【第一章改稿中】転生したヒロインと、人と魔の物語 ~召喚された勇者は前世の夫と息子でした~

田尾風香

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第十一章 四天王ジャダーカ

結界の外で②

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ここから数話ほど、アレクたちの話になります。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



結界の外で、アレクたちの戦いは大詰めを迎えていた。

アンタイオスを倒した後、とにかく厄介な相手から順に倒していった。

空中から攻撃してくる、AランクのガルダとBランクのグリフォン。
動きの素早い、Bランクのアダンダラとマンティコア。

これらの魔物を二人ないし三人で攻撃し、一気に倒す。
他の魔物とは、とにかく防御に徹する。

相手によって戦う相手も変えた。
その連携が、アイコンタクト一つで上手く働いた。

結果として効率よく倒すことができ、今残っているのはAランクのオルクスのみ。
攻撃力も防御力も高いが、素早さはそれほどでもない。
集中攻撃すれば、倒れるのは時間の問題だった。

「とどめっ!」

暁斗が《水の付与アクア・エンチャント》のかかっている剣を振るう。
腹を大きく切り裂き、そしてオルクスは後ろに倒れた。

ズシイィィィン、と大きく地面が揺れる。
その揺れが収まると、暁斗がガッツポーズをした。

「よしっ、やった!」
「やったな!」

アレクが声をかけ、二人はハイタッチする。
笑顔になる一行だが、周囲の状況を確認してすぐ真顔になる。

アレクはフーッと息を吐いた。

「魔族とルバドールの軍の戦いは、下手に横やり入れない方がいいな。それぞれに組織的な動きをしているから、介入すると逆効果になる可能性がある」

ルバドール側が決して有利な状況ではないのだが、だからといって下手なこともできない。支援を求められるまでは、そのまま様子見だ。

「だから、介入するならあっちだな」

アレクが視線を向けたのは、ルベルトスのいる場所だ。
クナムと呼ばれていた男は、ご丁寧にルベルトスに対しても魔物を放っていた。

Aランクのヒドラ。

リィカとユーリがカトリーズの街で戦った相手だが、あの時のヒドラは首が五本だったのに対し、ルベルトスが戦っているのは八本の首がある。

「炎の威力は、僕たちが戦った相手より強そうですよ」

ユーリがそう評価する。
ルベルトスが苦戦している様子が見られる。致命傷こそ受けていないようだが、遠目にも傷だらけなのが確認できた。

「ヒドラは首の数が多いほどに強い、という説があるが、その通りなのかもしれないな」

アレクの言葉に、一行の表情が引き締まる。
そんな一行を見回して、アレクが言った。

「行くぞ」

その宣言とともに、一行は走り出した。


※ ※ ※


「はぁっ、はぁっ、くそっ、キリがないな」

ルベルトスは激しく呼吸をしていた。

魔物が自分の前に現れたとき、リヒトーフェン公爵を始めとする数名が、自分の方に来ようとした。
それを「来るな」と言ったのは自分だ。

相手はAランクの魔物、ヒドラだ。軍全体で相手をできるならともかく、数名程度加わったところで、意味はない。
だったら、魔族の相手をしてもらっていた方がよほど良い。

ヒドラの知識がなかったわけじゃない。
首から吐く炎。
切っても切っても再生する首。

その首が、この上なく厄介だった。
再生するまでに時間がかかるのだろう、と思っていたのに、実際には切って数秒程度で再生する。

一体何回首を切り落としたか分からない。
しかし、ヒドラには八本の首が付いたままだ。

「もう魔力もヤバいってのに……」

ルベルトスの手にある剣は、持っている柄から光り輝いている。
それに実体があるように見えない。

――光の剣を作り出す能力。

ルベルトスのユニーク魔法の能力を、一言で言えばそうなる。

魔力を使って、その手に光の剣を作る。
大きさは、ルベルトスの意思で自在に変えることができる。

そうして振るわれる剣の威力は、絶大だ。
防衛線に使われている石ドールス・ラピスを、その一振りでまるで紙のように切断することだってできる。

だが、魔力の消耗が早い。
だから普段は普通に剣を使うのだ。

一から剣を生み出すと消耗が激しい魔力も、持っている剣に重ねるようにすると、魔力の消耗が押さえられる。
その分威力は落ちるが、何もなければそれで十分なのだ。

今、持っていた剣はない。
特別に作ってもらった剣だが、魔力を入れすぎたのか、壊れてしまった。

そのため、魔力で剣を生み出したのだが、ガンガン魔力を削られる。
どれだけ削っても、ヒドラにダメージを与えられない。

首をやっても無駄だ。
やるならば、首が生えている本体に攻撃を。

そう思って剣を振るっても、八本の首が防御に入ると、それを越えられない。
一度は首八本を同時に吹き飛ばすことに成功したのだが、本体に攻撃を入れる前に首を再生させられた。

いたちごっこだ。
だが、それも自分の魔力が尽きてしまえば、敗北という形で終わってしまう。

「もう一度だ」

魔力が尽きる前に、勝負する。

チラッと黒の結界に閉じ込められた少女を見る。
少女は、すごかった。
あの災害と見間違う魔法を正面から受けた。自らの腕一本を犠牲に、生き残った。戦える力を残した。

あの少女に、誇れる戦いをしたかった。

「行くぞ」

剣に力を込める。
やることは同じだ。

八本の首を吹き飛ばす。
再生する前に、本体を切り裂く。

それだけだ。

「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!」

叫んで、ヒドラに向かって走り出した。

炎が吐かれた。
それを軽やかなステップで躱しながら、前に出る。

ヒドラの元に着くと、光の剣がさらに輝き、長く伸びる。

「覚悟!!」

大きく横薙ぎに払った剣は、その根元から八本の首を切り飛ばしていた。

(うまく、いったっ!)

先ほどは、爆発させるように首を吹き飛ばしたから、その爆風に煽られてすぐ攻撃に移れなかった。だから、首を再生されてしまったのだ。

だが、今は切り飛ばしただけ。
本体に攻撃するのに、何も支障はない。

長く伸びた剣を、上から振りかぶる。
振り下ろした。

「勝ったっ!」

そう思った。
首の再生は、二秒から三秒ほど。
だが、今はまだ一秒も経っていない。

自分の剣が、本体を切り裂く様を想像するのは簡単だった。そして、それは次の瞬間には現実になる。はずだった。

「――なにっ!?」

突如、首が現れた。
今までの八本の首の倍以上の太さはあろうかという、九本目の首。
それが、本体の根元から現れた。

大きく口を開け、ルベルトスの剣を口で受け止める。
だが、受け止めきれないのか、剣が少しずつ押し込んでいく。

「だったら、このまま切り裂いてやる!」

ルベルトスが叫んで、さらに剣に魔力を込めた。
――その瞬間、八本の首が復活した。

「……………!!」

しまった、と思ったときには、もう遅かった。
八本の首が、大きく息を吸うようにその首を大きく仰け反らせる。
その口元に炎が見えた。

「――くっ!?」

後退しようとして、剣が噛まれたままで動けない。

咄嗟に剣から手を離す。
手を離せば剣は消滅するだけだから、問題ない。

だが、遅かった。

ヒドラが炎を吐く。
目の前に迫ってくる炎を前に、ルベルトスは動けなくなった。

「《濁流マディストリーム》!」

ルベルトスの目の前に、突如魔法が放たれた。
水の上級魔法だ。

――バアァァァァァァァァン!

ヒドラの炎を受け止め、爆発を引き起こす。

「ぐっ!?」

その爆発に飛ばされながら、ルベルトスの目は、勇者一行の姿を捉えていた。


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