【本編完結】異世界再建に召喚されたはずなのになぜか溺愛ルートに入りそうです⁉︎【コミカライズ化決定】

sutera

文字の大きさ
467 / 776
第十九章 聖女が街にやって来た

9

しおりを挟む
「おぅ、来たなユーリちゃん!」

前回陛下が羊の毛刈りをしていたのと同じ庭園に通されれば、案内された東屋は前と違うものの陛下その人が笑顔で迎えてくれた。

前回通された場所は絨毯敷きされた床に座り込む形のところだったけど、今回はゆったりとしたソファがある。

なぜ前回とは別のそんな東屋に通されたのかは陛下に同席しているもう一人の人を見て分かった。

「ヴィルマ様!お会い出来て嬉しいです‼︎」

陛下の隣には大声殿下の奥さん、ヴィルマ様が座り私にお辞儀をしてくれた。

ソファに身を預けて座るその姿は、元気そうだけど前に会った時よりもだいぶお腹がふっくらしている。

「お久しぶりですユーリ様。成長されたという話は聞いておりましたが、大人びられてすっかり一人前のレディですね。」

「見た目だけ急に大きくなったので私自身はまだ慣れないんですけどね。
今日も慣れない長さのドレスにその裾を踏んづけちゃいました!」

突然手足が伸びたので、今までの感覚で歩こうとして服の裾を踏んで転びそうになったりちょっと狭いところを通ろうとして頭をぶつけたりとエル君に呆れられているのがここ数日の私だ。

まあ、と朗らかな笑顔を見せてくれたヴィルマ様は顔色も良いので本人の体調も良くお腹の赤ちゃんも順調に育っていそうだ。

「ヴィルマ様もお変わりはありませんか?
疲れやむくみがあれば取りますよ。」

そっと手を触れればヴィルマ様の体が淡く光る。

「いいなあ、ユーリちゃん、それ俺にもやってくれないか⁉︎」

その様子を見ていた陛下に羨ましがられたので、そういえば陛下には直接加護を付けたことはなかったと思い当たる。

なんかいつも元気ハツラツ、って感じの人で私の力なんかいらないんじゃないかって気にさせられる。

「じゃあ陛下にも!」

手を伸ばして触れようとすれば、ぎゅむっと抱きしめられた。

「なるほどなあ、本当に体を軽く感じる。これなら魔物の十や二十、今すぐにでも簡単に狩りに行ってこれそうだ!」

抱きしめられたまま力を使えば陛下はふんふんとその効力を確かめている。

そんな陛下にヴィルマ様は苦笑した。

「陛下、どうぞ自重されて下さい。この時期に王宮を抜け出されますと、後でリオン殿下のお小言が怖いですよ?」

分かってるって、と陛下はつまらなそうな顔をして抱き寄せていた私を改めて見つめて来た。

「しっかしあっという間に大きくなっちまったなあ。
カティヤとそう変わらない年頃か?急に大きくなって何も不便はないか?」

何かあったら言えというその言葉だけありがたくいただいておこう。

「俺とユーリちゃんは一緒にヘイデス国の謁見を受けるからな、
本当はあの小さい姿だったら膝に乗せてあいつらにユーリちゃんを見せびらかそうと思ってたんだが・・・
この大きさじゃそれも出来ん、いや残念だ。」

そう言った陛下は本当に残念そうに首を振っている。

いや、他国の人達の前で膝抱っことか恥ずかしいことこの上ないから。

良かった、大きくなって・・・と思っていたら

「仕方ねぇから俺の隣に座ろうな、リオンも同席するけどあいつはユーリちゃんの後ろに護衛よろしく立っててもらおう!」

あいつの席、ねぇから!と豪快な笑顔で言われた。

それってよく映画や物語で見るみたいな、謁見に来た人達よりも一段高い位置に並んで座る王様とお妃様みたいな?

まさかね、と思っていたけどヴィルマ様が

「陛下・・・。それではまるでユーリ様が陛下のご伴侶様のように思われるではありませんか。
なぜ自らリオン殿下のお小言をいただくような事をされるのです?」

とため息をついた。あ、やっぱりそういう感じに見える席なんだ。

「だってアイツがすました顔を崩して怒るのを見るの面白れーもん。
たまに怒らないとストレスが溜まる一方だろ?
あと俺、今は正妃もいねぇしたまに隣に誰か座るのも新鮮でいいだろ?」

それに隣に座ってもらえばユーリちゃんのこの国での地位も分かりやすいしな!と言っている。

ルーシャ国の国王陛下の隣に座り、第二王子をその背後に立たせる。

確かにそれを目にした他国の人達はそれで私がここでどれだけの地位にいるのか一目で分かるだろうけど。

「なんだかリオン様に申し訳ないし、ヘイデス国の人達にもあんまり偉そうに思われても落ち着かないんですけど・・・」

と言えば

「え?じゃあユーリちゃん俺とは別の謁見にしてリオンとその他三人の伴侶をその側に侍らせながらにする?」

ともっと恥ずかしい提案をされた。

「何でですか!」

「王子だの魔導士団長だのが伴侶でガッチリその側を固めてるって分かれば結構な牽制になると思うんだよなあ。
あと単純に、そういうモテモテな状況のユーリちゃんを俺が見たいから?」

なんだそれ。陛下が面白いだけで私はただひたすら恥ずかしいだけじゃないの。

あとそういう状況になったら、絶対にリオン様やシェラさんが面白がって悪ノリする。

「そんな目に遭うくらいなら陛下の隣に座る方がいいです・・・」

選びようのない二択からしぶしぶ恥ずかしくない方を選べば、

「よし決まりだな!」

と陛下はすごく楽しそうに笑った。

その後も、運ばれて来た昼食を取りながらヴィルマ様のお腹の赤ちゃんはやっぱり女の子だったとか、
レニ様は大声殿下に付いて回って国事行為の勉強をしているとか、
陛下は今度畑を作るのに挑戦する予定だとか色んな話をした。

その会話の中で、ふと思い出したことがあり陛下に

「そういえばここに来る途中、バラ園のお花がだいぶ少なくなっていました。帰りにちょっと寄ってお花を増やしていってもいいですか?」

と聞いた。

この世界に来たばかりの頃、庭師さんに頼まれて豊穣の加護の力の練習がてらその花を増やしたり大輪にしたりした王宮のバラ園だ。

ここに来る途中に通るその場所は、なぜかこの時期にしては花が少なく寂しいものだった。

あそこは王宮を訪れるお客様の目にもつく場所だからもう少し花が多く華やかな方がみんなに喜んで貰えるんじゃないかな?

そう思っての申し出だ。すると陛下は、

「おー、そりゃ助かる!歓迎式典だ宴席のテーブルの彩りだってあそこのバラもだいぶ使ってしまったんだろうなあ。
面倒でなけりゃぜひ頼む!」

と快く許可を出してくれた。

なのでさっそく陛下の宮殿からの帰り道に王宮の庭園に寄る。

いつもならそこを散策する人を何人かは見かけるけど今日は誰もいなかった。

やっぱりみんな忙しくて庭園の散策なんてヒマなことをする人はいないらしい。

今日の私のお供はシンシアさんとエル君だったけど、

「奥の院にも飾れるようにいくつか花をいただいて参りましょうか?」

とシンシアさんに聞かれ、そうしたいと答えれば庭師を呼びに行ってくれた。

その間私のそばにはエル君だけになることを心配してくれたけど、エル君以上に頼りになる護衛はない。

すぐに戻りますからあまり遠くへ行かないで下さいと言うシンシアさんに手を振って、エル君と二人でバラ園を散策する。

手を触れてバラの開花を促せば、今までよりも一度で花が咲くその範囲がより広範囲になっていて、
体が成長したら使える力も強くなっているのがよく分かる。

これは力加減を間違えるとただでさえ当たり判定が強いイリューディアさんの力で今までよりも簡単に強化人間が出来てしまうかもしれない、気をつけようと心に誓った。

ポンポンとバラのアーチや生垣に触れながら歩けば私の後から花の数は増え、気付けばシンシアさんといた場所からだいぶ離れていた。

「ユーリ様、そろそろ戻った方がいいと思います。」

エル君にもそう促される。

「分かりました!じゃあエル君、私に着いてきて下さい!」

早く戻れた方がいいだろうとエル君に声をかけて生垣に手を掛ける。

そんな私にエル君が不思議そうにしたので、

「近道ですよ!前はよく加護の練習に夢中になっておやつの時間に遅れそうになったんです。そんな時に発見しました!」

と懐かしい近道を通ろうと生垣をかき分ける。

そこには小さなトンネルのようにぽっかりと穴が空いているのだ。

「行きましょう!」

意気揚々とそこをくぐろうと四つん這いに近い格好で頭を下げれば、

「いえユーリ様、そんなところよりも普通に帰る方がいいですよ」

とエル君はつれないことを言う。

「エル君は子どもなのに冒険心が足りないんですよねえ・・・」

元アラサーの私はこんなに冒険心の塊だというのに。

文句を言いながら通り抜けようとしたら、なぜか途中で引っ掛かる。

「あれ?」

お尻の辺りが通らない。後ろからエル君が呆れて

「だから言ったじゃないですか。
ユーリ様、さっき陛下のところでも自分で今の大きさに慣れないって言ってましたよね?
前に通れたそこが大きくなった今は通れなくて当然だと思うんですけど」

「もっと早く言ってください⁉︎」

「あと少し力を込めて前に進んでみて下さい。多分行けます。
どうしてもダメなら僕が生垣を切り裂きますから。」

「そ、それは駄目ですよ!」

庭園に加護を付けに来たのに生垣をズタズタにするとか。

頑張って前に進もうとついた手に力を込めていたその時、ふっと私の顔に影が落ちた。

「・・・侍女か?何をしている?」

聞いたことのない声に顔をあげれば、高位の貴族らしい立派な身なりの男の人が冷たい表情で私を見下ろしていた。













しおりを挟む
感想 191

あなたにおすすめの小説

魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました

iru
恋愛
小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。 両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。 両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。 しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。 魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。 自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。 一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。 初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。 恋人になりたいが、年上で雇い主。 もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。 そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。 そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。 レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか? 両片思いのすれ違いのお話です。

『処刑されるたびに12歳に戻る悪役令嬢、7回目の人生は「何もせず寝て過ごす」ことに決めたら、なぜか周囲が勝手に勘違いして聖女扱いされています

六角
恋愛
公爵令嬢リリアーナは、18歳の誕生日に必ず断罪・処刑されては12歳に戻るという地獄のループを6回も繰り返していた。 真面目に努力しても、剣を極めても、裏社会を支配しても、結局は殺される運命。 心折れた彼女は、7回目の人生でついに決意する。 「もう頑張らない。どうせ死ぬなら、今回はひたすら寝て過ごそう」と。 しかし、安眠を求めて「うるさい」と敵を黙らせれば『王者の覇気』と恐れられ、寝ぼけて放った魔法は『神の奇跡』と崇められ、枕への異常なこだわりは『深遠なる儀式』と誤解されてしまう。 気がつけば、ストーカー気味のヤンデレ王子、パン屋の元ヒロイン、狂犬の如きライバル令嬢、元部下の暗殺者、そして不眠症の魔王までもが彼女の信者となり、リリアーナは意図せずして国を、そして世界を救う「最強の聖女」へと祭り上げられていく。 「お願いだから、私を寝かせて!」 睡眠欲だけで運命(システム)さえもねじ伏せる、無気力悪役令嬢の痛快勘違いサクセス(?)ストーリー!

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

異世界で目覚めたら、もふもふ騎士団に保護されてました ~ちびっ子だけど、獣人たちの平穏のためお世話係がんばります!!~

ありぽん
ファンタジー
神のミスで命を落とした芽依は、お詫びとして大好きな異世界へ転生させてもらえることに。だが転生の際、またしても神のミスで、森の奥地に幼女の姿で送られてしまい。転生の反動で眠っていた瞳は、気づかないうちに魔獣たちに囲まれてしまう。 しかしそんな危機的状況の中、森を巡回していた、獣人だけで構成された獣騎士団が駆け付けてくれ、芽依はどうにかこの窮地を切り抜けることができたのだった。 やがて目を覚ました芽依は、初めは混乱したものの、すぐに現状を受け入れ。またその後、同じ種族の人間側で保護する案も出たが、ある事情により、芽依はそのまま獣騎士団の宿舎で暮らすことに。 そこで芽依は、助けてくれた獣騎士たちに恩を返すため、そして日々厳しい任務に向かう獣人たちが少しでも平穏に過ごせるようにと、お世話係を買って出る。 そんな芽依に、当初は不安だった獣人たちだったが、元気で明るい瞳の存在は、次第に獣人たちの力となっていくのだった。 これはちびっ子転生者の芽依が、獣人や魔獣たちのために奮闘し、癒しとなっていく。そんな、ほっこりまったり? な物語。

妹なんだから助けて? お断りします

たくわん
恋愛
美しく聡明な令嬢エリーゼ。だが、母の死後に迎えられた継母マルグリットによって、彼女の人生は一変する。実母が残した財産は継母に奪われ、華やかなドレスは義姉たちに着られ、エリーゼ自身は使用人同然の扱いを受ける。そんなある日――。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

おばさんは、ひっそり暮らしたい

蝋梅
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。 たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。 さて、生きるには働かなければならない。 「仕方がない、ご飯屋にするか」 栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。 「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」 意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。 騎士サイド追加しました。2023/05/23 番外編を不定期ですが始めました。

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。 すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。 だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。 イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。 変わり果てた現実を前に、 夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。 深い後悔と悲しみに苛まれながら、 失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。 しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。 贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。 そして、母の心を知っていく子供たち。 イネスが求める愛とは、 そして、幸せとは――。

処理中です...