【本編完結】異世界再建に召喚されたはずなのになぜか溺愛ルートに入りそうです⁉︎【コミカライズ化決定】

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第十二章 癒し子来たりて虎を呼ぶ

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「あいつらの所作からして、おそらく傭兵団に配属
されて間もないごろつき上がりだと思われます。」

さっきの騒ぎのあと、休憩のための部屋に入った
私達にレジナスさんは言った。

「兵士としての基礎がまるでなっていませんでした。
とてもじゃないが、訓練兵とも呼べない位です。
あれでは団長も苦労するでしょう。」

「魔物が多い辺境だと傭兵になって魔物狩りをするか
用心棒になるくらいしかいい稼ぎ方はないからね。」

リオン様も頷きながらそう言った。

二人の話では、高額な報酬目当てに傭兵団に入る者も
多いけどその前がごろつきだったり多少腕に覚えが
ある程度の用心棒上がりだったりと、なかなか性格に
難がある人も多いという。

それでも剣を使える者がいないと万が一魔物に
襲われた時の事を考えれば傭兵として雇わざるを
得ないとか。

「今回は僕達が視察に来ると決まって護衛のために
急遽募集をかけた者たちだったんだろう。」

私を膝の間に座らせていながらリオン様はまだ
渋面だ。さっきの私に対する言葉でも思い出したのか
ぎゅっと抱きしめられた。

「私は本当に気にしてないんで大丈夫ですよ?
むしろそれよりも騎士さん達がシェラさんみたいに
私のことを女神呼ばわりしてる方が気になります。
どうしちゃったんですか一体。」

先日の街歩きではなぜか私が侍女服が好きだという噂
や騎士さん達が私のその侍女服姿を見たがっていると
いう話まであったし。騎士さん達が心配だ。

「ああ・・・シェラの影響なんだろうね。まあ
元から騎士達はユーリのことを慕っているし、
シェラのように盲目的に信奉をしている訳でも
ないからあれぐらいは許してあげて。」

「あんまり外で大きな声で女神呼ばわりしないように
注意だけはさせてくださいね?」

またあの傭兵さん達に癒し子は神様気取りだ、
みたいなことを言われたくない。なるべくそういう
争いごとは避けたいのだ。

そんな話をしていたら部屋の扉がノックされた。

扉の外に立つ騎士さんとやり取りしたエル君が
私達に振り向く。

「リオン殿下、ユーリ様、先ほどの傭兵団長の
ザドル様がお見えですがお会いしますか?」

リオン様は少し考えたみたいだけど、もしわざわざ
もう一度謝罪に来てくれたのなら会った方がいい。

会わなければ、王子の不興をそこまで買ったのかと
ずっと気に病むに違いない。

私がこくこく必死で頷いたら仕方ないなとリオン様は
エル君に了承の合図をした。

さすがに面会する人が来るのに膝の間に座ってるのは
ない、と急いで私もリオン様の隣に座り直す。

そのままでも構わないのに、とリオン様は残念そうに
隣に座った私の手を握った。

そうしてエル君に促されて入ってきた団長さん・・・
ザドルさんは気の毒なくらい顔色を悪くしていた。

「さ、さきほどは本当に、誠に、申し訳なく・・・
ユーリ様におかれましてもそのお心を傷付けて
しまい」

「ユーリ様」

リオン様がぴくりと眉を動かした。まるで誰が私を
名前で呼ぶのを許可した?と言っているみたいに
その声も冷ややかだ。

まだそんなに怒ってたんだ⁉︎

「いっ、癒し子様のお心を傷付けてしまい大変
申し訳ございませんでしたッ‼︎」

空気を読んで名前を呼び直し、また頭を床にこすり
付けて土下座をしたザドルさんがさすがに可哀想に
なった。

「あの者達はどうした?」

まだ不機嫌なリオン様に代わってレジナスさんが
尋ねると、頭を下げたままザドルさんは緊張しながら
答える。

「あいつらはもう一度、兵士見習いからやり直させ
明日以降は殿下や癒し子様の目に入らないところに
おきますので・・・!本来であれば、牢に三日は
ぶち込みたいのですが、なにぶん兵が足りませんので
どうかこれでお許しを・・・!」

「そうか」

レジナスさんはやむを得んな、と短く頷いたけど
リオン様はふっと鼻で笑った。

「彼らの処分を君が最初に言っていたように、もし
王宮に一任していたら兵が足りようが足りまいが
牢か鉱山深部へ強制的に連れて行ったけどね。勿論
その後の人員の補充をどうするかなんて僕は責任を
取らないけど。」

怒りを収めたと思ってたけど全然収まってなかった。

まるで、そんな処分の仕方では全然納得できないと
言っているみたいだ。

確かに責任者だけど、ザドルさん自体は悪くないので
ここまで責めたら気の毒過ぎる。

「リオン様、ほんっとーに私は何とも思ってないので
もう止めて下さい。レジナスさんだってもう怒って
なんかないんですよ?」

こそこそ囁いて、ね?とリオン様の後ろを振り向けば
レジナスさんがぎくりとして私に頷いた。

あれ、今一瞬眉間に皺が寄ってたような・・・。
まさかレジナスさんもまだ怒ってた⁉︎

「ダメですよ!」

リオン様の隣からとんと降り立って、まだ頭を下げて
いるザドルさんの隣に行く。

その背中に手を添えて、

「これ以上は弱い者イジメです!リオン様みたいな
偉い人にこんな風に嫌味を言われたり何をされたり
しても、飲み込むしかないのが分かっているのに
わざわざもう一度謝りに来てくれたんですよ?」

床に付けた顔からチラリとザドルさんが私を見て
いるのが分かる。

「私は何とも思ってないって言いましたよね?
それなのにまだ私のために怒ってるって言うのは
それを言い訳にして自分の不愉快さをザドルさんに
ぶつけているだけに見えます。それはリオン様自身も
貶めることなのでもう止めてください。」

「誰かのため」という事を免罪符にすれば何を
しても良いわけじゃない。

まさか私がそんな事を言うと思っていなかったのか
リオン様だけでなくレジナスさんも一瞬ハッとした。

「ザドルさんも頭を上げて下さい。謝罪はもう充分
受けましたから。それから私のことは癒し子ではなく
ユーリと呼んで下さいね。癒し子って呼ばれても
返事はしませんよ!」

その言葉にザドルさんは恐る恐る頭を上げて私に
向かって正座した。

改めてちゃんと見たザドルさんは30代だろうか。
よく見れば右頬に薄い切り傷の跡が走っていたりして
緑色の瞳は綺麗だけどちょっといかつい。

そしてレジナスさんみたいに大きくて筋骨隆々とした
体を申し訳なさそうに縮こまらせて、私と目線を
合わせるために猫背気味に正座してくれている姿は
いかつい風貌とギャップがあってなんだかかわいい。

「ユ、ユーリ様。」

「はい!ユーリです‼︎」

ザドルさんが名前を呼んでくれたので、にっこり
微笑んで返事をする。そんな私にリオン様は
ため息をついた。

「・・・ユーリを理由にして僕自身の機嫌の悪さを
他人にぶつけている、か。確かにそうかも知れない。
それはユーリにも団長にも失礼だね。」

そう言って、それまで組んでいた足を下ろした
リオン様はザドル団長、と声をかけた。

冷ややかさのない、いつものリオン様の声色だ。

慌てて飛び上がるみたいにしてリオン様の方へと
ザドルさんは向きを変えて正座し直した。

「僕が大人げなかった。許してくれるか?」

王族がただの傭兵団長に謝罪はできない。
だからこれはリオン様の最大限の譲歩であり、謝罪の
仕方だ。

「許す許さないなどとそんな、恐れ多い・・・!
今回のことは全て俺の管理不足と落ち度ですので‼︎」

・・・なんとかこの場は丸く収まったのかな?
リオン様の雰囲気が少し和らいだ。

ほっとしてザドルさんに立っていいんですよと
促して、立ち上がるところまで確認してから私は
リオン様の隣に戻る。

私の忠告を素直に聞いてくれて、ザドルさんに
謝罪めいたことまでしてくれたのに感謝する。

私の方から手を繋ぎ、ありがとうございますと
笑顔を見せればリオン様は何も言わなかったけど
そのまま繋いだ手をぎゅっと握り返してくれた。

その時レジナスさんが

「辺境に魔物はつきものなので警戒しなければ
ならないのはよく分かる。だが、あんなごろつきども
まで集めなければならないほどこの辺りは人が足りて
いないのか?あいつらは毎日のように魔物退治に苦労
しているとも言っていたが、そんなにこの辺りは魔物
が多いのか?」

そんな事を聞くと、ザドルさんはその言葉に顔を
強張らせて居住まいを正した。


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