519 / 777
番外編
マッシュルーム・ハンティング 1
しおりを挟む
※時系列的にリオネルの港町でのシェラやシグウェルとの休暇から帰ってきた辺り、「ふしぎの海のユーリ」の後の話です。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ユーリ、準備は出来たか?」
私の寝室の扉をノックする軽い音と共にレジナスさんがそう声を掛けてきた。
その声に慌てて「いいですよ!」と返事をして、リオン様との共有の部屋へと急ぐ。
ぱっと扉を開ければ目に飛び込んで来たのは、いつもの黒一色の騎士服とは違って白シャツ黒パンツ姿に茶色い革ベストのような物を着ているレジナスさんの姿だ。
腰にはいつものように双剣が見えるけど、指の部分を抜いた黒い革手袋の手には弓の入った筒も持っている。
「弓矢も持つんですか?」
そう聞けば、
「立ち寄り先には湖もあるからな。時期的に脂の乗った鴨も獲れるはずだ。」
と頷かれた。そこへリオン様も、
「やあ、二人ともすっかり準備万端だね。それじゃあそろそろ行こうか?」
とにこやかに声を掛けて来た。
こちらもいつもの王子様然とした白を基調にしたかっちりとした服ではなく、濃いグレーのシャツに黒ベストと黒いパンツ姿でなんだか新鮮だ。
いつも清廉潔白を絵に描いたような白い服を着ているリオン様の、黒を基調にした服装のギャップにうわあ・・・!と目を奪われる。
白い服装も似合うけど、黒い服もよく似合う。
笑わないシグウェルさんが笑った時もそうだけど、普段と違う服装をしたリオン様にも弱いとか私のギャップ萌えも進行している気がする。
いつもの剣とはまた別に、短剣もその腰に差しながら自分を見つめる私の視線に気付いたリオン様は、
「何?見惚れてるの?」
とくすりと笑った。
「リオン様のそういう格好は珍しい気がして・・・」
「遠乗りだし狩りだからね。白は獲物に気付かれやすい上に汚れたら目立つでしょう?」
そう答えられ、なるほどと納得した。
今から私達三人に護衛のエル君を加えた四人で王都近郊の森へ狩りと遠乗りに出掛ける。
リオネルの港町へシェラさんシグウェルさん達と出掛けるかわりにリオン様やレジナスさんとも後で三人だけで出掛けようと約束していたあれだ。
遠乗りをして綺麗な景色を楽しんで、狩った獲物を調理して食べる。
「一応日帰りの予定だけど、突然雨に降られたとか何か不測の事態になった時は湖の近くの高台に王家所有の別邸があるから。予定が変わって日帰り出来ない時はそこに泊まれるようにもしてあるからね。」
玄関に向かって歩きながらリオン様はそんな風に教えてくれた。
「護衛の騎士さん達はエル君の他にいないんですか?」
玄関についてもそこにいるのは三頭の馬を引いてきてくれた馬番さんだけで、護衛らしき人達は見当たらない。
「シェラ達との休暇にも護衛は最低限だったでしょう?今回もそうだよ。レジナスとエルがいればそれ以上はないってくらい心強いし。」
なるほど。私は一人で馬に乗れないのでリオン様かレジナスさんのどちらかと一緒に乗るとして、三頭目の馬はエル君の分だったのか。
納得していればいつの間にかエル君も私の後ろにいて「よろしくお願いします。」とリオン様達に頭を下げていた。
「それじゃ行こうか」
ひらりと軽やかに馬に跨ったリオン様に促され、私を抱き上げたレジナスさんは当然のようにそのリオン様の前に私を座らせた。
「帰りはレジナスの馬に乗ろうね」
と後ろから囁いたリオン様は、抱きすくめるようにしっかりと私を支えると馬の横腹を蹴る。
そうして出掛ければ、その日の天気は上々で木々の緑の合間から覗く青空に太陽の光が輝き小鳥のさえずりも賑やかだ。
途中、たくさんの花が咲き乱れる花畑のような開けた所や苔むした木々の間に小さな滝が流れ落ちる場所で小休憩を挟みながら馬を進めて行く。
そうして湖が近付いて来た辺りでは早くも頭上を飛ぶ鴨を見つけたらしく、リオン様とレジナスさんはそれぞれ素早く矢をつがえると見事命中させていた。
「回収して来ます、湖畔で合流しましょう」
そう言ったレジナスさんは鴨の落ちていく先もしっかり把握済みらしく迷わず真っ直ぐに馬を走らせた。
まるで優秀な猟犬みたいだ。そういえばユリウスさんも、レジナスさんは私やリオン様に何かあれば容赦なく相手に噛みつき襲ってくる黒い忠犬みたいなことを言ってたなあ。
「先に行って火の準備でもしておこうか。レジナスのことだから僕らに合流する頃にはもう一つ二つ、獲物を増やしてやって来るかも知れないよ。」
そう笑ったリオン様は湖畔に着くと手際よく火を起こす準備を始めた。
「王子様なのに手慣れてますねぇ」
焚き火一つ起こせない私はリオン様の側にしゃがみ込んでその様子を観察しながら感心してそう言えば、
「ユーリが召喚される前まではたまに野営も含めた魔物討伐にも出ていたからね。これくらいは出来るさ。」
と教えてもらった。いやいや、だからって王子様自らが火起こしが出来るとか普通はないでしょう?
やっぱり元から器用な人なんだなあと魔法みたいにあっという間に火を起こした手さばきに改めて感心した。
その後もリオン様は、ダーヴィゼルドへの山越えの時のデレクさんやシェラさんみたいに手頃な大きさの石を簡単に組んだ小さなかまどのようなものを作ってその上に小鍋をかける。
そして乗ってきた馬の横腹に付けていた荷物から私達が座るための敷き物と一緒に革袋も持って来てその中身を小鍋に入れた。
革袋の中身は小さく切ったジャガイモや人参、タマネギなどの野菜だった。
そこにぱらりと調味料も入れてひと混ぜしながら、
「狩りで調達出来そうなもの以外はこうして準備して来たんだけど・・・後はここにさっきの鴨肉を入れたいね」
とリオン様は上機嫌に言う。その楽しそうな横顔を見ていると、同じく楽しそうに料理をしていた勇者様・・・レンさんのことも思い出した。
もしかしてご先祖様の血が流れているだけあってリオン様も料理好きなんだろうか。そういえば紅茶を淹れるのも上手だし。
新たな発見だ、となんだか新鮮な気持ちでいたら
「お待たせしました」
とレジナスさんが合流して来た。その馬には二羽の鴨の他に、立派な角を持つ大きな鹿も一頭縛りつけてある。
「ホントに鴨以外も獲って来たんですね!」
リオン様の言っていた通りだ。目を丸くしてそれを見つめていれば、ね?僕の言った通りでしょう?とリオン様に笑われた。
レジナスさんはリオン様が火にかけている小鍋を見ると、
「スープの準備は出来ているようですので、串焼きや他の焼き物の準備は俺がします。」
と言って獲ってきた鴨と鹿を馬から降ろした。
「あ、じゃあ鴨は僕が捌くよ。レジナスには鹿を頼もう。ユーリにはエルと二人で水を汲みに行って来てもらっていいかな?」
とリオン様に水差しを手渡される。
レジナスさんは鴨をリオン様に手渡して、鹿は脚を上にして近くの木に吊るした。
そして小鍋がかかっているのとは別に少し大きめの石組みを作ったり焚き火の準備をし始めた。
リオン様はベストの内側から折りたたみ式の小刀を取り出して鴨を片手に
「その小道を少し行った先が湖に水が流れ込む湧水のある場所になっているから。エル、案内をよろしくね。」
と私を見送る。これはあれだ、鴨や鹿を捌いているところを私に見せないようにと簡単なお使いもどきを頼んでこの場から離そうとしてくれているんだな。
そう察して素直に頷き、エル君と二人で水を汲みに行った。
「リオン様もレジナスさんも過保護なんですよね~、別に動物を解体するところを近くで見たって大丈夫なのに。」
まあ、多少は怯むかもしれないけどそれによって血を見たから気持ち悪くなって食欲が失せるとかはない。
「お二人なりの気遣いですよ。・・・あ、ユーリ様あそこです」
エル君の指し示す先に小さな溜め池のような場所とそこからどこかへと流れている小川が見えた。きっとその小川の先がさっきの湖に繋がっているんだろう。
リオン様の瞳の色みたいに深い青色をたたえる澄んだ池は、その中心辺りから一定のリズムで水と気泡が湧き上がっている。
よいしょとそこに水差しを入れれば、手に触れる水もひんやりと冷たくて気持ちがいい。
と、近くでキキッ、と小さな鳴き声が聞こえた。
「ん?」
いつの間にか近くには茶色くて小さなリスがいた。ふさふさの尻尾がかわいい。
「わっ、リスですよエル君!こんなに近くで初めて見ました‼︎」
「・・・リスは食べてもおいしくありませんよ?僕に捕まえろとか言わないですよね?」
「誰がそんなことしますか!」
エル君は私がどれだけ食い意地が張ってると思っているんだろうか。誤解もいいところだ。
「確かポケットにお菓子が入っていたはず・・・」
リスを脅かさないように静かに水差しを置いてゆっくりとポケットに手を入れる。
「ユーリ様、こんな所までお菓子を隠し持って来てたんですか」
「ひ、非常食ですよ、万が一の時のための!」
ついさっき自分の食い意地を否定したばかりなのに台無しだ。
エル君に言い訳をしながらポケットから出したクッキーを小さく割って、そうっと手のひらに乗せリスに差し出す。
リスはキョロキョロと私と手のひらのクッキーを見比べていたけどサッと素早くクッキーを取った。
「か、かわいい~‼︎」
あっという間に咀嚼して食べ終わったリスは私の手からまたクッキーを取る。
気付けば一匹だけでなく数匹のリス達が集まって来て私の手からクッキーを食べている。
ほのぼのとその様子を見ていたら、ふとその後ろの方に目が行った。
あれは・・・。
「エル君、きのこです!」
「はい?」
「あそこにきのこが生えてますよ、あれは多分食べられるやつ‼︎」
何の根拠もなく自信たっぷりにそう言った私を見る、いつも無表情なエル君の眉間になんだか珍しく小さな皺が寄ったような気もしたけど気にはならない。
今のところ狩りが出来るリオン様達と違って火も起こせない私には水汲みしかやる事がなかったけど、そんな私にも出来ることを見つけたという嬉しさにエル君に話しかける声も弾んだ。
「あれも取って行きましょう!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ユーリ、準備は出来たか?」
私の寝室の扉をノックする軽い音と共にレジナスさんがそう声を掛けてきた。
その声に慌てて「いいですよ!」と返事をして、リオン様との共有の部屋へと急ぐ。
ぱっと扉を開ければ目に飛び込んで来たのは、いつもの黒一色の騎士服とは違って白シャツ黒パンツ姿に茶色い革ベストのような物を着ているレジナスさんの姿だ。
腰にはいつものように双剣が見えるけど、指の部分を抜いた黒い革手袋の手には弓の入った筒も持っている。
「弓矢も持つんですか?」
そう聞けば、
「立ち寄り先には湖もあるからな。時期的に脂の乗った鴨も獲れるはずだ。」
と頷かれた。そこへリオン様も、
「やあ、二人ともすっかり準備万端だね。それじゃあそろそろ行こうか?」
とにこやかに声を掛けて来た。
こちらもいつもの王子様然とした白を基調にしたかっちりとした服ではなく、濃いグレーのシャツに黒ベストと黒いパンツ姿でなんだか新鮮だ。
いつも清廉潔白を絵に描いたような白い服を着ているリオン様の、黒を基調にした服装のギャップにうわあ・・・!と目を奪われる。
白い服装も似合うけど、黒い服もよく似合う。
笑わないシグウェルさんが笑った時もそうだけど、普段と違う服装をしたリオン様にも弱いとか私のギャップ萌えも進行している気がする。
いつもの剣とはまた別に、短剣もその腰に差しながら自分を見つめる私の視線に気付いたリオン様は、
「何?見惚れてるの?」
とくすりと笑った。
「リオン様のそういう格好は珍しい気がして・・・」
「遠乗りだし狩りだからね。白は獲物に気付かれやすい上に汚れたら目立つでしょう?」
そう答えられ、なるほどと納得した。
今から私達三人に護衛のエル君を加えた四人で王都近郊の森へ狩りと遠乗りに出掛ける。
リオネルの港町へシェラさんシグウェルさん達と出掛けるかわりにリオン様やレジナスさんとも後で三人だけで出掛けようと約束していたあれだ。
遠乗りをして綺麗な景色を楽しんで、狩った獲物を調理して食べる。
「一応日帰りの予定だけど、突然雨に降られたとか何か不測の事態になった時は湖の近くの高台に王家所有の別邸があるから。予定が変わって日帰り出来ない時はそこに泊まれるようにもしてあるからね。」
玄関に向かって歩きながらリオン様はそんな風に教えてくれた。
「護衛の騎士さん達はエル君の他にいないんですか?」
玄関についてもそこにいるのは三頭の馬を引いてきてくれた馬番さんだけで、護衛らしき人達は見当たらない。
「シェラ達との休暇にも護衛は最低限だったでしょう?今回もそうだよ。レジナスとエルがいればそれ以上はないってくらい心強いし。」
なるほど。私は一人で馬に乗れないのでリオン様かレジナスさんのどちらかと一緒に乗るとして、三頭目の馬はエル君の分だったのか。
納得していればいつの間にかエル君も私の後ろにいて「よろしくお願いします。」とリオン様達に頭を下げていた。
「それじゃ行こうか」
ひらりと軽やかに馬に跨ったリオン様に促され、私を抱き上げたレジナスさんは当然のようにそのリオン様の前に私を座らせた。
「帰りはレジナスの馬に乗ろうね」
と後ろから囁いたリオン様は、抱きすくめるようにしっかりと私を支えると馬の横腹を蹴る。
そうして出掛ければ、その日の天気は上々で木々の緑の合間から覗く青空に太陽の光が輝き小鳥のさえずりも賑やかだ。
途中、たくさんの花が咲き乱れる花畑のような開けた所や苔むした木々の間に小さな滝が流れ落ちる場所で小休憩を挟みながら馬を進めて行く。
そうして湖が近付いて来た辺りでは早くも頭上を飛ぶ鴨を見つけたらしく、リオン様とレジナスさんはそれぞれ素早く矢をつがえると見事命中させていた。
「回収して来ます、湖畔で合流しましょう」
そう言ったレジナスさんは鴨の落ちていく先もしっかり把握済みらしく迷わず真っ直ぐに馬を走らせた。
まるで優秀な猟犬みたいだ。そういえばユリウスさんも、レジナスさんは私やリオン様に何かあれば容赦なく相手に噛みつき襲ってくる黒い忠犬みたいなことを言ってたなあ。
「先に行って火の準備でもしておこうか。レジナスのことだから僕らに合流する頃にはもう一つ二つ、獲物を増やしてやって来るかも知れないよ。」
そう笑ったリオン様は湖畔に着くと手際よく火を起こす準備を始めた。
「王子様なのに手慣れてますねぇ」
焚き火一つ起こせない私はリオン様の側にしゃがみ込んでその様子を観察しながら感心してそう言えば、
「ユーリが召喚される前まではたまに野営も含めた魔物討伐にも出ていたからね。これくらいは出来るさ。」
と教えてもらった。いやいや、だからって王子様自らが火起こしが出来るとか普通はないでしょう?
やっぱり元から器用な人なんだなあと魔法みたいにあっという間に火を起こした手さばきに改めて感心した。
その後もリオン様は、ダーヴィゼルドへの山越えの時のデレクさんやシェラさんみたいに手頃な大きさの石を簡単に組んだ小さなかまどのようなものを作ってその上に小鍋をかける。
そして乗ってきた馬の横腹に付けていた荷物から私達が座るための敷き物と一緒に革袋も持って来てその中身を小鍋に入れた。
革袋の中身は小さく切ったジャガイモや人参、タマネギなどの野菜だった。
そこにぱらりと調味料も入れてひと混ぜしながら、
「狩りで調達出来そうなもの以外はこうして準備して来たんだけど・・・後はここにさっきの鴨肉を入れたいね」
とリオン様は上機嫌に言う。その楽しそうな横顔を見ていると、同じく楽しそうに料理をしていた勇者様・・・レンさんのことも思い出した。
もしかしてご先祖様の血が流れているだけあってリオン様も料理好きなんだろうか。そういえば紅茶を淹れるのも上手だし。
新たな発見だ、となんだか新鮮な気持ちでいたら
「お待たせしました」
とレジナスさんが合流して来た。その馬には二羽の鴨の他に、立派な角を持つ大きな鹿も一頭縛りつけてある。
「ホントに鴨以外も獲って来たんですね!」
リオン様の言っていた通りだ。目を丸くしてそれを見つめていれば、ね?僕の言った通りでしょう?とリオン様に笑われた。
レジナスさんはリオン様が火にかけている小鍋を見ると、
「スープの準備は出来ているようですので、串焼きや他の焼き物の準備は俺がします。」
と言って獲ってきた鴨と鹿を馬から降ろした。
「あ、じゃあ鴨は僕が捌くよ。レジナスには鹿を頼もう。ユーリにはエルと二人で水を汲みに行って来てもらっていいかな?」
とリオン様に水差しを手渡される。
レジナスさんは鴨をリオン様に手渡して、鹿は脚を上にして近くの木に吊るした。
そして小鍋がかかっているのとは別に少し大きめの石組みを作ったり焚き火の準備をし始めた。
リオン様はベストの内側から折りたたみ式の小刀を取り出して鴨を片手に
「その小道を少し行った先が湖に水が流れ込む湧水のある場所になっているから。エル、案内をよろしくね。」
と私を見送る。これはあれだ、鴨や鹿を捌いているところを私に見せないようにと簡単なお使いもどきを頼んでこの場から離そうとしてくれているんだな。
そう察して素直に頷き、エル君と二人で水を汲みに行った。
「リオン様もレジナスさんも過保護なんですよね~、別に動物を解体するところを近くで見たって大丈夫なのに。」
まあ、多少は怯むかもしれないけどそれによって血を見たから気持ち悪くなって食欲が失せるとかはない。
「お二人なりの気遣いですよ。・・・あ、ユーリ様あそこです」
エル君の指し示す先に小さな溜め池のような場所とそこからどこかへと流れている小川が見えた。きっとその小川の先がさっきの湖に繋がっているんだろう。
リオン様の瞳の色みたいに深い青色をたたえる澄んだ池は、その中心辺りから一定のリズムで水と気泡が湧き上がっている。
よいしょとそこに水差しを入れれば、手に触れる水もひんやりと冷たくて気持ちがいい。
と、近くでキキッ、と小さな鳴き声が聞こえた。
「ん?」
いつの間にか近くには茶色くて小さなリスがいた。ふさふさの尻尾がかわいい。
「わっ、リスですよエル君!こんなに近くで初めて見ました‼︎」
「・・・リスは食べてもおいしくありませんよ?僕に捕まえろとか言わないですよね?」
「誰がそんなことしますか!」
エル君は私がどれだけ食い意地が張ってると思っているんだろうか。誤解もいいところだ。
「確かポケットにお菓子が入っていたはず・・・」
リスを脅かさないように静かに水差しを置いてゆっくりとポケットに手を入れる。
「ユーリ様、こんな所までお菓子を隠し持って来てたんですか」
「ひ、非常食ですよ、万が一の時のための!」
ついさっき自分の食い意地を否定したばかりなのに台無しだ。
エル君に言い訳をしながらポケットから出したクッキーを小さく割って、そうっと手のひらに乗せリスに差し出す。
リスはキョロキョロと私と手のひらのクッキーを見比べていたけどサッと素早くクッキーを取った。
「か、かわいい~‼︎」
あっという間に咀嚼して食べ終わったリスは私の手からまたクッキーを取る。
気付けば一匹だけでなく数匹のリス達が集まって来て私の手からクッキーを食べている。
ほのぼのとその様子を見ていたら、ふとその後ろの方に目が行った。
あれは・・・。
「エル君、きのこです!」
「はい?」
「あそこにきのこが生えてますよ、あれは多分食べられるやつ‼︎」
何の根拠もなく自信たっぷりにそう言った私を見る、いつも無表情なエル君の眉間になんだか珍しく小さな皺が寄ったような気もしたけど気にはならない。
今のところ狩りが出来るリオン様達と違って火も起こせない私には水汲みしかやる事がなかったけど、そんな私にも出来ることを見つけたという嬉しさにエル君に話しかける声も弾んだ。
「あれも取って行きましょう!」
74
あなたにおすすめの小説
魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました
iru
恋愛
小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。
両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。
両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。
しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。
魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。
自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。
一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。
初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。
恋人になりたいが、年上で雇い主。
もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。
そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。
そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。
レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか?
両片思いのすれ違いのお話です。
喪女なのに狼さんたちに溺愛されています
和泉
恋愛
もふもふの狼がイケメンなんて反則です!
聖女召喚の儀で異世界に呼ばれたのはOL・大学生・高校生の3人。
ズボンを履いていた大学生のヒナは男だと勘違いされ、説明もないまま城を追い出された。
森で怪我をした子供の狼と出会ったヒナは狼族の国へ。私は喪女なのに狼族の王太子、No.1ホストのような武官、真面目な文官が近づいてくるのはなぜ?
ヒナとつがいになりたい狼達の恋愛の行方は?聖女の力で国同士の争いは無くすことができるのか。
英雄魔術師様とのシークレットベビーが天才で隠し通すのが大変です
氷雨そら
恋愛
――この魔石の意味がわからないほど子どもじゃない。
英雄魔術師カナンが遠征する直前、フィアーナと交わした一夜で授かった愛娘シェリア。フィアーナは、シェリアがカナンの娘であることを隠し、守るために王都を離れ遠い北の地で魔石を鑑定しながら暮らしていた。けれど、シェリアが三歳を迎えた日、彼女を取り囲む全ての属性の魔石が光る。彼女は父と同じ、全属性の魔力持ちだったのだ。これは、シークレットベビーを育てながら、健気に逞しく生きてきたヒロインが、天才魔術師様と天才愛娘に翻弄されながらも溺愛される幸せいっぱいハートフルストーリー。小説家になろうにも投稿しています。
結婚後、訳もわからないまま閉じ込められていました。
しゃーりん
恋愛
結婚して二年、別邸に閉じ込められていたハリエット。
友人の助けにより外に出ることができ、久しぶりに見た夫アルバートは騎士に連行されるところだった。
『お前のせいだ!』と言われても訳がわからなかった。
取り調べにより判明したのは、ハリエットには恋人がいるのだとアルバートが信じていたこと。
彼にその嘘を吹き込んだのは、二人いたというお話です。
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
毎日19時に更新予定です。
異世界で目覚めたら、もふもふ騎士団に保護されてました ~ちびっ子だけど、獣人たちの平穏のためお世話係がんばります!!~
ありぽん
ファンタジー
神のミスで命を落とした芽依は、お詫びとして大好きな異世界へ転生させてもらえることに。だが転生の際、またしても神のミスで、森の奥地に幼女の姿で送られてしまい。転生の反動で眠っていた瞳は、気づかないうちに魔獣たちに囲まれてしまう。
しかしそんな危機的状況の中、森を巡回していた、獣人だけで構成された獣騎士団が駆け付けてくれ、芽依はどうにかこの窮地を切り抜けることができたのだった。
やがて目を覚ました芽依は、初めは混乱したものの、すぐに現状を受け入れ。またその後、同じ種族の人間側で保護する案も出たが、ある事情により、芽依はそのまま獣騎士団の宿舎で暮らすことに。
そこで芽依は、助けてくれた獣騎士たちに恩を返すため、そして日々厳しい任務に向かう獣人たちが少しでも平穏に過ごせるようにと、お世話係を買って出る。
そんな芽依に、当初は不安だった獣人たちだったが、元気で明るい瞳の存在は、次第に獣人たちの力となっていくのだった。
これはちびっ子転生者の芽依が、獣人や魔獣たちのために奮闘し、癒しとなっていく。そんな、ほっこりまったり? な物語。
処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜
放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!?
「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」
不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。
なんか、異世界行ったら愛重めの溺愛してくる奴らに囲われた
いに。
恋愛
"佐久良 麗"
これが私の名前。
名前の"麗"(れい)は綺麗に真っ直ぐ育ちますようになんて思いでつけられた、、、らしい。
両親は他界
好きなものも特にない
将来の夢なんてない
好きな人なんてもっといない
本当になにも持っていない。
0(れい)な人間。
これを見越してつけたの?なんてそんなことは言わないがそれ程になにもない人生。
そんな人生だったはずだ。
「ここ、、どこ?」
瞬きをしただけ、ただそれだけで世界が変わってしまった。
_______________....
「レイ、何をしている早くいくぞ」
「れーいちゃん!僕が抱っこしてあげよっか?」
「いや、れいちゃんは俺と手を繋ぐんだもんねー?」
「、、茶番か。あ、おいそこの段差気をつけろ」
えっと……?
なんか気づいたら周り囲まれてるんですけどなにが起こったんだろう?
※ただ主人公が愛でられる物語です
※シリアスたまにあり
※周りめちゃ愛重い溺愛ルート確です
※ど素人作品です、温かい目で見てください
どうぞよろしくお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる