血みどろエレジィ

kijima13

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1 生誕

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僕が、この世に生を受けたのは、1982年の春で、今からちょうど33年前のことである。気温は二十度を少し切ったくらいで、湿度は高く、細かい雨の降るあまりぱっとしない一日だった。母親は有名な産婦人科のいる大きな病院に入院しており、父親は仕事を休んで連れそっていた。長男の隆は親戚の家に預けられており、従兄弟の浪人生とつまらい動物アニメをみていたらしい。


母親は長男の妊娠の時は禁煙していたらしいが、僕の時は気にせずプカプカふかしていた。お気に入りの銘柄はキャスター・マイルドで後にそれの名称が変更するまで吸い続けた。タバコに関しては執着が強く、数回禁煙に挑んだものの一ヶ月持ったことはなかった。妊娠中は病院が禁煙だったのでそれが一番辛かったと語っている。一方父親はあまり子供たちに対して興味は薄く、それよりも自分が抱えてる問題の方が深刻だった。その問題は後年僕の人生に大きくかげを落とすことになるが、それはまだ先の話だ。


その日は朝からどんよりとした雨雲に空は覆われていて、おまけに桜島が噴火していた。雨が振りだすと、火山灰がどろどろと道路を汚していった。父親は運転が億劫だと、タクシーにのって病院へ向かっていた。タクシーの車窓には泥の雨が打ち付けていて視界は薄暗く、運転手は運転しづらそうにして、朝だというのにヘッドライトをつけていた。夜のような朝だったわけだ。因みに降り積もった灰はそのあと黄色い降灰袋に集められ、路肩に積み上げられる。この街ではいつもの光景だ。その頃、地球の反対側では、紛争が起きていた。アルゼンチンとイギリスの揉め事に、アメリカやらNATOやらが絡んでいって、アルゼンチン側の戦況は大分不利だった。その後、アルゼンチンはイギリスに降伏する訳だが、4年後にはワールドカップでアルゼンチンがイギリスを劇的にくだすことになる。それが僕の生誕になんの関係があるかと言われると、なにもないとしか言えない。生誕にも人生にも無関係だ。アルゼンチンにもイギリスには一度も行くことはなかった。ただ、僕が生まれた時期に起こってたことを意味もなく書いてみただけだ。

父親が、赤いタクシーで病院にたどりつくと、すでに僕は生まれていた。兄貴の時は難産だったが、僕の時はすんなりと生まれたらしい。あまり泣かないタイプだったらしく、手がかからなかったとはよく言われた。生まれたときから他人の顔色をうかがうタイプだったのだろう。三つ子の魂百まで。



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