精霊王女になった僕はチートクラスに強い仲間と世界を旅します

カオリグサ

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無能の異世界人12

 だが相手は空間を喰らう能力以外にも今まで喰らった者の力まで使い始めた
 だんだんと押され始め、やがてマシクラの能力の一つがサカシタの腹部を貫く
「ふん、その程度で勇者か。どれ、お前の能力は俺のものと似ているが、いちいち咀嚼しなくていいというのはいいな。喰らってやろう」
 男は大きく口を開けるとサカシタに迫る
「させるかっての!」
 倒れたサカシタにマシクラの口がかぶさろうとしたその時、どこかへと飛ばされていたアモンが戻ってきてその顔面に蹴りを入れた
「ブァアア!!」
「女の子を傷つけるってのはいただけないね。ましてや食べる? お前みたいなクズはさ、消えた方がいいよね?」
 世界の種に選ばれた五人の中で最も強い力を持つアモン
 彼はマシクラが何かの力を使おうとしている手を掴む
「掴んだな? お前はもう終わりだ」
 マシクラの能力が発動するが何も起こらない
「なんだ? 何故破裂しない? 振れるだけで人を風船のように破裂させる力を使ったんだぞ?」
「ああそんなの、返せばいいんじゃない?」
 アモンは悪魔的な微笑を浮かべる
「返、す? まさか!」
 一気に能力が逆流し、さらには増幅されていたのかマシクラは一瞬で弾けて消えた
 辺りには血の雨が降り、サカシタとアモンは真っ赤に染まる
「大丈夫かいサカシタちゃん?」
 穴の開いた腹部にアモンが手を翳すと、傷はみるみると治って行った
 笑顔のアモン。血濡れた笑顔は彼の名のようにまさしく悪魔のようで、サカシタはがくがくと震える
「あ、あ、こ、来ないで!」
 サカシタに拒絶されるが、アモンは微笑を崩し、いつも通りの優しい笑顔、少し困ったかのような笑顔で差し出した手を引っ込めた
 それを見てサカシタは震えが収まる
「ご、ごめんなさい! 助けてくれたのに」
「いやいいんだ。怖がらせてごめんね」
 そんな二人の元に走ってくる仲間たち
「大丈夫サカシタちゃん!」
 レノンナはサカシタを立ち上がらせると顔に付着した血をぬぐってあげる
「すごいわねアモン、何をしたのあれ」
「うーん、相手の力を増幅して返してあげただけかな?」
「増幅?」
「そ、僕の力は反射と増幅。君たちの力も増幅できるよ? さっきのは相手が力を使って来たから、それを増幅させて逆に使ってやったんだよ。だから相手は自分の能力で自滅したってわけ」
 アモンも顔についた血を布でぬぐう
「これで依頼は完了ってことなのかな? それにしてもアモン、凄い力だね君の力」
「ハハ、まぁ怖がらせちゃったけどね」
 寂しげな表情のアモン
 みんなに笑っていて欲しい彼にとって、怖がられるというのは心にチクリと来るものがあったのだろう
 そんな彼の表情を見てサカシタも落ち込んだ
「ほれ、暗い顔しない。あたしらでウルの幹部?の男を倒したんだ。上出来さね!」
 こういうとき年長者の言葉に救われることがある
 今はその役目をエーテが引き受けた
 全員をよく見ているが故に彼女なりに気遣いをしたのだった
 サカシタも顔をあげ、六人は揃って街へと凱旋した

(あれはなんだ! あんなのがいるなんて聞いていないぞ俺は!)
 マシクラが消えたその時、一人の男がその様子を誰にも気づかれないよう見ていた
 男はマシクラという幹部の中でも上位に位置する男が消滅したことを本部に伝えるため転移をしようとした
「させないよ」
「なっ」
 男が転移門を開いた瞬間後ろに少年が立っていた
「馬鹿な、お前は今あいつらと」
「あのさ、僕は温厚で人の笑顔が好きなんだ。でも彼らの笑顔を壊そうって言うのなら僕は誰も許さない。あんたが誰かも知らないがなんかろくでもないやつってのは分かるよ。・・・させない。世界から笑顔は奪わせない!」
 少年が男に手を掲げると男は何かを言う暇もなく世界から消滅した
「これからも守るよ皆。僕の命に代えても」
 少年はその場から揺らぎ消えた
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