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第十八章 ふしぎの海のユーリ
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「ユーリ様、海に行きませんか」
ファレルの神殿での騒ぎから数週間が経ったある日、
シェラさんはそう言ってにこやかに私を見た。
「海ですか?」
そういえばこの世界に来てから海は見たことがない。
海の幸だけは食べてるけど。
奥の院のいつもの庭園で本を読んでいた私にお茶を
準備しながらシェラさんは続ける。
「ええ、ここから南東にあるリオネルという港町
です。他国との交易で栄え活気があり、景色も美しい
ところですよ。南に位置するだけあってまだ寒い
今のような春先に王都を出て保養をするにはぴったり
だと思います。」
「別に保養が必要なほど疲れてるわけでもないです
けど?」
そう返した私にとんでもない、とシェラさんは首を
振った。
「先日、ファレルの神殿での騒ぎではユーリ様も
あの霧に包まれかけたではありませんか。姫巫女
カティヤ様もユーリ様を案じておられたでしょう?」
それはそうだけど。
ファレルの神殿近くの集落であった騒ぎを解決した
後、ダーヴィゼルドの時のようにヨナスの力が宿った
霧を吸い込みかけたと聞いたリオン様は私をすごく
心配してくれた。
わざわざカティヤ様にまで連絡を取ってくれて、
一度私を見てもらえないかとまで頼んだのだ。
シグウェルさんの作ってくれたあの鈴みたいな形の
結界石も身に付けていたし大丈夫だと言ったんだけど
連絡を受けたカティヤ様もぜひ会いたいと言ってくれ
先日は王都の大神殿まで出掛けて来た。
しかもカティヤ様のお部屋に泊まらせてもらった。
早々に夜着に着替えた後は二人でお菓子を食べながら
夜中までおしゃべりを楽しんで、気付けばカティヤ様
と二人抱き合うようにして眠っていたのだ。
翌朝、目が覚めた時なんか自分の目の前にリオン様に
似た顔があってびっくりしたもの。
一瞬リオン様と寝たんだっけ⁉︎と錯覚して心臓が
跳ねて、そのおかげですっかり目が覚めたけど。
そのカティヤ様が言うには、
「特にヨナス神の影響は見られないので安心して
良いと思いますわ。むしろ徐々にその力は弱まって
きているかも知れません。」
とのことだった。私の首にあるチョーカーが前に
会った時よりも嫌な感じがしないらしい。
やっぱり前に夢の中で会ったグノーデルさんがそれに
傷を付けてくれたのも関係しているのかな?
そういえばカティヤ様はイリューディアさんの力が
強い姫巫女だから二人で一緒に寝たらグノーデルさん
と夢で会ったようにイリューディアさんにも会える
のかと少し期待したけど残念ながら今回はそれは
なかった。
「お兄様と共寝をした時も、一度ではグノーデル神様
にはお会い出来なかったのでしょう?であれば、
ぜひまた泊まりにいらしてくださいね。わたくしとも
何度か共寝をすればきっとそのうちイリューディア
神様に夢の中でお会いできるでしょう」
そう言ってまた泊まりに行く約束をした。
その時に、
「ヨナス神の力はあまり感じられませんがそれとは
別にユーリ様は少しのんびりされた方が良いかも
知れませんね。身の内に疲れがたまっているように
見受けられますわ」
と言われた。まあ確かに、温泉に入ろうと行った先の
コーンウェル領ではお見合いもどきな目に遭った上に
噴火騒ぎに巻き込まれたし、帰って来てからは今回
のヨナス神の力に関係する騒ぎをおさめるお手伝いへ
出掛けた。
その上、そのどちらの時もシェラさんを伴侶にするか
どうかでずっと悩んでいたのだ。
体というより精神的に疲れているのかもしれない。
そんな精神的な疲れに癒しの力は効かないし。
「カティヤ様の言う私の疲れはヨナスの霧のせいと
いうよりかはもっとこう、別のもののような気が
するんですけどね・・・」
優雅な手つきでケーキを切り分けるシェラさんを
見て呟く。
まさかその原因はシェラさんにも関係あったんですよ
とは言えない。
「おや、何かお悩みが?お話してくださればオレが
解決いたしますよ?」
「いえ、大丈夫です!それについてはもう解決して
ますから!」
そう、シェラさんの事も腹をくくって受け入れたし
悩みはもうない。そのはずだ。
ただ、シェラさんのせいでファレルでの求婚を
受け入れた時の状況が思った以上に大袈裟に周りに
伝わってしまった。
・・・ファレルの騒ぎでたった一人最後まで残り
ながら私を守ったその姿に心を打たれて絆が
深まったシェラさんと私。
だけどキリウ小隊という特殊な部隊の所属騎士に
対してあまりいい顔をしない神殿側に反対された
ため最終的に二人だけでひっそりと結婚の誓いを
立てる。
するとそれは美しい花びらの形を取りイリューディア
さんの祝福として二人の上に降り注いだ・・・
まるで騎士と姫の完璧な恋物語かおとぎ話のようで
素敵です!
・・・というような話があちこちから聞こえてきた。
なんでだ。真実二割、嘘が八割くらいでかなり誇張
されて伝わっている。
そんな感じだったので、王都に戻って早々に
シェラさんが奥の院に越してくるのも侍女の皆は
きゃっきゃして見守っていた。
そしてシェラさんを見てはしゃぐ侍女達の様子が
面白くなかったのか主に騎士さん達が悔しそうに
その様子を眺めていたり、お通夜みたいな気落ち
した雰囲気で物言いたげに私を見つめたりしてた
けど。
なかには
「ユーリ様、本当にあの隊長でいいんですか?」
って聞いてくる騎士さんもいた。
「すみません、みんなの浮かれた雰囲気もそのうち
落ち着くと思うので・・・」
と答えればいえ、そう言う意味じゃなくて、とか
なんとか言われてどういう意味?と聞こうとすれば
そんな時は必ずシェラさんが現れて
「うるさいですよ」
と騎士さんを追い払ってしまった。
そういう意味ではまだちょっと私の周囲は騒がしい。
本当はファレルの大鐘楼を自分の足で登り切れず
体力のなさを痛感したので、騎士団にお邪魔して
体力の付け方を教えてもらおうと思っていたのに、
シェラさんだけでなくレジナスさんにまで
「今はまだ騎士団に来ない方がいい」
と止められてしまった。私とシェラさんの件でまだ
騎士団内が落ち着いていないからだと説明されたけど
キリウ小隊の隊長が結婚するってそんなに騒ぐこと
だったのかな・・・。
そんなわけでまだ何となく落ち着かない近辺の中、
ゆっくりできるのはいつものこの庭園くらいだ。
そう考えれば王都から少し離れてゆっくりするのも
いいのかも知れない。海かぁ。
「そのリオネルっていうところ、南東にあるって
言いますけどここから遠いんですか?」
「馬車で数日はかかりますが、すでに魔導士団長に
頼んで魔法陣を設置してもらっています。ですから
あっという間に着きますよ。」
え?いつの間にそんな準備まで。思い付きで提案した
には手際が良過ぎるんですけど。
「ゆっくり出来るように無人島に滞在を・・・と
言いたいところですが、あいにくそちらはまだ準備が
整っておりません。ですので、ユーリ様のお出掛けが
決まり次第リオネルの町を見下ろす郊外にある貴族の
屋敷を一棟借り上げる予定です。」
「そこまでしなくても」
「警備上の都合もありますしユーリ様にゆっくりと
くつろいでいただくためでもあります。話をした
そこの持ち主も癒し子様に使っていただけるならと
喜んで賛成してくれました。」
うーん、なんだか癒し子の権力を使って屋敷を
取り上げたみたいで申し訳ないなあ。
そう迷っていたら、
「リオネルでは毎週末、花火もあがりそれはもう
美しいですよ。ユーリ様の食べたがっていたサシミ
なる食べ物もありますし。さすがにそれにつける
チャンユーという調味料はないようですが、それは
マリーに言ってこちらから持参すれば良いでしょう」
「お刺身が食べられるんですか⁉︎」
思わず食い付いてしまった。結局王都ではまだ一度も
刺身を食べていない。
食い意地の張った私の返しに計算通りとばかりに
シェラさんの笑みが深まる。
「ユーリ様がお望みであれば滞在中は毎日食べられ
ますよ。その他にも市場には屋台が並び、その場で
自分が選んだ新鮮な海の幸を料理してもらうことも
出来ますし。」
え、何それ最高。すっかり新鮮な海の幸へと思いを
馳せた私に
「瞳が大変美しく輝いておりますよユーリ様。
興味を持っていただけたようで何よりです。すぐに
日程を整えましょうね。」
とシェラさんは深く頷いた。
ファレルの神殿での騒ぎから数週間が経ったある日、
シェラさんはそう言ってにこやかに私を見た。
「海ですか?」
そういえばこの世界に来てから海は見たことがない。
海の幸だけは食べてるけど。
奥の院のいつもの庭園で本を読んでいた私にお茶を
準備しながらシェラさんは続ける。
「ええ、ここから南東にあるリオネルという港町
です。他国との交易で栄え活気があり、景色も美しい
ところですよ。南に位置するだけあってまだ寒い
今のような春先に王都を出て保養をするにはぴったり
だと思います。」
「別に保養が必要なほど疲れてるわけでもないです
けど?」
そう返した私にとんでもない、とシェラさんは首を
振った。
「先日、ファレルの神殿での騒ぎではユーリ様も
あの霧に包まれかけたではありませんか。姫巫女
カティヤ様もユーリ様を案じておられたでしょう?」
それはそうだけど。
ファレルの神殿近くの集落であった騒ぎを解決した
後、ダーヴィゼルドの時のようにヨナスの力が宿った
霧を吸い込みかけたと聞いたリオン様は私をすごく
心配してくれた。
わざわざカティヤ様にまで連絡を取ってくれて、
一度私を見てもらえないかとまで頼んだのだ。
シグウェルさんの作ってくれたあの鈴みたいな形の
結界石も身に付けていたし大丈夫だと言ったんだけど
連絡を受けたカティヤ様もぜひ会いたいと言ってくれ
先日は王都の大神殿まで出掛けて来た。
しかもカティヤ様のお部屋に泊まらせてもらった。
早々に夜着に着替えた後は二人でお菓子を食べながら
夜中までおしゃべりを楽しんで、気付けばカティヤ様
と二人抱き合うようにして眠っていたのだ。
翌朝、目が覚めた時なんか自分の目の前にリオン様に
似た顔があってびっくりしたもの。
一瞬リオン様と寝たんだっけ⁉︎と錯覚して心臓が
跳ねて、そのおかげですっかり目が覚めたけど。
そのカティヤ様が言うには、
「特にヨナス神の影響は見られないので安心して
良いと思いますわ。むしろ徐々にその力は弱まって
きているかも知れません。」
とのことだった。私の首にあるチョーカーが前に
会った時よりも嫌な感じがしないらしい。
やっぱり前に夢の中で会ったグノーデルさんがそれに
傷を付けてくれたのも関係しているのかな?
そういえばカティヤ様はイリューディアさんの力が
強い姫巫女だから二人で一緒に寝たらグノーデルさん
と夢で会ったようにイリューディアさんにも会える
のかと少し期待したけど残念ながら今回はそれは
なかった。
「お兄様と共寝をした時も、一度ではグノーデル神様
にはお会い出来なかったのでしょう?であれば、
ぜひまた泊まりにいらしてくださいね。わたくしとも
何度か共寝をすればきっとそのうちイリューディア
神様に夢の中でお会いできるでしょう」
そう言ってまた泊まりに行く約束をした。
その時に、
「ヨナス神の力はあまり感じられませんがそれとは
別にユーリ様は少しのんびりされた方が良いかも
知れませんね。身の内に疲れがたまっているように
見受けられますわ」
と言われた。まあ確かに、温泉に入ろうと行った先の
コーンウェル領ではお見合いもどきな目に遭った上に
噴火騒ぎに巻き込まれたし、帰って来てからは今回
のヨナス神の力に関係する騒ぎをおさめるお手伝いへ
出掛けた。
その上、そのどちらの時もシェラさんを伴侶にするか
どうかでずっと悩んでいたのだ。
体というより精神的に疲れているのかもしれない。
そんな精神的な疲れに癒しの力は効かないし。
「カティヤ様の言う私の疲れはヨナスの霧のせいと
いうよりかはもっとこう、別のもののような気が
するんですけどね・・・」
優雅な手つきでケーキを切り分けるシェラさんを
見て呟く。
まさかその原因はシェラさんにも関係あったんですよ
とは言えない。
「おや、何かお悩みが?お話してくださればオレが
解決いたしますよ?」
「いえ、大丈夫です!それについてはもう解決して
ますから!」
そう、シェラさんの事も腹をくくって受け入れたし
悩みはもうない。そのはずだ。
ただ、シェラさんのせいでファレルでの求婚を
受け入れた時の状況が思った以上に大袈裟に周りに
伝わってしまった。
・・・ファレルの騒ぎでたった一人最後まで残り
ながら私を守ったその姿に心を打たれて絆が
深まったシェラさんと私。
だけどキリウ小隊という特殊な部隊の所属騎士に
対してあまりいい顔をしない神殿側に反対された
ため最終的に二人だけでひっそりと結婚の誓いを
立てる。
するとそれは美しい花びらの形を取りイリューディア
さんの祝福として二人の上に降り注いだ・・・
まるで騎士と姫の完璧な恋物語かおとぎ話のようで
素敵です!
・・・というような話があちこちから聞こえてきた。
なんでだ。真実二割、嘘が八割くらいでかなり誇張
されて伝わっている。
そんな感じだったので、王都に戻って早々に
シェラさんが奥の院に越してくるのも侍女の皆は
きゃっきゃして見守っていた。
そしてシェラさんを見てはしゃぐ侍女達の様子が
面白くなかったのか主に騎士さん達が悔しそうに
その様子を眺めていたり、お通夜みたいな気落ち
した雰囲気で物言いたげに私を見つめたりしてた
けど。
なかには
「ユーリ様、本当にあの隊長でいいんですか?」
って聞いてくる騎士さんもいた。
「すみません、みんなの浮かれた雰囲気もそのうち
落ち着くと思うので・・・」
と答えればいえ、そう言う意味じゃなくて、とか
なんとか言われてどういう意味?と聞こうとすれば
そんな時は必ずシェラさんが現れて
「うるさいですよ」
と騎士さんを追い払ってしまった。
そういう意味ではまだちょっと私の周囲は騒がしい。
本当はファレルの大鐘楼を自分の足で登り切れず
体力のなさを痛感したので、騎士団にお邪魔して
体力の付け方を教えてもらおうと思っていたのに、
シェラさんだけでなくレジナスさんにまで
「今はまだ騎士団に来ない方がいい」
と止められてしまった。私とシェラさんの件でまだ
騎士団内が落ち着いていないからだと説明されたけど
キリウ小隊の隊長が結婚するってそんなに騒ぐこと
だったのかな・・・。
そんなわけでまだ何となく落ち着かない近辺の中、
ゆっくりできるのはいつものこの庭園くらいだ。
そう考えれば王都から少し離れてゆっくりするのも
いいのかも知れない。海かぁ。
「そのリオネルっていうところ、南東にあるって
言いますけどここから遠いんですか?」
「馬車で数日はかかりますが、すでに魔導士団長に
頼んで魔法陣を設置してもらっています。ですから
あっという間に着きますよ。」
え?いつの間にそんな準備まで。思い付きで提案した
には手際が良過ぎるんですけど。
「ゆっくり出来るように無人島に滞在を・・・と
言いたいところですが、あいにくそちらはまだ準備が
整っておりません。ですので、ユーリ様のお出掛けが
決まり次第リオネルの町を見下ろす郊外にある貴族の
屋敷を一棟借り上げる予定です。」
「そこまでしなくても」
「警備上の都合もありますしユーリ様にゆっくりと
くつろいでいただくためでもあります。話をした
そこの持ち主も癒し子様に使っていただけるならと
喜んで賛成してくれました。」
うーん、なんだか癒し子の権力を使って屋敷を
取り上げたみたいで申し訳ないなあ。
そう迷っていたら、
「リオネルでは毎週末、花火もあがりそれはもう
美しいですよ。ユーリ様の食べたがっていたサシミ
なる食べ物もありますし。さすがにそれにつける
チャンユーという調味料はないようですが、それは
マリーに言ってこちらから持参すれば良いでしょう」
「お刺身が食べられるんですか⁉︎」
思わず食い付いてしまった。結局王都ではまだ一度も
刺身を食べていない。
食い意地の張った私の返しに計算通りとばかりに
シェラさんの笑みが深まる。
「ユーリ様がお望みであれば滞在中は毎日食べられ
ますよ。その他にも市場には屋台が並び、その場で
自分が選んだ新鮮な海の幸を料理してもらうことも
出来ますし。」
え、何それ最高。すっかり新鮮な海の幸へと思いを
馳せた私に
「瞳が大変美しく輝いておりますよユーリ様。
興味を持っていただけたようで何よりです。すぐに
日程を整えましょうね。」
とシェラさんは深く頷いた。
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