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第十五章 レニとユーリの神隠し
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リオン様のお願いで、皇太子妃のヴォルフマリア様に
会うことになった私は決められた日取りを待った今日
エル君と一緒に手土産のお菓子を持って皇太子宮を
訪れていた。
「エル君はここを訪れたことがあるんですね。」
皇太子宮に着いて案内の侍従さんが出て来た時に、
それを断ったエル君に私はついて歩いている。
こくりと頷いたエル君は私を見た。
「はい、レニ殿下の護衛代わりで同行して何度か。
不審者の侵入を防ぐために広くて複雑な作りになって
いるので迷子にならないで下さいね。いつもみたいに
よそ見ばかりして歩いているとはぐれますよ。」
「えぇ~?まさか、そんなことは・・・」
ないとは言えない。なんかさっきから同じような
作りと大きさの部屋が続いてるし、歩いている回廊も
真っ白な壁に同じような金の装飾がしてあるだけの
至ってシンプルなものだ。
シンプル過ぎて逆に目印がない。
回廊から見える庭木も全く同じ大きさと形で等間隔に
並んでいるせいか、さっきから同じところばかり
歩いているような錯覚になる。
「えーと、あれ?エル君、さっきもここを通った
ような気がするんですけど?」
「慣れていない人にはそう見えるかも知れません。
ちゃんとヴォルフマリア様の所に近付いてますよ。」
・・・全然分からない。これは本当に、うっかり
エル君から目を離した隙に私は迷子になって永遠に
ここから出られないような気がする。
「手を繋ぎましょう!」
騎士団の時みたいに迷子になったら大変だ。
慌てて前を歩くエル君の手を握ったら、エル君の
歩みがピタリと止まった。
「主と手を繋ぐ護衛がどこにいるんですか?止めて
下さい。」
振り向いたその顔のルビーみたいな赤い瞳がきつく
私を睨んだ。だけどその耳も赤いからきっと照れてる
んだと思う。
「だって迷子になったらどうするんです⁉︎」
「もう着きますから」
ぴっ、と私の手を振り払ってまたエル君はすたすた
歩き出す。だけど耳はまだ赤いままだ。
「照れなくてもいいのに~」
揶揄うように言うと
「そんな事ばかり言ってると本当に置いていきます
よ。」
また睨まれた。でも全然怖くないもんね。
手は繋いでもらえなかったので、仕方ないから
かわいいなーと前を歩くエル君から目を離さない
ようにして後をついて行けば、エル君に会ったばかり
の頃を思い出す。
あの時も私が近付けば近付くほど距離を取られたから
まるで追いかけっこをするみたいにエル君の後を
ついて回ったっけ。
その頃のよそよそしさに比べればだいぶ打ち解けた
んじゃないかな?
そんな事を考えながらにこにこしていたら、
「着きました。・・・どうしてそんなに締まりのない
顔をしてるんですか?ちゃんとして下さい。」
また注意された。
「護衛って主に向かってそんなこと言います?」
「ユーリ様だから言うんです。他の人達はみんな
ユーリ様に甘いじゃないですか。」
「なるほど」
確かにエル君以外に私にここまで注意する人はいない
かも知れない。となるとエル君は貴重な人材だ。
エル君がいないと甘やかされた私は癒し子の地位に
あぐらをかいて増長したダメ人間になるかも。
納得して頷いたのに、逆にエル君には呆れられた。
「・・・いつも思いますけど、よく僕がこんな口を
聞くのを許してますよね。」
「年上の余裕です!そろそろフィー殿下みたいに
お姉様って呼びたくなって来ませんか?」
「・・・絶対に言いません。」
わー、また耳が赤くなった!かわいい‼︎と内心喜んで
いたら、
「フィー殿下って誰だ⁉︎一体どこの男なんだ、お前
また伴侶が増えたのか⁉︎」
大声殿下ばりの大声が耳に飛び込んできた。
「レニ様」
声の主はレニ殿下だった。
なぜかうっすらと頬を紅潮させて私とエル君を見て
部屋の扉の前に立っている。
「どうしてレニ様がここに?」
ご機嫌よう、と頭を下げて挨拶をすれば
「お前が母上のところを訪ねるって言うから!」
大声でそう言われたけど理由になってないよね?
私がヴォルフマリア様を訪ねるのとレニ様がここで
私を待ち伏せている繋がりがさっぱり見えない。
どういう意味?と小首を傾げてもっと他に理由は
ないのかと見つめれば、
「そっ、そんなに人のことを見つめるんじゃない!
失礼だろ⁉︎」
エル君だけじゃなくレニ様にまで怒られた。
「え、私ってそんなにレニ様のこと見てました?」
エル君に聞けば
「その小首を傾げて見つめるのが良くないです。
そういうのはリオン殿下やレジナス様の前だけに
して下さい。」
ちなみにシグウェル様は動じないで見つめ返して
くると思います。
そんな風に言われたけどなんでその3人なら良くて
レニ様にはダメなのかがやっぱり分からない。
「何を二人でコソコソ話してるんだ、母上がお待ち
なんだから早く入れ‼︎」
また謎のお叱りを受けた。
なんだなんだ、気難しいお年頃なのかな?私より
歳下なんだけど。
扉を開けたレニ様は、部屋の中へ私達を案内する前に
ところで・・・とこちらをチラチラ見ながら聞いて
きた。
「さっきのフィー殿下って誰だ?」
そういえば伴侶なのかって叫んでた。
「伴侶じゃなくて、この間訪問したモリー公国の
公子殿下です。とっても素直ないい子なんでレニ様も
良いお友達になれるかも!」
そう教えてあげればレニ様はなぜかほっとしている。
「そうか、俺はまたお前に伴侶が増えたのかと」
「またって何です⁉︎」
「叔父上やレジナスだけでなく魔導士団長までお前に
求婚してそれを受け入れたって聞いてる!もしかして
お前、自分に求婚して来た相手を片っ端から全部
受け入れるつもりなのか?それなら俺だって」
「そんなわけないじゃないですか!」
レニ様が何だか変な誤解をしているので、たまらず
話してる途中なのに声を上げてしまった。
「別に誰でもいいってわけじゃないですよ⁉︎ちゃんと
理由があって、私なりに考えた結果受け入れてる
んです!」
「理由・・・?魔導士団長は顔で選んだってゲラルド
から聞いたぞ。そんな理由なら俺だって」
「何でそんなことまでバレてるんですか⁉︎」
恥ずかしさのあまりまた会話を遮ってしまった。
ユーリ様・・・とエル君が憐れみを込めた目で私と
レニ様を見ている。
いや、話を途中で遮るなんて失礼なのは分かってる
けどまさかレニ様まで私がシグウェルさんを伴侶に
決めたことを知っていて、しかもあの顔に弱い事まで
分かってるとは思わなかった。
さっきまでレニ様だけが赤かったのに、今は私も
顔が熱い気がする。
「お前、まだ伴侶を増やす気か?」
こっちだ、とヴォルフマリア様がいるらしい部屋の
奥・・・庭園の方へレニ様自らが案内しながらそう
私に聞いて来た。
「別に今までだって増やそうと思って増やしたんじゃ
ないですよ⁉︎なんていうか成り行きで・・・」
「その場の勢いで生涯を共にする者を選んだのか⁉︎
なんて奴だ・・・そんなに小さいのに大の大人を手玉
に取るなんて。」
レニ様の中で私がとんでもない悪女か女たらしならぬ
男たらしになっている気がする。
そこでレニ様はごほんとわざとらしく咳払いをして
部屋から庭園へと続くポーチの手すりに腕をかけて
寄りかかると私を見て来た。
何だろう、カッコつけてるのかな?かわいいだけ
なんだけど。
「じゃあお前、例えば俺がお前に・・・」
うっすら赤い顔のまま何事かを言いかけたその時、
「レニ、おやめなさい。それはまだ早い。時を
見定められぬ者など死に急ぐだけです。」
その言葉を涼やかな声が遮った。
今日のレニ様は最後まで話をさせてもらえないことが
多いなと思いながら声のした方を見れば、そこには
一人の女の人が庭園のテーブルに座りながらこちらを
じっと見つめていた。
レニ様を呼び捨てにしているということは、この人が
大声殿下の奥さんで皇太子妃、レニ様のお母様である
ヴォルフマリア様か。
綺麗なピンク色でふわりとウェーブがかった髪の毛に
こちらを見つめる瞳は澄んだエメラルドグリーンだ。
見た目はピンクに緑とかわいい色の組み合わせなのに
そのきりりと引き締まった表情が知的で素敵な人だ。
さすがは元護衛騎士、といったその凛々しい雰囲気は
テレビでみたことのある宝塚の男役の人のような
格好良さで思わずみとれてしまった。
会うことになった私は決められた日取りを待った今日
エル君と一緒に手土産のお菓子を持って皇太子宮を
訪れていた。
「エル君はここを訪れたことがあるんですね。」
皇太子宮に着いて案内の侍従さんが出て来た時に、
それを断ったエル君に私はついて歩いている。
こくりと頷いたエル君は私を見た。
「はい、レニ殿下の護衛代わりで同行して何度か。
不審者の侵入を防ぐために広くて複雑な作りになって
いるので迷子にならないで下さいね。いつもみたいに
よそ見ばかりして歩いているとはぐれますよ。」
「えぇ~?まさか、そんなことは・・・」
ないとは言えない。なんかさっきから同じような
作りと大きさの部屋が続いてるし、歩いている回廊も
真っ白な壁に同じような金の装飾がしてあるだけの
至ってシンプルなものだ。
シンプル過ぎて逆に目印がない。
回廊から見える庭木も全く同じ大きさと形で等間隔に
並んでいるせいか、さっきから同じところばかり
歩いているような錯覚になる。
「えーと、あれ?エル君、さっきもここを通った
ような気がするんですけど?」
「慣れていない人にはそう見えるかも知れません。
ちゃんとヴォルフマリア様の所に近付いてますよ。」
・・・全然分からない。これは本当に、うっかり
エル君から目を離した隙に私は迷子になって永遠に
ここから出られないような気がする。
「手を繋ぎましょう!」
騎士団の時みたいに迷子になったら大変だ。
慌てて前を歩くエル君の手を握ったら、エル君の
歩みがピタリと止まった。
「主と手を繋ぐ護衛がどこにいるんですか?止めて
下さい。」
振り向いたその顔のルビーみたいな赤い瞳がきつく
私を睨んだ。だけどその耳も赤いからきっと照れてる
んだと思う。
「だって迷子になったらどうするんです⁉︎」
「もう着きますから」
ぴっ、と私の手を振り払ってまたエル君はすたすた
歩き出す。だけど耳はまだ赤いままだ。
「照れなくてもいいのに~」
揶揄うように言うと
「そんな事ばかり言ってると本当に置いていきます
よ。」
また睨まれた。でも全然怖くないもんね。
手は繋いでもらえなかったので、仕方ないから
かわいいなーと前を歩くエル君から目を離さない
ようにして後をついて行けば、エル君に会ったばかり
の頃を思い出す。
あの時も私が近付けば近付くほど距離を取られたから
まるで追いかけっこをするみたいにエル君の後を
ついて回ったっけ。
その頃のよそよそしさに比べればだいぶ打ち解けた
んじゃないかな?
そんな事を考えながらにこにこしていたら、
「着きました。・・・どうしてそんなに締まりのない
顔をしてるんですか?ちゃんとして下さい。」
また注意された。
「護衛って主に向かってそんなこと言います?」
「ユーリ様だから言うんです。他の人達はみんな
ユーリ様に甘いじゃないですか。」
「なるほど」
確かにエル君以外に私にここまで注意する人はいない
かも知れない。となるとエル君は貴重な人材だ。
エル君がいないと甘やかされた私は癒し子の地位に
あぐらをかいて増長したダメ人間になるかも。
納得して頷いたのに、逆にエル君には呆れられた。
「・・・いつも思いますけど、よく僕がこんな口を
聞くのを許してますよね。」
「年上の余裕です!そろそろフィー殿下みたいに
お姉様って呼びたくなって来ませんか?」
「・・・絶対に言いません。」
わー、また耳が赤くなった!かわいい‼︎と内心喜んで
いたら、
「フィー殿下って誰だ⁉︎一体どこの男なんだ、お前
また伴侶が増えたのか⁉︎」
大声殿下ばりの大声が耳に飛び込んできた。
「レニ様」
声の主はレニ殿下だった。
なぜかうっすらと頬を紅潮させて私とエル君を見て
部屋の扉の前に立っている。
「どうしてレニ様がここに?」
ご機嫌よう、と頭を下げて挨拶をすれば
「お前が母上のところを訪ねるって言うから!」
大声でそう言われたけど理由になってないよね?
私がヴォルフマリア様を訪ねるのとレニ様がここで
私を待ち伏せている繋がりがさっぱり見えない。
どういう意味?と小首を傾げてもっと他に理由は
ないのかと見つめれば、
「そっ、そんなに人のことを見つめるんじゃない!
失礼だろ⁉︎」
エル君だけじゃなくレニ様にまで怒られた。
「え、私ってそんなにレニ様のこと見てました?」
エル君に聞けば
「その小首を傾げて見つめるのが良くないです。
そういうのはリオン殿下やレジナス様の前だけに
して下さい。」
ちなみにシグウェル様は動じないで見つめ返して
くると思います。
そんな風に言われたけどなんでその3人なら良くて
レニ様にはダメなのかがやっぱり分からない。
「何を二人でコソコソ話してるんだ、母上がお待ち
なんだから早く入れ‼︎」
また謎のお叱りを受けた。
なんだなんだ、気難しいお年頃なのかな?私より
歳下なんだけど。
扉を開けたレニ様は、部屋の中へ私達を案内する前に
ところで・・・とこちらをチラチラ見ながら聞いて
きた。
「さっきのフィー殿下って誰だ?」
そういえば伴侶なのかって叫んでた。
「伴侶じゃなくて、この間訪問したモリー公国の
公子殿下です。とっても素直ないい子なんでレニ様も
良いお友達になれるかも!」
そう教えてあげればレニ様はなぜかほっとしている。
「そうか、俺はまたお前に伴侶が増えたのかと」
「またって何です⁉︎」
「叔父上やレジナスだけでなく魔導士団長までお前に
求婚してそれを受け入れたって聞いてる!もしかして
お前、自分に求婚して来た相手を片っ端から全部
受け入れるつもりなのか?それなら俺だって」
「そんなわけないじゃないですか!」
レニ様が何だか変な誤解をしているので、たまらず
話してる途中なのに声を上げてしまった。
「別に誰でもいいってわけじゃないですよ⁉︎ちゃんと
理由があって、私なりに考えた結果受け入れてる
んです!」
「理由・・・?魔導士団長は顔で選んだってゲラルド
から聞いたぞ。そんな理由なら俺だって」
「何でそんなことまでバレてるんですか⁉︎」
恥ずかしさのあまりまた会話を遮ってしまった。
ユーリ様・・・とエル君が憐れみを込めた目で私と
レニ様を見ている。
いや、話を途中で遮るなんて失礼なのは分かってる
けどまさかレニ様まで私がシグウェルさんを伴侶に
決めたことを知っていて、しかもあの顔に弱い事まで
分かってるとは思わなかった。
さっきまでレニ様だけが赤かったのに、今は私も
顔が熱い気がする。
「お前、まだ伴侶を増やす気か?」
こっちだ、とヴォルフマリア様がいるらしい部屋の
奥・・・庭園の方へレニ様自らが案内しながらそう
私に聞いて来た。
「別に今までだって増やそうと思って増やしたんじゃ
ないですよ⁉︎なんていうか成り行きで・・・」
「その場の勢いで生涯を共にする者を選んだのか⁉︎
なんて奴だ・・・そんなに小さいのに大の大人を手玉
に取るなんて。」
レニ様の中で私がとんでもない悪女か女たらしならぬ
男たらしになっている気がする。
そこでレニ様はごほんとわざとらしく咳払いをして
部屋から庭園へと続くポーチの手すりに腕をかけて
寄りかかると私を見て来た。
何だろう、カッコつけてるのかな?かわいいだけ
なんだけど。
「じゃあお前、例えば俺がお前に・・・」
うっすら赤い顔のまま何事かを言いかけたその時、
「レニ、おやめなさい。それはまだ早い。時を
見定められぬ者など死に急ぐだけです。」
その言葉を涼やかな声が遮った。
今日のレニ様は最後まで話をさせてもらえないことが
多いなと思いながら声のした方を見れば、そこには
一人の女の人が庭園のテーブルに座りながらこちらを
じっと見つめていた。
レニ様を呼び捨てにしているということは、この人が
大声殿下の奥さんで皇太子妃、レニ様のお母様である
ヴォルフマリア様か。
綺麗なピンク色でふわりとウェーブがかった髪の毛に
こちらを見つめる瞳は澄んだエメラルドグリーンだ。
見た目はピンクに緑とかわいい色の組み合わせなのに
そのきりりと引き締まった表情が知的で素敵な人だ。
さすがは元護衛騎士、といったその凛々しい雰囲気は
テレビでみたことのある宝塚の男役の人のような
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