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第十九章 婚約者として過ごす日々
魔封じの枷、完成
「うーん…………」
リィカは、魔封じの枷を目の前にして唸った。それをアレクが心配そうに見るが、何も言えることがない。
「一つだけ。もし仮に一つで無理ならまた報告を、ですか」
ユーリが苦笑した。リィカの「失敗してもいいなら」に対しての国王の返答が、それだった。
失敗していい数は一つだけ。一つ失敗して、それでも感覚が掴めないようであれば、再度報告。貴重なものなのでしょうがないが、リィカにはかなりプレッシャーがのし掛かる話だった。
※ ※ ※
魔封じの枷の作成にある程度の目処がついてから、一週間がたった。一週間たってようやく、リィカは再び魔封じの枷作りに着手することができた。
一週間かかった理由は、リィカ自身が晩餐やら鏡作りやらお茶会やらで忙しかった、というのもあるが、一番は国王がなかなか決断を下せなかったからである。
唸りながら悩みながら、出した結論がそれである。実際に唸って悩んでいるところを、リィカも目撃してしまったせいで、できないとも言いにくい。何としてもこれで感覚を掴まなければと思うのだが、思えば思うほどにプレッシャーだ。
「いきなり作ろうとしないほうが良いですよ。まずは、魔力を探っていってはどうですか?」
「……そう、なんだけど」
ユーリのアドバイスに、躊躇う。分かってはいるのだが、早く作らなきゃという焦りがなくならない。
「何かあるんですか?」
「ライアン伯爵から催促されたんだ。……気にするな、リィカ。それで失敗したら、その方が大変だ」
ユーリの問いにはアレクが答えた。
そうなのだ。リィカが王宮にいるせいで、ライアン伯爵も会いに来やすくなっていて、遠回しにまだかまだかと言ってくる。熱心なのはいいのだが、現状どうすることもできない。
結局、国王やアークバルトが対応することもあったりする。
リィカはふーと息を吐いた。
アレクの言うとおりだ。ゆっくりやろうと思って、魔封じの枷に手を伸ばす。自分が水の魔力を乗せるべき魔力をゆっくり探る。その魔力を完全に覚えられるまで、探って感じ続ける。
地味すぎる作業だが、それが一番の早道だ。
――アレクとユーリが見守る中、集中したリィカは、結局その日のうちに失敗することなく一つ目を完成させた。
※ ※ ※
「できたのか」
そう言う国王の声には、驚きとほんのわずかな呆れが混ざっていたが、リィカは気付かず謝罪した。
「は、はい。その、遅くなってしまって、申し訳ありません」
「ちっとも遅くないだろう。大体、作り始めたのは今朝じゃないのか。最初は失敗するかもしれぬと言っておったのに」
「……あ、え、えっと」
責めるようにも聞こえる言葉に、リィカは言葉に詰まる。だがそこは、当然一緒にいるアレクとユーリがフォローしてくるだろうと思っているからこそ、国王も言えるわけで。
「早くできたんですから、いいじゃないですか」
「これでも、失敗しないように慎重にやっていたんですよ」
責め返されてしまい、国王は苦笑する。リィカが大切に思われているのは良いことだ、と内心で思いつつ、別のことを口にした。
「それで、今あるものを全部作れるか?」
「はい。ただ、やっぱり時間はかかってしまいますけど……」
申し訳なさそうな顔のリィカに、国王は頷いた。これで、一瞬で全部できますと言われたら、その方が引いていた自信がある。
「では、一日一つずつ作ってくれ。今後かかる時間が短くなるようなら、増やすかもしれぬが。空いた時間を、魔法師団の指導に当てて欲しい」
リィカを見る。すぐ頷くかと思ったが、何かをためらうような様子を見せる。やはり荷が重いのかと思ったが、それを理由に話をなしにすることはできない。そう思い、少し厳しめに問いかける。
「どうした」
「いえその……元々はわたし、勉強するために王宮へ来たと思ったのですが」
「そういえばそうだったな」
これはさすがに笑うしかない。これまで平民として暮らしてきたリィカだ。学ぶべきこと、知らなければならないことは、たくさんある。確かに、その勉強のために王宮へ来てもらった。
だが実際のところ、勉強らしい勉強はしていない。これでいいのかと思ってしまうのは、分からなくもない。けれどここまでリィカを見てきた国王の感想は、そこは優先しなくていいというものだった。
「そなたのフォローは、アレクでも誰でも、儂でもできる。だが、魔法師団員への指導はそなたしかできない。ということで、頼んだ」
「……はい、かしこまりました」
一瞬、押し黙ったリィカだが、結局素直に頭を下げた。
それを見ながら、国王は思う。
あくまでも、リィカの指導を受けるかどうかは個人の自由であり、希望者のみとした。その条件であれば、普通に考えれば魔法師団長であるレイズクルスとその一派が、来ることはない。
だが果たして、どう出てくるか。
リィカがきっかけとなって、その権力が落ちてはきているものの、まだまだ強い。そして、レイズクルスもその程度は分かっているだろう。
落ちてきていることに納得するような人物ではない以上、リィカに接触できるこの機会を、逃すとも思えない。接触して……何とかしてリィカを貶めようとするだろうが、逆にそれを破れれば。
(レイズクルスの権力を、一気に落とすチャンスにもなる)
魔法師団を大々的に改革するためには、どうしてもあの師団長の存在が邪魔だった。果たしてリィカはどこまでやってくれるのか。不安も大きいが、その反面、期待もしている国王だった。
リィカは、魔封じの枷を目の前にして唸った。それをアレクが心配そうに見るが、何も言えることがない。
「一つだけ。もし仮に一つで無理ならまた報告を、ですか」
ユーリが苦笑した。リィカの「失敗してもいいなら」に対しての国王の返答が、それだった。
失敗していい数は一つだけ。一つ失敗して、それでも感覚が掴めないようであれば、再度報告。貴重なものなのでしょうがないが、リィカにはかなりプレッシャーがのし掛かる話だった。
※ ※ ※
魔封じの枷の作成にある程度の目処がついてから、一週間がたった。一週間たってようやく、リィカは再び魔封じの枷作りに着手することができた。
一週間かかった理由は、リィカ自身が晩餐やら鏡作りやらお茶会やらで忙しかった、というのもあるが、一番は国王がなかなか決断を下せなかったからである。
唸りながら悩みながら、出した結論がそれである。実際に唸って悩んでいるところを、リィカも目撃してしまったせいで、できないとも言いにくい。何としてもこれで感覚を掴まなければと思うのだが、思えば思うほどにプレッシャーだ。
「いきなり作ろうとしないほうが良いですよ。まずは、魔力を探っていってはどうですか?」
「……そう、なんだけど」
ユーリのアドバイスに、躊躇う。分かってはいるのだが、早く作らなきゃという焦りがなくならない。
「何かあるんですか?」
「ライアン伯爵から催促されたんだ。……気にするな、リィカ。それで失敗したら、その方が大変だ」
ユーリの問いにはアレクが答えた。
そうなのだ。リィカが王宮にいるせいで、ライアン伯爵も会いに来やすくなっていて、遠回しにまだかまだかと言ってくる。熱心なのはいいのだが、現状どうすることもできない。
結局、国王やアークバルトが対応することもあったりする。
リィカはふーと息を吐いた。
アレクの言うとおりだ。ゆっくりやろうと思って、魔封じの枷に手を伸ばす。自分が水の魔力を乗せるべき魔力をゆっくり探る。その魔力を完全に覚えられるまで、探って感じ続ける。
地味すぎる作業だが、それが一番の早道だ。
――アレクとユーリが見守る中、集中したリィカは、結局その日のうちに失敗することなく一つ目を完成させた。
※ ※ ※
「できたのか」
そう言う国王の声には、驚きとほんのわずかな呆れが混ざっていたが、リィカは気付かず謝罪した。
「は、はい。その、遅くなってしまって、申し訳ありません」
「ちっとも遅くないだろう。大体、作り始めたのは今朝じゃないのか。最初は失敗するかもしれぬと言っておったのに」
「……あ、え、えっと」
責めるようにも聞こえる言葉に、リィカは言葉に詰まる。だがそこは、当然一緒にいるアレクとユーリがフォローしてくるだろうと思っているからこそ、国王も言えるわけで。
「早くできたんですから、いいじゃないですか」
「これでも、失敗しないように慎重にやっていたんですよ」
責め返されてしまい、国王は苦笑する。リィカが大切に思われているのは良いことだ、と内心で思いつつ、別のことを口にした。
「それで、今あるものを全部作れるか?」
「はい。ただ、やっぱり時間はかかってしまいますけど……」
申し訳なさそうな顔のリィカに、国王は頷いた。これで、一瞬で全部できますと言われたら、その方が引いていた自信がある。
「では、一日一つずつ作ってくれ。今後かかる時間が短くなるようなら、増やすかもしれぬが。空いた時間を、魔法師団の指導に当てて欲しい」
リィカを見る。すぐ頷くかと思ったが、何かをためらうような様子を見せる。やはり荷が重いのかと思ったが、それを理由に話をなしにすることはできない。そう思い、少し厳しめに問いかける。
「どうした」
「いえその……元々はわたし、勉強するために王宮へ来たと思ったのですが」
「そういえばそうだったな」
これはさすがに笑うしかない。これまで平民として暮らしてきたリィカだ。学ぶべきこと、知らなければならないことは、たくさんある。確かに、その勉強のために王宮へ来てもらった。
だが実際のところ、勉強らしい勉強はしていない。これでいいのかと思ってしまうのは、分からなくもない。けれどここまでリィカを見てきた国王の感想は、そこは優先しなくていいというものだった。
「そなたのフォローは、アレクでも誰でも、儂でもできる。だが、魔法師団員への指導はそなたしかできない。ということで、頼んだ」
「……はい、かしこまりました」
一瞬、押し黙ったリィカだが、結局素直に頭を下げた。
それを見ながら、国王は思う。
あくまでも、リィカの指導を受けるかどうかは個人の自由であり、希望者のみとした。その条件であれば、普通に考えれば魔法師団長であるレイズクルスとその一派が、来ることはない。
だが果たして、どう出てくるか。
リィカがきっかけとなって、その権力が落ちてはきているものの、まだまだ強い。そして、レイズクルスもその程度は分かっているだろう。
落ちてきていることに納得するような人物ではない以上、リィカに接触できるこの機会を、逃すとも思えない。接触して……何とかしてリィカを貶めようとするだろうが、逆にそれを破れれば。
(レイズクルスの権力を、一気に落とすチャンスにもなる)
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