精霊王女になった僕はチートクラスに強い仲間と世界を旅します

カオリグサ

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戦いの始まり1

 その日は僕たちにとって忘れもしない出来事となった
 アンデッド国でサクラさんたちと別れてから数日後の出来事だった
 もうあの異世界人たちはいない。いないはずなのに僕はどこか不安がぬぐえずサクラさんと共にカイトさんの住むこの世界と異界を結ぶ扉の前に来ていた
 偶然空間が開いたり、大きな力を使うでもない限りはこの扉から異界の何かはやってくる
 本来なら世界同士を結ぶ狭間の世界はとてつもない力を持つ者しか通れない
 狭間の世界では存在が揺らいで消えてしまう
 そう言えば母さんに聞いた話によると、僕が前世でいた世界地球は魔力などの力の流れがかなり薄く、人々は体の魔力を外に出すことができずに独自の進化をした
 そのためか、地球から流れてきた人たちは狭間の世界で体が作り替えられ、その体内に有した力にそった体になったり、体内の力を発現して強い力を持つようになる
 かくいう僕も、その一人だ
 それからこの世界に来てる異世界人たち
 流された人や転生した人たちもいるけど、僕はまだ数人しか出会えていない
 結構な人数がいるはずだから、どこかですれ違っているはずだけどね
「それで、リディエラちゃんはずっと不安が拭えないのね?」
「はい、どうにも何か別の大きな出来事があるように思えて」
「やはりこの子は・・・」
「え?」
「いえ何でもないわ」
 サクラさんは真剣に何かを考えてるみたい
 カイトさんの方は異世界人二人に何やら指導をしてるし、とりあえず僕はアンミツ姫のおもり、もとい話し相手をすることにした
 普段は貫禄があって尊敬できる竜神だけど、今は子供っぽくて甘えん坊になってて可愛い
 どうやらサクラさんに再会できたことで子供心が戻って来たみたいだ
「ほれリディエラ。わらわの頭を撫でてよいぞ。もっとなでなでしろ」
「ふふ、よしよし」
「ふぁああ、角の付け根のとこがいいのじゃぁ」
 恍惚とした表情で尻尾を振ってる
 それからサクラさんとカイトさんは何やら話始めた
 異世界人のリィリアちゃんとアスティラさんはカイトさんに言われた通り魔力や様々な力を体内で練ってるみたいだ
 ちなみにハクラちゃんとクロハさんは料理を作ってくれてる
 実を言うとあの二人、ソウカさんと一緒に料理したりしてて結構うまいんだ
 
 しばらくすると二人は話し終え、それと同時に白黒姉妹の料理も完成した
「おーい二人とも、こっちに来て一緒に食べよう」
 カイトさんがリィリアちゃんとアスティラさんを呼ぶ
 でも二人は集中しているのかその声に気づいていないようだ
 仕方なく見ていると、突然二人の背中から力が一気に吹きあがり、ばさりと白い翼が生えた
 これは、かなり前に見た覚えがある
 確か黒族の国にある人工迷宮の上層、そこにいた天使イアさんと同じような翼だ
「これはこれは、こんなにも早く天使になるとは。僕が鍛えちゃったからアマテラス母さんの天使ってことになるのかな?」
 そう、何を隠そうカイトさんはアマテラス様の息子さんだ
 他にも五色の王っていう人間族の素体になった人達がいるんだけど、その中でもカイトさんは黄金人という人族最強だ
 そしてリィリアちゃんとアスティラさん
 リィリアちゃんの方は十二歳くらいの少女に見えるけど、中身は五十代を超える
 見た目は可憐で、白いゴシックロリータ風の衣装で、もともと宗教家なんだそうだ
 聖女と呼ばれてたらしい
 それからアスティラさんは魔族の女性で、非常に美しい容姿と誰にでも分け隔てなく接する優しい性格、そしてすでに婚約者がいるらしいという驚くべき情報
 二人共新世代という僕と同じく力ある転生者達だ
 今まで天使になるためにカイトさんの元で研鑽を積んでたらしいけど、天使になる条件は既にそろっていたため、あとは体になじませるだけだったらしい
「はぁはぁ、疲れましたよカイトさん」
「うむ、でもまぁこれで私達も天使というわけですからして、カイトさんの力になれるというもの」
 美しくてふわりとしたもふもふの翼。思わず触ってしまった
「ひゃん!」
「ひゅえ!」
 二人共可愛らしい声で驚く
「わ、私の背後をここまで容易に・・・。恐ろしい子ですね」
「翼って敏感なのね、知らなかったわ」
 生えたばかりの翼を二人とも撫でている
「ほら早く来なさい。ご飯が冷めますよ」
 サクラさんの一言で二人とも席に着いた
 みんなでご飯を食べ、和気あいあいと話していたけど、僕はまだずっと心に不安の靄がかかったままだった
 そしてその不安が直後に当たることになった
 突如異界の扉がバコンと音を立てて開き、そこから一人の男が現れた
 男は大剣を担ぎ、こちらを人睨みするとニヤリと笑っていきなり襲い掛かって来た
 それによってご飯が机ごと吹き飛ばされてしまった
「わ、私の、ご飯が、一所懸命作った、私のご飯が」
 ハクラちゃんから何か不穏な気配を感じたのでクロハさんと共に異世界人二人を避難させた
「ハクラ、久しぶりにブチ切れてるわね。危険だからあなた達は私達の後ろにいなさい」
 ハクラちゃんがゆらりと立ち上がる
 その目は赤く赤く、恐ろしいほどに光っていた
「リディエラ、あれがあの子の本性です。いつもはのほほんとして気優しく、誰に対しても優しい性格で可愛くて愛らしい子ですが、ひとたびキレるとその、私でも手を付けられなくなりまして」
「えっと、それって今のハクラちゃんって、ヤバイ?」
「なるべく離れてください。ここが、コキュートス並みの絶対零度に包まれます」
 そう、これが生涯忘れられないほどのトラウマになる出来事の始まり
 ブチギレハクラちゃんによる敵の残忍料理ショーだ
 死なないようにてある程度手加減しつつ
 今しがた現れた大男を恐怖で支配した
 極寒よりも凍える世界を創り出し、その光景はさながら地獄、コキュートスそのものだったろう
 怖い、ブチギレハクラちゃん怖すぎる。言い表せないほどに!
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