精霊王女になった僕はチートクラスに強い仲間と世界を旅します

カオリグサ

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竜人族の国→魔族の国2

 セルベーナに到着すると、たくさんの魔族の人達が負傷してところどころに転がっていた
 中にはもう手遅れの人までいる。急いで僕らは負傷した人々の治療を始めた
「サークルオブフルヒール!」
 合成魔法で作り出したのは広範囲に広がる上位回復魔法で、その範囲内の任意の人達、この場合は魔族の人達を一気に回復させることができた
 死の淵にいた人は何とか引き戻せたはず
 あとは魔族特有の回復力の強さに任せるしかないね
「あれが、この土地に封印されていた魔物、マデュペラですか。キーラの先々代魔王が作り出したと言われる忌み物、私達精霊を滅ぼせる力を持った魔物です」
 マデュペラはかつて世界を手に入れようとしていた魔王が作った対精霊兵器らしい
 ただ暴走してしまったのでこの地に封印されてしまったんだとか
 見た目は大きな黒いヘドロの塊なんだけど、見ただけでそれが強大な魔力の塊だってことは分かる
 なんでも先々代魔王は大量の魔族を生贄にしてこの化け物を作り出したらしい
 なんて醜悪なことをするんだろう。こんな負の遺産は今ここで断ち切らなきゃね
「合成変化! フルバーストレイレイン!」
 マデュペラの頭上、空中に超巨大な魔方陣が浮かんでそこから大量の光が雨あられの如く降り注いだ
 魔力の塊なら光魔法でそいでしまえばいい。そう思ったんだけどどうやらそんなに簡単には行かないみたいだ
 光は全てマデュペラに吸収されて消えてしまった
「それなら、古史魔法、ギガエクスロプス!」
 今度は体内に小さな火種を撃ち込んでそこからマデュペラの魔力を吸収して爆発する魔法を放ってみた
 確かに爆発はしたんだけど、その爆発すら飲み込んでしまった
「古史魔法まで効かないなんて」
 正直こいつを倒せるイメージが浮かばない
 さすがに対精霊兵器と言われるだけのことはあって、僕や四大精霊がいくら強力な魔法を放っても全く意に介していないし、さらに事態は悪化していく
 僕らの魔法から魔力を吸い取ったマデュペラは大きく膨れ上がって一気に瘴気をまき散らした
 途端に僕らは瘴気に包まれて動けなくなってしまった
「う、ぐ、くるし、い」
 呼吸をしないはずの僕たちがこれだけの息苦しさを感じている。まわりでは魔族がパタパタと倒れ、息絶えてしまった人まで
 こんなこと、許せない。でも精霊の僕にとって奴の吐く瘴気は猛毒で、苦しくて動けない
 段々と魔力が失われて行って、僕はそこでプツリと意識が途切れた
 真っ暗な場所で僕は目を覚ました。いや、夢の中かなこれは?
 そこには何もなくて、何も見えないし何も聞こえない。ただただ僕は不安に押しつぶされそうになっていて、怖くて仕方なくて、泣いてしまった
 誰もいなくて不安で
「テュネ、エンシュ、アスラム、フーレン、ラキアさん、助けて!」
 そうやって叫んでも誰も助けはこなかった
 このまま僕はこの闇に溶けて、消えちゃうのかな?
 そう思っていると、どこからか微かに声がした
「誰なの!?」
 その声にこたえるように聞いてみた
「・・・! あなたの魂は」
「だ、誰? 一体何を言ってるの!?」
「・・・、あなたは私の・・・。メ・・と、あなたは・・・。だから、あなたにも」
 その声は僕に何かを伝えようとしているんだけど、ところどころにノイズが入って聞こえにくい
 僕の名前を呼んでいるようだけど、その名前は特に激しいノイズが入る
「力を、あなたの本来の力を、解放して」
「力? 僕の?」
「メ・・は解放・・・。あなたももうすぐ。私はもう意識だけしか送れない。・・・、いずれ、また」
「待って! 僕はどうしたらいいの? 本来の力って何!?」
 もうその声は答えてくれることはなかった
 でも、なぜだか僕はその声に懐かしさ、母さんのような安心感を感じていた
 それになんだか勇気が湧いてくる。この暗闇を打ち払えると確信して、僕は思いっきり体の内からの力を発揮してその暗闇を払った
 途端に周囲が明るくなって、マデュペラの姿が見えた
 僕の隣では四大精霊がハァハァと肩で息をしている
 そんな彼女たちをラキアさんが心配そうに介助していた
「これは、時間が全然経ってない?」
 さっき僕の意識が途切れてから数秒ほどしか経っていないみたいだ
 そして湧き上がってくる力
「いける、これなら」
 僕は体に沸き上がった新しい力を体内に巡らせて回転させると、魔法とは違う流れに高揚して感情の高ぶりを感じた
「古史魔法、アンティゴナ!」
 まずはこの瘴気を何とかしようと頭に浮かんだ魔法を使ってみたんだけど、その魔法には魔力だけじゃなくてよく分からない力も混ざっていた
 でも効果は確かだったみたいで、一気に瘴気が吹き飛んだ
「これなら動けます!」
 テュネたちもどうやら動けるようになったみたい
「テュネ、ラキアさんを連れて離れてて。エンシュたちも!」
「しかしそれではリディエラ様が!」
「いいから早く!」
 僕のその剣幕にテュネたちは慌ててラキアさんを抱えると飛び去った
「さて、一対一だよマデュペラ。僕はさっきまでの僕じゃない。この一撃はお前に殺された魔族たちの無念の一撃だよ」
 僕は周囲にある魔族の念を集めた
「フェトムフレ」
 集まった念を増幅させて指先からレーザーのようにマデュペラに撃ち込んだ
 するとマデュペラは一気に膨張して弾けた
 辺りには濃い魔力が降り注いで、それがまるで星の瞬きみたいに綺麗だった
「この力、一体何なんだろう?」
 突如僕の中から目覚めた力は、この時以来使えなくなった
 でもまだその力は僕の中にあって、また眠っただけだとわかってる
 いつかまた僕はこの力を使うときが来るのかもしれない
 神様すら凌駕しているこの異様な力をね
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