刑を命じた。
「僕のことを1度でも愛してくれたことはありましたか?」
「お前のことを一度も息子だと思ったことはない。」
目が覚め、現実に戻ったヴェリテは安心するが、本当にただの夢だったのだろうか?もし予知夢だとしたら、今すぐここから逃げなくては。
本当に自分を愛してくれる人と生きたい。
ヴェリテの切実な願いが周りを変えていく。
ハッピーエンド大好きなので、絶対に主人公は幸せに終わらせたいです。
最後まで読んでいただけると嬉しいです。
届かない「ただいま」
AzureHaru
BL
いつも通りの変わらない日常のはずだった。
「行ってきます。」と言って出て行った貴方。1日が終わる頃に「ただいま。」と「おかえり。」を笑顔で交わすはずだった。でも、その言葉はもう貴方には届かない。
これは「優しさが奪った日常」の物語。
《一時完結》僕の彼氏は僕のことを好きじゃないⅠ
MITARASI_
BL
彼氏に愛されているはずなのに、どうしてこんなに苦しいんだろう。
「好き」と言ってほしくて、でも返ってくるのは沈黙ばかり。
揺れる心を支えてくれたのは、ずっと隣にいた幼なじみだった――。
不器用な彼氏とのすれ違い、そして幼なじみの静かな想い。
すべてを失ったときに初めて気づく、本当に欲しかった温もりとは。
切なくて、やさしくて、最後には救いに包まれる救済BLストーリー。
続編執筆中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる