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第十章 カトリーズの悪夢
反撃開始
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泰基の不満そうな顔に、リィカとユーリが顔を見合わせる。
「あ、わたしたち、魔封陣を壊しに……」
「お前らが壊したことくらい分かってる。いいから、フォロー頼む」
リィカの言い訳は、途中で泰基に遮られた。
再びリィカとユーリは、顔を見合わせた。
「なんか、マズかったのかな?」
「魔法が使えるようになったんですから、問題ないはずですけど……」
言葉を交わすが、答えなど出るはずもない。
そして、のんびり話している余裕もなさそうだ。
戦場を見れば、皆が苦戦している。
一対一で魔族と戦っている、という風に見えるが、あちこち移動している人食い馬の存在が厄介そうだ。
カストルは、もう一体の魔族と後方に下がっている。こちらは、戦闘に参加しないのだろうか?
「リィカ、魔力の配分、気をつけて下さいよ」
「分かってる」
ユーリの言葉に頷き、そしてお互いに視線を別々の所に向ける。
魔法を放った。
※ ※ ※
リィカが二本目のマジックポーションを飲んだ後、その事実に愕然とした。
「……魔力が、回復しない」
ユーリも、驚いてリィカを診ている。
正確に言えば、全く回復していないわけではない。
しかし、一本目は、飲んで半分くらいまでは回復した魔力が、今度回復したのは一割程度だ。
「飲むたびに効果が薄くなる……? いえ、魔王誕生後にもリィカはマジックポーションを飲んでましたよね?」
「うん」
魔王が誕生して直後、大量の魔物を相手に、リィカの魔力は残り少なくなっていた。
その時もマジックポーションを飲んで、確か半分くらいまで回復していたはずだ。
「もしかして、連続で服用すると、効果が薄くなるんですかね?」
ユーリの言葉に、リィカは顔をしかめる。
あり得そうだ。
「もしそうなら、せっかくのマジックポーションがもったいない……」
なにせ貴重品である。
次、いつ手に入れられるかなど、分からない。
「何言っているんですか。魔力ゼロと、一割でも魔力があるのと、どっちがいいと思ってるんですか」
「……はい、ごめんなさい」
ユーリに睨まれて、リィカは小さく謝ったのだった。
※ ※ ※
魔力量が少ないことに変わりはない。
時間がおけば自然に回復するとはいっても、魔法に使う魔力量の方が断然多いのだ。考えずに魔法を放てば、あっという間に空になる。
リィカは手を握る。
使うのは初級魔法だけだ。
それだけでも、十分戦える力を身に付けられた。
凝縮した《水球》を、暁斗の背後から狙っていたピュールに打ち出した。
※ ※ ※
「《水の付与》!」
暁斗はエンチャントを唱えた。
繰り出されるハルバードの刃を、正面から受け止める。
聖剣に魔力を流すのでも良いが、やはりこちらの方が慣れている分、やりやすい。
(この状態で魔力を流したら、どうなるんだろう?)
ふと疑問が浮かぶ。
『やってみたらどうだ。アキト』
(そうする)
聖剣の言葉に、暁斗も簡潔に返す。
そう言うのなら、やってみよう。
今度は暁斗から斬りかかる。
ポタルゴスが受け止めた瞬間、聖剣に魔力を流した。
剣技の時の「魔力を纏わせる」は、剣の周りに魔力が絡みついている状態。
魔力付与は、その絡みついている魔力に、さらに魔力を上乗せして干渉する。
魔力を流す、というのは、剣そのものに魔力を付与する事を言う。普通の剣ではできず、聖剣や魔剣にしか魔力は流せない。
バルの持つ魔剣フォルテュードは、使用者の意思をくみ取って魔力が自然に流れるようだが、暁斗の持つ聖剣グラムはそれがない。使用者自身が魔力を流さなければならない。
魔力を流す、という言葉を使っても、やっていることは魔力付与だ。付与する対象が、魔力か剣か、というだけの違いだ。
――魔力を流した瞬間、ピシッという音がした。
「――なにっ!?」
叫んだのはポタルゴスだった。
やや強引に、ハルバードを引く。
そのまま暁斗が剣を押し込もうとするのを、ハルバードの柄を振るう。
「――――――!」
またも驚愕したのはポタルゴスだった。
暁斗の振るった聖剣が、ハルバードの柄をその半ばから切り飛ばした。
よく見れば、ハルバードの刃の部分も、鋭い何かに斬られた跡がある。
強引にでも引いたから、真っ二つにされなかっただけだ。
「何をした……!」
ポタルゴスが叫ぶ。
暁斗は感動したようだった。
「すごい……」
何が起こったかは分かる。
《水の付与》で生まれた水の刃。質量と鋭さを増すその刃が、聖剣に魔力を流したことで、強化されたのだ。
『そうだ。他のエンチャントでも、そのエンチャントの持つ能力を強化させられるぞ』
ただし、剣技と組み合わせてどうなるかは分からない。
剣技が使われるようになってから、聖剣に魔力を流せる者がいなかったからだ。
聖剣のその説明を聞いて、ふと暁斗は気付いた。
「すごいけど……、こんなのができるなら魔力付与の意味、なくない?」
今まで、剣技やエンチャントに魔力付与をして戦ってきた。
しかし、魔力付与するよりも、よほどこちらの方が威力が強い。
魔力付与ができなければ、魔力を流すなんて事もできないから、魔力付与ができること自体に意味はあるのだが。
『だから、忘れておった、と言ったであろうが!』
聖剣に逆ギレされて、暁斗はゲンナリした。
忘れないでよ、という心の中のツッコみは、おそらく聞こえていただろうが、何も反論してこなかった。
「――ヒンッ!」
後方から馬の悲鳴が聞こえて、慌てて暁斗は後ろを振り返る。
ピュールがバランスを崩していた。
「ボーッとしてちゃダメだよ、暁斗」
後ろから攻撃されようとしていたらしい。
暁斗はホッと息をつく。
当然ながら、リィカとユーリが戻ってきていた事には気付いていた。
笑いかける。
「ありがと、リィカ。やっぱり、後ろにリィカがいてくれると、安心できる」
「どういたしまして」
リィカの、笑みを含んだ声を聞きながら、正面を向く。
ポタルゴスが、ひどく不機嫌そうに柄の短くなったハルバードを構えていた。
「あ、わたしたち、魔封陣を壊しに……」
「お前らが壊したことくらい分かってる。いいから、フォロー頼む」
リィカの言い訳は、途中で泰基に遮られた。
再びリィカとユーリは、顔を見合わせた。
「なんか、マズかったのかな?」
「魔法が使えるようになったんですから、問題ないはずですけど……」
言葉を交わすが、答えなど出るはずもない。
そして、のんびり話している余裕もなさそうだ。
戦場を見れば、皆が苦戦している。
一対一で魔族と戦っている、という風に見えるが、あちこち移動している人食い馬の存在が厄介そうだ。
カストルは、もう一体の魔族と後方に下がっている。こちらは、戦闘に参加しないのだろうか?
「リィカ、魔力の配分、気をつけて下さいよ」
「分かってる」
ユーリの言葉に頷き、そしてお互いに視線を別々の所に向ける。
魔法を放った。
※ ※ ※
リィカが二本目のマジックポーションを飲んだ後、その事実に愕然とした。
「……魔力が、回復しない」
ユーリも、驚いてリィカを診ている。
正確に言えば、全く回復していないわけではない。
しかし、一本目は、飲んで半分くらいまでは回復した魔力が、今度回復したのは一割程度だ。
「飲むたびに効果が薄くなる……? いえ、魔王誕生後にもリィカはマジックポーションを飲んでましたよね?」
「うん」
魔王が誕生して直後、大量の魔物を相手に、リィカの魔力は残り少なくなっていた。
その時もマジックポーションを飲んで、確か半分くらいまで回復していたはずだ。
「もしかして、連続で服用すると、効果が薄くなるんですかね?」
ユーリの言葉に、リィカは顔をしかめる。
あり得そうだ。
「もしそうなら、せっかくのマジックポーションがもったいない……」
なにせ貴重品である。
次、いつ手に入れられるかなど、分からない。
「何言っているんですか。魔力ゼロと、一割でも魔力があるのと、どっちがいいと思ってるんですか」
「……はい、ごめんなさい」
ユーリに睨まれて、リィカは小さく謝ったのだった。
※ ※ ※
魔力量が少ないことに変わりはない。
時間がおけば自然に回復するとはいっても、魔法に使う魔力量の方が断然多いのだ。考えずに魔法を放てば、あっという間に空になる。
リィカは手を握る。
使うのは初級魔法だけだ。
それだけでも、十分戦える力を身に付けられた。
凝縮した《水球》を、暁斗の背後から狙っていたピュールに打ち出した。
※ ※ ※
「《水の付与》!」
暁斗はエンチャントを唱えた。
繰り出されるハルバードの刃を、正面から受け止める。
聖剣に魔力を流すのでも良いが、やはりこちらの方が慣れている分、やりやすい。
(この状態で魔力を流したら、どうなるんだろう?)
ふと疑問が浮かぶ。
『やってみたらどうだ。アキト』
(そうする)
聖剣の言葉に、暁斗も簡潔に返す。
そう言うのなら、やってみよう。
今度は暁斗から斬りかかる。
ポタルゴスが受け止めた瞬間、聖剣に魔力を流した。
剣技の時の「魔力を纏わせる」は、剣の周りに魔力が絡みついている状態。
魔力付与は、その絡みついている魔力に、さらに魔力を上乗せして干渉する。
魔力を流す、というのは、剣そのものに魔力を付与する事を言う。普通の剣ではできず、聖剣や魔剣にしか魔力は流せない。
バルの持つ魔剣フォルテュードは、使用者の意思をくみ取って魔力が自然に流れるようだが、暁斗の持つ聖剣グラムはそれがない。使用者自身が魔力を流さなければならない。
魔力を流す、という言葉を使っても、やっていることは魔力付与だ。付与する対象が、魔力か剣か、というだけの違いだ。
――魔力を流した瞬間、ピシッという音がした。
「――なにっ!?」
叫んだのはポタルゴスだった。
やや強引に、ハルバードを引く。
そのまま暁斗が剣を押し込もうとするのを、ハルバードの柄を振るう。
「――――――!」
またも驚愕したのはポタルゴスだった。
暁斗の振るった聖剣が、ハルバードの柄をその半ばから切り飛ばした。
よく見れば、ハルバードの刃の部分も、鋭い何かに斬られた跡がある。
強引にでも引いたから、真っ二つにされなかっただけだ。
「何をした……!」
ポタルゴスが叫ぶ。
暁斗は感動したようだった。
「すごい……」
何が起こったかは分かる。
《水の付与》で生まれた水の刃。質量と鋭さを増すその刃が、聖剣に魔力を流したことで、強化されたのだ。
『そうだ。他のエンチャントでも、そのエンチャントの持つ能力を強化させられるぞ』
ただし、剣技と組み合わせてどうなるかは分からない。
剣技が使われるようになってから、聖剣に魔力を流せる者がいなかったからだ。
聖剣のその説明を聞いて、ふと暁斗は気付いた。
「すごいけど……、こんなのができるなら魔力付与の意味、なくない?」
今まで、剣技やエンチャントに魔力付与をして戦ってきた。
しかし、魔力付与するよりも、よほどこちらの方が威力が強い。
魔力付与ができなければ、魔力を流すなんて事もできないから、魔力付与ができること自体に意味はあるのだが。
『だから、忘れておった、と言ったであろうが!』
聖剣に逆ギレされて、暁斗はゲンナリした。
忘れないでよ、という心の中のツッコみは、おそらく聞こえていただろうが、何も反論してこなかった。
「――ヒンッ!」
後方から馬の悲鳴が聞こえて、慌てて暁斗は後ろを振り返る。
ピュールがバランスを崩していた。
「ボーッとしてちゃダメだよ、暁斗」
後ろから攻撃されようとしていたらしい。
暁斗はホッと息をつく。
当然ながら、リィカとユーリが戻ってきていた事には気付いていた。
笑いかける。
「ありがと、リィカ。やっぱり、後ろにリィカがいてくれると、安心できる」
「どういたしまして」
リィカの、笑みを含んだ声を聞きながら、正面を向く。
ポタルゴスが、ひどく不機嫌そうに柄の短くなったハルバードを構えていた。
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