【完結・続編別立】片想いの相手が「そろそろ恋愛したい」と言ったので、用済みの俺はニートになることにしました。

はぴねこ

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「そういえば、素材採取のついでに依頼も受けたって言ってたけど、ナオキはその素材を何に使うんだ?」

 アレクの質問に俺は事情を話した。

「じつは、ダンジョンを作り始めたんだけど、素材が足りなくなっちゃって」
「へぇ~、ナオキが作ったダンジョンか、それは興味あるな」
「かなり凝ってそうだよな」

 アレクとゴートンが興味を持ってくれたようだ。

「SSS級パーティーの君たちにも楽しんでもらえるようなダンジョンを頑張って作るよ」
「いやいや、これまでプレイヤーが作ったダンジョンにもいくつか行ってみたけど、ダンジョンを作るのってかなり大変だろう?」
「コインもだし、素材も、魔物の捕獲も大変よね?」

 ゴートンとミコトの言葉に、ミルルが「あれ?」と首を傾げた。

「え? ちょっと待って……ナオキってギルドの受付の他にも仕事してたし、冒険者登録もして時々高額依頼を受けてたし、さらには大規模戦では二十位以内には入らないものの、五十位以内には入っていたわよね? しかも、そのときの賞金とか素材を使った形跡はなく、慎ましやかにギルドの寮にいたけど……」
「まさか、それを全て、ダンジョンに注ぎ込んだのか?」

 ミルルとアレクが震え出し、さらには少し考えてからゴートンとミコトもプルプルしている。

「そのダンジョンのボスって……」
「まだボス部屋まで作れてないよ」

 俺はプルプルミルルに笑顔で報告した。

「でも、最終的には火竜と水竜と風竜を配置する予定」
「「「「そんなん勝てるかーーー!!」」」」

 レッドバードの全員に怒られた。
 なぜだろう?

「竜なんて一体でも、SSS級パーティーと他の複合パーティーで挑むものなのに!」
「それが三体!? しかも、得意な魔法がそれぞれ違うとか地獄か!!!」
「魔法使い泣かせすぎます!!」

 竜は得意な魔法によって名前が違うわけだが、魔法使いの張る結界はそれぞれ属性によって耐性が異なるのだ。つまり、三つの属性の魔法を防ぐためには、少なくとも三つの属性の結界を張る必要があるので、三人の魔法使い……それも、かなり高レベルな魔法使いが必要になる。

「あ! 貴重な竜たちは幻影が戦うから、思いっきり戦っても大丈夫だから!」
「何も大丈夫じゃない!! 幻影でもこちらへのダメージはほぼ同等なんだよ!!」
「バカなの!? あんたバカなの!?」
「そんなダンジョン、誰が攻略できるんだよ!?」
「でも、俺の住まいにもなるから、攻略されると困るし」

 俺の言葉に、彼らはぴたりとその動きを止めた。
 それから、ふーーーっと息を吐いた。

「そうか。確かに、攻略する必要はないんだ」
「個人のダンジョンだからな。ゲームのシナリオ進行には全く関係ないんだった」
「でも、確実に言えるわ……そのダンジョン、ラスダンって呼ばれるわよ?」

 ミルルの言葉に俺は笑った。

「いやいや、公式よりすごいダンジョンは流石に作れないって」
「公式がSSS級パーティーが攻略できないダンジョンとか作るわけないだろ!!!」

 そんな感じで騒ぎながら依頼を達成し、もちろん、欲しかった素材も色々と手に入れて、ダンジョンの出入り口の扉まで戻ってきたわけだが、外に出て俺たちは驚いた。
 ダンジョンの中に入る時に出会った青年……タクトがまだそこにいたのだった。



「あの! 俺を始まりの街まで連れて行ってください!」
「……え?」

 始まりの街へは誰でも行ける。
 だって、始まりの街だからな?
 それなのにそこへ連れて行ってくださいとはどういうことなのだろうか?

タクト:すみません。俺、ゲームやるの初めてで、どうしたらいいのか全然わからなくて……

 タクトからチャットが入った。
 まじか? 絶対、うちの……元会社の社員なのに、ゲーム経験なしとか……いや、あの人も忙しすぎて、自社のゲームをまともにプレイなんてしたことないだろうな。メディア向けにプレイする時にも操作は俺が全て教えていたし……

タクト:あの? ナオキさん?
ナオキ:わかった。一緒に行こう

「ごめん。ミコトさん、彼も一緒にいいかな?」

 俺の転移スキルは一人用だ。
 複数人で転移するためには高レベルの魔法使いの手を借りる必要がある。

「全く、ナオキは面倒見がいいんだから」

 そうミコトに苦笑された。

 ミコトの魔法によって俺たちは始まりの街へと戻り、冒険者ギルドへと依頼が完了した報告と納品を行なった。

「相変わらずナオキは仕事が早いな」

 そう顔馴染みの職員は満足そうだ。
 俺はタクトを傍に呼ぶ。

「冒険者ギルドへの登録は?」
「してないです」
「それなら今しよう」
「はい!」

 俺はタクトを受付の椅子に座らせる。

「ナオキが新人を連れてくるなんて珍しいな。パーティーを組むのか?」
「いや、そうじゃないんだけどな……」

 虚空のダンジョン前で出会ったことは言わない方がいいだろう。
 NPCのギルド職員にとってはそれはひどく違和感のある話だ。

「ナオキさんとパーティーを組むためにはどうしたらいいですか?」

 タクトがそう聞いてきた。

「いや、俺は誰かとパーティーを組む気はないんだ」

 今までは仕事との折り合いがついた時じゃないとログインできなくて迷惑をかけるし、そもそもこのゲームを作っている会社の社員だから、ここのギルド職員という役割以上に人とは関わらないようにしてきた。

ミルル:いいんじゃないかしら? 新人教育とか

 ミルルがチャットでそんなことを言ってきた。

ナオキ:いや、これまでずっと一人だったし……
ミルル:でも、もう会社とは関係ないし、しばらくは無職で時間もあるんでしょ?

 リアルで会った時に、仕事を辞めたらしばらくは引きこもってこの世界を目一杯遊ぶつもりだと話していたことを覚えていたのだろう。

ミルル:この子、ゲームに全然慣れてなさそうだし、手がかかる子がいれば、余計なことは考えなくてもいいんじゃない?

 確かに、一人だと、ふとした時にあの人のことを思い出してしまいそうだ。
 今会議だろうかとか、誰かと会食だろうかとか……

「……それじゃ、しばらく、一緒にやってみる?」

 パーティーを組むとは言えないけど、ゲームに慣れるくらいまでは面倒を見てもいいかもしれない。

「はい!」とタクトは嬉しそうにそう返事をした。
 その素直な様子がどうにも、後輩を彷彿とさせる。
 退職した時のことを想定して、彼には色々と教えておいたけど、それでもやはり迷惑はかけてしまっているだろうから、しばらくしたらお詫びのメールくらいはしておこうかな……

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