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第十九章 聖女が街にやって来た
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今のエリス様には自分でも勝てると挑発したレジナスさんに私は慌てる。
「何言ってるんですかレジナスさん!」
「ユーリ、彼女が纏う魔力は見えるか?俺に魔力はないし今は魔力を可視化出来る魔道具も持っていないから、怒らせた分だけ何か得体の知れない気配が増したことは分かるがその魔力は目視出来ないんだが」
「えっ?・・・あっ!」
ただでさえ他の人より魔力が多くて聖女様と呼ばれるほどのエリス様を怒らせたらもっと大変な事になると思っていれば、その心の隙をついて魔力のコントロールを乱したかったという話らしい。
そのせいか、さっきまでは全く見えなかったエリス様の魔力らしい薄い紫色の霧のようなものがエリス様の体全体を覆っていて、それが周りのあちこちへ伸びているのが見えた。
そしてそれは私やエル君、レジナスさんにも伸びてきているけどイリューディアさんの加護かな?薄い膜のようなものに弾かれている。
もしかしてカイゼル様やファレルの騒ぎの時に倒れていた騎士さん達のように、エリス様の体のどこかに紫色の水晶でも刺さっていないかと目を凝らすけどそれらしいものは見えない。
ただ操られているというより、自分の意思でもヨナスの力を使っている・・・同化しているような状態なんだろうか。
とりあえずエリス様が周りに伸ばしているこの紫色の霧のような魔力は断ち切れないかな、これさえ途切れれば獣達は大人しくなるのかも知れない。
・・・あの紫色の霧をエリス様から切り離すにはどうすればいいんだろう。
エリス様をぎゅっと抱きしめでもして、イリューディアさんの力でその全体を包み込んじゃうとか?
イリューディアさんの力で卵形のまあるい殻の結界を作るようなイメージで、それでヨナスの力を断ち切ってエリス様を守るような。
「エリス様からヨナスの力を断ち切れるかやってみます!」
レジナスさん達にそう言って、だっとエリス様に駆け寄った。
まさか私が勢い込んで自分に向かって来ると思わなかったらしいエリス様はレジナスさんに向けていた怒りがふいを突かれたのか、目を丸くして固まった。
そのままエリス様に抱きついて、私達二人を包み込む結界が出来るように強く祈る。
「何を・・・っ!」
驚いたエリス様だったけど、すぐに自分を包み込むイリューディアさんの力に気付いたらしい。
「あははっ・・・これよ、これが欲しかったの。イリューディア神様の清く美しい、慈愛に満ちた魔力。本当は私がこの力でみんなに尊敬されて導いてあげるはずだった。やっと正しい形に戻るのね。ユーリ様、もっとその力を私に分けて下さいな。」
エリス様からもぎゅっと強く抱きしめ返される。
すると、何だろう。私の中の力がエリス様の方へ渡っているような気がした。これが魔力を渡しているってことなんだろうか。
シグウェルさんと二人で星の砂に加護を付ける時、シグウェルさんは魔力を私に持って行かれてその魔力が底を尽きかけたっけ。
私もそんな風になるんだろうか。だけど魔力譲渡は互いの信頼が大事でそれによって成り立つ魔力の受け渡しだと後からシグウェルさんに教わった。
私はエリス様に魔力譲渡をしたいわけじゃない。
ただヨナスの力から守ってそれを断ち切ってあげたいと思っているだけだから、もしエリス様に私の魔力が流れ込んでいるならそれはエリス様が私の魔力を無理矢理奪っているに過ぎない。
そんなことをしたら多分体に負担がかかっていずれ破綻する。私はイリューディアさんからもらった特別丈夫な体だけど、エリス様はただの人の体なはず。
「エリス様、そんな事をしたら危険です・・・!じっとしてて下さい、今助けますから‼︎」
「助ける?何から?まだそんな風に私に上から物を言うんですね。大丈夫です、今までは力の差があってあなたよりも下に見えていたかも知れませんが、こうして力を分けてもらえればすぐにあなたと同じ立場になりますから。もうそんな風に上から物は言わせない・・・っ‼︎」
エリス様はイリューディアさんの魔力を取り込むことに夢中だ。
全部ちょうだい、と呟いたのが聞こえた。
それは天上でヨナスが言っていた言葉だ。ヨナスの力に魅入られて自分を保てなくなって来ているのに気付いていないのかな⁉︎
その時だ。興奮して上擦っていたエリス様の声がふと落ち着いた響きで私に聞いて来た。
「・・・ユーリ様、その首元のものは何ですか?どうしてユーリ様からもヨナス神様の魔力の気配がするんですか?」
「え?・・・あっ、これは」
私の首元にあるヨナスのチョーカーにエリス様が気付いた。
そりゃそうか、自分からヨナスの力を取り込んでいる人だからその魔力の気配にも気づきやすいはずだ。
「こんなにもイリューディア神様の加護を受けているのに、さらにヨナス神様の力まで持っておられたんですか?・・・どこまでずるいの‼︎」
そう言うと私の首にガッとその手を伸ばしてきた。
「エッ、エリス様、苦しい・・・!」
ずるいも何も、私だって好きでこんなのを付けているわけじゃないしエリス様だって元々の魔力の他にヨナスの力も持ってるのに。
自分の力に満足せずに他人のものまで欲しがるんだな、と言うさっきのレジナスさんの言葉を思わず思い出してしまった。
自分にないものを見るとどうしても欲しくなるのは元々の性格なのか、それをヨナスにつけ込まれ肥大化してしまった結果なのか。
どっちにしてもエリス様は今、私の中のイリューディアさんの力だけでなくこのヨナスのチョーカーに込められている呪いのような力まで取り込もうとしているらしい。
それは今まで以上に危険な行為だ。あのシグウェルさんでも解呪出来なくて怪我をしかけたのに。
「だ、ダメですエリス様・・・!」
私の首を包み込むようにチョーカーを両手で掴むエリス様の姿は、傍目にみると私の首を締め上げているように見えたらしい。
「ユーリ‼︎」
「ユーリ様‼︎」
レジナスさんとエル君が駆け寄って来たけど、卵の殻みたいな私の作った結界に阻まれて近付けないらしい。
結界を叩いたバンと言う音が頭に響いた。掴まれている首元が熱い。
「それもちょうだい‼︎」
一際高くエリス様の声が聞こえたと思ったら、次の瞬間パシン!と結界が壊れて弾き飛ばされた。
「ユーリ!」
今度こそレジナスさんは私をその手に掴む。
弾き飛ばされて尻もちをつきそうになった私を後ろでしっかりキャッチしてくれた。
私の首からチョーカーが落ちた。それについていた赤い石もポロポロとその形を崩しながら落ちていく。
「と、取れた・・・?」
前にグノーデルさんに傷付けられてからその輝きは褪せてきていたけどあんなにガッチリ私の首に嵌っていたのに。
「エリス様は⁉︎」
我に返って、反対側に弾き飛ばされたエリス様を見る。
エリス様は両手をついて、四つん這いで苦しそうに荒い呼吸を繰り返している。
「おい・・・あれは魔力か?俺の目にも紫色の何かがあの体を覆っているのが見えるぞ」
レジナスさんが私を抱きしめる手に力を込めながら呆然として言った。
エリス様の体は魔力がなくてそれを目視出来ないはずのレジナスさんでもハッキリと分かるくらい、濃い紫色の霧に全身を包まれていた。
もしかしてあのチョーカーの中にあったヨナスの力を全部取り込んだ?
ヨナスの魔石なんてものまで口にしていたくらいだから、イリューディアさんの力よりもヨナスの力の方が親和性が高くなってしまったんだろうか。
エリス様の体を取り囲む霧は呼吸に応じてぐねぐねとその形を変えている。
青紫色の髪の毛は紫色の色合いを強めていって、地面を握りしめている指先を包む紫色の霧はまるで獣の爪のように鋭く伸びて尖っていく。
「狐のしっぽ・・・?」
エル君がぽつりと呟く。見ればその背中・・・お尻の方では紫色の霧が狐の尻尾みたいなふさふさとしたものを二つ、三つと形作り出していた。
夢の中でグノーデルさんの言っていたことを思い出す。
私を地上に送り出した後もヨナスと取っ組み合いの喧嘩をしていたグノーデルさんはヨナスが人型を保てなくなるくらい痛めつけてやったと笑っていた。
『おかげでおれの自慢の毛並みにハゲが出来たが、あいつも黒い狐の姿に変化して逃げていったわ‼︎』
って。もしかしてヨナスの力を取り込み過ぎたエリス様も、人じゃなくなるんだろうか。
ダーヴィゼルドでカイゼル様にヨナスの祭具を投げ付けたセビーリャ族の人は霧を吸い込み魔物に変わり、カイゼル様は意識を乗っ取られた。
まさかそれと同じように、エリス様も魔物に・・・それもヨナスの眷属みたいにより力の強いものに変わる⁉︎
そう思った時、とっさに頭に浮かんだのはグノーデルさんの雷だった。
「レジナスさん・・・お酒ってありますか?」
もしエリス様がヨナスの力で暴れるなら。多分イリューディアさんの力だけじゃダメかも知れない。
グノーデルさんの力で止められるだろうか。
まさかこの場でお酒の力に頼る事になるとは思いもしなかった。
「何言ってるんですかレジナスさん!」
「ユーリ、彼女が纏う魔力は見えるか?俺に魔力はないし今は魔力を可視化出来る魔道具も持っていないから、怒らせた分だけ何か得体の知れない気配が増したことは分かるがその魔力は目視出来ないんだが」
「えっ?・・・あっ!」
ただでさえ他の人より魔力が多くて聖女様と呼ばれるほどのエリス様を怒らせたらもっと大変な事になると思っていれば、その心の隙をついて魔力のコントロールを乱したかったという話らしい。
そのせいか、さっきまでは全く見えなかったエリス様の魔力らしい薄い紫色の霧のようなものがエリス様の体全体を覆っていて、それが周りのあちこちへ伸びているのが見えた。
そしてそれは私やエル君、レジナスさんにも伸びてきているけどイリューディアさんの加護かな?薄い膜のようなものに弾かれている。
もしかしてカイゼル様やファレルの騒ぎの時に倒れていた騎士さん達のように、エリス様の体のどこかに紫色の水晶でも刺さっていないかと目を凝らすけどそれらしいものは見えない。
ただ操られているというより、自分の意思でもヨナスの力を使っている・・・同化しているような状態なんだろうか。
とりあえずエリス様が周りに伸ばしているこの紫色の霧のような魔力は断ち切れないかな、これさえ途切れれば獣達は大人しくなるのかも知れない。
・・・あの紫色の霧をエリス様から切り離すにはどうすればいいんだろう。
エリス様をぎゅっと抱きしめでもして、イリューディアさんの力でその全体を包み込んじゃうとか?
イリューディアさんの力で卵形のまあるい殻の結界を作るようなイメージで、それでヨナスの力を断ち切ってエリス様を守るような。
「エリス様からヨナスの力を断ち切れるかやってみます!」
レジナスさん達にそう言って、だっとエリス様に駆け寄った。
まさか私が勢い込んで自分に向かって来ると思わなかったらしいエリス様はレジナスさんに向けていた怒りがふいを突かれたのか、目を丸くして固まった。
そのままエリス様に抱きついて、私達二人を包み込む結界が出来るように強く祈る。
「何を・・・っ!」
驚いたエリス様だったけど、すぐに自分を包み込むイリューディアさんの力に気付いたらしい。
「あははっ・・・これよ、これが欲しかったの。イリューディア神様の清く美しい、慈愛に満ちた魔力。本当は私がこの力でみんなに尊敬されて導いてあげるはずだった。やっと正しい形に戻るのね。ユーリ様、もっとその力を私に分けて下さいな。」
エリス様からもぎゅっと強く抱きしめ返される。
すると、何だろう。私の中の力がエリス様の方へ渡っているような気がした。これが魔力を渡しているってことなんだろうか。
シグウェルさんと二人で星の砂に加護を付ける時、シグウェルさんは魔力を私に持って行かれてその魔力が底を尽きかけたっけ。
私もそんな風になるんだろうか。だけど魔力譲渡は互いの信頼が大事でそれによって成り立つ魔力の受け渡しだと後からシグウェルさんに教わった。
私はエリス様に魔力譲渡をしたいわけじゃない。
ただヨナスの力から守ってそれを断ち切ってあげたいと思っているだけだから、もしエリス様に私の魔力が流れ込んでいるならそれはエリス様が私の魔力を無理矢理奪っているに過ぎない。
そんなことをしたら多分体に負担がかかっていずれ破綻する。私はイリューディアさんからもらった特別丈夫な体だけど、エリス様はただの人の体なはず。
「エリス様、そんな事をしたら危険です・・・!じっとしてて下さい、今助けますから‼︎」
「助ける?何から?まだそんな風に私に上から物を言うんですね。大丈夫です、今までは力の差があってあなたよりも下に見えていたかも知れませんが、こうして力を分けてもらえればすぐにあなたと同じ立場になりますから。もうそんな風に上から物は言わせない・・・っ‼︎」
エリス様はイリューディアさんの魔力を取り込むことに夢中だ。
全部ちょうだい、と呟いたのが聞こえた。
それは天上でヨナスが言っていた言葉だ。ヨナスの力に魅入られて自分を保てなくなって来ているのに気付いていないのかな⁉︎
その時だ。興奮して上擦っていたエリス様の声がふと落ち着いた響きで私に聞いて来た。
「・・・ユーリ様、その首元のものは何ですか?どうしてユーリ様からもヨナス神様の魔力の気配がするんですか?」
「え?・・・あっ、これは」
私の首元にあるヨナスのチョーカーにエリス様が気付いた。
そりゃそうか、自分からヨナスの力を取り込んでいる人だからその魔力の気配にも気づきやすいはずだ。
「こんなにもイリューディア神様の加護を受けているのに、さらにヨナス神様の力まで持っておられたんですか?・・・どこまでずるいの‼︎」
そう言うと私の首にガッとその手を伸ばしてきた。
「エッ、エリス様、苦しい・・・!」
ずるいも何も、私だって好きでこんなのを付けているわけじゃないしエリス様だって元々の魔力の他にヨナスの力も持ってるのに。
自分の力に満足せずに他人のものまで欲しがるんだな、と言うさっきのレジナスさんの言葉を思わず思い出してしまった。
自分にないものを見るとどうしても欲しくなるのは元々の性格なのか、それをヨナスにつけ込まれ肥大化してしまった結果なのか。
どっちにしてもエリス様は今、私の中のイリューディアさんの力だけでなくこのヨナスのチョーカーに込められている呪いのような力まで取り込もうとしているらしい。
それは今まで以上に危険な行為だ。あのシグウェルさんでも解呪出来なくて怪我をしかけたのに。
「だ、ダメですエリス様・・・!」
私の首を包み込むようにチョーカーを両手で掴むエリス様の姿は、傍目にみると私の首を締め上げているように見えたらしい。
「ユーリ‼︎」
「ユーリ様‼︎」
レジナスさんとエル君が駆け寄って来たけど、卵の殻みたいな私の作った結界に阻まれて近付けないらしい。
結界を叩いたバンと言う音が頭に響いた。掴まれている首元が熱い。
「それもちょうだい‼︎」
一際高くエリス様の声が聞こえたと思ったら、次の瞬間パシン!と結界が壊れて弾き飛ばされた。
「ユーリ!」
今度こそレジナスさんは私をその手に掴む。
弾き飛ばされて尻もちをつきそうになった私を後ろでしっかりキャッチしてくれた。
私の首からチョーカーが落ちた。それについていた赤い石もポロポロとその形を崩しながら落ちていく。
「と、取れた・・・?」
前にグノーデルさんに傷付けられてからその輝きは褪せてきていたけどあんなにガッチリ私の首に嵌っていたのに。
「エリス様は⁉︎」
我に返って、反対側に弾き飛ばされたエリス様を見る。
エリス様は両手をついて、四つん這いで苦しそうに荒い呼吸を繰り返している。
「おい・・・あれは魔力か?俺の目にも紫色の何かがあの体を覆っているのが見えるぞ」
レジナスさんが私を抱きしめる手に力を込めながら呆然として言った。
エリス様の体は魔力がなくてそれを目視出来ないはずのレジナスさんでもハッキリと分かるくらい、濃い紫色の霧に全身を包まれていた。
もしかしてあのチョーカーの中にあったヨナスの力を全部取り込んだ?
ヨナスの魔石なんてものまで口にしていたくらいだから、イリューディアさんの力よりもヨナスの力の方が親和性が高くなってしまったんだろうか。
エリス様の体を取り囲む霧は呼吸に応じてぐねぐねとその形を変えている。
青紫色の髪の毛は紫色の色合いを強めていって、地面を握りしめている指先を包む紫色の霧はまるで獣の爪のように鋭く伸びて尖っていく。
「狐のしっぽ・・・?」
エル君がぽつりと呟く。見ればその背中・・・お尻の方では紫色の霧が狐の尻尾みたいなふさふさとしたものを二つ、三つと形作り出していた。
夢の中でグノーデルさんの言っていたことを思い出す。
私を地上に送り出した後もヨナスと取っ組み合いの喧嘩をしていたグノーデルさんはヨナスが人型を保てなくなるくらい痛めつけてやったと笑っていた。
『おかげでおれの自慢の毛並みにハゲが出来たが、あいつも黒い狐の姿に変化して逃げていったわ‼︎』
って。もしかしてヨナスの力を取り込み過ぎたエリス様も、人じゃなくなるんだろうか。
ダーヴィゼルドでカイゼル様にヨナスの祭具を投げ付けたセビーリャ族の人は霧を吸い込み魔物に変わり、カイゼル様は意識を乗っ取られた。
まさかそれと同じように、エリス様も魔物に・・・それもヨナスの眷属みたいにより力の強いものに変わる⁉︎
そう思った時、とっさに頭に浮かんだのはグノーデルさんの雷だった。
「レジナスさん・・・お酒ってありますか?」
もしエリス様がヨナスの力で暴れるなら。多分イリューディアさんの力だけじゃダメかも知れない。
グノーデルさんの力で止められるだろうか。
まさかこの場でお酒の力に頼る事になるとは思いもしなかった。
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