精霊王女になった僕はチートクラスに強い仲間と世界を旅します

カオリグサ

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魔族の国17

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 四階は真っ暗だった
 階段の横にカンテラがひとつだけかけられている
 これを持って進むみたいだね
 はっきり言ってカンテラの照らす範囲しか見えないこの状況は滅茶苦茶に怖い
 半径一メートルほど?
 ゆっくりゆっくりと注意しながら進むと廊下で気配がした
 カンテラの光を最小限に絞って目を凝らす
 本当なら暗闇でも僕たちなら見えるんだけど、それじゃぁゲームにならない
 だから暗視魔法は使っていないんだ
 さて、気配はどこだろう
 辺りを恐る恐る探ってみるけど、ただただ気配があるだけで姿は見えない
 それもかなり不気味な気配
 正直これ以上進みたくないんだけど・・・
「あ、あそこに何かいますよ」
 う、見つけなくていいのに
 アスラムが指さす方向を目を凝らして見ると、確かにナニカいた
 それはゆらゆらと揺れ、ボサボサの髪を振り乱している
「う、うわぁ、いかにもな幽霊? なんだけど…」
 そいつはこちらに気づいたのか、ゆっくりと近づいてきた
「来てる! 来てるよ何あれ!!」
「うぅぅううあああぁああああああああ!!!」
 この世の者とは思えない叫び声をあげる
 どうやら女の人のようだ
 その判別すらできないほど不気味な幽霊は近づきながら顔をあげた
 眼は白く濁り、口から覗く歯は黄色く汚れ、よだれをたらしている
 さらに細い腕はボロボロで爪がはがれ、指先から骨が飛び出ている
「やばいやばい、明らかに今までのレイスやゴーストよりやばいよ!」
 カンテラを前にかざし、廊下を走って逃げた
 が、そいつは目の前に霧のようにまた現れ、腕を伸ばしてきた
「ぴゃぁあああああ!!」
 先頭にいたエンシュが今まで出したことのないような声をあげて僕に抱き着いた
「ぐ、ぐるぢい、エンジュぅ~」
 息が詰まり(呼吸してないので詰まりません)、腕をタップするけど放してくれない
 そのまま幽霊と反対方向に走り出した
 脱兎のごとく逃げ続け、振り返ってみると追ってきていないみたいだ
「な、なんなのあれ、明らかに世界観違うじゃないか!」
 怖すぎてなんだか怒りが込み上げてきた
 プリプリ怒っていると、隠れていた部屋の扉が叩かれた
「ひぃ!」
 鍵を閉めたはずの扉のノブがゆっくりと回り、扉が開くと、あの女が立っていた
「アハハハハハハハアハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!」
 狂ったように笑っている
 怖すぎるよ!
 また近づいてくるので横をすり抜けて廊下に出た
 これじゃぁキーアイテムを探すどころじゃない
 とにかく走って逃げているうちに、アイテムの存在を思い出した
「そ、そうだ! お札!」
 地面に手早く設置してみると、女がそれを踏んだ瞬間硬直した
「なるほど、動けなくするんだ」
 これなら探す時間もありそう
 幸いお札トラップは枚数が多い
 念のためもう一枚仕掛けてから奥の部屋に飛び込んだ
 どうやら倉庫のようだ
 雑貨が所狭しと並んでいて、埃っぽい
 棚やタンスを一つ一つ調べていくと、お札と聖水をいくつか見つけた
 これを使って霊を足止めするってことか
 しばらく霊と追いかけっこをしてて気づいたんだけど、ここにはあの霊以外いないみたいだね。ってことは、あの人がキーパーソンなんだ!
 それから霊は僕たちを見失ったみたいで、スムーズに探索できた
 なかまんじゅうも見つけたのでこれで手持ちは二個目かな
 廊下の戸棚を調べていると、後ろで気配がする。というか笑ってる
「ヒヒ、ヒヒヒヒヒヒヒ、ミーツケター」
 怖い!
 僕は振り向きざまになかまんじゅうを投げた
 それは口を開けて笑っている女の口に見事に入る
 女幽霊はごくりと飲み下す
 すると、ボサボサだった髪はまっすぐストレートになり、その頭頂部からちょこんと角が覗いた
 顔は穏やかになり、驚くような美少女に変わった
 ボロボロでやせ細った腕も張りと艶を取り戻し、少女特有のぷにぷにとした柔肌にと変わっていく
「おお、あなた方のおかげで正気を取り戻しました。私の名前はトモエ、この館の王女の親友です」
 トモエさんは王女の護衛兼親友だったらしい
 昔剣術の旅をしていた鬼人族の彼女は、かつてこの地にあった人間の国で王女と出会い、その魅力にすっかりやられ彼女を生涯守り抜くと決めたらしい
 でも療養に来ていたこの館で、彼女は無念にも悪い臣下に先導された兵たちに殺されてしまったそうだ
 もちろんその兵たちよりも彼女は強かったんだけど、数に押されて傷を増やし、最後には首を切り落とされたらしい
 だから、彼女は今首が取り外し自由、別に見せてくれなくていいのに見せてくれた
「悔しかったですよ。親友を守れなかったのですから」
 悲しそう
「でも、今はいつでも王女様と一緒にいれますからね。悠々自適の幽霊生活をしてますよ」
 聞くところによると、生前の彼女は鬼ヶ島の鬼人で、死後は怨霊という恐怖を支配する種族になったみたい
 それであんな怖さを演出できたのか
 怖い、怖すぎるよトモエさん
「こちらが上へ続く階段です」
 トモエさんが案内してくれたところはただの壁だ
「あれ? 何もないけど」
「仕掛け階段です」
 トモエさんが壁を触り、押した
 すると一部がくぼんでカチリと音がする
 それによって壁が上にせりあがり、階段が出現した
「これで上に行けます。王女様もそちらにいるのでよろしくお願いしますね」
「ま、待ってトモエさん、まだキーアイテムが見つかってないんだけど」
「おっと、忘れてました。これを」
 大きな胸、その胸の谷間から取り出したのは紐に通されたイヤリングだ
 王女のイヤリング、装飾もきれいで、宝石が輝いている
「これはですね、私とおそろいなのですよ」
 髪を掻き上げると、耳に同じ形で色違いのイヤリングが見えた
「親友の証に一緒に買ったんです。あの時は嬉しかったなぁ」
 眼に少し涙を浮かべている
「し、失礼しました。お客様の前なのに」
「いえいえ、大切な思い出を聞かせてくれてありがとうございます」
 涙をぬぐうトモエさんと別れ、僕たちはいよいよ最終ステージである五階にたどり着いた
 ちなみにこの館をクリアできたのは三十年の歴史の中で六組ほど
 たいていの人が四階でリタイアしちゃうらしい
 そりゃぁね、あの怖さなら仕方ないと思う
 だってエンシュは今上の空でブツブツ独り言を言ってるくらいだし・・・
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