魔法使いと皇の剣

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1章 出会い

海の魔物 ミエラ

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部屋を出たミエラは自室に戻ろうとしたが、突然の衝撃で壁に身体をぶつけた。

何が起こったのか分からない中、船員たちの慌てる声や船からでる大きな音と衝撃にミエラの鼓動は早くなった。
 
ミエラは何とか身体を起こすと自室の扉を開け窓をみた、先程まで明るかった空は暗く、雨が吹き荒れており嵐だった。
 
それにしても先程の衝突は何かに船がぶつかったようだったとミエラが考えてると、船内の廊下から誰かが叫んだ声で正体がわかった
 
「魔物だ!!」

ミエラは声の先に向かうよう部屋を出ると同じく、甲板に向かおうとしていたエイランと出くわした
 
「ミエラ嬢⋯⋯! どうやら不味い状況みたいのようだ、結界の前に死んだら元もない手を貸してもらうよ」

「勿論です。まずは何があったのか、危険ですが甲板に向かいましょう」
 
ミエラとエイランが急ぎ甲板に出ると、降りしきる雨がミエラ達に降り注いだ、しかし雨にしてはあまりにも重たく滝のような水しぶきに怯んでると、また衝撃が船におきた。

先程とは違い衝撃は船全体だったが、音はミエラ達の近くで起きていた、滝のような水しぶきから今まで経験した事のある久しぶりの雨粒に変わり目を開けたミエラは水しぶきと衝撃の正体を確認した。

巨大で長い触手。⋯腕が船に纏わりつき甲板のあちら此方を壊し悲鳴を上げさせていた
その腕をみたエイランは叫んだ。
 
「クラーケン!!」
 
ミエラも正体は知っていた、巨大な海の魔物、古くに神が生みだした生き物だ。
大陸の海を渡るもの阻むかのように現れたその生き物は、グランタリスの海にだけいるのか、それとも大陸の各地にいるのか分からなかったが、海に出るものなら知る畏怖であった。

クラーケンの足を何とかしようと船員たちは、剣やモリ、槍等様々武器を持ちクラーケンの足を刺したり斬ったりしていたが、クラーケンの巨大な足からしたら、かすり傷程度しか負わせることができず、船から次々と起きる衝撃にバランスを崩し転げ回っていた。

クラーケンが巻き付くよう足を船に絡めてるお陰で運良く船は真っ直ぐバランスは保てているが時間の問題だった。

いずれクラーケンの力で押し潰されるか、他の足で船に穴を開けられ沈むかだった。

エイランも武器を持ち、クラーケンに飛びかかろうとしていたが、ミエラがそれを止めた。

「足の近くにいる船員たちに下がるよう伝えてください!「」

「な、なにぃ? それなら大丈夫だ! 皆既に衝撃で転び回ってる!」

ミエラがみてみると確かに何人かは頑張っているが、船員たちはバランスが保てず足から離れていた。

まだ足に張り付く船員たちはいるが猶予はない
何とか被害を与えないよう、ミエラは狙いを定めて魔法を放った。
 
ミエラが放った魔法は、周囲の雨水や飛び跳ねる水滴から巨大な水の刃となりクラーケンの足を切断した。

切断された足から身体に繋がる部分のみ海に引っ込めたクラーケンは新たな足を4本目海から覗かせていた。

ミエラは直ぐ様、次なる魔法を放とうと身体を動かしたが、嵐による荒波の衝撃でバランスを崩した、その間を見逃さないかのようにクラーケンは足の一本を振り下ろそうとしたが、その足は巨大な飛翔物によって抉りとられていた。

ミエラがみるとさっきまでミエラ達がいた船内への入り口にはアイリーンがおり、巨大な弓を構えていた。

この衝撃の中、アイリーンはバランス崩す事なくすかさず矢を放ち、半分以上を抉り取られた足の一本を矢で抉り落とした、ミエラはその凄まじい威力に感心をしたが、自身は次なる魔法を放っていた。

ミエラが上空に手を掲げると、嵐として引き起こされていた雷がまるで意思を持ったかのように、足の一本に落ちた、凄まじい音と共に落ちた雷によりクラーケンの足はたちまち黒焦げになると、雷の余波によるものか、苦しみだした。

しかしその苦しみはミエラ達に取って最悪なものだった、理性なく暴れる足に船の甲板は叩かれ、波は荒立っていた、さっきまでクラーケンの足が絡みついておりバランスを保ていた船は大きく揺れ、ミエラは投げ出されそうになっていた。

何とかエイランがミエラの手を掴んでくれたおかげで落ちずにすんでいたが。
魔法を唱える余裕が無くなってしまった。

「ちょっ、ちょっと不味いわよ、このままじゃクラーケンに壊される前に転覆するわよ!」
 
アイリーンは足の長い爪を船に突き刺していた為、先程までは狙いを保てていたようだが流石の揺れに落ちないようにするのが精一杯のようだった
 
「そうは言っても、この揺れだと⋯! クソ! イカ如きに…!」 

「エイランさん⋯! 私をアイリーンに放り投げられますか…?」
 
ミエラはアイリーンの状態をみてエイランに頼んだ。アイリーンは弓も構える事は出来なくても、爪によりこの船で誰よりも安定していた、アイリーンに抱えてもらえばミエラは魔法を放てると
 
エイランは直ぐに状況を理解してミエラを抱えると 

「アイリーン!!」

と叫びミエラを放り投げた
 
やり取りを知らないアイリーンは驚いた顔でミエラを何とかキャッチするとエイランに向かって吠えた
 
「あんた正気!? 乱暴にミエラちゃんをなげるんじゃないわよ!」

「ミエラ嬢の提案だ!! 安定した場所なら魔法が使えるからだろう!」

そう怒鳴りあってる二人を尻目にミエラは魔法を唱えていた。

魔法は強力なものが多い、その分強い精神力が必要となる。何もない所で火を起こすのと、火があるとこで火を操るのではまるで違っていた。

ミエラが使う魔法には特別な発声や呪文は必要としなかった。しかし本来魔法は世界への信仰であった。

古代語で火の神に祈りの言葉を使い巨大な火の力を使うように⋯

ミエラには信仰なんてものは既になかった自身の父が神によって変えられた時に、母が神になっていた時に既に。それでもミエラが魔法を使えるのはミエラ自身分からなかった。

ミエラはアイリーンに抱きかかえられ、荒れた海で今にも足を叩きつけようとしているクラーケンに魔法を放った

神への信仰ではなく、人自身の為に。

ミエラが一体何の魔法を放ったのか、エイランやアイリーンには最初分からなかった、水の刃や雷とは違い直ぐに目視出来るものではなかったからだ。しかしその魔法は確実にクラーケンの動きをとめていた。
 
海から伸ばした足を何とか船に叩きつけようとしていたその腕は海に作られた、渦から逃げる為に必死にもがいていた、驚くべき事に船の近くに巨大な渦がつくられていた、渦は巨大な螺旋状の穴となり、海を巻き込み回転していた、クラーケンはその穴に巻き込まれ身動き出来なくなっていた。

そんなクラーケンを巻き込む程の、渦はまるで船だけは避けるよう回転しており、先程まで船を打ち付けていた荒波も船の周りだけ止まっていた。

その光景に船員たちも呆然と立ちつくしていた。

「ミエラちゃん…あんたは…」

アイリーンの呟きに答えたくても、ミエラは今や疲労し、意識を保つので精一杯だった。
 
アイリーンに抱かれた腕の中、ミエラは無くなりつつある意識を絞り、両手を渦潮の中にいるクラーケンに向けた

海に作られた渦潮はたちまち天高く舞い上がり、海の穴は今度は逆に空へと舞い上がり、水の竜巻となった。

水の竜巻はクラーケンを空へと打ち上げると役目を終えたと言わんばかりに消え、上空からはバラバラになったクラーケンの亡骸が静かに水へと落ち、水しぶきを上げた。

水しぶきが合図と言わんばかりに、まだ降りしきる雨の中、船員たちは歓喜の雄叫びを上げたが気を失ったミエラには届かなかった。

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