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第十二章 癒し子来たりて虎を呼ぶ
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土竜はつがいで行動する。そう話すエル君に
私だけでなく神官さんも青くなった。
「そ、そうなんですか?魔物辞典にはそこまで
書いてなかったですよ⁉︎」
「はい。だから僕の生まれた地域では土竜は
一頭見たら必ず二頭いるものと思えと教えられて
いました。」
エル君は山岳民族の出身だから土竜も身近だった
らしい。そのエル君が言うのだから間違いないの
だろう。
「でも、必ずつがいがいるとは限らないんですよね?
そうじゃないと、ここにもう一頭土竜が来るって
ことじゃないですか⁉︎」
避難して来ている町の人達を動揺させないように
ひそひそとエル君に聞けば、
「それはそうですけど・・・もしもう一頭現れたら
大変です。今いる個体は怪我を負っているので、
つがいを傷付けられた竜の怒りと言うのは僕も経験が
ありません。どんな被害が出るのか想像もつかな」
エル君が話終わる前に突然地面がドン、と縦に大きく
揺れた。地下室の天井から土がパラパラ舞い落ちて
来る。避難して来た人達も悲鳴を上げてお互いに
抱き合っていた。
「・・・ユーリ様、ここに結界は張れますか?」
騒ぐ周りとは対照的にエル君は冷静だ。
「え、え?」
慌てたシンシアさんとマリーさんに抱きつかれた
私が二人の腕の中から顔を出して聞き返すと、
「土竜の影響でここ、崩れるかも知れません。
ユーリ様が結界でここを丈夫にして支えてくれれば
安全になると思うんですけど」
ぐるりと周りを見回したエル君にそう説明された。
「やります‼︎」
騎士さん達の手伝いは出来ないけど、ここで役に
立てるなら。そのまますぐに、すとんとその場に
しゃがみ込んで地面に手を付く。
さすがに今のサイズの私に、王都全域に張ったような
町全てを包み込んで魔物を弾く結界は作れないけど、
この建物くらいなら何とか出来るはず。
目を閉じて祈る。この地下室だけでなく、上にある
神殿までこの建物全てを守る結界を。
王都へ付けたあの金色の結界を思い出す。
地面を潜って来る土竜も、神殿に襲いかかってくる
ラーデウルフも全部弾いてくれますように。
この地下室が、避難して来たみんなの心の拠り所に
なるような安全で安心出来る場所になりますように。
地面についた両手が温かくなって、そこから
舞い上がった風に自分の髪の毛がふわりとなびく
のを感じた。いつものように瞼の裏に金色の光が
溢れて、周りから眩しいとか温かいと言う声も
聞こえる。
同時に、地面の揺れが徐々に収まってくる。
光が消えたのを感じて目を開ければ、地下室は
うっすらと淡く金色に光っていた。
その光もやがて消えてしまう。
「・・・成功したのかな?」
「ありがとうございます。」
大丈夫かな?と首を傾げた私にエル君はぺこりと
頭を下げてくれた。神官さんも涙を流さんばかりに
私に土下座をした。
「これがイリューディア神様とその癒し子様の
お力・・・!なんとありがたいことでしょう‼︎
病を癒し腹を満たしてくれるだけでなく、魔物の
脅威からもお守り下さるとは、他の何にも変え難い
尊さ・・・‼︎」
声が大きい。しかもそんなに大袈裟に言わなくても。
土下座と相まって他の人達の注目を集めてしまった。
癒し子様⁉︎というざわめきが広がって、土下座をする
神官さんの後ろに町の人達も跪いて祈りの形に手を
組むとみんなが私に向かって拝み始めた。
うわ、辞めて欲しい!まるでいかがわしい信仰宗教の
教祖にでもなってしまった気分だ。
「やめて下さい!神官さんも頭を上げて⁉︎」
慌てて神官さんを起こそうとするけどありがたい、と
繰り返して祈られるばかりだ。どうしよう。
地下室は安定したけど私の心は不安定だ。
その時、大変です‼︎とあせった様子で一人の
神官さんが地下室に転がり込んで来た。
今度は何だろう。
「土竜がもう一頭現れました!それからリオン殿下の
剣が折れて苦戦しています‼︎」
その言葉に血の気が引いた。さっきの振動はもう一頭
土竜が現れたからだったのかな。
それよりも、リオン様の剣が折れた?
「石化にやられたのかも知れません。」
エル君が言った。そうだ、リオン様自身は私の加護で
石化はしない。でも乗っている馬や武器は?
そこに土竜がもう一頭現れたなら今、外は一体
どんな状況なんだろう。
「それで殿下は⁉︎」
土下座をしていた神官さんが起き上がって、報告して
来た神官さんに詰め寄っている。
「周囲に落ちている武器を拾いそれを使って応戦中
です。魔法剣での戦闘ですので、剣が折れても今は
何とかなっていますが我々が加護を付けた丈夫な
武器が必要です!武器庫の鍵はお持ちですか⁉︎」
散らばる武器を拾い上げて応戦して、それが折れたら
また別の武器を。それでも足りなくなりそうなので
今は折れた剣に魔法を纏わせて竜の相手をしていると
いう話に震えが来る。それも二頭だ。
ついさっきまで、嬉しそうな笑顔で行って来るねと
言っていたリオン様の顔が思い浮かんだ。
その拍子にじわりと目の端に涙が浮かんだのが
自分でも分かる。どうしよう。リオン様はまだ
無事なんだろうか。
「ユーリ様」
シンシアさんとマリーさんが震えた私を抱きしめて
くれて、そこではっと我に返った。
そうだ、泣いている場合じゃない。私がここで
泣いて震えていたって状況はよくならない。
動かないと。リオン様を助けるために私に何が
出来るだろうか。
「武器庫の鍵はここにあるが、竜の猛攻に耐えられる
ものかどうか」
懐から鍵束を取り出して急いで地下室を出ようと
する神官さんの言葉にはたと気付く。
剣ならこの神殿に奉納するために王宮から持ってきた
勇者様愛用のものがある。
勇者様が視察にも持参していた愛用の剣だと言うし
そこに更に私が加護を付ければ強力な武器になる
のでは?それに、それは勇者様の子孫のリオン様とも
きっと相性がいいはずだ。
「神官さん!さっき引き渡した勇者様の剣は
どこですか⁉︎」
私が加護を付けるのでそれをリオン様に渡して
欲しい。そう話すと神官さん達は顔を見合わせて
頷いた。
一緒にこちらへ、と案内されて地下室を出ようと
したら、マリーさんに腕を取られた。
「危険です、ユーリ様!ここから出ないで下さい‼︎」
「大丈夫ですよ!この建物自体は丈夫な結界を
張りましたし、勇者様の剣に加護を付けたら
すぐに戻りますから。リオン様へ剣を届けるのは
他の人に頼むので心配しなくて、も・・・?」
マリーさんと話していたその時、その隣にいた
シンシアさんの胸元が薄い青色に光っているのに
気が付いた。
「シンシアさん?何を持っているんですか?なんだか
うっすら光ってますけど」
その言葉に、青冷めていたシンシアさんがハッとして
胸元に抱えていた布に包まれていたものを慌てて
見せてくれた。
「さっきここへ避難する際にリオン殿下に預けられ
ました。勇者様の小刀が入っている箱です。」
包みの中にはあの木箱があり、光はその中から
漏れて来ていた。
「何でしょうね?」
箱を開けて神官さんやシンシアさん達と確かめて
みれば、あの小刀にはまっている青い石が発光して
いた。青い光が炎のように揺らめいている。
恐る恐るそれに触れば、より一層その光は強まった。
その一瞬、俺を呼べ!と頭の中に声が響いた。
グノーデルさんの声だった。
私だけでなく神官さんも青くなった。
「そ、そうなんですか?魔物辞典にはそこまで
書いてなかったですよ⁉︎」
「はい。だから僕の生まれた地域では土竜は
一頭見たら必ず二頭いるものと思えと教えられて
いました。」
エル君は山岳民族の出身だから土竜も身近だった
らしい。そのエル君が言うのだから間違いないの
だろう。
「でも、必ずつがいがいるとは限らないんですよね?
そうじゃないと、ここにもう一頭土竜が来るって
ことじゃないですか⁉︎」
避難して来ている町の人達を動揺させないように
ひそひそとエル君に聞けば、
「それはそうですけど・・・もしもう一頭現れたら
大変です。今いる個体は怪我を負っているので、
つがいを傷付けられた竜の怒りと言うのは僕も経験が
ありません。どんな被害が出るのか想像もつかな」
エル君が話終わる前に突然地面がドン、と縦に大きく
揺れた。地下室の天井から土がパラパラ舞い落ちて
来る。避難して来た人達も悲鳴を上げてお互いに
抱き合っていた。
「・・・ユーリ様、ここに結界は張れますか?」
騒ぐ周りとは対照的にエル君は冷静だ。
「え、え?」
慌てたシンシアさんとマリーさんに抱きつかれた
私が二人の腕の中から顔を出して聞き返すと、
「土竜の影響でここ、崩れるかも知れません。
ユーリ様が結界でここを丈夫にして支えてくれれば
安全になると思うんですけど」
ぐるりと周りを見回したエル君にそう説明された。
「やります‼︎」
騎士さん達の手伝いは出来ないけど、ここで役に
立てるなら。そのまますぐに、すとんとその場に
しゃがみ込んで地面に手を付く。
さすがに今のサイズの私に、王都全域に張ったような
町全てを包み込んで魔物を弾く結界は作れないけど、
この建物くらいなら何とか出来るはず。
目を閉じて祈る。この地下室だけでなく、上にある
神殿までこの建物全てを守る結界を。
王都へ付けたあの金色の結界を思い出す。
地面を潜って来る土竜も、神殿に襲いかかってくる
ラーデウルフも全部弾いてくれますように。
この地下室が、避難して来たみんなの心の拠り所に
なるような安全で安心出来る場所になりますように。
地面についた両手が温かくなって、そこから
舞い上がった風に自分の髪の毛がふわりとなびく
のを感じた。いつものように瞼の裏に金色の光が
溢れて、周りから眩しいとか温かいと言う声も
聞こえる。
同時に、地面の揺れが徐々に収まってくる。
光が消えたのを感じて目を開ければ、地下室は
うっすらと淡く金色に光っていた。
その光もやがて消えてしまう。
「・・・成功したのかな?」
「ありがとうございます。」
大丈夫かな?と首を傾げた私にエル君はぺこりと
頭を下げてくれた。神官さんも涙を流さんばかりに
私に土下座をした。
「これがイリューディア神様とその癒し子様の
お力・・・!なんとありがたいことでしょう‼︎
病を癒し腹を満たしてくれるだけでなく、魔物の
脅威からもお守り下さるとは、他の何にも変え難い
尊さ・・・‼︎」
声が大きい。しかもそんなに大袈裟に言わなくても。
土下座と相まって他の人達の注目を集めてしまった。
癒し子様⁉︎というざわめきが広がって、土下座をする
神官さんの後ろに町の人達も跪いて祈りの形に手を
組むとみんなが私に向かって拝み始めた。
うわ、辞めて欲しい!まるでいかがわしい信仰宗教の
教祖にでもなってしまった気分だ。
「やめて下さい!神官さんも頭を上げて⁉︎」
慌てて神官さんを起こそうとするけどありがたい、と
繰り返して祈られるばかりだ。どうしよう。
地下室は安定したけど私の心は不安定だ。
その時、大変です‼︎とあせった様子で一人の
神官さんが地下室に転がり込んで来た。
今度は何だろう。
「土竜がもう一頭現れました!それからリオン殿下の
剣が折れて苦戦しています‼︎」
その言葉に血の気が引いた。さっきの振動はもう一頭
土竜が現れたからだったのかな。
それよりも、リオン様の剣が折れた?
「石化にやられたのかも知れません。」
エル君が言った。そうだ、リオン様自身は私の加護で
石化はしない。でも乗っている馬や武器は?
そこに土竜がもう一頭現れたなら今、外は一体
どんな状況なんだろう。
「それで殿下は⁉︎」
土下座をしていた神官さんが起き上がって、報告して
来た神官さんに詰め寄っている。
「周囲に落ちている武器を拾いそれを使って応戦中
です。魔法剣での戦闘ですので、剣が折れても今は
何とかなっていますが我々が加護を付けた丈夫な
武器が必要です!武器庫の鍵はお持ちですか⁉︎」
散らばる武器を拾い上げて応戦して、それが折れたら
また別の武器を。それでも足りなくなりそうなので
今は折れた剣に魔法を纏わせて竜の相手をしていると
いう話に震えが来る。それも二頭だ。
ついさっきまで、嬉しそうな笑顔で行って来るねと
言っていたリオン様の顔が思い浮かんだ。
その拍子にじわりと目の端に涙が浮かんだのが
自分でも分かる。どうしよう。リオン様はまだ
無事なんだろうか。
「ユーリ様」
シンシアさんとマリーさんが震えた私を抱きしめて
くれて、そこではっと我に返った。
そうだ、泣いている場合じゃない。私がここで
泣いて震えていたって状況はよくならない。
動かないと。リオン様を助けるために私に何が
出来るだろうか。
「武器庫の鍵はここにあるが、竜の猛攻に耐えられる
ものかどうか」
懐から鍵束を取り出して急いで地下室を出ようと
する神官さんの言葉にはたと気付く。
剣ならこの神殿に奉納するために王宮から持ってきた
勇者様愛用のものがある。
勇者様が視察にも持参していた愛用の剣だと言うし
そこに更に私が加護を付ければ強力な武器になる
のでは?それに、それは勇者様の子孫のリオン様とも
きっと相性がいいはずだ。
「神官さん!さっき引き渡した勇者様の剣は
どこですか⁉︎」
私が加護を付けるのでそれをリオン様に渡して
欲しい。そう話すと神官さん達は顔を見合わせて
頷いた。
一緒にこちらへ、と案内されて地下室を出ようと
したら、マリーさんに腕を取られた。
「危険です、ユーリ様!ここから出ないで下さい‼︎」
「大丈夫ですよ!この建物自体は丈夫な結界を
張りましたし、勇者様の剣に加護を付けたら
すぐに戻りますから。リオン様へ剣を届けるのは
他の人に頼むので心配しなくて、も・・・?」
マリーさんと話していたその時、その隣にいた
シンシアさんの胸元が薄い青色に光っているのに
気が付いた。
「シンシアさん?何を持っているんですか?なんだか
うっすら光ってますけど」
その言葉に、青冷めていたシンシアさんがハッとして
胸元に抱えていた布に包まれていたものを慌てて
見せてくれた。
「さっきここへ避難する際にリオン殿下に預けられ
ました。勇者様の小刀が入っている箱です。」
包みの中にはあの木箱があり、光はその中から
漏れて来ていた。
「何でしょうね?」
箱を開けて神官さんやシンシアさん達と確かめて
みれば、あの小刀にはまっている青い石が発光して
いた。青い光が炎のように揺らめいている。
恐る恐るそれに触れば、より一層その光は強まった。
その一瞬、俺を呼べ!と頭の中に声が響いた。
グノーデルさんの声だった。
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