【本編完結】異世界再建に召喚されたはずなのになぜか溺愛ルートに入りそうです⁉︎【コミカライズ化決定】

sutera

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番外編

ダンス・ウィズ・ハビーズ 3

「とりあえず薬湯を飲め。体力の回復を早める効能がある」

お姫様抱っこをされたまま団長室に着き、ソファへと腰を下ろしたシグウェルさんはそう言ってお茶を準備するようユリウスさんに目配せをした。

「はい・・・。って、それはいいんですけどなんで膝の上なんですか!?」

シグウェルさん、私を腕に抱いたまま座ったものだからお姫様抱っこがそのまま私の膝抱きに移行している。

「座るのに違いはないんだ、特に問題はないだろう?それに俺の隣に降ろすのが面倒だ」

「面倒!?そんな理由で?」

何を騒ぐことがあるのかと、まるでこっちがおかしいみたいな顔をしたシグウェルさんにびっくりする。

ユリウスさんとかエル君の前でこんな事をされている私の羞恥心とかはどうなるわけ?

まるで人目もはばからずにいちゃついてでもいるかのようなこの状況に、きっと二人も呆れているよ!と顔から火を吹きそうになりながら文句を言えば、そのユリウスさんは苦笑いしながら私に薬湯だというお茶を勧めてきた。

「団長のソレって本当に面倒でそう言ってんだか合理的だから言ってんのか、それとも単純にユーリ様を手元から離したくなくてそうしてんだか全然分かんないっすね。ただ一つ確実なのは、ユーリ様がいくら文句を言ったところで無駄ってことっす。」

「え?だから諦めておとなしくこのままでいろってことですか!?」

「同じ伴侶だ、殿下やレジナスがしていて俺が駄目という理由もないだろう」

ユリウスさんの言葉と私の文句を受けたシグウェルさんは平然としてそう言ったけど。

まさかあの二人が私を膝に乗せてるから自分もやってみたくなったとか、そんな理由じゃないよね?

「それを飲んでひと息ついたら解放してやろう」

ふぬぬ、と気恥ずかしさにまた赤くなった私を面白そうに見つめながらユリウスさんの淹れた薬湯をシグウェルさんは手渡してきた。

「分かりましたよ、飲んでさっさと回復して膝から降ろさせてもらいますからね!」

ふーんだ、と口にしたお茶は爽やかなハーブの香りが鼻を抜けていく。

あ、おいしい。

そう思ってからハッとして口元を押さえた。

あれ?まさかこれ、さっきユリウスさんの言っていた『シグウェルさんの作った効率良くダンスを踊れるようになる何か』じゃないよね?

突然お姫様抱っこが膝上に座るのに移行したことに動揺してつい何の疑問も持たずに飲んじゃった。

どうしよう、これから私の身に一体何が起こるんだろう?

口元を押さえたまま身構えて固まってしまったら、そんな私にシグウェルさんとユリウスさんが不思議そうな顔をした。

「どうしたユーリ、熱すぎたか?」

「えっ、大丈夫っすか!ちゃんといつも通りの適温で淹れたつもりっすけど、まさか舌を火傷でもしたっすか!?」

え?あれ?何も起こらない?ていうか二人のこの感じだとこれは本当にただの薬湯だったらしい。

そういえばなんとなくさっきまでの内腿や足の重だるさが消えた気がする。

なんだ私の勘違いか、と思っていたらシグウェルさんが

「なぜ黙っている?まさか本当に口の中を火傷でもしたのか?見せてみろ、治してやる」

そう言って口元を押さえていた私の手をどけたかと思うとそのひんやりと冷たい指先が強引に口をこじ開けた。

「ふぁっ!?ひょ、ひょっと・・・っ」

レジナスさんみたいに太くてがっしりした指とは違う、ほっそりと長く優雅な指先のどこにそんな力があったのか。

器用にも片手でくぱ、とこじ開けた私の口の中を覗き込んだシグウェルさんにそのまま優しく舌先を撫でられた。

「なんだ、どこも火傷していないじゃないか。ユリウス、大袈裟なことを言うのはやめろ」

ユリウスさんをじろりと睨んで人騒がせな奴め、と言いながらなぜかまだ人の舌先を撫でている。

・・・っていうかこれ、他の人から見たらまるで私がシグウェルさんの指を舐めてるみたいに見えないかな!?

断じてそんな変態じみた趣味はない。

「ひょ、ひょっと・・・もうらめ・・・!」

止めてと言いたかったのに口を開けられたまま言った言葉もなんだかアレで、そんな状態で話したものだから唾液もつうっとシグウェルさんの指先を伝っていく。

ダメだこれ、なんかどう見てもいやらしい漫画か何かみたいなシチュエーションになっちゃってる・・・!

そう思ったのはユリウスさんもだったらしい。

「うわぁ団長!何やってんすか、独り身の俺にそんなのを見せつけて楽しいっすか!?何の嫌がらせっすか、羨ましい!ユーリ様えっちぃ!!」

薬湯を乗せてきたお盆を胸元に抱きしめながらそんな嬉しくない突っ込みを入れられてしまった。

だけど当のシグウェルさんはまるで意味が分からないとばかりに「は?」と眉をひそめると、やっと私の口からちゅぽんとその指を引き抜いた。

そのままパチンと軽く指を鳴らせば浄化魔法なのかあっという間にその指先は綺麗に乾き、シグウェルさんの指を伝って唾液に濡れた私の口周りも一緒に綺麗になる。

「人の口の中にいきなり指を突っ込むとか何するんですかシグウェルさん!」

改めて注意をしたけど

「火傷をしたかも知れない緊急事態だったんだ、君が怪我をしたのかとどうやら俺も相当慌てていたらしい。悪かったな、次は断ってからにする」

ふむ、と冷静に自分の心境を分析したシグウェルさんは真面目な顔で頷いて私を見つめてきた。

「・・・!!」

いやいや、『君の口の中に指を入れていいか』って断りをいれられた私がはいどうぞ、って許可するとでも?

そういう問題じゃない。

だけどどう見てもいつも通りの無表情で落ち着いて見えているこのシグウェルさんが、実は私が怪我をしたかも知れないと焦ってそんな事をしたとか、それはそれでちょっと嬉しいような・・・。

と、複雑な心境で頬が赤いままシグウェルさんの膝の上で黙ってあのアメジスト色の冷たい瞳を見つめ返していたら

「あーもう、何なんすか二人して!まだ式も挙げてないのにもうそんな新婚夫婦みたいな雰囲気を出して見つめ合っちゃって。見てらンないっすよ!ユーリ様、時間もないんだし回復したなら早くダンスの練習に取り掛かるっす!」

ていっ、とユリウスさんが私とシグウェルさんの間に持っていたお盆を手刀代わりに差し込んできた。

あ、そうだった。つい本来の目的を忘れるところだったと今度こそ慌ててシグウェルさんの膝の上から降りる。

足のだるさや疲れは即効性のある薬湯のおかげで消えていて問題なく練習が出来そうだ。

するとシグウェルさんも私に続いて立ち上がり、

「では前回のおさらいとリオン殿下達との練習の成果を見せてもらおうか」

とダンスの練習のために空けてくれている部屋へと私を促した。








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