【本編完結】異世界再建に召喚されたはずなのになぜか溺愛ルートに入りそうです⁉︎【コミカライズ化決定】

sutera

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第十六章 君の瞳は一億ボルト

14

いつかの王都での街歩きのように、レジナスさんと
シェラさんの間で両手を取られて歩く。

するとやがて目の前にはたくさんの水をたたえた池の
ように大きな泉が現れた。対岸では鹿が水を飲んで
いるのも見える。

「・・・え?ここがその泉ですか?」

おかしい。私が加護をつけて湧き出た泉はもっと
小さいものだった。

「他にもっと小さい噴水付きの泉はありませんか?」

きょろきょろして聞けば、案内役の人が笑って
教えてくれる。

「いえ、泉はここだけです。噴水ならあの真ん中に
小さく湧き出ている部分がありますが見えますか?」

指し示された泉の真ん中には、よくよく見ると
数十センチほどの高さから水が噴き出ている部分が
あった。

その形になんとなく見覚えがある。キリウさんが
手を付いて、土から作ってくれた噴水の真ん中の
部分だ。

「どうだユーリ、この場所で合っているか?」

レジナスさんの言葉に噴水をじっと見つめる。

「多分そうです!でもこんなに大きな池みたいに
なってなかったですよ?もっとかわいい大きさの
ものだったはずなんですけど・・・」

ああ、それなら。案内役の人が説明してくれた。

山からの雪解け水も相まって、ここ100年の間に
泉の湧出量は随分と増えたという。

それによって、元々の泉から溢れるほどの水量に
なったためコーンウェル領の人達が手を入れてこの
大きさにまで整備したらしい。

今ではここから近くの集落まで水を引き入れて
飲料水にも利用できるほどだという話だ。

「軽い気持ちで付けた加護だったのに、まさか
こんなにも変わっているとは思いませんでした!
帰ったらレニ様にも教えてあげないと。」

案内役の人には聞こえないように言って、そっと
水に手を触れれば一瞬だけ泉が金色に光ったような
気がする。

「即位した後の勇者様やその右腕のキリウ様も、
コーンウェル領へ視察に来られた際はこちらへもよく
立ち寄られたそうですよ。ただし、大切な場所なので
静かな環境をそのまま残しておきたいから、ここの
ことを知らない者達にはそのまま秘密にするように
とのお達しもあったようです。」

そう言って泉を見つめた案内人さんは少しだけ
困ったように笑った。

「ですから今回こちらをご覧になりたいと聞いて
驚きました。領外の者達はおろか領内の者達にすら
ここは少し不思議な泉と勇者様の結界を持つ、ただの
狩り場の休息場所程度にしか思われていないはず
でしたから。・・・出来ればこれから先もここは
勇者様のご意向通り、ただの休息場所として静かに
見守っていただければ助かります。」

私とレニ様が消えた後も、レンさんとキリウさんは
ここに来ていたんだ。

だけど自分が結界を付けた癒しの力を持つ不思議な
泉のある場所だと公にしなかったのは得体の知れない
怪しい子どもだった私とレニ様の事を、少しは
自分達だけの思い出として大切に記憶してくれて
いたんだろうか。

そうだったら嬉しいな。

もう会うことはないだろう100年前の二人との
不思議な縁に心の中が暖かくなった。

「王都に帰ったらレニ様にも教えてあげたいです。
でも勇者様の希望通り、この先も勇者様ゆかりの地と
して公表はしないでこのままそっとしておきますね。
その代わりせめて私にも加護を付けさせて下さい!」

すでに薄く癒しの加護は付いているけど、改めて
きちんと加護を付けた。

今までここを大事にして静かに見守って来てくれた
コーンウェル領の人達へのお礼だ。

それを見届けたシェラさんが、お疲れ様でしたと
言っていつのまにか広げていた敷物へと私を座らせる
とお茶とお菓子を出して来た。

「いつの間にこんな物を⁉︎」

さっきこんなの持って来てたっけ?手ぶらだった
ような。

そう思っていたら、

「俺が持って来た・・・って言うか持ってこらされた
んっすよユーリ様!」

ユリウスさんの声がした。後追いで来ると言ってた
けど、どうやら私が泉に加護をつけている間にやって
来ていたらしい。

「あ、お疲れ様ですユリウスさん!」

見れば両手にバスケットやら何やら持っている。

「リオン殿下とオーウェン様の会談に立ち会った後は
別宮に一度寄ってから来るようにってそこの色男に
言われてたから何があるかと思えば、俺はユーリ様の
おやつ係っすか⁉︎人使いの荒さはうちの団長と遜色
ないっすね!」

プンプンしながらも小さな折り畳みテーブルの上に
携帯用の茶器やお菓子を出しててきぱきと並べている
ユリウスさんはさすが仕事が出来る男だと言うべきか
使いっぱしりに慣れていると言うべきか、どっち
なんだろう?

とりあえず褒めておこうかな、私は褒めが足りない
らしいし。

「さすがユリウスさん、気遣いの人ですね!こんなに
たくさん重い荷物を持って来てくれてありがとう
ございます、大好きです‼︎」

お菓子を手においしいです!と笑いかければ

「ヒェッ⁉︎やめるっす、嬉しいけど怖い‼︎ユーリ様
の後ろの二人が凄い顔して俺を見てるっすよ⁉︎」

ビクッ!とあからさまに怯えられた。

「なんでですか、私は言葉足らずで褒めが足りない
って言ってたのはユリウスさんじゃないですか?」

「言葉の選び方がおかしいんすよユーリ様は!
大好きとかそんな軽々しく言うのは俺じゃなくて
自分の旦那だけにしとくっす!」

あ、そういうことか。そんなに真面目に受け取る事も
ないと思うんだけどなあ。

ただの感謝の気持ちだし、恋愛的な意味での大好き
ってことじゃないのはさすがにレジナスさんも
分かってくれてるでしょ?

そう思って、ユリウスさんが凄い顔をしていると
言った私の後ろに立つレジナスさんを見る。

・・・凄い顔をして怒ってるというほどでもないよ?

少しだけ渋い表情のレジナスさんは

「ユリウスなんかに好きというくらいならその分
リオン様にそう言ってやってくれ。」

と言った。もう一人、シェラさんの方を見れば
いつも通りの色気のある笑顔で

「ユーリ様、お菓子を出しただけのユリウス副団長の
ことをそのようにおっしゃるのであれば、その
手配をしたオレのことはそれ以上に好きということ
でしょうか?ぜひオレにもその言葉をかけて下さい」

そんな事を言われた。やっぱり怒ってない。
これはおねだりだ。そしてシェラさんのその言葉に
むしろレジナスさんが怒った。

「どさくさに紛れておかしな事をユーリに頼むな!
さっきまでのしおらしさはどこに行った⁉︎」

「卑屈になるなと言ったのはあなたですよね?
今さら何ですか、いつも通りのオレで何が悪いと
言うのです?」

「そういう意味でいつも通りになれと言った覚えは
ない!」

「また顔が魔物のように恐ろしくなっていますよ。
この神聖な場所にまったくそぐわない怒りっぽい
男ですね。」

「誰が怒らせていると思ってるんだ⁉︎」

・・・また始まった。呆れて二人からユリウスさんに
向き直る。

「ほらねユリウスさん。二人ともユリウスさんには
怒ってないですよ?見て下さい、むしろお互いの
ことで怒りあってますけど。」

「いや、今はたまたま単純に話が逸れてしまったから
お互いに罵り合ってるだけで、ユーリ様の発言如何いかん
俺が怒られるのには変わりないっす。マジで自分の
言葉には気を付けて欲しいっすよ⁉︎」

ユリウスさんに注意された。

「はーい、気を付けまぁす・・・」

納得がいかないなあと小首をかしげながらお菓子を
食べればまた怒られる。

「だからそのわざとらしく可愛い仕草をするのは
やめるっす!」

「聞き捨てなりませんねユリウス副団長。ユーリ様
が何をしても可愛らしいのはそういう仕様なのに、
なぜそれを咎めるのです?もしそれでユーリ様が
オレにその可愛らしい仕草をしてくれなくなったら
あなたは首をくくる覚悟はあるのですか?」

「ヒェッ⁉︎」

たった今までレジナスさんと喧嘩をしていたはずの
シェラさんに突然向き直られてユリウスさんが
青くなった。加えてレジナスさんまで、

「ユーリが他の者にまで無自覚に愛嬌を振り撒くのを
注意したいのは分かるが、少し強く言い過ぎでは
ないか?ユーリが怖がって泣いたらどうする。」

そんな過保護なことまで言ってきた。

「なんでアンタまで俺に文句を言うっすか⁉︎」

二人がかりで責められたユリウスさんはちょっと
かわいそうだけど、おかげで二人の喧嘩は止まった。

・・・やっぱりこの二人のためにもユリウスさんが
いて良かったのかも知れない。









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