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中編2
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次の日の朝。聡はまた高麗先生の部屋の前に立っていた。
今回は事前に浣腸を購入して、自分で準備をしてきている。
(今日で終わらせるぞ……!!)
そう意気込み、勢いよくインターホンを押した。
前回よりスムーズに、事は進んだ。前の緊張が幾分かほぐれたのか、ローションでたっぷり濡らしたライの指がすんなりと聡の後ろに埋め込まれていく。
そして前回と同様、さわさわとしこりを撫でていった。
「…っ、んぅ…んっ……、あっ」
昨日と異なり、聡はその刺激を素直に受け入れていく。
まだ快感と呼べる強い感覚ではないが、むず痒さの中に確かな心地よさを感じていた。
「おっ、なんか気持ちいい感じする?」
ライの問いかけに、聡は思わず視線を泳がせながら答える。
「前のむず痒さが、大きくなったような……」
「具体的にどんな感じ?」
自身の感覚を言葉にするのを戸惑いながらも、聡はたどたどしく説明する。
「えっと…腹の奥になにか、あるような感覚です……でも、まだその……感じるまでは……」
「じゃあ、どれが一番キモチイイ?」
レイはわざと「キモチイイ」と強調するように言葉にして尋ねながら、トントンとノックしたり
指を折り曲げコリコリと前立腺を刺激する。
そしてギュッと二本指で挟みこむと、ズンと重く熱が伸し掛かる、聡はおもわず息を止めた。
――ッッッツ!、これ、おもッ……い、…!
ふふっと聡の頭上で微かにライが笑う。
「力入れて挟み込むと、中が少し締め付ける感じがするね」
さらにライはさらに指先に力を入れて、今度は挟み込みながらわざとブルブルと揺らしていく。
んぅん、は、ぁ……
確かに前まではほとんど痛みや違和感しかなかったそれが、快感に変わりつつある。
「足にも力が入って、ピンと伸びている。おそらく小林君は少し強めの刺激が好きなんだろう」
目を瞑りながら耐える聡の姿を見て、レイは真面目な表情で言う。
本人に悪気はないのだろうが、まるで自分が強い刺激を求める淫乱かのように言われたことに聡は赤面した。
「ハハッ、少し刺激を変えてみよっか」
ライはそう楽しげに言いながら、今度は焦らすように前立腺を避け、その周囲を指で円を描くように撫で始める。
はぁ…んぅんんっ……はん…あっ
そのじれったさが心地良く、聡の口から甘い吐息が漏れる。
「なるほど、前立腺の周囲だけでも感じるものなのだな」
レイは興味深そうにその様子を観察すると、淡々と、まるで実験体を見ているかのように述べる。
「こっちの奥を刺激すると一番収縮するよ」とライは前立腺の少し上側を指で押し込む。
っぁぁああっ…んんう゛う゛……あああ゛
今度はさっきのじれったさでなく、深い刺激が響いた。
「確かに。自分からライの指を締め付けてるみたいだな。……ああ、今、そこをグッと押し込まれると、気持いいんじゃないか?」
「っ……そんなこと言わないでください!」
(まるで辱めを受けているみたいじゃないか……)
聡はたまらず声を上げたが、ライは構わずに指を動かし続ける。
「そう? レイに言われると余計に感じているように思うけど。自分の身体がどうなってるか、よく分かるでしょ?」
その声に明らかに意地悪な響きが混じっていた。
はっんぅ…んあ……そこっ…きもちっ……
レイも手を動かし絵を描きながら、状況を無意識に実況し始める。
「ふくらはぎが軽く震えてる。たぶん今、かなり深く響いてるはずだ。ライ、もう少し下の角度を意識してみてはどうだろう?」
真面目に提案するその言葉が、さらに聡の羞恥心を煽る。
「あッ、あの、もうッ、本当に……!」
真っ赤になった聡は、必死にそう言ったが、ライは楽しそうに笑う。
くたりと横たわる聡を、苛めるように目を細めてみて言った。
「ほら、もう力抜けちゃってるよ『素材』くん。レイも見てみろよ。この反応、漫画にピッタリじゃない?」
「うん、確かにそうだな。とても生々しい。絶頂寸前の受けにはこういう描写が必要だな」
レイの言葉が聡の心に直撃する。その無自覚な一言が、まるで彼自身が「受け」として扱われているように感じさせた。
「絶頂を迎えるまで、頑張ってほしい。あと数日頼んだ」
レイは静かな声で追い打ちをかけていく。
いつになったら「素材」としての仕事から解放されるのか。どこまで開発されてしまうのか。その不安が聡の中で膨れ上がった。唇を噛みしめ、何とか自分を保とうと必死だった。
その日の仕事は終了となり、そのまま聡は帰路につく。自宅に着くと、聡はぐったりとソファに身を任せた。
「絶頂を迎えるまで」
レイの言葉が何度も反芻する。
本当に俺は、この仕事を、やりきれるんだろうか?
+++
昨日は夜もろくに眠れなかった。男の手で絶頂を迎える。それを仕事として向き合わなければならない。
深呼吸をして自分を落ち着かせようとするも、心臓が不安と焦りで高鳴り、気づいたら朝方だった。
次の「素材」としての時間に頭が一杯になる。
聡は自分の目を覚ますべく、両手で自身の顔をバチンと叩いた。
――――仕事だ、やりきれ。
そう決意を新たにしたつもりでも、なかなかどうしてマンションに向かう足取りは変わらない。
道中、ライの指先が肌に触れる感触や、レイのあの淡々と聡を辱めるような言葉が頭をよぎり、思わず軽く聡の頬が赤らむ。
さっきまで不安で夜も眠れなかったはずなのに、これじゃまるで……
マンションにたどり着き、部屋を前にする。
これから……俺は……
そう戸惑いながらも、震える指先でインターホンを押した。その高い音はまるで耳鳴りのように聡の耳に響いた。それが、さらに前日のことを想起させ、聡の胸が高鳴る。
それは、ドアの向こうで待っているものに対する、どうしようもない期待のようにも感じられた。
ガチャリと音を立てて扉が開く。
「おはよう、『素材』くん。今日もよろしくね」
「よろしくお願いします……」
聡は部屋へ足を踏み入れた。
いつも通りベッドの上で、聡は裸になって仰向けに横たわる。
無言でローションを指先に垂らすライと、聡を静かに見つめるレイの姿が、聡の胸に一層の重圧を与えた。
「それじゃ、今日も始めるね」
「今回もまた手で刺激していくよ。今日こそイける出来るように頑張ろうね」
そういって聡の後ろに挿入していく。
前と異なるのはその指に吸い付くように馴染む内壁と、初めからぷっくりと膨らみ主張する前立腺の存在だった。
「あれ? 膨らんでるね。昨日触りすぎて少し腫れちゃったかな」
そうは言いながらも、いつもは弱い刺激から始めていたソレを、強く、叩くように、責め立てる。
「んんぅっ、はん…あぁん…」
前よりも……さらに気持ちいい……
素直にその刺激に感じ入る聡を、ライは目を細めて眺めた。
「なんか、随分と反応が大きいね。……もしかして期待してた?」
「ちがっ、昨日の感覚が、まだッ、残ってるだけでっ、んっ」
喘ぎながらも反論する聡に対し、ライは嗜虐的な表情を浮かべて嬲るような指の動きへと変化させる。
「んふぅ、んぁ…あぁ、…あっ♡」
その指の動きに翻弄され、聡の喘ぎ声は色を増していく。
「確かに反応が前よりいいな。こんなにも早く前立腺で感じ始めるものなんだな」
昨日と同様、筆を走らせながらレイは真面目な表情で聡を見つめ、言葉で無意識に責め立てる。
けれど、その視線すら、その言葉すら、今の聡には快感となっていた。
……俺、男なのにッ♡、なんっ、こんなにッ♡、はぁ、っあ♡、ぅううう゛♡
前を触ってもいないのにすでに聡の陰茎は立ち上がり、たらたらと垂れる液体がベッドのシーツに染みを作っていく。
「勃起して先走りが多くなってきているな。もしかしたらもうイけるんじゃないか?」
レイはライに投げかける。
「そうだね、じゃ、『素材』君の大好きなアレやろっかな」
ニヤリと笑って、前立腺を指で軽く挟み込んだ。
その感覚に聡は昨日の、あの重い、腹の奥に波紋のように広がった刺激を思い出す。
まだ、そのライの指には力が入っていないはずなのに、聡の前立腺はピクッピクッと次の期待で小さく震え始める。
「準備はいい……?」
ライにひどく楽し気な笑みで声をかけられ、そしてレイにはじっと観察するようにその姿を見られる。
……俺、みられて、ほんとうに、
「やめっ!」
そう思わず躊躇して、ライの手を止めようとするも、
ギュ~~~~~♡♡♡
「ッ~~~~~んんんぁぁああぁぁあ゛あ゛あ゛♡♡」
プシャッと精液が噴き出した。
はぁ、はぁ、はぁ
俺、本当に前立腺でイったんだ――――
筆を走らせる音。絶頂した俺を、そしてその余韻で虚ろな目をした俺を、レイさんは真剣に見つめながら描いていた。
「ライ、いい表情の絵が描けたぞ。今度の受けのシーンこういう表情はどうだ?」
そういって、スケッチブックをこちらに向ける。
そこにはひどく扇情的で、卑猥な顔をした男の顔が描いてあった。
――こんな表情してるのか?俺は
そう唖然とする俺の横で、「いいね!」とライは返答する。
イッた衝撃と見せられた絵のせいで呆然としていると、二人がじっとこちらに視線を送っているのが分かった。
な、なんだ……? まだ何かあるのか?
「もっもういいのでは? もう、イけましたし、」
聡は起き上がりベッドを降りようとするが、ライはその手を掴み連れ戻す。
「いや、前立腺のためにまだやってないことがあるんだよねー」
そういって、聡の陰茎と肛門の間を指さす。
「蟻の門渡りとか言う名前の、まぁ所謂会陰部なんだけど。ここの反応も知りたいから、よろしくね!」
「ま、まだやるんですか……!!」
「あと少しだけだって」
そういって先のいった、会陰部に指を添わせる。
こんな何もないところで、本当に感じるのか……?
そう不思議に思っていると、
「んぁッ♡♡~~~~ぁあああ゛♡♡♡」
突然雷のような衝撃が聡に響いた。ライがいきなり指で会陰部をグイっと押したらしい。
「ここは人によっては奥の前立腺を刺激されたり、むしろ逆に射精が止まったりするんだけど……『素材』くんはちゃんとキモチイイみたいだね」
グリッグリリッ
そう押されるたびにその刺激が前立腺へと重く染み渡っていく。
「くッ♡…ふぅぅぅ……んんん♡」
「前立腺を挟み込むようにやってあげるね」
ライは二つの指を器用に使い、穴と会陰部の両方からギュムギュムと刺激させていった。
「っ、ぁぁ♡♡ んぅんん♡ あああ゛♡♡」
さっきの絶頂とは異なった感覚が、聡に襲い掛かる。
まるでムズムズと腹の奥底から込み上げてくるようななにかが。
その聡の様子に気付いたのか、ライはさらにリズミカルに速度を速める。
そして、
ギュム~~~~~♡♡
「ッぁぁぁぁ♡ぁぁああああ゛あ゛あ゛あ゛っ♡♡♡」
ふくらはぎが攣るほどピンっと足先を伸ばし、精液も出さずに絶頂を迎えた聡はふるふると震える。
これっ♡っイイのが止まらなッ♡♡
余韻に浸る聡を冷静に眺め、レイは観察するように筆を動かしながら告げる。
「精液は……でてないな。これがドライオーガズムか。どんな気分なんだ?」
はぁ♡…ふぅ♡どんなきぶん……ぅ♡
そんなこと言えるわけないと聡が口ごもっていると、
「ほら~、ちゃんと答えないと参考にならないでしょ?」
といってライは再び指を動かし始めた。
~~~~っ♡♡ まださっき感覚が残ってるのにッッ♡
早くその手を止めてもらおうと必死に、今の、自身の気持ちを聡は口に出す。
「っあああ゛♡♡、背中が、むず痒くなってっ♡、ずっとッッ、降りてこられない♡♡、感じですッはぁあ♡♡」
聡はさらに射精を伴わない絶頂を繰り返した。
絶頂の間にも刺激され続け、少し薄く白い液がこぽっと尿道から溢れ出る。
あっ……♡
そのこぼれ出た液を見て、レイはライに問いかける。
「何か液が薄いが、それは精液とは違うのか?」
「違うっぽいよ。前立腺液みたいな、精液になる前の液体みたいな感じかな。まぁいわゆる我慢汁に似たようなものだよ」
その説明に納得したのか頷いたレイはライにさらに質問する。
「ドライしている最中にもっと深く責めたらどうなるんだ?」
「試してみる?」
フフッと笑うとライは会陰部に沿わせていた指を後ろの指にそろえて挿入し、ゴリゴリと抉るような動きを始めた。
「やめっ♡んんぅああ゛♡♡ キツぃっ♡もうっ、やめてくださッ♡」
そうやってさらに深い快楽へと落とされる。
絶頂が止まらない。目の前に星が舞い、もう今どこで、自分は何をしているのかの感覚すら聡はあやふやになっていた。
「んー、ギューと締め付けてふるふると震えてるね。これチンコ入れてたら気持ちよさそうー」
「ん?乳首も刺激していないのにピンと主張しているな」
「あぁ、イった刺激が乳首にも伝わってんじゃない?ここも触る?」
見られている。指を離さまいと締め付ける後ろも、赤くふくらむ乳首も、火照った顔も、喘ぐ声も、全部。
まさか、前立腺だけでなく乳首も……もう、やめ、
「いや、今回の短編では使わないからいいだろう。これでもう大丈夫だ。終わろう」
レイが筆を止めていった冷静な声に、聡は思わず瞳を閉じた。
やっと、終わりだ――
全身がまだ余韻に包まれ、荒い呼吸を整えることすら出来ていない。
天井をじっと見つめ、ただ体を休める。
その後数分、いや10分ほど経っただろうか、ようやく呼吸が落ち着き始めた。
二人が不意に聡に声をかける。
「本当に助かった。次の短編の絵、うまく描けそうだ」
レイは冷静な顔そのものだが、その視線の奥になにか潜んでるようで、
「そうそう、助かったよ『素材』くん。おかげでレイもなんとかやれそうみたいだし」
ライもいつもと変わらない笑顔でいうが、どこか獲物を狙う捕食者のような底の見えない光を瞳に宿しながら聡を見つめていた。
なんだ……この感じ……?
「い、いえ……先生の作品のためになったなら良かったです」
聡は違和感を隠すようになんとか笑みを浮かべ、短く頷いた。
服を整えた聡は、玄関へと向かう。
「助かった。今後もよろしくな」
「じゃ、また今度ね」
レイの低い声とライの明るい声が背後から響く。
だがその言葉が妙に耳に残り、聡は返事もできずマンションを後にした。
外に出ると、夜風が頬を撫でる。
思わず空を見上げるが、星はどこかぼんやりとしている。
(なんだったんだ……あの視線……)
胸に小さな不安を抱えながらも、聡は自分に言い聞かせる。
(いや、ライさんもレイさんも疲れてただけだ……きっと、そうだ)
少し速足で通りを歩きながら、帰路についた。
+++
その後、特に問題もなく、高麗先生からネームが送られてきた。
FAXで来たネームは、見事なまでに構成が練られ、キャラクターの感情が細部までセリフで伝わってくる。
「さすが……大御所だな」
聡はそう呟きながらも、胸の中には、あの最後の視線の微かな違和感が残る。
納品されたネームを確認し、修正点を整理しながら聡はいつもの業務に集中していった。
カタカタと叩くキーボードの音、ネームなどを印刷する音。
周囲では他の編集者たちがそれぞれの担当作家の案件で忙しく動き回っている。
ふと隣を見ると、林さんの席は空になっていた。どうやらまた打ち合わせに出かけたらしい。
(林さんも相変わらず忙しいな……俺もああいう人みたいに)
そう思いながら手元の資料に目を戻す。
高麗先生のネームは今のままでも十分完成度が高いが、少しでもより良いものにできないかと聡は自分なりに細かい調整案を作成する。
(ここは会話の流れがスムーズだし、うーん、さすがにこれ以上手を加えるのは野暮かも……)
ひとつひとつのコマに目を通しながら、彼は無意識にため息を漏らした。
(……大丈夫だよな、きっと。俺だって、いい方向に進んでるはずだ)
そう自分に言い聞かせるようにして、他の雑用も処理していく。
「お疲れ、小林君」
「お疲れ様です」
林さんが打ち合わせから戻ったらしく、隣のデスクに座る。
「そういえば、高麗先生のアレ、どうだった?」
優しく微笑みながら林は、例の、『素材』の仕事を問う。
「えっ、あっもう大丈夫そうですよ。高麗先生のスランプも治ったみたいですし!!」
思わずあのことを思い出し、少し赤面しながら聡は答える。
「そっかそっか。良かった!」と林さんはPCに向き直り、仕事を再開した。
大丈夫のはず……だよな?
今回は事前に浣腸を購入して、自分で準備をしてきている。
(今日で終わらせるぞ……!!)
そう意気込み、勢いよくインターホンを押した。
前回よりスムーズに、事は進んだ。前の緊張が幾分かほぐれたのか、ローションでたっぷり濡らしたライの指がすんなりと聡の後ろに埋め込まれていく。
そして前回と同様、さわさわとしこりを撫でていった。
「…っ、んぅ…んっ……、あっ」
昨日と異なり、聡はその刺激を素直に受け入れていく。
まだ快感と呼べる強い感覚ではないが、むず痒さの中に確かな心地よさを感じていた。
「おっ、なんか気持ちいい感じする?」
ライの問いかけに、聡は思わず視線を泳がせながら答える。
「前のむず痒さが、大きくなったような……」
「具体的にどんな感じ?」
自身の感覚を言葉にするのを戸惑いながらも、聡はたどたどしく説明する。
「えっと…腹の奥になにか、あるような感覚です……でも、まだその……感じるまでは……」
「じゃあ、どれが一番キモチイイ?」
レイはわざと「キモチイイ」と強調するように言葉にして尋ねながら、トントンとノックしたり
指を折り曲げコリコリと前立腺を刺激する。
そしてギュッと二本指で挟みこむと、ズンと重く熱が伸し掛かる、聡はおもわず息を止めた。
――ッッッツ!、これ、おもッ……い、…!
ふふっと聡の頭上で微かにライが笑う。
「力入れて挟み込むと、中が少し締め付ける感じがするね」
さらにライはさらに指先に力を入れて、今度は挟み込みながらわざとブルブルと揺らしていく。
んぅん、は、ぁ……
確かに前まではほとんど痛みや違和感しかなかったそれが、快感に変わりつつある。
「足にも力が入って、ピンと伸びている。おそらく小林君は少し強めの刺激が好きなんだろう」
目を瞑りながら耐える聡の姿を見て、レイは真面目な表情で言う。
本人に悪気はないのだろうが、まるで自分が強い刺激を求める淫乱かのように言われたことに聡は赤面した。
「ハハッ、少し刺激を変えてみよっか」
ライはそう楽しげに言いながら、今度は焦らすように前立腺を避け、その周囲を指で円を描くように撫で始める。
はぁ…んぅんんっ……はん…あっ
そのじれったさが心地良く、聡の口から甘い吐息が漏れる。
「なるほど、前立腺の周囲だけでも感じるものなのだな」
レイは興味深そうにその様子を観察すると、淡々と、まるで実験体を見ているかのように述べる。
「こっちの奥を刺激すると一番収縮するよ」とライは前立腺の少し上側を指で押し込む。
っぁぁああっ…んんう゛う゛……あああ゛
今度はさっきのじれったさでなく、深い刺激が響いた。
「確かに。自分からライの指を締め付けてるみたいだな。……ああ、今、そこをグッと押し込まれると、気持いいんじゃないか?」
「っ……そんなこと言わないでください!」
(まるで辱めを受けているみたいじゃないか……)
聡はたまらず声を上げたが、ライは構わずに指を動かし続ける。
「そう? レイに言われると余計に感じているように思うけど。自分の身体がどうなってるか、よく分かるでしょ?」
その声に明らかに意地悪な響きが混じっていた。
はっんぅ…んあ……そこっ…きもちっ……
レイも手を動かし絵を描きながら、状況を無意識に実況し始める。
「ふくらはぎが軽く震えてる。たぶん今、かなり深く響いてるはずだ。ライ、もう少し下の角度を意識してみてはどうだろう?」
真面目に提案するその言葉が、さらに聡の羞恥心を煽る。
「あッ、あの、もうッ、本当に……!」
真っ赤になった聡は、必死にそう言ったが、ライは楽しそうに笑う。
くたりと横たわる聡を、苛めるように目を細めてみて言った。
「ほら、もう力抜けちゃってるよ『素材』くん。レイも見てみろよ。この反応、漫画にピッタリじゃない?」
「うん、確かにそうだな。とても生々しい。絶頂寸前の受けにはこういう描写が必要だな」
レイの言葉が聡の心に直撃する。その無自覚な一言が、まるで彼自身が「受け」として扱われているように感じさせた。
「絶頂を迎えるまで、頑張ってほしい。あと数日頼んだ」
レイは静かな声で追い打ちをかけていく。
いつになったら「素材」としての仕事から解放されるのか。どこまで開発されてしまうのか。その不安が聡の中で膨れ上がった。唇を噛みしめ、何とか自分を保とうと必死だった。
その日の仕事は終了となり、そのまま聡は帰路につく。自宅に着くと、聡はぐったりとソファに身を任せた。
「絶頂を迎えるまで」
レイの言葉が何度も反芻する。
本当に俺は、この仕事を、やりきれるんだろうか?
+++
昨日は夜もろくに眠れなかった。男の手で絶頂を迎える。それを仕事として向き合わなければならない。
深呼吸をして自分を落ち着かせようとするも、心臓が不安と焦りで高鳴り、気づいたら朝方だった。
次の「素材」としての時間に頭が一杯になる。
聡は自分の目を覚ますべく、両手で自身の顔をバチンと叩いた。
――――仕事だ、やりきれ。
そう決意を新たにしたつもりでも、なかなかどうしてマンションに向かう足取りは変わらない。
道中、ライの指先が肌に触れる感触や、レイのあの淡々と聡を辱めるような言葉が頭をよぎり、思わず軽く聡の頬が赤らむ。
さっきまで不安で夜も眠れなかったはずなのに、これじゃまるで……
マンションにたどり着き、部屋を前にする。
これから……俺は……
そう戸惑いながらも、震える指先でインターホンを押した。その高い音はまるで耳鳴りのように聡の耳に響いた。それが、さらに前日のことを想起させ、聡の胸が高鳴る。
それは、ドアの向こうで待っているものに対する、どうしようもない期待のようにも感じられた。
ガチャリと音を立てて扉が開く。
「おはよう、『素材』くん。今日もよろしくね」
「よろしくお願いします……」
聡は部屋へ足を踏み入れた。
いつも通りベッドの上で、聡は裸になって仰向けに横たわる。
無言でローションを指先に垂らすライと、聡を静かに見つめるレイの姿が、聡の胸に一層の重圧を与えた。
「それじゃ、今日も始めるね」
「今回もまた手で刺激していくよ。今日こそイける出来るように頑張ろうね」
そういって聡の後ろに挿入していく。
前と異なるのはその指に吸い付くように馴染む内壁と、初めからぷっくりと膨らみ主張する前立腺の存在だった。
「あれ? 膨らんでるね。昨日触りすぎて少し腫れちゃったかな」
そうは言いながらも、いつもは弱い刺激から始めていたソレを、強く、叩くように、責め立てる。
「んんぅっ、はん…あぁん…」
前よりも……さらに気持ちいい……
素直にその刺激に感じ入る聡を、ライは目を細めて眺めた。
「なんか、随分と反応が大きいね。……もしかして期待してた?」
「ちがっ、昨日の感覚が、まだッ、残ってるだけでっ、んっ」
喘ぎながらも反論する聡に対し、ライは嗜虐的な表情を浮かべて嬲るような指の動きへと変化させる。
「んふぅ、んぁ…あぁ、…あっ♡」
その指の動きに翻弄され、聡の喘ぎ声は色を増していく。
「確かに反応が前よりいいな。こんなにも早く前立腺で感じ始めるものなんだな」
昨日と同様、筆を走らせながらレイは真面目な表情で聡を見つめ、言葉で無意識に責め立てる。
けれど、その視線すら、その言葉すら、今の聡には快感となっていた。
……俺、男なのにッ♡、なんっ、こんなにッ♡、はぁ、っあ♡、ぅううう゛♡
前を触ってもいないのにすでに聡の陰茎は立ち上がり、たらたらと垂れる液体がベッドのシーツに染みを作っていく。
「勃起して先走りが多くなってきているな。もしかしたらもうイけるんじゃないか?」
レイはライに投げかける。
「そうだね、じゃ、『素材』君の大好きなアレやろっかな」
ニヤリと笑って、前立腺を指で軽く挟み込んだ。
その感覚に聡は昨日の、あの重い、腹の奥に波紋のように広がった刺激を思い出す。
まだ、そのライの指には力が入っていないはずなのに、聡の前立腺はピクッピクッと次の期待で小さく震え始める。
「準備はいい……?」
ライにひどく楽し気な笑みで声をかけられ、そしてレイにはじっと観察するようにその姿を見られる。
……俺、みられて、ほんとうに、
「やめっ!」
そう思わず躊躇して、ライの手を止めようとするも、
ギュ~~~~~♡♡♡
「ッ~~~~~んんんぁぁああぁぁあ゛あ゛あ゛♡♡」
プシャッと精液が噴き出した。
はぁ、はぁ、はぁ
俺、本当に前立腺でイったんだ――――
筆を走らせる音。絶頂した俺を、そしてその余韻で虚ろな目をした俺を、レイさんは真剣に見つめながら描いていた。
「ライ、いい表情の絵が描けたぞ。今度の受けのシーンこういう表情はどうだ?」
そういって、スケッチブックをこちらに向ける。
そこにはひどく扇情的で、卑猥な顔をした男の顔が描いてあった。
――こんな表情してるのか?俺は
そう唖然とする俺の横で、「いいね!」とライは返答する。
イッた衝撃と見せられた絵のせいで呆然としていると、二人がじっとこちらに視線を送っているのが分かった。
な、なんだ……? まだ何かあるのか?
「もっもういいのでは? もう、イけましたし、」
聡は起き上がりベッドを降りようとするが、ライはその手を掴み連れ戻す。
「いや、前立腺のためにまだやってないことがあるんだよねー」
そういって、聡の陰茎と肛門の間を指さす。
「蟻の門渡りとか言う名前の、まぁ所謂会陰部なんだけど。ここの反応も知りたいから、よろしくね!」
「ま、まだやるんですか……!!」
「あと少しだけだって」
そういって先のいった、会陰部に指を添わせる。
こんな何もないところで、本当に感じるのか……?
そう不思議に思っていると、
「んぁッ♡♡~~~~ぁあああ゛♡♡♡」
突然雷のような衝撃が聡に響いた。ライがいきなり指で会陰部をグイっと押したらしい。
「ここは人によっては奥の前立腺を刺激されたり、むしろ逆に射精が止まったりするんだけど……『素材』くんはちゃんとキモチイイみたいだね」
グリッグリリッ
そう押されるたびにその刺激が前立腺へと重く染み渡っていく。
「くッ♡…ふぅぅぅ……んんん♡」
「前立腺を挟み込むようにやってあげるね」
ライは二つの指を器用に使い、穴と会陰部の両方からギュムギュムと刺激させていった。
「っ、ぁぁ♡♡ んぅんん♡ あああ゛♡♡」
さっきの絶頂とは異なった感覚が、聡に襲い掛かる。
まるでムズムズと腹の奥底から込み上げてくるようななにかが。
その聡の様子に気付いたのか、ライはさらにリズミカルに速度を速める。
そして、
ギュム~~~~~♡♡
「ッぁぁぁぁ♡ぁぁああああ゛あ゛あ゛あ゛っ♡♡♡」
ふくらはぎが攣るほどピンっと足先を伸ばし、精液も出さずに絶頂を迎えた聡はふるふると震える。
これっ♡っイイのが止まらなッ♡♡
余韻に浸る聡を冷静に眺め、レイは観察するように筆を動かしながら告げる。
「精液は……でてないな。これがドライオーガズムか。どんな気分なんだ?」
はぁ♡…ふぅ♡どんなきぶん……ぅ♡
そんなこと言えるわけないと聡が口ごもっていると、
「ほら~、ちゃんと答えないと参考にならないでしょ?」
といってライは再び指を動かし始めた。
~~~~っ♡♡ まださっき感覚が残ってるのにッッ♡
早くその手を止めてもらおうと必死に、今の、自身の気持ちを聡は口に出す。
「っあああ゛♡♡、背中が、むず痒くなってっ♡、ずっとッッ、降りてこられない♡♡、感じですッはぁあ♡♡」
聡はさらに射精を伴わない絶頂を繰り返した。
絶頂の間にも刺激され続け、少し薄く白い液がこぽっと尿道から溢れ出る。
あっ……♡
そのこぼれ出た液を見て、レイはライに問いかける。
「何か液が薄いが、それは精液とは違うのか?」
「違うっぽいよ。前立腺液みたいな、精液になる前の液体みたいな感じかな。まぁいわゆる我慢汁に似たようなものだよ」
その説明に納得したのか頷いたレイはライにさらに質問する。
「ドライしている最中にもっと深く責めたらどうなるんだ?」
「試してみる?」
フフッと笑うとライは会陰部に沿わせていた指を後ろの指にそろえて挿入し、ゴリゴリと抉るような動きを始めた。
「やめっ♡んんぅああ゛♡♡ キツぃっ♡もうっ、やめてくださッ♡」
そうやってさらに深い快楽へと落とされる。
絶頂が止まらない。目の前に星が舞い、もう今どこで、自分は何をしているのかの感覚すら聡はあやふやになっていた。
「んー、ギューと締め付けてふるふると震えてるね。これチンコ入れてたら気持ちよさそうー」
「ん?乳首も刺激していないのにピンと主張しているな」
「あぁ、イった刺激が乳首にも伝わってんじゃない?ここも触る?」
見られている。指を離さまいと締め付ける後ろも、赤くふくらむ乳首も、火照った顔も、喘ぐ声も、全部。
まさか、前立腺だけでなく乳首も……もう、やめ、
「いや、今回の短編では使わないからいいだろう。これでもう大丈夫だ。終わろう」
レイが筆を止めていった冷静な声に、聡は思わず瞳を閉じた。
やっと、終わりだ――
全身がまだ余韻に包まれ、荒い呼吸を整えることすら出来ていない。
天井をじっと見つめ、ただ体を休める。
その後数分、いや10分ほど経っただろうか、ようやく呼吸が落ち着き始めた。
二人が不意に聡に声をかける。
「本当に助かった。次の短編の絵、うまく描けそうだ」
レイは冷静な顔そのものだが、その視線の奥になにか潜んでるようで、
「そうそう、助かったよ『素材』くん。おかげでレイもなんとかやれそうみたいだし」
ライもいつもと変わらない笑顔でいうが、どこか獲物を狙う捕食者のような底の見えない光を瞳に宿しながら聡を見つめていた。
なんだ……この感じ……?
「い、いえ……先生の作品のためになったなら良かったです」
聡は違和感を隠すようになんとか笑みを浮かべ、短く頷いた。
服を整えた聡は、玄関へと向かう。
「助かった。今後もよろしくな」
「じゃ、また今度ね」
レイの低い声とライの明るい声が背後から響く。
だがその言葉が妙に耳に残り、聡は返事もできずマンションを後にした。
外に出ると、夜風が頬を撫でる。
思わず空を見上げるが、星はどこかぼんやりとしている。
(なんだったんだ……あの視線……)
胸に小さな不安を抱えながらも、聡は自分に言い聞かせる。
(いや、ライさんもレイさんも疲れてただけだ……きっと、そうだ)
少し速足で通りを歩きながら、帰路についた。
+++
その後、特に問題もなく、高麗先生からネームが送られてきた。
FAXで来たネームは、見事なまでに構成が練られ、キャラクターの感情が細部までセリフで伝わってくる。
「さすが……大御所だな」
聡はそう呟きながらも、胸の中には、あの最後の視線の微かな違和感が残る。
納品されたネームを確認し、修正点を整理しながら聡はいつもの業務に集中していった。
カタカタと叩くキーボードの音、ネームなどを印刷する音。
周囲では他の編集者たちがそれぞれの担当作家の案件で忙しく動き回っている。
ふと隣を見ると、林さんの席は空になっていた。どうやらまた打ち合わせに出かけたらしい。
(林さんも相変わらず忙しいな……俺もああいう人みたいに)
そう思いながら手元の資料に目を戻す。
高麗先生のネームは今のままでも十分完成度が高いが、少しでもより良いものにできないかと聡は自分なりに細かい調整案を作成する。
(ここは会話の流れがスムーズだし、うーん、さすがにこれ以上手を加えるのは野暮かも……)
ひとつひとつのコマに目を通しながら、彼は無意識にため息を漏らした。
(……大丈夫だよな、きっと。俺だって、いい方向に進んでるはずだ)
そう自分に言い聞かせるようにして、他の雑用も処理していく。
「お疲れ、小林君」
「お疲れ様です」
林さんが打ち合わせから戻ったらしく、隣のデスクに座る。
「そういえば、高麗先生のアレ、どうだった?」
優しく微笑みながら林は、例の、『素材』の仕事を問う。
「えっ、あっもう大丈夫そうですよ。高麗先生のスランプも治ったみたいですし!!」
思わずあのことを思い出し、少し赤面しながら聡は答える。
「そっかそっか。良かった!」と林さんはPCに向き直り、仕事を再開した。
大丈夫のはず……だよな?
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