【本編完結】異世界再建に召喚されたはずなのになぜか溺愛ルートに入りそうです⁉︎【コミカライズ化決定】

sutera

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番外編

ご注文は子猫ですか? 21

自分達の軽口の応酬がきっかけで私までとばっちりを受けたことに気付いたリオン様は、まだ私をぎゅうぎゅうに抱きしめたままエヴァン様に改めて向き直った。

「とにかく、もしあの時のやり取りが発端なら謁見の間に向かうのに同行していたブルグ王国の者達の中に君への暗殺を指示した者がいるってことだろう?」

「あー、うん、そうだねぇ・・・」

リオン様の指摘にエヴァン様はそれまでのふざけた雰囲気から一転して少しだけやや気落ちしたように下を向いた。

「今回の訪問には農耕技術や製鉄技術の視察のためにウチの国からは職人や技術者達も大勢帯同している。だけどイリヤ陛下への謁見を許されたのは俺の他に、二人の王子達からの勅使・・・っていう名目であの子たちそれぞれの派閥の重臣から遣わされた使者や貴族達だけだったから・・・」

「あの場で僕達の軽口を聞いていたブルグ王国の者は王子に関係する貴族だけってことか。厄介だね」

そう。それはエヴァン様が一番避けたい二人の甥っ子王子様達と自分との対立を意味している。

それでも、厄介だねと言ったリオン様の言葉にエヴァン様は顔を上げた。

「でもあの子達はまだ幼いから。俺を狙うよう命じたのはあの子達そのものじゃなく、あの子達に間違った忠誠心を示そうとして勝手に動いた貴族かも知れない。もしくは二人それぞれの母親である王妃と側妃、どちらかの手の者かも。そこをはっきりさせたいから、騒動を大きくせずに処理してもらおうと身柄の引き渡しはレジナスに頼んだんだけど」

そこでちらりとエヴァン様に視線を向けられたレジナスさんは静かに頷いた。

「俺もエヴァン様がそう考えておられるのだろうと思い、奴らを捕縛した騎士団の連中には余計な詮索はしないよう口止め済みです。尋問にも最小の人数で俺が選んだ者達だけを関わらせています」

「さすがレジナス!ありがとう助かるよ。それにしてもまさか、あれだけ炙り出しに苦労していた国内を乱す元凶への手がかりになりそうな奴らをここで捕まえることになるなんてねぇ。刺客の黒幕が分かれば後はどうとでもこちらで対処できるから、早く何か分かればいいんだけど」

ありがとうと言ったエヴァン様は大袈裟な仕草で「さあ遠慮なく食べて!」とお礼代わりにレジナスさんの目の前のお皿にマドレーヌやクッキーを山盛りに積み上げた。

対して、甘い物はそれほど得意じゃないレジナスさんは自分より位の高い人がしたことをさすがに断れずにはい、とかしこまりながらも密かに眉根を寄せて困っている。

だけどエヴァン様はそんなレジナスさんにお構いなしに

「あっ、これ俺が贈ったスミレの花の砂糖漬けじゃないか!これはこうしてクリーム入りクッキーに挟んで食べると花の香りと甘さが抜群なんだよ。さあ食べてごらんよ!」

とテーブルの上の小さな陶器の蓋を開けて中身を確かめると、そこからたっぷりすくい取ったスミレの花をクリームクッキーに塗ってレジナスさんに差し出した。

コワモテのレジナスさんがスミレの花の砂糖漬け入りクッキーなんて乙女なものを口にするのは全然想像できない。

ちなみにそれをレジナスさんに勧めているエヴァン様、あまりにも目を輝かせてワクワクしている。

あれ?もしかしてそれ、断れないのをいいことにレジナスさんで遊んでない?

さっきまでの深刻そうな雰囲気はどこに行っちゃったんだろう。やっぱりエヴァン様は根がふざけている仕様みたいだ。

・・・まあ、だからこそ自分や王子様達を取り巻く複雑な状況でもあまり思い詰めすぎないでいられるのかもしれない。

そんなエヴァン様に遊ばれているレジナスさんがちょっと気の毒になったのと、さっきから抱きしめられて身動きできないせいで何も食べられずにいたのにさすがに我慢できなくなったので、

「レジナスさん、代わりに私が食べますよ?」

と助け舟を出した。するとレジナスさんにクッキーを差し出していたエヴァン様が

「ええ!?貴女が食べてくれるの?でもいいのかなあ、リオンの目の前でそんな」

と私の方へとクッキーを向けた。いや、食べるとは言ったけど食べさせて欲しいとは言ってないし。

それについさっき、その軽口だか冗談だかが元で刺客に狙われる羽目になったのを反省したんじゃなかったの?

そんなことを思いながら

「とりあえずリオン様、離してもらってもいいですか?このままだと私、いつまで経ってもお菓子も紅茶も口にできないので・・・」

リオン様にお願いする。そもそもリオン様に解放されれば私は普通にお菓子を食べられるのだ。

だけどそんな私の言葉が届く前に、手ずから私にクッキーを食べさせると軽口を叩いたエヴァン様に反応したリオン様は、私を離すどころかさらにきつく抱きしめた。

と同時に私の顔のすぐ近くに突然レジナスさんの顔がぬっと現れたかと思うと、口元に近付けられていたクッキーを一口でばくりと食べてしまった。

「えっ・・・?」

一瞬の出来事に、エヴァン様はポカンとしてクッキーを掴んだ形のままの自分のからの手と、眉根を寄せたままバリバリとクッキーを噛み締めているレジナスさんの顔とを交互に見ている。

私も何が起きたのかとレジナスさんを思わず見てしまった。

レジナスさんが第三者にお菓子を食べさせてもらった・・・?いや、正確に言えば食べさせてもらったというよりかは自分から食いついた、っていう方が近いけど。

そしてそんなエヴァン様の視線が自らの手とレジナスさんの顔という二つの間を行ったり来たりしている間に、レジナスさん本人はあっという間にクッキーを食べてしまった。

そして座ったままきっちりと綺麗なお辞儀をすると

「俺などには勿体ないことです。ご馳走様でした」

とエヴァン様にお礼を言った。その様子についに耐えきれずにエヴァン様は声を上げて笑い出す。

「あはは、何それ!そんなに俺が彼女にちょっかいを出すのがイヤなんだ!?あの生真面目なレジナスが!冗談でも絶対にしないだろうに俺の手から菓子を食べるなんて!!」

いやあいい歳をした男に菓子を食べさせるなんて初めての経験だよ、とエヴァン様は涙を流しそうな勢いで笑っている。

かたやレジナスさんは憮然とした表情でそれを眺めていてリオン様に

「よくやったレジナス」

と肩をポンポンされて褒められていた。するとそれを見たエヴァン様は

「あっはは!何だいリオン、よくやったって!こんなに大きい男が俺の手から菓子を食べたのを褒めるとか、ハタから見たら相当面白い図なんだけど!?」

更に膝を叩いて笑った。と、その時だ。

「おい、なぜこんなにも騒がしいんだ?ブルグ王国の殿下は命を狙われて逃げ出した挙句、ひっそりと息を殺して隠れ潜んでいるんじゃないのか?」

私達のいる居間へと繋がっている私の寝室の扉がガチャリと開くと冷めた顔のシグウェルさんが現れた。

「あっ!」

またこの人は私の寝室の魔法陣を使って勝手に部屋を出入りして!

それにエヴァン様に対する物の言い方!気のせいかいつも以上に辛辣な気がする。

その態度と、勝手に人の寝室を移動に使うなんてダメですよ!と注意をしようとしたらこちらをちらりと見たシグウェルさんと目が合った。

「君はいつも通り元気そうで何よりだ」

一言そう言うと

「リオン殿下、尋問は終わりました。ここで報告をしても?」

とリオン様に礼を取りながら告げた。その様子にリオン様は鷹揚おうように微笑んで頷く。

「随分と早かったね。ユーリにも隠しごとはしないって約束しているし、ここで聞こうか」

いいよね?と聞かれたのでこくりと頷いて居住まいを正して座り直した。

と、せっかくかしこまったのにそんな空気をぶち壊すようにシグウェルさんの後ろから姿は見えないながらもユリウスさんの抗議の声が聞こえてきた。

「ちょっと団長、早くどいてくださいよ!団長のせいで前が塞がってて見えないんすけど、今『レジナスが男からお菓子を食べさせてもらった』っていうこの世の終わりが来てもあり得ないような話が聞こえた気がしたっす!もし本当ならそんな面白い絵面を見ないわけにはいかないっすからね、早くどいて!!」

そのユリウスさんの言葉に、私の隣のレジナスさんの眉間の皺がギュッと深まった気がする。

これ絶対レジナスさんの顔を見たユリウスさんが「ヒェッ!」って声を上げて、どいてって言ったシグウェルさんの影に隠れるやつだよね?私、知ってるよ?






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