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それから、向井くんは週末になるたびにごはんを作りに来てくれた。
大体、土曜日の夕方に来て、その日の夕飯と作り置きをいくつか作って、一緒に食事をしてから割と早めに帰っていく。
なんか、家政婦さんみたいになっていて申し訳なかったから、「もうちょっとゆっくりしていく?」と聞いてみたこともあったけれど、「先輩、ゲームしますよね?」と言って、早々に帰ってしまうのだ。
向井くんの料理の腕に感心している間、ゲーム内ではタクトが相変わらず順調に戦闘レベルもその他のスキルレベルも上げていた。
彼自身と俺のHP回復のためにお菓子や料理を出してくれるのだが、レパートリーも増え、味もどんどん良くなっている。
「最後に三体の竜を配置して……」
俺は自作のダンジョンの最下層に作ったラスボスの部屋に竜を三体放った。
「ダンジョン完成だ!」
「ナオキさん、おめでとうございます!」
タクトが拍手で労ってくれる。
しかし、巨大なダンジョンがこんなに早くできたのはタクトのサポートのおかげだ。
「タクトの協力のおかげだよ。本当にありがとう。何かお礼をしないとな」
「本当ですか?」
「ああ。何でも言ってくれ」
俺はこのゲームの中ではソロのAランクだから、割と何でもできるだろう。
プレイヤー、NPC含めて、知り合いも多いし、魔物や素材の知識も豊富だ。
ゲーム内のことなら、大抵の希望は叶えてあげられると思う。
そういえば、竜の捕獲とかに協力してくれたNPCの騎士団とか最高位魔法使いのみんなにも挨拶に行かないと……
そこで、はたと気づいて俺は慌てて言った。
「ごめん。コインはダンジョン制作で使い切っちゃったから、報酬にコインが欲しいとかだったら、時間をくれ!」
慌てて言う俺にタクトは笑った。
「そんなお願いじゃないですから大丈夫ですよ」
「それじゃ、何がいい?」
「そうですね。今日はまだ話せないので、今度、話しますね」
まだ話せないというのは気になったけど、俺は「わかった」と頷いた。
その後、ミルルに連絡してレッドバードにダンジョンをお披露目した。
さすがSSS級パーティーの実力はすごいもので、あっという間にダンジョンを半分攻略されてしまったが、そこからは徐々に苦戦するようになった。
そして、レッドバードの面々に助言をもらった。
「初心者は立ち入り禁止にした方がいいな」
「即死しますね」
「せいぜいCランクからじゃないか?」
「そうだな。あと、中層からは複数パーティー推奨だな」
「それから、下層は蘇生薬を人数分持つこと」
俺は彼らの助言のような冗談に笑った。
「それじゃ、誰も来てくれないよ」
蘇生薬はめちゃくちゃ高いのだ。
「ナオキはこのダンジョンに冒険者の墓場って別名がついてもいいの?」
ミルルの視線が冷たい。
他のメンバーの視線も厳しいものだ。
「……冒険者ギルドにはそのように伝えます」
「よろしい!」
俺は深く深くため息をついた。
まさか、初心者では入れない……それどころか、Cランクパーティーからだなんて……ラスボスが強すぎる問題は自分でも認識できていたものの、他の層までレベルが高いとはあまり認識していなかった。
……いや、タクトが自分のレベル上げのために、強めの魔物狙いだったからか?
「そうだ。みんなに相談があるんだけど、ダンジョンの名前は何がいいと思う?」
「「「「三体の竜が守りしダンジョン」」」」
「それじゃ、本当に誰も来てくれないよ!」
俺の住まいでもあるから攻略されると困るけど、それでもみんなに楽しんでもらえるダンジョンにしたかったのに!
「他の冒険者の安全を考えるのも、俺たちSSS級パーティーの役目だろ?」
「危険なダンジョンだってすぐにわかることは大切です!」
アレクに続いてミコトが言った。
「いっそのこと、危険! 立ち入り禁止!! の看板を立てたいくらいだ」
ゴートンは先ほどの俺以上に深いため息をついた。
「俺は、ナオキとタクトの愛の巣ダンジョンでもいいと思いますけどね」
タクトはこの冗談を、ダンジョンが出来上がる前からずっと言っている。
ミルル:ナオキ、大丈夫?
突然のミルルからのチャットに俺は首を傾げた。
ナオキ:何が?
ミルル:タクトに襲われてない?
ナオキ:!!? ないよ!!
ミルル:それじゃ、襲われる前にタクトから離れた方がいいわね
ナオキ:タクトは暗殺者スキルは持ってないし、まだ俺の方がレベル高いから大丈夫だよ
ミルル:……襲われるって、戦闘の意味じゃないわよ?
ナオキ:……それじゃ、どんな意味?
ミルル:性的な意味
ナオキ:!!? なおのことないよ!!
ミルル:相変わらず鈍いわね
「ナオキさんとミルルさん、またチャットで話してます?」
タクトが鋭い。そして、なぜか不機嫌そうだ。
タクトは感情がダダ漏れなところが子供みたいで少しかわい……
いや! わんこみたいで可愛い! むしろ、わんこだから可愛い!!
「ごめんなさいね。タクトからナオキを守らないとと思って」
ミルルが冗談っぽくそう言うと、アレクが笑って言った。
「むしろ逆じゃないか? ナオキの人たらし力からタクトを守らないと、他のプレイヤーやNPCみたいに沼るんじゃないか?」
「もはや沼ってますが?」
「沼るってなに?」
何なんだろう? この会話?
アレクとタクトに「沼る」について説明を求めたが、微笑まれただけだった。
「ミルルとナオキはすごく仲がいいわよね」
「私とナオキはリアルでも友人だから、かなり仲良いわよ?」
「え? ナオキとミルルってリア友だったのか!?」
ミコトの言葉にミルルが答え、アレクがそう反応を示す。
そして、そんなアレクにミルルが首を傾げた。
「何言ってるの? アレクもナオキと顔見知りでしょ?」
「「え?」」
俺とアレクの声が重なる。
アレクは俺がリアルで知っている人なのか?
「え? 二人とも知らなかったの? それなら今度、三人でごはん……ん~いえ、今は微妙かしらね」
ミルルの言葉が途中で慎重なものになる。
それは、きっと、俺の今の状態を配慮してのものだろう。
「なんで!? 俺、ナオキと会ってみたい!」
「それなら、私も!」
「俺も!」
レッドバードのメンバーがそれぞれにそう言ってくれる。
ゲームだけでなく、リアルでも会ってみたいと言ってくれるのは光栄なことだ。
しかし、ニートの今、がっかりされそうで怖くはある。
ミルルが「余計なことを言ってごめん」ってチャットをくれたから、俺は「大丈夫」だと返信した。
きっと、ミルルが会っても大丈夫だと判断したら、また改めて連絡があるだろう。
レッドバードのメンバーが帰った後、なぜかタクトが不機嫌そうだった。
もしかすると、彼らとリアルで会うなら、自分も会いたいってことなのかもしれないけれど……
まだリアルで会うにはタクトのことを知らなさすぎると思う。
……すごく懐いてくれているから、俺も興味はあるけれど。
そう思っていたら、この後、状況は急展開する。
「俺、ナオキさんの胃袋、掴めましたか?」
その日の夕食の席でそう微笑んだのは、向井くんだった。
大体、土曜日の夕方に来て、その日の夕飯と作り置きをいくつか作って、一緒に食事をしてから割と早めに帰っていく。
なんか、家政婦さんみたいになっていて申し訳なかったから、「もうちょっとゆっくりしていく?」と聞いてみたこともあったけれど、「先輩、ゲームしますよね?」と言って、早々に帰ってしまうのだ。
向井くんの料理の腕に感心している間、ゲーム内ではタクトが相変わらず順調に戦闘レベルもその他のスキルレベルも上げていた。
彼自身と俺のHP回復のためにお菓子や料理を出してくれるのだが、レパートリーも増え、味もどんどん良くなっている。
「最後に三体の竜を配置して……」
俺は自作のダンジョンの最下層に作ったラスボスの部屋に竜を三体放った。
「ダンジョン完成だ!」
「ナオキさん、おめでとうございます!」
タクトが拍手で労ってくれる。
しかし、巨大なダンジョンがこんなに早くできたのはタクトのサポートのおかげだ。
「タクトの協力のおかげだよ。本当にありがとう。何かお礼をしないとな」
「本当ですか?」
「ああ。何でも言ってくれ」
俺はこのゲームの中ではソロのAランクだから、割と何でもできるだろう。
プレイヤー、NPC含めて、知り合いも多いし、魔物や素材の知識も豊富だ。
ゲーム内のことなら、大抵の希望は叶えてあげられると思う。
そういえば、竜の捕獲とかに協力してくれたNPCの騎士団とか最高位魔法使いのみんなにも挨拶に行かないと……
そこで、はたと気づいて俺は慌てて言った。
「ごめん。コインはダンジョン制作で使い切っちゃったから、報酬にコインが欲しいとかだったら、時間をくれ!」
慌てて言う俺にタクトは笑った。
「そんなお願いじゃないですから大丈夫ですよ」
「それじゃ、何がいい?」
「そうですね。今日はまだ話せないので、今度、話しますね」
まだ話せないというのは気になったけど、俺は「わかった」と頷いた。
その後、ミルルに連絡してレッドバードにダンジョンをお披露目した。
さすがSSS級パーティーの実力はすごいもので、あっという間にダンジョンを半分攻略されてしまったが、そこからは徐々に苦戦するようになった。
そして、レッドバードの面々に助言をもらった。
「初心者は立ち入り禁止にした方がいいな」
「即死しますね」
「せいぜいCランクからじゃないか?」
「そうだな。あと、中層からは複数パーティー推奨だな」
「それから、下層は蘇生薬を人数分持つこと」
俺は彼らの助言のような冗談に笑った。
「それじゃ、誰も来てくれないよ」
蘇生薬はめちゃくちゃ高いのだ。
「ナオキはこのダンジョンに冒険者の墓場って別名がついてもいいの?」
ミルルの視線が冷たい。
他のメンバーの視線も厳しいものだ。
「……冒険者ギルドにはそのように伝えます」
「よろしい!」
俺は深く深くため息をついた。
まさか、初心者では入れない……それどころか、Cランクパーティーからだなんて……ラスボスが強すぎる問題は自分でも認識できていたものの、他の層までレベルが高いとはあまり認識していなかった。
……いや、タクトが自分のレベル上げのために、強めの魔物狙いだったからか?
「そうだ。みんなに相談があるんだけど、ダンジョンの名前は何がいいと思う?」
「「「「三体の竜が守りしダンジョン」」」」
「それじゃ、本当に誰も来てくれないよ!」
俺の住まいでもあるから攻略されると困るけど、それでもみんなに楽しんでもらえるダンジョンにしたかったのに!
「他の冒険者の安全を考えるのも、俺たちSSS級パーティーの役目だろ?」
「危険なダンジョンだってすぐにわかることは大切です!」
アレクに続いてミコトが言った。
「いっそのこと、危険! 立ち入り禁止!! の看板を立てたいくらいだ」
ゴートンは先ほどの俺以上に深いため息をついた。
「俺は、ナオキとタクトの愛の巣ダンジョンでもいいと思いますけどね」
タクトはこの冗談を、ダンジョンが出来上がる前からずっと言っている。
ミルル:ナオキ、大丈夫?
突然のミルルからのチャットに俺は首を傾げた。
ナオキ:何が?
ミルル:タクトに襲われてない?
ナオキ:!!? ないよ!!
ミルル:それじゃ、襲われる前にタクトから離れた方がいいわね
ナオキ:タクトは暗殺者スキルは持ってないし、まだ俺の方がレベル高いから大丈夫だよ
ミルル:……襲われるって、戦闘の意味じゃないわよ?
ナオキ:……それじゃ、どんな意味?
ミルル:性的な意味
ナオキ:!!? なおのことないよ!!
ミルル:相変わらず鈍いわね
「ナオキさんとミルルさん、またチャットで話してます?」
タクトが鋭い。そして、なぜか不機嫌そうだ。
タクトは感情がダダ漏れなところが子供みたいで少しかわい……
いや! わんこみたいで可愛い! むしろ、わんこだから可愛い!!
「ごめんなさいね。タクトからナオキを守らないとと思って」
ミルルが冗談っぽくそう言うと、アレクが笑って言った。
「むしろ逆じゃないか? ナオキの人たらし力からタクトを守らないと、他のプレイヤーやNPCみたいに沼るんじゃないか?」
「もはや沼ってますが?」
「沼るってなに?」
何なんだろう? この会話?
アレクとタクトに「沼る」について説明を求めたが、微笑まれただけだった。
「ミルルとナオキはすごく仲がいいわよね」
「私とナオキはリアルでも友人だから、かなり仲良いわよ?」
「え? ナオキとミルルってリア友だったのか!?」
ミコトの言葉にミルルが答え、アレクがそう反応を示す。
そして、そんなアレクにミルルが首を傾げた。
「何言ってるの? アレクもナオキと顔見知りでしょ?」
「「え?」」
俺とアレクの声が重なる。
アレクは俺がリアルで知っている人なのか?
「え? 二人とも知らなかったの? それなら今度、三人でごはん……ん~いえ、今は微妙かしらね」
ミルルの言葉が途中で慎重なものになる。
それは、きっと、俺の今の状態を配慮してのものだろう。
「なんで!? 俺、ナオキと会ってみたい!」
「それなら、私も!」
「俺も!」
レッドバードのメンバーがそれぞれにそう言ってくれる。
ゲームだけでなく、リアルでも会ってみたいと言ってくれるのは光栄なことだ。
しかし、ニートの今、がっかりされそうで怖くはある。
ミルルが「余計なことを言ってごめん」ってチャットをくれたから、俺は「大丈夫」だと返信した。
きっと、ミルルが会っても大丈夫だと判断したら、また改めて連絡があるだろう。
レッドバードのメンバーが帰った後、なぜかタクトが不機嫌そうだった。
もしかすると、彼らとリアルで会うなら、自分も会いたいってことなのかもしれないけれど……
まだリアルで会うにはタクトのことを知らなさすぎると思う。
……すごく懐いてくれているから、俺も興味はあるけれど。
そう思っていたら、この後、状況は急展開する。
「俺、ナオキさんの胃袋、掴めましたか?」
その日の夕食の席でそう微笑んだのは、向井くんだった。
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