【本編完結】異世界再建に召喚されたはずなのになぜか溺愛ルートに入りそうです⁉︎【コミカライズ化決定】

sutera

文字の大きさ
23 / 788
閑話休題 過ぎたるは及ばざるが如し

1

「うう・・・ユーリ様から連絡が全然来ないよ~」

まだ怒ってるのかな?
さすがの俺もちょっとへこんでいた。
赤茶けた巻き毛気味の頭を
ぐしゃぐしゃと掻きむしり、
書きかけの書類の上にぽいとペンを放り出す。

・・・この書類は昨日から一人で勝手に
辺境へ魔石発掘に行ってしまった
団長に押し付けられたやつである。


そう。うちの魔導士団長、
シグウェル・ユールヴァルトが
召喚された癒し子ユーリ様に面会して
ちょっとした騒ぎを起こしてから
1ヶ月が経っていた。

魔導士団の副団長権限で、
俺がなんとか手を回して召喚直後の
癒し子様への面会をねじ込んだというのに
団長が騒ぎを起こしたせいで
王宮への出禁をくらって、
城の中に用事があってもままならない。
王宮内部にいる魔導士と仕事のために
連絡を取るのも本当に大変だ。

かろうじて騒ぎの露見を遅らせて、
一応穏便に事態を収拾したつもりだけど
マジで何してくれてんだあの団長。

・・・いや、マジで。

妙に艶めいた仕草で小さい少女の
頬や唇を撫で回していた団長と、
あの時のヘンな雰囲気を思い出すと
いまだに落ち着かない気分になる。

騒ぎの元凶である当の本人はケロッとして
なんとも思っていないのがまた腹立たしい。

あの人、たまに無自覚で
色気がダダ漏れてる時があるんだけど
一体なんなんだろう。

魔力の強い人間ってそういうところが
あるんだろうか。

思い返せばユーリ様も
ちょっとそんなところがあった。

お近付きの印にと、
女子供にはとりあえずお菓子だろうと
最近街で人気の菓子を手土産に面会した。

甘いお菓子で懐柔しようという作戦で
ユーリ様に会った時、
恥ずかしそうに両手を差し出してきた彼女を見たら
その仕草があまりにもかわいくて思わず
その頭を撫でてしまった。

え、なにソレ。
子ども扱いでお菓子を貰うのは恥ずかしいけど
甘味の魅力には抗えません、て感じ?

うっすら赤みがさした薔薇色の頬と、
恥ずかしいのかうるうると潤んだ瞳には
小さい少女に不似合いな色気が
ほんのりとあった。

・・・誰にも言えないが、正直ちょっとグッときた。

団長に向かって言い放った女児淫行罪、
という単語がブーメランのように
己にぐさぐさ突き刺さる。

いや、だからあれはきっと
団長と一緒で魔力が高い人間特有の
無意識下での魅了か何かを使ってたんだって!

ということにしておこう、そうしよう。

でもまたユーリ様のあの恥ずかしげな、
はにかんだような笑顔は見たいなあと思う。

だからこうしてこの1ヶ月、せっせと
お詫びの品を送り続けては
お許しをもらっての王宮への出禁解除を
待っているんだけど。

贈り物はいくら贈っても贈り過ぎるって
ことはないよね??

でも一向にお許しが出るどころか
音沙汰すらない。

団長もあの時面会の最後に、
何か話したいことがあれば魔導士団まで
会いにこいって言ってたけど
それに対してもなしのつぶてだ。

王宮勤めの友人に訊いたところによれば、
最近のユーリ様は城の中をあちこち歩き回っては
少しずつ癒しの力を使う練習をしているらしい。

リオン殿下が後見人について、殿下の紹介した
魔導士も一人側付きでユーリ様が力を使う際は
アドバイスもしているという。

それ、本当は俺や団長が適任では・・・。

初めてその話を聞いた時は
俺、肝心な時に役に立たねぇ~!と
心底ガッカリした。

リオン殿下もリオン殿下で、俺や団長に
声をかけてこないところをみると
あの騒ぎを知ってペナルティ代わりに
わざと俺達以外の魔導士を
ユーリ様に付けたのかもしれない。

だって、おかしいじゃないか。
いくら王族の元乳母を怒らせたからって、
一介の乳母如きに1ヶ月も宮廷魔導士団の
団長と副団長を王宮に出入り禁止にできるような
力があるとは思えない。

なにより、ユーリ様が癒し子としての力を
学ぼうとしてるのにその第一人者である
団長に声がかからないのは絶対おかしいと思う。

それこそ王族でも絡んでるなら話は分かる。
もしかしてこれ、リオン殿下も一枚噛んでないか?

あの人、目が見えなくなってからは
以前にも増して穏やかなところしか
他人に見せないけど
ホントはめっちゃ怖いと思う。

なんか、若いのに権謀術数に長けてるっていうか
将来的には並居る貴族や官僚を差し置いて
本来王族には禁止されている、イリヤ殿下を
一番近くで支える宰相辺りに平然とおさまってそう。

もしかして、ユーリ様だけじゃなく
リオン殿下の機嫌もとるべきだったのかな?
あれ?俺なんか間違えた?

今後の方針、軌道修正した方がいいかな?と
首を捻っていた時だった。

突然、王宮の奥の院の方角から
ものすごい量の光が放たれたのだ。

俺達魔導士が所属する魔導士院は
同じ城の敷地内にあるとは言え、
王宮から馬車で10分は走るほど
離れた場所にある。

それなのに、明るい真昼間にも関わらず
こんなにもハッキリと魔力を伴う
光が走った場所を視認できるなんて。

一体王宮で何が起きたのか。
閃光は一瞬で弾けるように消え失せたけど
尋常じゃない出来事に周りは騒然としている。

うわぁ~団長、なんでこのタイミングで
いないかなあ⁉︎
頭を抱えた。

え?俺、王宮に出禁くらってるけど
さすがに駆け付けてもいいよね?
多分これ相当な事態が起きたと思うんだけど。

出禁命令を破って処分されるのと、
王族の身の安全を秤にかければ
どっちが重要なのかは一目瞭然だ。

そうして久しぶりに王宮へ足を運んだ俺は
そこでさっきの光がユーリ様の行使した
癒しの力であると知り、唖然とした。

更に、神に加護を受けた者の力の凄まじさとは
これほどのものなのかと、その行為の
もたらしたものの恩恵を知り
絶句することになるのを、
この時の俺はまだ知らないのだった。















感想 191

あなたにおすすめの小説

気がつけば異世界

蝋梅
恋愛
 芹沢 ゆら(27)は、いつものように事務仕事を終え帰宅してみれば、母に小さい段ボールの箱を渡される。  それは、つい最近亡くなった骨董屋を営んでいた叔父からの品だった。  その段ボールから最後に取り出した小さなオルゴールの箱の中には指輪が1つ。やっと合う小指にはめてみたら、部屋にいたはずが円柱のてっぺんにいた。 これは現実なのだろうか?  私は、まだ事の重大さに気づいていなかった。

眺めるだけならよいでしょうか?〜美醜逆転世界に飛ばされた私〜

蝋梅
恋愛
美醜逆転の世界に飛ばされた。普通ならウハウハである。だけど。 ✻読んで下さり、ありがとうございました。✻

召喚聖女に嫌われた召喚娘

ざっく
恋愛
闇に引きずり込まれてやってきた異世界。しかし、一緒に来た見覚えのない女の子が聖女だと言われ、亜優は放置される。それに文句を言えば、聖女に悲しげにされて、その場の全員に嫌われてしまう。 どうにか、仕事を探し出したものの、聖女に嫌われた娘として、亜優は魔物が闊歩するという森に捨てられてしまった。そこで出会った人に助けられて、亜優は安全な場所に帰る。

なんか、異世界行ったら愛重めの溺愛してくる奴らに囲われた

いに。
恋愛
"佐久良 麗" これが私の名前。 名前の"麗"(れい)は綺麗に真っ直ぐ育ちますようになんて思いでつけられた、、、らしい。 両親は他界 好きなものも特にない 将来の夢なんてない 好きな人なんてもっといない 本当になにも持っていない。 0(れい)な人間。 これを見越してつけたの?なんてそんなことは言わないがそれ程になにもない人生。 そんな人生だったはずだ。 「ここ、、どこ?」 瞬きをしただけ、ただそれだけで世界が変わってしまった。 _______________.... 「レイ、何をしている早くいくぞ」 「れーいちゃん!僕が抱っこしてあげよっか?」 「いや、れいちゃんは俺と手を繋ぐんだもんねー?」 「、、茶番か。あ、おいそこの段差気をつけろ」 えっと……? なんか気づいたら周り囲まれてるんですけどなにが起こったんだろう? ※ただ主人公が愛でられる物語です ※シリアスたまにあり ※周りめちゃ愛重い溺愛ルート確です ※ど素人作品です、温かい目で見てください どうぞよろしくお願いします。

想定外の異世界トリップ。希望先とは違いますが…

宵森みなと
恋愛
異世界へと導かれた美咲は、運命に翻弄されながらも、力強く自分の道を歩き始める。 いつか、異世界にと想像していた世界とはジャンル違いで、美咲にとっては苦手なファンタジー系。 しかも、女性が少なく、結婚相手は5人以上と恋愛初心者にはハードな世界。 だが、偶然のようでいて、どこか必然のような出会いから、ともに過ごす日々のなかで芽生える絆と、ゆっくりと積み重ねられていく感情。 不器用に愛し、愛する人に理解されず、傷ついた時、女神の神殿で見つけた、もう一つの居場所。 差し出された優しさと、新たな想いに触れながら、 彼女は“自分のための人生”を選び初める。 これは、一人の女性が異世界で出逢い、傷つき、そして強くなって“本当の愛”を重ねていく物語です。

魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました【完結】

iru
恋愛
第19回 恋愛小説大賞エントリーしています。ぜひ1票お願いします。 小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。 両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。 両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。 しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。 魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。 自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。 一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。 初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。 恋人になりたいが、年上で雇い主。 もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。 そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。 そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。 レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか? 両片思いのすれ違いのお話です。

獣人の世界に落ちたら最底辺の弱者で、生きるの大変だけど保護者がイケオジで最強っぽい。

真麻一花
恋愛
私は十歳の時、獣が支配する世界へと落ちてきた。 狼の群れに襲われたところに現れたのは、一頭の巨大な狼。そのとき私は、殺されるのを覚悟した。 私を拾ったのは、獣人らしくないのに町を支配する最強の獣人だった。 なんとか生きてる。 でも、この世界で、私は最低辺の弱者。

空港清掃員58歳、転生先の王宮でも床を磨いたら双子に懐かれ、国王に溺愛される

木風
恋愛
羽田空港で十五年、黙々と床を磨いてきた清掃員・田中幸子(58)は事故死し、没落寸前の子爵令嬢エルシアとして転生する。 婚約破棄の末に家を追われた彼女が選んだのは、王宮の清掃員――前世の技で空気まで変わるほど磨き上げていく仕事だった。 やがて母を亡くした双子王子王女に懐かれ、荒れた執務室の主である喪中の国王とも距離が縮まり……。 「泣くなら俺の胸で」――床も心も磨き直す、清掃令嬢の溺愛成り上がり。