【完結・続編別立】片想いの相手が「そろそろ恋愛したい」と言ったので、用済みの俺はニートになることにしました。

はぴねこ

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「はじめまして、柴犬です」

 幻影ではない、柴犬獣人来たーーー!
 ものすごく不機嫌そうな柴犬来たーーー!

 かつて、これほどまで不機嫌そうな柴犬を見たことがあっただろうか?
 柴犬といえば、真っ黒なおめめをキラッキラッにさせて、口角あげて、「さぁ! 僕をお撫でよ!」という顔をしているものだと思ったけれど……

 ちなみに、この獣人さんは、耳と尻尾がついた人型ではなく、まさに柴犬仕様だ。
『異世界 アルカディア』の獣人は、人ベース、動物ベース、お好きなタイプをお選びいただけます。

「この人、俺の仕事関係の人で、ゲーム初心者なんだ」

 そう柴犬獣人を紹介しながら、アレクは少年くらいの背丈の柴犬獣人の頭を撫でる……というか、ペシペシと軽く叩いている。

 冒険者ギルドでちょっと話したいとアレクから連絡をもらって、俺とタクト、レッドバードのメンバーは情報ギルドの片隅のテーブルに集まっていた。

「ちょっと、アレク? その人の扱い、本当にそれで大丈夫なの? 仕事関係の人なんでしょ?」

 俺と同じ心配を抱いたらしいミルルがそう聞いた。

「大丈夫! 大丈夫!」とアレクが軽く笑う。

「この扱いでいいから、どうしてもゲームを教えてほしいって言ってきたのこの人だから!」

 アレクとしては、自分の趣味の場所に仕事関係の人を関わらせるのは嫌だったけれど、どうしてもと頼まれて、自分の言うことを全て従順に聞くという条件で手を打ったそうだ。
 実際、初心者が人の話を聞かずに魔物に突っ込んで行ったら即死だから、アレクの言うことを聞くのは生存方法として必要なのだが……

 プレイヤーキャラクターの造形が犬ベースの柴犬獣人なのも、柴犬というプレイヤーネームも全て、アレクの指示だそうだ。
 少年サイズの身長なのは、身長の設定画面で変更せずに初期値のままにしたためだそうだ。初期値は150センチだ。

 ゲームが初めてだからと言って、全て言うことを聞くなんて条件を呑んでしまったり、身長や体重の設定を変更していなかったり……なんか、ちょっと抜けている人なのかもしれない。

 そして、柴犬少年はずっと頭をペシペシされている。
 とてもいい関係には見えないが、どうして、この人はアレクに頼むことにしたのか……周りにゲームをやっている人が誰もいなかったのだろうか?

「それで」と、アレクは俺を見た。
 ここからが本題だろう。

「SSS級パーティーの俺たちが行く場所なんて絶対に連れていけないから、俺はしばらくはこの人につきっきりになる。もしも急な依頼とかあったら、ナオキには俺の代わりにレッドバードのメンバーとして動いてほしくて」
「どうして、俺たちが?」

 不満そうなタクトに、アレクは爽やかな笑顔で言った。

「『ナオキには』って言っただろ? まだランクBのタクトには期待してないから大丈夫だ!」

 タクトは短期間でソロBランク相当になっていた。それはすごいことなのだが、SSS級のレッドバードの依頼に連れて行くのは危険だろう。
 ちなみに、俺のランクは、SSS級パーティーでさえも難攻不落と評したダンジョンを作ってしまったがために、ソロランクSに昇格している。
 俺とタクトのパーティーランクは間を取ったAランクだ。

「ナオキさんがやるなら俺もやります!」
「いや、タクトにはまだ危険な依頼になると思うから、その時は別行動で」
「ソロでAランクになったら連れて行ってもらえますか?」
「まぁ、Aランクなら」
「それなら、これからレベル上げに行きましょう!」

 タクトは俺の手を取って立ち上がった。
 これから魔物を倒して、倒して、倒しまくる予定なのだろう。

 俺は慌ててレッドバードのみんなに「何かあったら連絡して!」と伝える。

 それから、冒険者ギルドを出る前に、俺は売店のウィンドウを表示させて治癒ポーションや回復ポーションを大量購入した。
 カップルパーティーなので、俺がタクトを回復した方が、効率よく回復できるのだ。

 ゲームならこうしてタクトにやってあげられることは多いけれど、リアルでは俺が拓人の世話になってばかりだ。
 リアルでも俺がしてあげられることがあればいいのだけれど……
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