【本編完結】異世界再建に召喚されたはずなのになぜか溺愛ルートに入りそうです⁉︎【コミカライズ化決定】

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第三章 マイ・フェア・レディ

11

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演習場の扉がもの凄い音を立てて開いた。
一瞬、あの大声殿下が現れたのかと
思ったくらいだ。

びっくりしてそちらを見ると、
今まで見たことない位
焦った顔をしたレジナスさんがいた。

ぎぃっ、と扉が音を立てて傾くと、
ガタンと外れる。
・・・壊れそうな音がして
開いたと思ったけど
ホントに壊れた。

力加減が出来なかったあたり、
どれだけレジナスさんが
心配して飛んで来て
くれたかが分かる。申し訳ない。

「ユーリ‼︎」

私の姿を確かめ安心したレジナスさんが
良かった、とほっと息をついた。

「ごめんなさいレジナスさん!」

私からも駆け寄ると、いつものように
さっと抱き上げられて頭を撫でられた。

「良かった、ルルー殿も心配している」

本当に無事で良かった、と
言ってくれた顔は安堵の表情で
勝手にいなくなって迷惑をかけたのに
少しも私を責めるところはない。

そんな私達をさっきのお兄さん騎士が
呆然と見ているのに気付いて
レジナスさんが声を掛けた。

「君がユーリを見ていてくれたのか。
おかげですぐに彼女に会えた。
感謝する、デレク・エヴァンス」

レジナスさんの言葉にお兄さんが
目を見開いた。

「いえ、そんな。・・・というか、
俺の名前・・・」

なぜ知ってるんですか。
その呟きに当然だ、と
レジナスさんは頷く。

「8ヶ月前、キリウ小隊に入隊して
すぐの魔物討伐での
君の活躍はもちろん知っている。
君のおかげでたくさんの村人が
助かったんだ、誇りに思うがいい。
それから、いまだリハビリ中だとも
聞いている。しっかり養生してくれ。
隊への復帰報告を待っている」

それを聞いたお兄さん騎士の顔が
みるみる紅潮して、
はいっ・・・!と言って俯いた。

俯く前にちらりと見えたその顔は、
感激のあまり
涙ぐんでいるみたいだった。

お兄さんが小隊に入る頃には
すでにレジナスさんは
リオン様の護衛騎士になっていて、
キリウ小隊で直接会った事はないし
まさか自分の顔と名前を覚えているとは
思わなかったんだろうね。

しかもレジナスさん、
この人が何をした人なのかも
ちゃんと把握してた。
すごいな。さすがリオン様の
代理まで務めることもある護衛騎士。

と、レジナスさんは話しながら
何かに気付いたように
ふとお兄さん騎士の右膝を見た。
ユーリ、とこっそりと聞かれる。

「もしかしてデレクの膝を治したか?」

「えっ、何で分かったんですか⁉︎」

「体の重心がまっすぐ整っている。
膝を痛めていたら重心のかかり方が
また違っているんだ」

レジナスさんくらいの騎士になると
見ただけでそんなことまで分かるのか!

驚いているとそうか、
では癒し子だという事を
言わなければな・・・と呟いていた。

その後、レジナスさんは
デレクさんというそのお兄さん騎士に
私が先日の儀式で召喚された
癒し子であることや、
恐らくさっき私が癒しの力を使い
膝の怪我を治しただろうと
いうことまでかいつまんで
説明してくれた。

それを受けて、お兄さん騎士は初めて
自分の膝の状態に気付いたようだ。

そういえば痛くない、と呟いているから
問題なく治っているようだ。
良かった!

平伏する勢いでお礼を伝えてくる
お兄さん騎士と別れ、
私はレジナスさんに縦抱っこされたまま
第八演習場へと向かった。

「ユーリ様ぁ‼︎」

会うなりルルーさんは私を抱いている
レジナスさんごと抱きしめてくれた。
ああ~めちゃくちゃ心配かけちゃってるよ、
ごめんルルーさん。
今度からはちゃんと言うこと聞きます・・・!

そんな私達を見る周りの声が、
聞くとはなしに聞こえてくる。

「あれが癒し子・・・」
「あんな子どもだったのか⁉︎」
「レジナス様があそこまで顔色を変えて
探していた・・・」

どうやらレジナスさんが
迎えに来てくれている間に
ルルーさんが事情を
話しておいてくれたらしい。

私達を囲むように人が集まっているから
私のせいでどう見ても演習が中断している。
なんてことだ。演習も仕事のうちだろうに、
見学どころか仕事の邪魔だ。

「あ、あの!」

たまらずレジナスさんの腕の中から
声を上げた。
まだ抱きついていたルルーさんが
顔を上げ、
周りの騎士さん達も注目する。

「私のせいで演習が中断して
しまってごめんなさい!
ご迷惑をおかけしました。
もう大丈夫ですので、
演習、ぜひ続けて下さい‼︎」

申し訳ない、とレジナスさんに
抱っこされたまま頭を下げたけど、
この体勢で頭を下げるのって
意外と難しいな。
レジナスさんの胸元をしっかり
掴んでないとバランスを崩しそうだ。

そんなに謝らなくても、と
レジナスさんが言いかけた時

「おっ、見つかったのか良かったな
レジナス‼︎」

朗らかな大声が人垣の向こうから
聞こえてきて人波が割れた。

歩いて来たのは・・・
あれ?さっき第一演習場の場所を聞いた
2人組だ。

団長、とレジナスさんが頭を下げた。
団長⁉︎てことは、騎士団長⁉︎

「おかげさまで、無事第一演習場で
落ち合うことができました」

「お前があんなに血相変えるところは
初めて見た、いやぁ珍しいものを見れて
面白かったな!」

レジナスさんの肩をポンポン叩いた
団長さんがそのまま覗き込むように
私に笑顔を向けた。

赤い髪の毛とヒゲで
クマみたいな風貌はいかついのに、
笑顔はすごく人懐っこくて朗らかだ。

「お嬢さんが癒し子か。
召喚の儀式の時は顔が見えなかったが、
こんなにもかわいらしい
お嬢さんだったんだなあ。
いやうちにもこんな可愛い娘が
欲しかった」

「いい加減にしろマディウス、
あと自己紹介をしろ」

おじさんの腕においで、と
私を抱っこしたそうな団長さんに、
一緒にいたスキンヘッドの騎士さんが
ため息をついて言った。

「お、それもそうだな。
さっき案内板のところで会ったから
初めまして・・ではないな。
俺は騎士団長を務めている
マディウス・バイラルで隣は
副団長のトレヴェ・ジョンストンだ。
騎士団へようこそ癒し子様、
団をあげて歓迎申し上げる‼︎」

いかつい風貌からは想像出来ない
綺麗な騎士の礼を取って団長さん
・・・マディウスさんが隣の
スキンヘッドの人も紹介してくれた。

ん??その名字って・・・

顔を上げたマディウスさんがニヤリと笑った。

「気付きましたかな?魔導士団の
ユリウス・バイラルはうちの三男坊です。
うちのせがれがお嬢さんにご迷惑を
お掛けしていなければいいんだが」

やっぱり!言われてみれば髪の色も
人懐こい笑顔も、そして雰囲気も
ユリウスさんに似ている。

「私の方こそユリウスさんにはたくさん
お世話になってます!」

慌ててまた頭を下げたら、
大きな笑い声と共に

「なに、魔導士団なんぞ癒し子様の
手足のように使ってやればよろしいのだ。
遠慮なくこれからもユリウスのやつを
こき使ってやって下さい」

そう言って、
さあお前らも演習に戻るぞ、と
号令をかけた。

ーその後はルルーさんと一緒に
演習場の見学席に腰を落ち着けて、
ようやくレジナスさん達の
演習を見ることができた。

魔導士の人が何人か来ていて、
魔法で作り出したフェイクの魔物を
使った演習を見せてもらったんだけど
すごい迫力だった。

虎みたいなのとか、トカゲみたいなのとか
色んな魔物が出てきて騎士の人達が
それを倒していく。

演習だし擬似魔物だから
本物よりも少し弱いんですよ。と
説明役で隣についていてくれた
騎士さんは教えてくれたけど、
魔物自体を見たことがないので
かぶりつきで夢中で見ていた。

そうしたらいよいよ
レジナスさんの番が来た。
レジナスさん、どんな魔物と戦うのかな。
魔導士さんに頼んで他の人よりも少し強めの
魔物を出してもらうって言ってたけど。

・・・そう思っていたら、私の癒しの力で
レジナスさんにどんな変化があったのか
知りたかったらしいシグウェルさんが
微妙にやらかした。

こちらシグウェル団長から
頼まれておりました、
と言って魔導士さんが小さな魔石を
レジナスさんに見せた後、
ぱきりと割ったその時。

その魔石にはシグウェルさんが
作り出した擬似魔物が
入っていたらしく、
石が割れたと同時に物凄い
咆哮がして大きな青白い竜が
1匹現れたのだ。

咆哮だけで竜の周りの地面が凍っている。

「なっ・・・氷瀑竜⁉︎」

周りがどよめいた。
石を割った魔導士さんも、
想定外のものが出てきたのか
完全に固まっていた。

なんであんなのが、とか
えっ、ホンモノ?いや、違うよな⁉︎とか
あれを作り出せるとかウソだろう、とか
騒然としているのを聞いて
私達と一緒に座ってくれていた
説明役の騎士さんを見ると、

「あれは本物だとたった一頭でも
騎士と魔導士が10人がかりで
連携を取りながら戦わないと
倒すのが難しいんです。
翼の羽ばたき一つ、
振りかざす爪の一薙ぎ、
吐く息の一つ・・・
ただそこにいるだけであらゆるものを
凍らせるからとても厄介で」

説明をしながら、騎士さんは
演習場から目を離せず両手をぎゅっと
握りしめていた。

どう考えても演習で出すレベルの
魔物じゃないらしい。
だってニセモノのはずなのに、
今の説明とおんなじことが
演習場の中で起きてるもん。

ユリウスさんが見たら
また真っ青になって
団長、アンタ一体何してくれてんですか⁉︎
って言いそう。目に浮かぶ。

そんな事を考えていたら、
レジナスさんの
大きな声が耳に飛び込んできた。

「全員動くな!加勢は不用だ‼︎」

ハッとして声のした方を見たら、ちょうど
レジナスさんが不意をつかれて
動けなくなっていた魔導士さんを蹴り上げ、
演習場の外に出したところだった。

蹴り出された魔導士さんを団長の
マディウスさんが受け止めて
レジナスさんに声を掛けている。

「レジナス、一人でやるつもりか?」

「やれます」

頷いて短く答えたかと思うと、
両手に剣を構えたまま
レジナスさんは竜に駆け出した。

竜の青白く燃えるような両目は
レジナスさんをしっかりと捉え、
右の前脚を振り下ろすと
氷の槍みたいなものが
無数に生まれて襲い掛かっていく。

だけどレジナスさんはそれを
物ともせずに剣で薙ぎ払いながら
突っ込んで行った。
割れた氷の破片で身を切られて
痛そうだ。

・・・ん?身を切られていな・・い?
砕けた氷はレジナスさんに
当たっているけど
全然傷付かない。
あれ?もしかして
あれが私の力の影響⁉︎

よくよく見れば、
剣で払いきれなかった
氷の刃もレジナスさんに
当たって砕けている。
そしてやっぱりレジナスさんは無傷だ。

演習用で威力が弱いのかと思ったけど、
レジナスさんに当たらなかった氷は
普通に地面に突き刺さっているし、
何なら演習場のグラウンドから
私達の見学席側に被害が及ばないように
張られている結界にもいくつか
刺さっている。どう見ても
レジナスさんの耐性が上がっているのだ。

ということは、斬られても
傷付かなかったりして・・・?

これを知ったシグウェルさんがもっと
あれこれ試しそうで怖い。

そう思っていたら隣の騎士さんから
あっ!と声がした。

見ると、竜の振り下ろした太い尻尾を
避けたレジナスさんがそのまま
尾を利用してそれを
駆け登り高く飛んでいた。

高っ!とかあり得ねぇ、とか周りが
ざわついている。

レジナスさんはそのまま
竜の後ろに回り込み
その首に2本の剣を突き立てると、
一瞬だけ竜の動きが止まった。

するとすぐにその剣を
引き抜いてもう一度飛び上がり、
今度は体重を乗せて両剣を
竜の頭上から思い切り振り下ろした。

剣を振り下ろしたと同時にゴトンッ‼︎と
鈍くて重い音がしたと思うと、
演習場には斬り落とされた竜の首が
転がっていた。

はあっ、とレジナスさんが大きく
息をついて顔についた竜から飛んだ血を
ぐいと拭う間に、
竜の体が霧散して消えていく。
と、同時に氷もあっという間に
溶けてなくなった。

「・・・すげえ。」

呆気に取られてシンとした演習場が、
一拍置いて
うおぉ!と物凄い歓声に包まれた。

レジナスさんが竜に
駆け出していってから
あっという間の出来事に
周りは騒然としている。

たった2本の剣だぞ。あり得ない。
見たかあの剣技。
一振りで首を落とした。
どうやって竜の攻撃を見切ってるんだ?

口々に興奮した感想が聞こえてくる。
対するレジナスさんはいつもの無表情で、
何度か自分の手を握ったり開いたりして
何かを確かめているみたいだった。

ああ・・これは完全に、
私の何らかの力が
働いてるのに気付いたんだろうなぁ。

そう思ってレジナスさんを見つめていたら、
レジナスさんの方も顔を上げて、
私と目が合うと小さく頷いた。
デスヨネー。

詳しいことはレジナスさんじゃないと
分からないだろうから、
後で教えてもらおう。

あんまり強化人間になっていませんように。
いや、物理攻撃が効かないってだけでもう
充分に強化人間なんだけどさ。。。

複雑な心境で、午前の演習は
終わり昼食になった。

お昼は騎士団の食堂にお邪魔して、
騎士の人達と
おんなじものを食べるはずだった。
少なくとも私はそう思っていた。

この世界に来てからは気を遣われて
子ども用の小さいお上品なサイズの
ステーキやハンバーグみたいなもの
ばかりだったので、
実はおとこメシ!って感じの分厚いステーキとか
鳥の丸焼きみたいなのが出てくるのを
楽しみにしていた。

なんならマンガ肉みたいな、骨付きの
大きなお肉が出てきてもかぶりつく気でいた。

だけど私とルルーさんに出されたのは
パンにスープ、小鳥のエサみたいな
かわいい量のサラダと
私の手の平サイズのハンバーグだ。

あ、あれ?
キョロキョロ周りを見渡すと
同じテーブルについている
レジナスさんや団長さん、副団長さんの
お皿の上にはちゃんと
分厚いステーキ肉に、付け合わせで
バターがたっぷりかかった
じゃがいもがどーんとのっかっている。
他の騎士さん達もそうだ。

「ユーリ?どうかしたか?」

隣に座るレジナスさんが不思議そうに
聞いてきた。

「レジナスさん・・・どうして私のお皿は
レジナスさん達とちがうんですか?」

「ユーリ達のは見学者用の
メニューだな。
俺達のは見学者に出すには
無骨過ぎるだろう?」

なんだと。むしろそこがいいんじゃないか!
郷に入っては郷に従え、
騎士団に来たら
黙って漢メシを食うべし。

私だってバターがたっぷりのっている
アツアツのジャガイモを食べたいし、
久しぶりに分厚いステーキにも
かぶりつきたい。

ちなみにステーキの焼き加減は
元々レアが好きなので、
レジナスさん達のお皿にのっている
血の滴るような焼き加減のレアステーキが
ものすごくおいしそうに見える。

「ユーリ様、騎士団の方達に
出されているお肉は
ユーリ様が食べるには
硬いと思いますよ」

ルルーさんまで何を言うのかしら!
むしろ小さいうちは硬いものや
歯応えのあるものを食べた方が
骨の発達にもいいんですよ?
(単純に私がステーキ食べたいだけだけど)

騎士団に来たら、
見学も楽しみだったけど
昼ご飯も密かな楽しみに
していたというのに・・・。

お昼を食べたら私達の見学は終わりだ。
午後はもっと本格的な実戦形式の演習で
見学者が見るには刺激が強いらしい。

なので、申し訳ないが帰る前に最後に
わがままを言わせてもらおう。

アラサーが身に付けた
子ども処世術の出番だ。

「・・・おにくください」

むう、と頬を膨らませてフォークを
手に持ちレジナスさんを見上げた。

「みんなとおなじがいいです」

「だがユーリ、」

戸惑うレジナスさんに、

「仲間はずれにしないでください!」

そう言ってサッとフォークを突き出して
レジナスさんのお皿のじゃがいもを
一掬いし、自分の口に運んだ。

さすがの護衛騎士も子どもの突然の行動には
ついていけなかったらしくなすがままだ。

パクリと口に運んだじゃがいもは、
茹でただけなのに
柔らかくってほくほくで、
たっぷりのバターの塩気と香りが
口の中いっぱいに広がる。

「おいしい~‼︎」

これよ、これ。いつも出される
お子様メニューにはない
ちょっとジャンクで適当な感じ。
最高だ。

これ、もうちょっと胡椒をきかせて
ピリッとさせたら
ビールのお供にも合うだろうな~。

フォークを持っていない方の手を
頬に添えてうっとりしてしまう。
多分今私は、ここ一番の
幸せな笑顔になっていると思う。

よし。次はステーキだ。

「おにく・・・」

もう一度レジナスさんの方を見る。
上目遣いで、とどめにちょっと
目を潤ませてみた。

どうだ、子どもがご飯欲しくて
今にも泣きそうなんですよ?さあさあ、
黙ってそのお皿の上のステーキを
食べさせてもらおうか。

「くっ・・・!」

さすがのレジナスさんも顔を赤くして
我慢しているが断りにくそうだった。

ごめんレジナスさん、
久しぶりのステーキのために
私は鬼にもかわいこぶりっ子にもなるよ!

「何だレジナス、とてもじゃないが
さっきまで平然として
竜を倒してた奴には思えんなあ!」

団長さんが大笑いすると、
こっちにおいでと手招きしてくれた。

「お嬢さん、そんなに俺達と同じものを
食べたいと思ってくれるとは嬉しいねぇ。
どれ、俺の分をあげよう。小さく切れば
子どもでも問題なく食べられるからな」

やったね‼︎喜んで席を立ち、
私の向かいに座っていた
団長さんに駆け寄ると、
ひょいと抱き上げられ
膝の上に座らせられた。
そのまま器用にステーキ肉を
切り分けた団長さんが、
私の口にそれを運んでくれる。

念願のステーキゲットだぜ!
食べさせられる、と言うのが
多少不本意だけど仕方がない。

子どもらしく振る舞ってしまったので
甘んじてその子ども扱いは受け入れよう。

久しぶりに食べたステーキも、
噛み締めるほどに
赤身肉本来の肉々しい風味が口の中に
広がって最高だった。

ほんのりと香ばしい炭の風味もするから、
元の世界でのバーベキューが少し
懐かしくなる。

「どうだ?おいしいか?」

「はい!お塩でおにくの味が
ひきたってて、とってもおいしいです!
ありがとうございます‼︎」

団長さんを見上げて笑顔で答えると、
かわいいなあ。
やっぱりこういう娘が欲しかった、と
頭を撫でられた。

では付け合わせは俺のをやろう。
そう言って副団長のトレヴェさんが
今度は私にじゃがいもを食べさせてくれた。

うーん、やっぱりおいしい。幸せだ。
ここの食堂、週イチ位で通いたいなあ。

にこにこしながら漢メシを
堪能していた私は、
その向かい側でレジナスさんが
私に手ずからご飯を食べさせる
チャンスを逃したのに思い至って
ショックを受けていることに
全然気付いていないのだった。




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