精霊王女になった僕はチートクラスに強い仲間と世界を旅します

カオリグサ

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竜人族の国→魔族の国3

 マデュペラを倒せたのはよかったものの、魔族の人達に犠牲者を出してしまった
 僕がもっと早く駆け付けていられれば・・・。もっと早くあの力を発揮できていたら、きっと結果は違っていた
 僕は無力だ
 そうやって落ち込んでいると、最前線でマデュペラの動きを止めていたキーラちゃんが泣きそうな顔で走って来た
 彼女が食い止めていてくれたおかげでマデュペラも思ったような侵攻ができなかったんだと思う
「リディエラ! リディエラ! 大変なんだ! リドリリが、リドリリがぁ!」
 リドリリさんはキーラの幼馴染で側近の一人。普段は親友らしく接しているキーラとは大の仲良しの気の言い人だ
 そんな彼女は今キーラを守るために瘴気を大量に浴びてしまい、死の淵に立っているらしい
 それもこの瘴気はただの瘴気じゃなくて、体内の魔力に作用して内側から体を破壊するウィルスのようなものらしい
 これだと僕らが浄化しようにも魔力回路ごと破壊してしまう形になり、そうなれば魔力が命に直結する魔族は死んでしまう
 リドリリさんは苦しそうに吐血し、意識がはっきりしていない
 テュネもこのような状態の魔族をどう助ければいいのか分からないらしくて珍しくうろたえていた
「そ、そうです! 仙人の仙薬なら!」
 仙薬は仙人たちが作り出した特殊な薬で、その効果も様々
 彼らの薬さえあればなんとかなるはず、なんだけど、仙薬は仙人に認められた人にしか取引が無い
 それ故につい最近まで世界の敵だった魔族国では一切流通がないんだ
 それなら転移装置で向かえばいいと思ったんだけど、その装置は首都リガインの城にある
 そこまで戻らなきゃ使えないんだ。つまり、このままだと間に合わない
 今僕と四大精霊で必死に回復魔法をかけてなんとか進行を食い止めてはいるけど、体が破壊されるスピードの方が若干早くていたずらにリドリリさんを苦しめている
 このままゆっくりと衰弱して、苦しんで死ぬしかない状態。僕は彼女を助けられないのだろうか
 今はそんなことを考えている余裕なんてない
 とにかくリドリリさんを救うのに必死で、僕らに近づく気配に気づけなかった
「ほぉ、精霊様が倒されたのですか! さすがですな」
 そこに立っていたのは太ったおじさん、そしてその後ろにキャラの濃そうな七人。 計八人の人達が立っていた
「わしは漢鍾離かんしょうり。酔八仙が一人、こう見えて仙人ですじゃ」
 その人は、仙人、それも酔八仙という実力者だった
 何で仙人がここに?
「来てくださいましたか! 助かります。私が魔王キーラです」
 どうやらキーラちゃんが呼んでいたみたいだ
 あとで聞いた話なんだけど、キーラちゃんは仙人とすでに交流を持っていて、今日はちょうど仙族の代表を任された酔八仙との交流会だったみたい
 そしてちょうどその日にマデュペラ復活の知らせを受けて、酔八仙のみんなは駆け付けてくれたみたいだった
「さて、その子をこのランちゃん先生が診るからここに寝かせるし」
 ランちゃん先生?という仙人は本名を藍采和らんさいかさんと言って、仙薬のスペシャリストなんだとか
 これでリドリリさんも助かる!
「ふむふむ、見たところ魔力回路に瘴気が食い込んで内臓系統を破壊しているし。まずはこれを飲ませるし」
 ランちゃん先生が取り出したのは瓶に入ったピンク色の液体
 苦しそうに息するリドリリさんにそれを飲ませると少し呼吸が落ち着いてきた
「痛み止めと睡眠薬だし。これで割腹しても問題ないし」
 どうやら飲むタイプの麻酔だったみたい
「次はこれを注入するし」
 今度はリドリリさんの履いていたズボンとパンツを脱がせるとお尻から緑色の液体を注入した
 脱がせ始めたあたりから慌てて僕は光の魔法でベールをかけて周りから治療の様子が見えないようにした
 まわりには魔族の人達(男性が大半)が心配そうにリドリリさんを見ていたしね
「今注入したのは魔力回路を正常に機能させて強化する薬だし。これで多少強引に瘴気を引きはがしても魔力回路は壊れないし。それから今度は、この短刀で魔力回路のある位置を切り開いてっと・・・。ほら、ここ、心臓の横に瘴気だまりができてるし」
 う、うう、血がいっぱいでめまいが
 でもランちゃん先生の手際はさすがとしか言いようがなくて、驚くべき速さで執刀していく
 彼女の使う短刀はメスのような形で、まさに手術をするのに適していた
「ここからゆっくりと瘴気だまりを斬り剥がしていって、薬で出血を抑えながら魔力を注いで魔力流を止めないように慎重に進めていくし・・・。よしっと、大きいのは取り除けたし。あとはこの薬で少し体に残った瘴気を浄化していくし」
 そう言うとランちゃん先生はまだ瘴気が残っている場所を切り開いて薬を注いでいって、瘴気を浄化した
 僕らじゃここまで繊細な治療はできない。まるで凄腕の名医のようにランちゃん先生は輝いて見えた
 見た目は小学生くらいだけど、真剣に治療を施していく姿は先生という呼び名にふさわしい
「よしよし、最後に切り開いた部分にこれをかけてっと」
 紫色の液体を振りかけると、斬られた場所が元通り塞がっていき、しかも傷が全く残っていない
「うんうん、このランちゃん先生の新薬は絶好調だし。傷も残ってないから女の子のこの子も後遺傷《こういしょう》にはならないし」
 この間およそ一時間ほど
 たった一時間でランちゃん先生は死の淵にいたリドリリさんの一命をとりとめてくれたんだ
「ありがとう、ありがとうございます仙人の皆さん! おかげで、リドリリは、グスッ。本当にありがどうごじゃいまじだぁあああ、ああああん」
 大泣きするキーラちゃん。それだけリドリリさんのことが心配だったんだね
 僕らじゃできなかったことだ
「八仙の皆さん、僕らじゃどうしようもなかったよ。本当にありがとうございます!」
 僕が頭を下げると八仙は少し戸惑ったのちに笑った
「いえいえ、わしらも精霊様のお役に立てたなら光栄ですじゃ」
 ひとまずこれで魔族国の危機は去った。でも、それにしても何かがおかしい
 やっぱりこれも、件の封印解除事件が関係しているんだと思う
 いまだにその事件の犯人が掴めないのがもどかしい!
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