【本編完結】異世界再建に召喚されたはずなのになぜか溺愛ルートに入りそうです⁉︎【コミカライズ化決定】

sutera

文字の大きさ
573 / 788
番外編

指輪ものがたり 10

慣れない魔法陣での移動で体に負担のかかった私を休ませたいと、出迎えてくれたクレイトス領の人にシグウェルさんは話をしてすぐに部屋を用意させた。

というか、部屋だけでなく休憩をとる私のためにお茶とお茶請けのお菓子まで要求した。

「紅茶用に乳脂肪分の高い種類の牛乳にハチミツ、リキュールもだ。茶葉はルーシャ国の王宮で使っているのと同じものがこの城にもあるはずだな?確か前回ここを訪れた時にそれを出されたと記憶している。それも準備してくれ。菓子はバターをふんだんに使った焼き菓子を山盛りにして生クリームと果実をたっぷり使ったジャムも持って来い。」

いくら客人だとしても要求するレベルがめちゃくちゃ細かい。しかも最後はなぜか命令形だ。

「あんまり無茶は言わないでくださいよ・・・」

今度は通された客間のソファに置いてあるクッションが小さくて固いだとか、ソファの厚みがないからこれだと私がゆっくり休めないというような事をユリウスさんと話しているシグウェルさんを止める。

いやちょっと、いつからそんなに私に過保護に・・・?こんな話、クレイトス領の人達に聞かれたら癒し子というのは随分とわがままだと誤解されるんでは?

実際、シグウェルさんのそんな要求や指摘に部屋へ案内してくれたクレイトス領の人は恐縮して「今すぐ部屋を整え直します‼︎」とここを飛び出してどこかへ行ってしまった。

「シェラザードが任務で出立する前に、君に関する取扱い方法を細々と書いた紙をユリウスに預けて行ったからな。それに沿って言っているまでだ。」

「シェラさんが?」

確かシェラさんは、今回ミアさんがルーシャ国に来るのに合わせてリオン様にわざと離れた場所での仕事に出されていた。

「ミア嬢に余計なちょっかいを出された君が体調を崩すのを心配したんだろう。何かあったら少しでも快適に過ごして調子を取り戻せるようにという気遣いだ。」

シグウェルさんが頷き、ユリウスさんが

「いわゆるユーリ様取扱い説明書みたいなもんすねー、めっちゃ細かいっすよ。お茶の温度とか茶葉の濃さの調節の他におやつの時間の最初と最後に出す紅茶の種類を変えて、それに合わせてお菓子も最初より段々と甘い種類の物を増やして出すとか他にも色々っす!」

と笑っている。し、知らなかった。そんなに細かく気を遣ってもらっていたなんて。

私が持ちやすいように左に寄せてティーカップやその持ち手を置いてくれてること位しか気付いていなかった。

言われてみれば、おやつの時間は最初と最後でわざわざティーセットを変えていたような気がする。

単にシェラさんの趣味なのかと思っていたけど、まさかあれがお茶の種類まで変えていたってこと?

毎回単純に

「シェラさんの淹れてくれるお茶はおいしいですね!」

なんて呑気にお茶を飲んでいた過去の自分を正座させて説教したい。

「このソファは奥の院の君の部屋のものに比べて座り心地が悪そうだから、とりあえずこちらに座れ」

心の中で悶々と葛藤している私に気付かず、シグウェルさんは一度ソファに座らせた私をまた抱き上げてベッドの上に座らせた。

「俺はこれからユリウスと一緒にクレイトス大公に会い、リオン殿下の親書を渡しながら婚約破棄について話してくる。その間はここでゆっくりしているといい。時期に足腰の脱力感も消えるだろう。」

ローブを脱いでユリウスさんの準備した魔導師団の正装用の服とマントに着替え身支度を直しながら・・・まあ実際その身支度を整えているのはシグウェルさんじゃなくてユリウスさんだけど。とにかくそうして格好を整えたシグウェルさんは部屋を後にした。

すると今更ながらエル君が

「・・・というか、立てなかったのならユーリ様がご自分で自身に回復魔法をかけるか魔導士団長や副団長が魔法を使えば良かったのでは?」

とぽつりと言った。その言葉にハッとする。

「確かに!」

「あの人、ユーリ様をお姫様抱っこしたかったから知らないふりをして治さなかっただけじゃないですか?やる事がおとなげないですね」

やれやれと言うようにため息をついたエル君はいつものようにかぶりを振った。

あり得る。そしてユリウスさんならそんなシグウェルさんの目論見にも気付いていながら空気を読んで黙っていそうだ。おかげで私は随分と恥ずかしい思いをした。

エル君が言うまで、魔法陣での長距離移動という初経験に気を取られていて全く気付かなかった私もアレだけど。

慌てて治癒魔法を自分に使えば、何の問題もなくしゃんと立ち上がれた。

「最初からこうすれば良かったです・・・!」

悔し紛れにクレイトスの人が準備してくれたおやつをやけ食いしていれば、バタバタとユリウスさんが戻って来た。

「ユーリ様、急ですけど今晩夜会に出席をお願いしてもいいっすか?」

「夜会?」

「団長やユーリ様の来訪を歓迎する晩餐会みたいなもんす。やるとは思ってたんで一応礼服も持って来てあるけど、まさかそれが今夜とは思わなかったっす!」

せめて明日とか、もう少しゆっくりさせてくれてもと文句を言っているユリウスさんの後ろから

「いいじゃないか。晩餐会のような面倒なもの、さっさと済ませるに限る。そもそも今回は歓迎されないような提案をしに来ているんだから早く終わらせて婚約破棄をして帰りたい。」

悠々とした足取りで現れたシグウェルさんが面倒そうにため息をついた。

「話し合いはどうなったんですか?」

「一応大公も婚約破棄の申し出理由書には目を通していた。それを読んでいる間も念のため、第一夫人にあたり礼を尽くすべき相手である君の指輪を許可なくミア嬢が持ち去ったことは違法行為のみならず、君の伴侶である俺に対する不義理でもあると論理的にかつ冷静に諭して話してやった。」

「団長、めっちゃ顔も声も冷たくて部屋の温度が下がったのかと思うくらい室内の空気が冷えっ冷えだったっす。」

コソコソと補足したユリウスさんをシグウェルさんが鼻白んだ目で見つめた。

「あれくらい圧力をかける方が丁度いい。」

が、そこで話し合いの中身を思い出したのかシグウェルさんはチッと舌打ちした。

「だがあの赤ダヌキ、交渉はとりあえず今夜の夜会を済ませてから改めてと言ってきた。俺たちが来るのに合わせて領内の主だった貴族や魔導士を集めた盛大な晩餐会を開く準備をもう済ませてあるそうだ。せめてそれが終わってからと言われればこちらもルーシャ国の代表として向こうの顔を立てて了承しなければならなかった。」

それで私もその夜会?晩餐会?に同席して欲しいってことか。それにしても赤ダヌキとは。

首を傾げた私にまたユリウスさんが補足する。

「クレイトス大公のことっす。ミア様同様、見事な赤髪に恰幅がいいから・・・つーか団長それ、他の人達に聞かれないようにするっすよ⁉︎謝るのは俺なんすから‼︎」

シグウェルさんに文句を言いながらユリウスさんはいつの間にか部屋に持ち込まれていた荷物をごそごそしていた。どうやら私達の後にルーシャ国から他の魔導士さん達の力を借りて送ってもらったらしい。

「ユーリ様の服はこっちっすね。ユーリ様の格好はクレイトスの侍女さん達にお願いして整えてもらうようにしたんでもうじき案内人が来るはずっす。その間に俺は団長の準備をするっす。さあ、さっさと風呂に行くっすよ団長‼︎」

段取りよくてきぱきと、エル君に私の衣類や装飾品が入っているらしい小箱などを預けながらユリウスさんは櫛や香油の瓶が収まっている入れ物を手にシグウェルさんをぐいぐい引いていく。

あ、そんな侍従さんみたいな仕事までシグウェルさんの世話はユリウスさんの担当なんだ?そりゃあ便利過ぎてシグウェルさんが離さないはずだ。

つくづく万能かつ貧乏くじな人だ、とちょっと憐れみを込めた目で思わずユリウスさんを見てしまった。

当の本人であるユリウスさんはそんな私の視線に気付かずに、

「では夜会の前にまた会おう」

と悠長な事を言うシグウェルさんを引っ張って行くのに苦労しているだけだったけど。



感想 191

あなたにおすすめの小説

気がつけば異世界

蝋梅
恋愛
 芹沢 ゆら(27)は、いつものように事務仕事を終え帰宅してみれば、母に小さい段ボールの箱を渡される。  それは、つい最近亡くなった骨董屋を営んでいた叔父からの品だった。  その段ボールから最後に取り出した小さなオルゴールの箱の中には指輪が1つ。やっと合う小指にはめてみたら、部屋にいたはずが円柱のてっぺんにいた。 これは現実なのだろうか?  私は、まだ事の重大さに気づいていなかった。

王宮の万能メイド、偏屈魔術師を餌付けする

葉山あおい
恋愛
王宮で働く勤続八年のメイド、エレナ・フォスター。仕事は完璧だが愛想がない彼女は、いつしか「鉄の女」と呼ばれ恐れられていた。 そんな彼女に下された辞令は、王宮の敷地内にありながら「魔窟」と呼ばれる『北の塔』の専属メイドになること。そこの主である宮廷魔術師団長・シルヴィス・クローデルは、稀代の天才ながら極度の人嫌い&生活能力ゼロの偏屈男だった! ゴミ屋敷と化した塔をピカピカに掃除し、栄養失調寸前の彼に絶品の手料理を振る舞うエレナ。黄金色のオムレツ、とろける煮込みハンバーグ、特製カツサンド……。美味しいご飯で餌付けされた魔術師様は、次第にエレナへの独占欲を露わにし始めて――? 意地悪な聖女や侯爵夫人のいびりも、完璧なスキルで華麗に返り討ち。平民出身のメイドが、身分差を乗り越えて幸せな花嫁になるまでの、美味しくて甘いシンデレラストーリー。

【完結】タジタジ騎士公爵様は妖精を溺愛する

雨香
恋愛
【完結済】美醜の感覚のズレた異世界に落ちたリリがスパダリイケメン達に溺愛されていく。 ヒーロー大好きな主人公と、どう受け止めていいかわからないヒーローのもだもだ話です。  「シェイド様、大好き!!」 「〜〜〜〜っっっ!!???」 逆ハーレム風の過保護な溺愛を楽しんで頂ければ。

魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました【完結】

iru
恋愛
第19回 恋愛小説大賞エントリーしています。ぜひ1票お願いします。 小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。 両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。 両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。 しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。 魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。 自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。 一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。 初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。 恋人になりたいが、年上で雇い主。 もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。 そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。 そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。 レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか? 両片思いのすれ違いのお話です。

ちょっと不運な私を助けてくれた騎士様が溺愛してきます

五珠 izumi
恋愛
城の下働きとして働いていた私。 ある日、開かれた姫様達のお見合いパーティー会場に何故か魔獣が現れて、運悪く通りかかった私は切られてしまった。 ああ、死んだな、そう思った私の目に見えるのは、私を助けようと手を伸ばす銀髪の美少年だった。 竜獣人の美少年に溺愛されるちょっと不運な女の子のお話。 *魔獣、獣人、魔法など、何でもありの世界です。 *お気に入り登録、しおり等、ありがとうございます。 *本編は完結しています。  番外編は不定期になります。  次話を投稿する迄、完結設定にさせていただきます。

召喚とか聖女とか、どうでもいいけど人の都合考えたことある?

浅海 景
恋愛
水谷 瑛莉桂(みずたに えりか)の目標は堅実な人生を送ること。その一歩となる社会人生活を踏み出した途端に異世界に召喚されてしまう。召喚成功に湧く周囲をよそに瑛莉桂は思った。 「聖女とか絶対ブラックだろう!断固拒否させてもらうから!」 ナルシストな王太子や欲深い神官長、腹黒騎士などを相手に主人公が幸せを勝ち取るため奮闘する物語です。

運命の恋に落ちた最強魔術師、の娘はクズな父親を許さない

SA
恋愛
 エルシア・ルベラスは魔塔の孤児院出身の魔術師だ。  魔術師に不向きとされている特徴を持つため、日々、偏見にはさらされているが、気にしたところで、どうにもならない。  騎士団付きの魔術師として、黄色い旗がついた棒のような杖をピコピコ振りながら、今日も目立たないよう、案内係を担当している。  そんなエルシアには秘密があった。  実は孤児ではなく、実の父親がまだ生きていること。『運命の恋』に落ちた最強魔術師と謳われる、最凶にクズな父親が。 *誤字脱字、ご容赦ください。 *王女殿下の魔猫編は6-1で終了。 *暗黒騎士と鍵穴編は6-1で終了。 *王子殿下の魔剣編は6-1で終了。 *聖魔術師の幻影編は6-1で終了。 *覆面作家と水精編は6-1で終了。 *辺境伯領の噴出編は6-1で終了。 *王女殿下と木精編は6-1で終了。 *騎士一族と黒鉄編は6-1で終了。 残り1編で完結の予定です。 その前に、肋骨骨折のため、1ヶ月ほど休載します。(2025/10/5) 最終編、隔日更新となります。(2025/12/1) すみません、第三騎士団第一隊長、変換ミスで、カニスが途中からケニスになっています。 修正が面倒なので、カニス=ケニスでお願いします。

【完結】聖女召喚に巻き込まれたバリキャリですが、追い出されそうになったのでお金と魔獣をもらって出て行きます!

チャらら森山
恋愛
二十七歳バリバリキャリアウーマンの鎌本博美(かまもとひろみ)が、交差点で後ろから背中を押された。死んだと思った博美だが、突如、異世界へ召喚される。召喚された博美が発した言葉を誤解したハロルド王子の前に、もうひとりの女性が現れた。博美の方が、聖女召喚に巻き込まれた一般人だと決めつけ、追い出されそうになる。しかし、バリキャリの博美は、そのまま追い出されることを拒否し、彼らに慰謝料を要求する。 お金を受け取るまで、博美は屋敷で暮らすことになり、数々の騒動に巻き込まれながら地下で暮らす魔獣と交流を深めていく。