323 / 694
第十章 カトリーズの悪夢
VSヒドラ②
しおりを挟む
リィカは走り出した。
その走った方向を見て、ユーリも走り出す。
向かう先は、魔封陣の中央だ。
ヒドラが移動したから、今その中央は空いている。
「ギィヤァァァ! ギヤァァァァァッァァァァ!」
案の定、慌てた様子でヒドラがついてきた。
当然だろう。ヒドラはそこを守っていたのだ。自分が離れた隙に、攻撃されるわけにはいかないのだろう。
さすが、Aランクの魔物だと思う。
知能だって高い。
こちらが何をやろうとするのか、すぐに理解してくる。
どこが中央なのかはすぐに分かった。
魔力が、濃い部分がある。
間違いなく、そこが魔封陣の中央だ。
リィカが、ユーリが、そこに魔法を打ち込もうとするが、ヒドラが炎を吐いて、阻止された。
さらに、ヒドラがその巨体を割り込ませる。
攻撃を打ち込むべき中央部分は、ヒドラの体の下になった。
けれど、それでいい。
これで、ヒドラは容易にこの場所から動けなくなったはずだ。
「リィカ、何をするつもりですか?」
ユーリにもすぐに意図は分かったのだろう。
確かに、ヒドラが動かなければ、自分たちは遠距離からの攻撃ができる。炎の攻撃にさえ気をつけていれば、ダメージは受けない。
だが、同時にこちらの攻撃も通じないのだ。
最初に戻っただけだ。
リィカは気を引き締めた。
「一つ、思い付いたの。集中したいから、ヒドラに動かれると困る」
そして、思い付いた事を口にする。
「なるほど。試してみる価値は、ありそうですね」
ユーリは目を見張り、すぐにニッと笑った。
※ ※ ※
ヒドラは警戒した。
目の前の二体のニンゲン。
自分を従わせる、膨大な魔力を持ったマゾクに、この場所の死守を命じられた。
理由は知らない。興味もない。
ただ、守れと言われた場所の魔力が濃いから、何かあるのだろうとは分かった。
目の前に現れたニンゲンは、使う技は大したことないが、自分を倒せるだけの魔力を持っている。
放置できないと思って追い掛けた。
倒せると思ったのに、しぶとかった。
自分が守るべき場所に攻撃をしようとしてきたから、慌ててその場所に覆い被さった。
この場所から離れれば、ニンゲンが攻撃する。
それが分かった以上は、離れられない。
ニンゲンの使う技は、痛くもかゆくもない。この場所から動かなくても、どうにでもなる。
そう判断したのに、なぜか痛みが走った。
「ギィヤアァァァァァァァ!?」
次々に痛みが走る。
痛みが、段々と増してきて、悲鳴を上げた。
※ ※ ※
リィカが思い付いた事は、簡単だ。
初級魔法にさらに魔力を込めると、一回り大きくなる。
でも、所詮は初級魔法。込められる魔力など、限られている。
だったら、魔力を込めて増大させるのではなく、凝縮させることはできないのか。
リィカは、《火球》を発動させる。
手の平に乗るサイズの大きさ。
これに魔力を込めると、一回りくらい大きくなる。
それを放っても、なんのダメージにもならなかった。
では、逆にこれを小さくしたのなら。例え、威力の弱い初級魔法でも、それを小さく凝縮すれば、もっと威力が上がるはずだ。
やってみたら、すぐにコツを掴んだ。
魔力を込めてはダメだ。
するべきは、魔力付与だ。
《火球》に魔力の付与で、干渉する。
その大きさが、少し小さくなる。
それを、ヒドラに打ち込んだ。
「ギャアァ?」
違和感があったのか、ヒドラが声を出す。
それを見て、リィカは確信する。
(――いける!)
もう一度、《火球》を使う。
魔力を付与する。
(――もっと! もっと、小さく!)
先ほどよりも、小さくなった。
元の大きさの、半分近くにまでなる。
ヒドラに放つ。
「ギィヤアアァァ!?」
先ほどより、反応が強い。
ヒドラの目がリィカを睨み、炎を吐いてきたが、それを避ける。
そして、さらにまた《火球》を発動させる。
再び、魔力付与を行う。
(小さく! 小さく!!)
ひたすらそれを念じて、魔力付与を続けた。
(――できた!!)
分かる。
これ以上は凝縮できない。
手の平に包み込めるくらいにまで、小さくなった。
ヒドラに放つ。
同時に、ユーリも同じくらいにまで小さくなった《光球》を、ヒドラに放っていた。
一瞬、リィカとユーリの視線が交わり、二人でニッと笑みを交わす。
凝縮された《火球》と《光球》は、ヒドラの固い皮膚を破り、さらにその奥にまで突き入った。
「ギィヤアァァァァァァァ!?」
ヒドラが叫びを上げた。
リィカとユーリは、魔法を打ち込んでいった。
※ ※ ※
戦いは、リィカとユーリの一方的なものとなった。
二人は近づかない。
遠くから、凝縮した初級魔法を放つだけ。
何発も打つ内に、その行程もスムーズになった。
魔法を発動させてから、魔力付与をして、凝縮させて、という流れを、最初から凝縮させた状態で生み出すことが可能となっていた。
ヒドラは、その場から動かない。
魔封陣の中央を守る必要上、動けないと言った方が正しい。
リィカとユーリが近づかないから、してくる攻撃は炎の攻撃だけだが、距離があるから、躱すのも難しくない。
一度、キリムがやったみたいに、前足を高々と上げて叩き付けて、地面を揺らしてきた。
そこで足を取られたところを、炎で攻撃してきた。
キリムの時にされたことに、またも嵌まってしまったリィカとユーリだが、凝縮した魔法が役に立った。
連発することで、炎を相殺できた。
「ギィィィヤァァァァァァァァァァァァ……!」
断末魔を上げて、ヒドラは倒れたのだ。
※ ※ ※
はぁはぁはぁはぁ
はぁはぁはぁはぁ
リィカとユーリは、二人揃って息を切らしていた。
最後は一方的だったとは言っても、油断は出来なかったし、その前までにダメージを受けている。
慣れない魔法発動をしたことでの疲労もある。
けれど、座り込む訳にはいかない。
ヒドラが倒れて、魔封陣の中央、魔力の濃い部分がはっきり分かる。
二人は同時に走り出した。
その走った方向を見て、ユーリも走り出す。
向かう先は、魔封陣の中央だ。
ヒドラが移動したから、今その中央は空いている。
「ギィヤァァァ! ギヤァァァァァッァァァァ!」
案の定、慌てた様子でヒドラがついてきた。
当然だろう。ヒドラはそこを守っていたのだ。自分が離れた隙に、攻撃されるわけにはいかないのだろう。
さすが、Aランクの魔物だと思う。
知能だって高い。
こちらが何をやろうとするのか、すぐに理解してくる。
どこが中央なのかはすぐに分かった。
魔力が、濃い部分がある。
間違いなく、そこが魔封陣の中央だ。
リィカが、ユーリが、そこに魔法を打ち込もうとするが、ヒドラが炎を吐いて、阻止された。
さらに、ヒドラがその巨体を割り込ませる。
攻撃を打ち込むべき中央部分は、ヒドラの体の下になった。
けれど、それでいい。
これで、ヒドラは容易にこの場所から動けなくなったはずだ。
「リィカ、何をするつもりですか?」
ユーリにもすぐに意図は分かったのだろう。
確かに、ヒドラが動かなければ、自分たちは遠距離からの攻撃ができる。炎の攻撃にさえ気をつけていれば、ダメージは受けない。
だが、同時にこちらの攻撃も通じないのだ。
最初に戻っただけだ。
リィカは気を引き締めた。
「一つ、思い付いたの。集中したいから、ヒドラに動かれると困る」
そして、思い付いた事を口にする。
「なるほど。試してみる価値は、ありそうですね」
ユーリは目を見張り、すぐにニッと笑った。
※ ※ ※
ヒドラは警戒した。
目の前の二体のニンゲン。
自分を従わせる、膨大な魔力を持ったマゾクに、この場所の死守を命じられた。
理由は知らない。興味もない。
ただ、守れと言われた場所の魔力が濃いから、何かあるのだろうとは分かった。
目の前に現れたニンゲンは、使う技は大したことないが、自分を倒せるだけの魔力を持っている。
放置できないと思って追い掛けた。
倒せると思ったのに、しぶとかった。
自分が守るべき場所に攻撃をしようとしてきたから、慌ててその場所に覆い被さった。
この場所から離れれば、ニンゲンが攻撃する。
それが分かった以上は、離れられない。
ニンゲンの使う技は、痛くもかゆくもない。この場所から動かなくても、どうにでもなる。
そう判断したのに、なぜか痛みが走った。
「ギィヤアァァァァァァァ!?」
次々に痛みが走る。
痛みが、段々と増してきて、悲鳴を上げた。
※ ※ ※
リィカが思い付いた事は、簡単だ。
初級魔法にさらに魔力を込めると、一回り大きくなる。
でも、所詮は初級魔法。込められる魔力など、限られている。
だったら、魔力を込めて増大させるのではなく、凝縮させることはできないのか。
リィカは、《火球》を発動させる。
手の平に乗るサイズの大きさ。
これに魔力を込めると、一回りくらい大きくなる。
それを放っても、なんのダメージにもならなかった。
では、逆にこれを小さくしたのなら。例え、威力の弱い初級魔法でも、それを小さく凝縮すれば、もっと威力が上がるはずだ。
やってみたら、すぐにコツを掴んだ。
魔力を込めてはダメだ。
するべきは、魔力付与だ。
《火球》に魔力の付与で、干渉する。
その大きさが、少し小さくなる。
それを、ヒドラに打ち込んだ。
「ギャアァ?」
違和感があったのか、ヒドラが声を出す。
それを見て、リィカは確信する。
(――いける!)
もう一度、《火球》を使う。
魔力を付与する。
(――もっと! もっと、小さく!)
先ほどよりも、小さくなった。
元の大きさの、半分近くにまでなる。
ヒドラに放つ。
「ギィヤアアァァ!?」
先ほどより、反応が強い。
ヒドラの目がリィカを睨み、炎を吐いてきたが、それを避ける。
そして、さらにまた《火球》を発動させる。
再び、魔力付与を行う。
(小さく! 小さく!!)
ひたすらそれを念じて、魔力付与を続けた。
(――できた!!)
分かる。
これ以上は凝縮できない。
手の平に包み込めるくらいにまで、小さくなった。
ヒドラに放つ。
同時に、ユーリも同じくらいにまで小さくなった《光球》を、ヒドラに放っていた。
一瞬、リィカとユーリの視線が交わり、二人でニッと笑みを交わす。
凝縮された《火球》と《光球》は、ヒドラの固い皮膚を破り、さらにその奥にまで突き入った。
「ギィヤアァァァァァァァ!?」
ヒドラが叫びを上げた。
リィカとユーリは、魔法を打ち込んでいった。
※ ※ ※
戦いは、リィカとユーリの一方的なものとなった。
二人は近づかない。
遠くから、凝縮した初級魔法を放つだけ。
何発も打つ内に、その行程もスムーズになった。
魔法を発動させてから、魔力付与をして、凝縮させて、という流れを、最初から凝縮させた状態で生み出すことが可能となっていた。
ヒドラは、その場から動かない。
魔封陣の中央を守る必要上、動けないと言った方が正しい。
リィカとユーリが近づかないから、してくる攻撃は炎の攻撃だけだが、距離があるから、躱すのも難しくない。
一度、キリムがやったみたいに、前足を高々と上げて叩き付けて、地面を揺らしてきた。
そこで足を取られたところを、炎で攻撃してきた。
キリムの時にされたことに、またも嵌まってしまったリィカとユーリだが、凝縮した魔法が役に立った。
連発することで、炎を相殺できた。
「ギィィィヤァァァァァァァァァァァァ……!」
断末魔を上げて、ヒドラは倒れたのだ。
※ ※ ※
はぁはぁはぁはぁ
はぁはぁはぁはぁ
リィカとユーリは、二人揃って息を切らしていた。
最後は一方的だったとは言っても、油断は出来なかったし、その前までにダメージを受けている。
慣れない魔法発動をしたことでの疲労もある。
けれど、座り込む訳にはいかない。
ヒドラが倒れて、魔封陣の中央、魔力の濃い部分がはっきり分かる。
二人は同時に走り出した。
0
あなたにおすすめの小説
帰国した王子の受難
ユウキ
恋愛
庶子である第二王子は、立場や情勢やら諸々を鑑みて早々に隣国へと無期限遊学に出た。そうして年月が経ち、そろそろ兄(第一王子)が立太子する頃かと、感慨深く想っていた頃に突然届いた帰還命令。
取り急ぎ舞い戻った祖国で見たのは、修羅場であった。
私を家から追い出した妹達は、これから後悔するようです
天宮有
恋愛
伯爵令嬢の私サフィラよりも、妹エイダの方が優秀だった。
それは全て私の力によるものだけど、そのことを知っているのにエイダは姉に迷惑していると言い広めていく。
婚約者のヴァン王子はエイダの発言を信じて、私は婚約破棄を言い渡されてしまう。
その後、エイダは私の力が必要ないと思い込んでいるようで、私を家から追い出す。
これから元家族やヴァンは後悔するけど、私には関係ありません。
[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?
シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。
クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。
貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ?
魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。
ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。
私の生活を邪魔をするなら潰すわよ?
1月5日 誤字脱字修正 54話
★━戦闘シーンや猟奇的発言あり
流血シーンあり。
魔法・魔物あり。
ざぁま薄め。
恋愛要素あり。
神様の忘れ物
mizuno sei
ファンタジー
仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。
わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
おっさん料理人と押しかけ弟子達のまったり田舎ライフ
双葉 鳴
ファンタジー
真面目だけが取り柄の料理人、本宝治洋一。
彼は能力の低さから不当な労働を強いられていた。
そんな彼を救い出してくれたのが友人の藤本要。
洋一は要と一緒に現代ダンジョンで気ままなセカンドライフを始めたのだが……気がつけば森の中。
さっきまで一緒に居た要の行方も知れず、洋一は途方に暮れた……のも束の間。腹が減っては戦はできぬ。
持ち前のサバイバル能力で見敵必殺!
赤い毛皮の大きなクマを非常食に、洋一はいつもの要領で食事の準備を始めたのだった。
そこで見慣れぬ騎士姿の少女を助けたことから洋一は面倒ごとに巻き込まれていく事になる。
人々との出会い。
そして貴族や平民との格差社会。
ファンタジーな世界観に飛び交う魔法。
牙を剥く魔獣を美味しく料理して食べる男とその弟子達の田舎での生活。
うるさい権力者達とは争わず、田舎でのんびりとした時間を過ごしたい!
そんな人のための物語。
5/6_18:00完結!
【完結】婚約者なんて眼中にありません
らんか
恋愛
あー、気が抜ける。
婚約者とのお茶会なのにときめかない……
私は若いお子様には興味ないんだってば。
やだ、あの騎士団長様、素敵! 確か、お子さんはもう成人してるし、奥様が亡くなってからずっと、独り身だったような?
大人の哀愁が滲み出ているわぁ。
それに強くて守ってもらえそう。
男はやっぱり包容力よね!
私も守ってもらいたいわぁ!
これは、そんな事を考えているおじ様好きの婚約者と、その婚約者を何とか振り向かせたい王子が奮闘する物語……
短めのお話です。
サクッと、読み終えてしまえます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる