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第七章 ユーリと氷の女王
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「やっ、やめて下さいよ!」
ヨナスの加護が付いてるのかも、なんて
恐ろしいことを言い出した
シェラさんの服を思わず握りしめて
引っ張ってしまった。
そんな恐ろしい状況、
いまだにイリューディアさんの加護の力を
きちんとコントロールし切れていない私には
どうすればカイゼル様を救えるかなんて
皆目見当がつかない。
どうしよう。
そう思ってカイゼル様をじっと見つめていて
ふと、ある事に気付いた。
「・・・シェラさん、カイゼル様の
胸の真ん中に何か刺さっていませんか?」
「はい?」
「カイゼル様が動いてるし、ここからだと
ちょっと見えにくいですけど、
紫水晶みたいな色の・・・太いつらら?
氷の杭?みたいなものです。」
目を凝らして一生懸命見てみる。
うん、やっぱりある。
カイゼル様の胸の真ん中に刺さっていて、
時たま微かに淡く光っている。
「オレには何も見えませんが?」
「えっ」
シェラさんもカイゼルさんをじっと見つめ、
私の側に座り込んでいる今治療したばかりの
騎士さん達にも確かめてくれたけど、
他の人達にも何も見えないらしい。
「私にだけ見えているんですか?」
「どうやらそのようですね。
状況からすると、それがカイゼル様を
おかしくしていると考えられます。
ユーリ様、どうにかできそうですか?」
人の胸に刺さっているものを
どうにかするなんて、初めてのパターンだ。
「・・・出来るとすれば、直接触れて
消し去るとか刺さっているものを
抜くってことなんでしょうけど、
どっちにしてもこの距離だと遠いですよね。」
近付いて、癒しや豊穣の力を使う時のように
手をかざせば浄化するように消せないだろうか。
そう考えていた時だ。ゴボッ、と
台所のパイプが詰まったような音がして
何事かと思えば、あの紫色の沼みたいな泉から
小さな何かが数個転がり出て来た。
「トゲトカゲか」
面倒な、とシェラさんが言った。
子犬ほどの大きさの毒々しい赤紫色の
トカゲは首の周りにハリネズミみたいな
フサフサの毛が生えている。
それは毒毛で、自分の身が危ないと
リネズミの毛のように逆立てて
硬くするとそれを四方八方に飛ばすのだ。
ぶるりと身を震わせて、威嚇するような
声を上げたそれはすでに首回りの毛を
逆立ててヒルダ様やバルドル様を囲んでいる。
「邪魔をするな!」
ヒルダ様の一喝でそれらはすぐに凍り、
すかさずバルドル様が砕こうとしたところを
カイゼル様の剣が阻む。
体格差も筋力差もバルドル様の方が
絶対に上なのに、カイゼル様の剣は
易々とバルドル様の剣を弾き飛ばした。
「バルドル‼︎」
すかさずヒルダ様は自分の剣を投げ渡した。
自分はどうするの⁉︎と思えばヒルダ様は
手の平にパキパキと氷の剣を作り出す。
その時ゴボリ、とまた泉が揺れた。
ぬうっ、とそこに足をかけて
出てきたのは凍り狼の群れだ。
バサバサという羽音と共に、
肉食コウモリも飛び出してくる。
また魔物の数が増えた。
さっき凍らせたトゲトカゲも、
ヒルダ様の剣を受け取ったバルドル様が
砕いていたけど数匹は間に合わず
復活してきそうだ。
早く浄化しないと。
私は手袋を脱ぎ捨てて地面に両手をついた。
力をここから地面を通じ魔物まで伝える。
せめて地に足を付けている魔物だけでも
一気に消し去れれば。
相手が金色に光って、消える。
そんなイメージで目を瞑り
ぐっと手に力を込めた。
ノイエの採石場で祝福付与をした時のように
自分の中から風が巻き起こったのを感じる。
その時、ドン‼︎と地面が揺れた。
地震⁉︎ハッとして驚いて目を開ければ、
カイゼル様が自分の剣を
地面に突き立てていた。
それに弾かれるようにして、
地面を伝わっていたはずの私の力が
消えている。
「ユーリ様の力を弾いたのか⁉︎」
バカな。ヒルダ様が舌打ちをして氷の剣で
カイゼル様が地面に突き立てていた剣を
薙ぎ払う。
一度は地面を伝わり始めていた私の力のせいか、
魔物達の動きは少し鈍くなっていた。
泉の色も心なしかさっきより
薄くなっているような気がする。
魔物が湧いて出てくるのも止まっていた。
ヒルダ様のおかげでカイゼル様の剣は
地面から離れたので、もう一度やれる。
それを見ながら鞭を振るっていたシェラさんが
ヒルダ様に声を掛けた。
「ヒルダ様、オレはいつでも行けますよ。
後は貴女次第です。ユーリ様まで巻き添えに、
皆が斃れてしまう前にお気持ちと
覚悟を決め次第『見極めて』
すぐにオレに指示を下さい。」
「・・・分かっている‼︎」
なんだろう、まただ。
山に出発する前に2人で顔を見合わせて
視線を交わしていた時のように、
意味深なセリフでヒルダ様の顔は苦しげだ。
ヒルダ様は何かの決断を迫られているの?
シェラさんの言葉は、私に迷惑をかける前に
何かをするようヒルダ様に決断を求めている。
今ヒルダ様があんな顔をする理由は
一つしかない。カイゼル様だ。
でも、何?
気になるけどグズグズしている暇はない。
長引くほどカイゼル様は助けにくくなる。
もう一度。
地面をぐっと押す。
さっきよりも大きな風を感じた。
「ユーリ様‼︎」
シェラさんの声に思わず
顔を上げてしまったけど手は離さない。
トゲトカゲの毒毛が私めがけて
飛んで来ていた。
シェラさんが鞭で弾いてくれたけど、
数本がすり抜けた。
刺さる、と思った時だった。
リン、と澄んだ鈴の音がして
毒毛は私に刺さらないで落ちて消えた。
「え・・・?あっ、これ・・・⁉︎」
まだ微かにリンリンと私の首元から
音がする。
シグウェルさんがくれた魔除けの鈴だ。
助かった。
普段から普通のアクセサリーのように
してしまっていたけど、
そういえばこれは私がノイエ領で
祝福付与をした石で、
シグウェルさんの魔力で
更に魔除けの加護が付いていた。
「シェラザード殿、頼む‼︎」
凛としたヒルダ様の声がした。
ヒルダ様は体に毒毛を受けて倒れた
バルドル様を抱えていた。
片腕にバルドル様を抱いて、
もう片方の手は剣で
自分に切り掛かってきた
カイゼル様を止めている。
凛とした声とは裏腹に、
その顔はとても悲しそうだ。
気付けばさっき治したばかりの
数人の騎士さん達も倒れていた。
やっぱりあの毒毛を
避け切れなかったようだ。
いつの間にか無事なのは私と
シェラさん、ヒルダ様しかいなかった。
「承知しました。勇敢なるご決断に
心より敬意を表します。後はおまかせを。」
鞭をしまったシェラさんの空気が変わる。
懐から一本の短剣を取り出して、
手遊びをするようにそれを
くるりと一回転させると逆手に持った。
それはただの短剣じゃない。
刃の部分は淡い金色の粒子が入った
水晶で出来ているみたいだ。
まさかノイエの結界石?
ぴんと張り詰めた鋭い殺気が一点へ
集中している。
シェラさんが見つめる
その先にいるのはカイゼル様だ。
シェラさんの殺気に、
カイゼル様は剣を向けていた
ヒルダ様から距離を取り
泉を守るようにその前に立って
シェラさんの様子を伺っている。
それを見てやっと気付いた。
2人の意味深な会話とやり取り。
人間離れしたカイゼル様を見て
想定していた中で一番最悪な状況だと
シェラさんは言った。
そしてヒルダ様は誇り高くて
他人に迷惑をかける事を嫌う人だ。
私に対しても何度も
ここに来てくれた事に
お礼を言い頭を下げてくれた。
それに、小さなフレイヤちゃんが
熱で伏せていれば自ら煮リンゴを
作って食べさせるほど情が厚いのに、
歳に関係なくお礼を言わないと
叱る厳しさも持っている。
そんな優しくも厳しい、
人に迷惑をかける事を嫌う人が
旦那様とは言え、魔物の影響を受けて
放っておけばもっと大きな被害を
出すかもしれない人をそのままに
しておくだろうか。
誰にも止められない最悪の状況。
そうなる前にカイゼル様を
犠牲にするという
判断をしてもおかしくない。
でも待って。
シェラさんがそれを
ヒルダ様から頼まれたとして、
どうしてノイエ領の、私が加護を付けた
結界石の短剣を持っているの?
それが元からここにあるはずがない。
だって私が加護を付けた結界石はまだ
実験用にシグウェルさんが切り出した分と
王家に献上された僅かな量しかあそこから
持ち出されていないのだもの。
もし万が一の時にカイゼル様の事を
頼まれたとしても、あのノイエの結界石で
出来た短剣を簡単に手に入れられる筈がない。
万が一の時の事をヒルダ様と
打ち合わせが出来て頼まれ、
あの短剣まで用意できるそんな人は。
「シェラさん‼︎」
たまらず叫んだ。
「はい、何でしょうユーリ様。」
答えてくれる声はいつも通りの
物腰柔らかな丁寧さだけど、
シェラさんはカイゼル様から
目を離さない。
いつものように嫣然と微笑んで
私を見てはくれない。
「・・・それはリオン様から頼まれましたか?」
私の問いかけにシェラさんの短剣を
構える手が少しだけ揺れた。
ヨナスの加護が付いてるのかも、なんて
恐ろしいことを言い出した
シェラさんの服を思わず握りしめて
引っ張ってしまった。
そんな恐ろしい状況、
いまだにイリューディアさんの加護の力を
きちんとコントロールし切れていない私には
どうすればカイゼル様を救えるかなんて
皆目見当がつかない。
どうしよう。
そう思ってカイゼル様をじっと見つめていて
ふと、ある事に気付いた。
「・・・シェラさん、カイゼル様の
胸の真ん中に何か刺さっていませんか?」
「はい?」
「カイゼル様が動いてるし、ここからだと
ちょっと見えにくいですけど、
紫水晶みたいな色の・・・太いつらら?
氷の杭?みたいなものです。」
目を凝らして一生懸命見てみる。
うん、やっぱりある。
カイゼル様の胸の真ん中に刺さっていて、
時たま微かに淡く光っている。
「オレには何も見えませんが?」
「えっ」
シェラさんもカイゼルさんをじっと見つめ、
私の側に座り込んでいる今治療したばかりの
騎士さん達にも確かめてくれたけど、
他の人達にも何も見えないらしい。
「私にだけ見えているんですか?」
「どうやらそのようですね。
状況からすると、それがカイゼル様を
おかしくしていると考えられます。
ユーリ様、どうにかできそうですか?」
人の胸に刺さっているものを
どうにかするなんて、初めてのパターンだ。
「・・・出来るとすれば、直接触れて
消し去るとか刺さっているものを
抜くってことなんでしょうけど、
どっちにしてもこの距離だと遠いですよね。」
近付いて、癒しや豊穣の力を使う時のように
手をかざせば浄化するように消せないだろうか。
そう考えていた時だ。ゴボッ、と
台所のパイプが詰まったような音がして
何事かと思えば、あの紫色の沼みたいな泉から
小さな何かが数個転がり出て来た。
「トゲトカゲか」
面倒な、とシェラさんが言った。
子犬ほどの大きさの毒々しい赤紫色の
トカゲは首の周りにハリネズミみたいな
フサフサの毛が生えている。
それは毒毛で、自分の身が危ないと
リネズミの毛のように逆立てて
硬くするとそれを四方八方に飛ばすのだ。
ぶるりと身を震わせて、威嚇するような
声を上げたそれはすでに首回りの毛を
逆立ててヒルダ様やバルドル様を囲んでいる。
「邪魔をするな!」
ヒルダ様の一喝でそれらはすぐに凍り、
すかさずバルドル様が砕こうとしたところを
カイゼル様の剣が阻む。
体格差も筋力差もバルドル様の方が
絶対に上なのに、カイゼル様の剣は
易々とバルドル様の剣を弾き飛ばした。
「バルドル‼︎」
すかさずヒルダ様は自分の剣を投げ渡した。
自分はどうするの⁉︎と思えばヒルダ様は
手の平にパキパキと氷の剣を作り出す。
その時ゴボリ、とまた泉が揺れた。
ぬうっ、とそこに足をかけて
出てきたのは凍り狼の群れだ。
バサバサという羽音と共に、
肉食コウモリも飛び出してくる。
また魔物の数が増えた。
さっき凍らせたトゲトカゲも、
ヒルダ様の剣を受け取ったバルドル様が
砕いていたけど数匹は間に合わず
復活してきそうだ。
早く浄化しないと。
私は手袋を脱ぎ捨てて地面に両手をついた。
力をここから地面を通じ魔物まで伝える。
せめて地に足を付けている魔物だけでも
一気に消し去れれば。
相手が金色に光って、消える。
そんなイメージで目を瞑り
ぐっと手に力を込めた。
ノイエの採石場で祝福付与をした時のように
自分の中から風が巻き起こったのを感じる。
その時、ドン‼︎と地面が揺れた。
地震⁉︎ハッとして驚いて目を開ければ、
カイゼル様が自分の剣を
地面に突き立てていた。
それに弾かれるようにして、
地面を伝わっていたはずの私の力が
消えている。
「ユーリ様の力を弾いたのか⁉︎」
バカな。ヒルダ様が舌打ちをして氷の剣で
カイゼル様が地面に突き立てていた剣を
薙ぎ払う。
一度は地面を伝わり始めていた私の力のせいか、
魔物達の動きは少し鈍くなっていた。
泉の色も心なしかさっきより
薄くなっているような気がする。
魔物が湧いて出てくるのも止まっていた。
ヒルダ様のおかげでカイゼル様の剣は
地面から離れたので、もう一度やれる。
それを見ながら鞭を振るっていたシェラさんが
ヒルダ様に声を掛けた。
「ヒルダ様、オレはいつでも行けますよ。
後は貴女次第です。ユーリ様まで巻き添えに、
皆が斃れてしまう前にお気持ちと
覚悟を決め次第『見極めて』
すぐにオレに指示を下さい。」
「・・・分かっている‼︎」
なんだろう、まただ。
山に出発する前に2人で顔を見合わせて
視線を交わしていた時のように、
意味深なセリフでヒルダ様の顔は苦しげだ。
ヒルダ様は何かの決断を迫られているの?
シェラさんの言葉は、私に迷惑をかける前に
何かをするようヒルダ様に決断を求めている。
今ヒルダ様があんな顔をする理由は
一つしかない。カイゼル様だ。
でも、何?
気になるけどグズグズしている暇はない。
長引くほどカイゼル様は助けにくくなる。
もう一度。
地面をぐっと押す。
さっきよりも大きな風を感じた。
「ユーリ様‼︎」
シェラさんの声に思わず
顔を上げてしまったけど手は離さない。
トゲトカゲの毒毛が私めがけて
飛んで来ていた。
シェラさんが鞭で弾いてくれたけど、
数本がすり抜けた。
刺さる、と思った時だった。
リン、と澄んだ鈴の音がして
毒毛は私に刺さらないで落ちて消えた。
「え・・・?あっ、これ・・・⁉︎」
まだ微かにリンリンと私の首元から
音がする。
シグウェルさんがくれた魔除けの鈴だ。
助かった。
普段から普通のアクセサリーのように
してしまっていたけど、
そういえばこれは私がノイエ領で
祝福付与をした石で、
シグウェルさんの魔力で
更に魔除けの加護が付いていた。
「シェラザード殿、頼む‼︎」
凛としたヒルダ様の声がした。
ヒルダ様は体に毒毛を受けて倒れた
バルドル様を抱えていた。
片腕にバルドル様を抱いて、
もう片方の手は剣で
自分に切り掛かってきた
カイゼル様を止めている。
凛とした声とは裏腹に、
その顔はとても悲しそうだ。
気付けばさっき治したばかりの
数人の騎士さん達も倒れていた。
やっぱりあの毒毛を
避け切れなかったようだ。
いつの間にか無事なのは私と
シェラさん、ヒルダ様しかいなかった。
「承知しました。勇敢なるご決断に
心より敬意を表します。後はおまかせを。」
鞭をしまったシェラさんの空気が変わる。
懐から一本の短剣を取り出して、
手遊びをするようにそれを
くるりと一回転させると逆手に持った。
それはただの短剣じゃない。
刃の部分は淡い金色の粒子が入った
水晶で出来ているみたいだ。
まさかノイエの結界石?
ぴんと張り詰めた鋭い殺気が一点へ
集中している。
シェラさんが見つめる
その先にいるのはカイゼル様だ。
シェラさんの殺気に、
カイゼル様は剣を向けていた
ヒルダ様から距離を取り
泉を守るようにその前に立って
シェラさんの様子を伺っている。
それを見てやっと気付いた。
2人の意味深な会話とやり取り。
人間離れしたカイゼル様を見て
想定していた中で一番最悪な状況だと
シェラさんは言った。
そしてヒルダ様は誇り高くて
他人に迷惑をかける事を嫌う人だ。
私に対しても何度も
ここに来てくれた事に
お礼を言い頭を下げてくれた。
それに、小さなフレイヤちゃんが
熱で伏せていれば自ら煮リンゴを
作って食べさせるほど情が厚いのに、
歳に関係なくお礼を言わないと
叱る厳しさも持っている。
そんな優しくも厳しい、
人に迷惑をかける事を嫌う人が
旦那様とは言え、魔物の影響を受けて
放っておけばもっと大きな被害を
出すかもしれない人をそのままに
しておくだろうか。
誰にも止められない最悪の状況。
そうなる前にカイゼル様を
犠牲にするという
判断をしてもおかしくない。
でも待って。
シェラさんがそれを
ヒルダ様から頼まれたとして、
どうしてノイエ領の、私が加護を付けた
結界石の短剣を持っているの?
それが元からここにあるはずがない。
だって私が加護を付けた結界石はまだ
実験用にシグウェルさんが切り出した分と
王家に献上された僅かな量しかあそこから
持ち出されていないのだもの。
もし万が一の時にカイゼル様の事を
頼まれたとしても、あのノイエの結界石で
出来た短剣を簡単に手に入れられる筈がない。
万が一の時の事をヒルダ様と
打ち合わせが出来て頼まれ、
あの短剣まで用意できるそんな人は。
「シェラさん‼︎」
たまらず叫んだ。
「はい、何でしょうユーリ様。」
答えてくれる声はいつも通りの
物腰柔らかな丁寧さだけど、
シェラさんはカイゼル様から
目を離さない。
いつものように嫣然と微笑んで
私を見てはくれない。
「・・・それはリオン様から頼まれましたか?」
私の問いかけにシェラさんの短剣を
構える手が少しだけ揺れた。
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