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番外編
なごり雪 21
・・・礼拝殿の明るく大きな窓からは初夏の日差しが燦々と差し込み、聖歌隊の合唱はドーム状の天井に反響してまるで空から降り注いでいるかのように綺麗な歌声で礼拝殿の中を満たしている。
祭壇の中央には神官さんがいて、その左右に向かい合うようにしてヒルダ様に抱かれたかわいいジークムント様と私は立っていた。
諸々の支度を終えてさきほどから始まったジークムント様のための祝福式は私が思っていた以上に大規模で荘厳なものだった。
最初に聞いていた説明だと式典自体は神官さんの簡単な説法の後に聖歌隊が合唱する中で私がジークムント様に加護を授けて終わり、という30分もかからなそうなものだったんだけど。
だけどお城に備え付けの礼拝殿がまず大きかった。まるで王宮の大宴会をするための大広間みたいに広くて天井の高い造りだったのだ。
あまりの大きさに初見の下見では思わずぽかんと口を開けて上を見上げていたらカイゼル様が苦笑して理由を教えてくれたっけ。
『ここは魔物の襲撃や他国からの侵略や紛争時での、城下町の民の避難所と救護所を兼ねているんです。ですから礼拝の為の椅子や机は固定されておらず可動式で沢山の人数を収容できるようになっているんですよ。』
そのために一般的な神殿の礼拝所とはちょっと違う造りなんです。そう言っていた。それに真冬でも移動しやすいように町から地下道でも繋がっているらしい。
・・・そのカイゼル様の説明通りに今この礼拝殿の前方、ダーヴィゼルドの主な貴族の人達が座っている場所より後ろの方は机と椅子が片付けられている。
そして祝福式を見ようと詰めかけた沢山の人達が立ち見でひしめき合っていた。
元から注目されるのは苦手なのにそんなのを見たら緊張して加護どころではなくなりそうなので、式典が始まってからはずっと意識的にそっちは見ていないけどかなりの人達が集まっているのは間違いないだろう。
だから式典が始まってからはひたすらずっと私は対面しているヒルダ様の腕に抱かれたジークムント様を見つめている。
ヒルダ様譲りの薄水色の髪の毛にカイゼル様そっくりの琥珀色の瞳と顔立ちで、成長すれば優しげな風貌のイケメンに育つこと間違いなしだ。
ちなみにヒルダ様の後方にはカイゼル様とバルドル様、その二人の間には神妙な顔付きのフレイヤちゃんが立っている。
そして私の後ろには正装したレジナスさんとシェラさんがいて私を見守ってくれている。いわゆる立会人のようなものだ。
と、そこで神官さんから
「・・・それではイリューディア神様に選ばれし愛し子にして癒し子、召喚者ユーリ様よりジークムント・ダーヴィゼルド公子へ祝福を。」
と声がかかってハッとする。いよいよ出番だ。
ヒルダ様が私の方へ一歩歩み寄り、私もまた一歩距離を詰める。
いつものきりっとした笑顔よりもいくぶん柔らかな微笑みを浮かべているヒルダ様が腕に抱いたジークムント様を私が口付けやすいように少し手前に差し出してくれたので、その小さくて可愛い頭をそっと撫でて柔らかな前髪をかき分けた。
「イリューディアさんの加護の元、丈夫で健康に育ちますように。」
呟きながら白い額に口付ければヒルダ様に抱かれている小さな体がぽうっと淡く光った。よしよし、成功だ。
それにこれで私のお役目も完了だ。ほっとして一歩下がり、安心した笑みを浮かべればヒルダ様も私を見て頷いてくれる。
そしてヒルダ様はそのままくるりと集まっている人達の方へ向き直ると腕に抱えたジークムント様をみんなによく見えるように高く掲げた。
あれ?某獅子王アニメ映画かな?
一瞬崖の上でお猿さんに掲げられるライオンの子供が頭に浮かんでしまったけど、そんな不謹慎な私の考えを消し去るようにその場にヒルダ様の凛とした声が響いた。
「恐れ多くもユーリ様直々にご加護をいただいたのはただ我が子というだけにあらず。これはダーヴィゼルドの民全てに対するユーリ様の深いご慈愛の証である。加護を受けしこの子は長じて皆を護る良き領主になるであろう!我が領民よ、心を合わせてこれからもこの北方の地で我が子と共にルーシャ国の安寧と繁栄を末永く祈り、あらゆる障壁からこの地を守り抜こうぞ‼︎」
その宣言に周りからわあっと歓声が上がった。
ヒルダ様万歳、ジークムント様万歳、ルーシャ国とイリヤ陛下の御代に栄光あれ、とダーヴィゼルドの騎士達が剣を掲げて声を上げる。
その様子をジークムント様を腕に抱き直したヒルダ様といつの間にかその両脇に立ち並んでいたカイゼル様やバルドル様が微笑んで見つめている。フレイヤちゃんは歓声の大きさにちょっとだけ恐々としてヒルダ様のドレスの裾を掴んでるけど。
「ユーリ様の祝福への返礼の言葉すら相変わらず勇壮ですね、実にヒルダ様らしい。」
気付けば私の両隣にもレジナスさんとシェラさんがいて、感心したようにそうシェラさんが言った。
「・・・そもそもジークムントという名の由来からして昔話の竜殺しの英雄から取ったものだからな。どう育って欲しいのかよく分かる。だがそれだけの勇ましさあってこそこの大事な地をダーヴィゼルド家に任せられるというものだ。」
レジナスさんもそう頷いた。そ、そうなんだ。ヒルダ様が赤ちゃんの名前を教えてくれた時はただ
『ダーヴィゼルドに昔から伝わる有名なおとぎ話の勇者にあやかった名前です、きっとその名前通りの素晴らしい子に育つでしょう。』
って笑っていた。おとぎ話の勇者様にちなんだ名前をつけるなんて、ヒルダ様も案外ロマンチックなところがあるなあと思っていたら、むしろ勇者のレンさんに憧れて自分の子にレニ様と名付けた大声殿下みたいな発想だったとは。
「ヒルダ様のように真冬の最中でも野山を駆け回って氷瀑竜を探し回るような無謀な公子様に育たないことを祈るべきでしょうかねぇ」
わあわあ歓声が上がる中、手を振っているヒルダ様を見ながらそんなことまでシェラさんは言っている。
うーん、ヒルダ様のことだからないとは言えないのが怖いところだ。ジークムント様が物心ついたらすぐにでもおんぶして魔物狩りにも連れて行きそう。
そんな事を考えていたら笑顔のままヒルダ様がこちらへくるりと向き直った。ん?
「さあユーリ様、領民の皆にも伴侶のお二人をよく見せてやってください。ここはあまりにも王都から離れていて、ユーリ様の結婚式に参列して直に祝うことの出来ない者も多いですからね。良い機会です。」
「⁉︎」
マリーさんの言っていたやつだ。でも確か祭壇から降りるのを二人にエスコートされて、そんな私とレジナスさん達をみんなが眺めて「あれが召喚者とその伴侶か」って認識する程度のことなんだと思っていた。
「あの、でも今回はジークムント様のための式典ですし・・・?」
さすがに壇上で式典の最後に召喚者とその伴侶が注目を集めるのはちょっと違うんじゃないかな?
そう怯んだ私にお構いなく、とヒルダ様は壇上の真ん中を私達に譲った。
祭壇はその左右から出入りするようになっているけど、真ん中にも階段があってそこから祭壇の下にも降りれるようになっている。
本来の打ち合わせではレジナスさん達に挟まれてエスコートされながら祭壇の脇にはけて行くはずだったんだけど、ヒルダ様の促し方はどう見ても真ん中の階段を使ってよりはっきりと集まっているみんなにレジナスさんとシェラさんが見えるようにする感じだ。
すでに集まっている人達の間からも「ご結婚おめでとうございます!」とか「ユーリ様万歳!」とか言う声が聞こえて来ている。
いやこれ、ホントに結婚式の予行演習みたいになってるし。
予想外の注目を集めて思わず体が固まる。
とりあえず取り繕うような笑顔は顔に浮かべることが出来るけど足が動かない。
レジナスさんがこっそりと大丈夫かユーリ?と声を掛けてくれたけど今動いたらものすごくギクシャクしたおかしな歩き方になりそうな気がする。
と、レジナスさんの反対側からも耳元に口を寄せたシェラさんにひそひそと
「ユーリ様、動かないといつまでもこのままですよ。」
と囁かれた。
「わ、分かってますけど・・・!」
だけど観衆の目が。え?本番の結婚式ってこれよりもっとたくさんの人達がいるんだよね?
そう思ったらまだ半年も先のことなのに緊張してきた。
「仕方ありませんね、オレ達で連れて行くことにしましょうか。とりあえずユーリ様本人からオレ達の方へ注目を集めてその後はレジナス、あなたに任せますよ。」
「俺でいいのか?」
「致し方ありませんね、ユーリ様に告白して伴侶になったのはあなたの方が先ですから。こう言う時に伴侶は平等、と言えないでしょう?そのかわり、オレから先に動かせていただきますが。」
「・・・分かった」
シェラさんが先に動くとか後はレジナスさんに任せるとか、主語のない意味不明なやり取りが盛り上がっている観衆には分からないようにひそひそと私の頭越しにされている。
その間も私は緊張したままビジネススマイルでみんなに若干固い笑顔を見せながらかろうじて手だけは振っていた。
二人ともこういう時だけ息ピッタリだけど一体何の話だろう、と思っていたら話のついたらしい二人が互いに頷いた。そしてシェラさんが、
「ではユーリ様、失礼いたします。」
言うが早いか私の顎にくいと手をかける。
「え?」
そのままシェラさんの方へ上向きに顔を向けられると、ポカンとして僅かに開いた唇におもむろに口付けられた。
わああ、と周りの歓声が更に大きくなって盛り上がる声が遠く聞こえる。不意打ちの突然の口付けに私の頭の中は真っ白になった。
祭壇の中央には神官さんがいて、その左右に向かい合うようにしてヒルダ様に抱かれたかわいいジークムント様と私は立っていた。
諸々の支度を終えてさきほどから始まったジークムント様のための祝福式は私が思っていた以上に大規模で荘厳なものだった。
最初に聞いていた説明だと式典自体は神官さんの簡単な説法の後に聖歌隊が合唱する中で私がジークムント様に加護を授けて終わり、という30分もかからなそうなものだったんだけど。
だけどお城に備え付けの礼拝殿がまず大きかった。まるで王宮の大宴会をするための大広間みたいに広くて天井の高い造りだったのだ。
あまりの大きさに初見の下見では思わずぽかんと口を開けて上を見上げていたらカイゼル様が苦笑して理由を教えてくれたっけ。
『ここは魔物の襲撃や他国からの侵略や紛争時での、城下町の民の避難所と救護所を兼ねているんです。ですから礼拝の為の椅子や机は固定されておらず可動式で沢山の人数を収容できるようになっているんですよ。』
そのために一般的な神殿の礼拝所とはちょっと違う造りなんです。そう言っていた。それに真冬でも移動しやすいように町から地下道でも繋がっているらしい。
・・・そのカイゼル様の説明通りに今この礼拝殿の前方、ダーヴィゼルドの主な貴族の人達が座っている場所より後ろの方は机と椅子が片付けられている。
そして祝福式を見ようと詰めかけた沢山の人達が立ち見でひしめき合っていた。
元から注目されるのは苦手なのにそんなのを見たら緊張して加護どころではなくなりそうなので、式典が始まってからはずっと意識的にそっちは見ていないけどかなりの人達が集まっているのは間違いないだろう。
だから式典が始まってからはひたすらずっと私は対面しているヒルダ様の腕に抱かれたジークムント様を見つめている。
ヒルダ様譲りの薄水色の髪の毛にカイゼル様そっくりの琥珀色の瞳と顔立ちで、成長すれば優しげな風貌のイケメンに育つこと間違いなしだ。
ちなみにヒルダ様の後方にはカイゼル様とバルドル様、その二人の間には神妙な顔付きのフレイヤちゃんが立っている。
そして私の後ろには正装したレジナスさんとシェラさんがいて私を見守ってくれている。いわゆる立会人のようなものだ。
と、そこで神官さんから
「・・・それではイリューディア神様に選ばれし愛し子にして癒し子、召喚者ユーリ様よりジークムント・ダーヴィゼルド公子へ祝福を。」
と声がかかってハッとする。いよいよ出番だ。
ヒルダ様が私の方へ一歩歩み寄り、私もまた一歩距離を詰める。
いつものきりっとした笑顔よりもいくぶん柔らかな微笑みを浮かべているヒルダ様が腕に抱いたジークムント様を私が口付けやすいように少し手前に差し出してくれたので、その小さくて可愛い頭をそっと撫でて柔らかな前髪をかき分けた。
「イリューディアさんの加護の元、丈夫で健康に育ちますように。」
呟きながら白い額に口付ければヒルダ様に抱かれている小さな体がぽうっと淡く光った。よしよし、成功だ。
それにこれで私のお役目も完了だ。ほっとして一歩下がり、安心した笑みを浮かべればヒルダ様も私を見て頷いてくれる。
そしてヒルダ様はそのままくるりと集まっている人達の方へ向き直ると腕に抱えたジークムント様をみんなによく見えるように高く掲げた。
あれ?某獅子王アニメ映画かな?
一瞬崖の上でお猿さんに掲げられるライオンの子供が頭に浮かんでしまったけど、そんな不謹慎な私の考えを消し去るようにその場にヒルダ様の凛とした声が響いた。
「恐れ多くもユーリ様直々にご加護をいただいたのはただ我が子というだけにあらず。これはダーヴィゼルドの民全てに対するユーリ様の深いご慈愛の証である。加護を受けしこの子は長じて皆を護る良き領主になるであろう!我が領民よ、心を合わせてこれからもこの北方の地で我が子と共にルーシャ国の安寧と繁栄を末永く祈り、あらゆる障壁からこの地を守り抜こうぞ‼︎」
その宣言に周りからわあっと歓声が上がった。
ヒルダ様万歳、ジークムント様万歳、ルーシャ国とイリヤ陛下の御代に栄光あれ、とダーヴィゼルドの騎士達が剣を掲げて声を上げる。
その様子をジークムント様を腕に抱き直したヒルダ様といつの間にかその両脇に立ち並んでいたカイゼル様やバルドル様が微笑んで見つめている。フレイヤちゃんは歓声の大きさにちょっとだけ恐々としてヒルダ様のドレスの裾を掴んでるけど。
「ユーリ様の祝福への返礼の言葉すら相変わらず勇壮ですね、実にヒルダ様らしい。」
気付けば私の両隣にもレジナスさんとシェラさんがいて、感心したようにそうシェラさんが言った。
「・・・そもそもジークムントという名の由来からして昔話の竜殺しの英雄から取ったものだからな。どう育って欲しいのかよく分かる。だがそれだけの勇ましさあってこそこの大事な地をダーヴィゼルド家に任せられるというものだ。」
レジナスさんもそう頷いた。そ、そうなんだ。ヒルダ様が赤ちゃんの名前を教えてくれた時はただ
『ダーヴィゼルドに昔から伝わる有名なおとぎ話の勇者にあやかった名前です、きっとその名前通りの素晴らしい子に育つでしょう。』
って笑っていた。おとぎ話の勇者様にちなんだ名前をつけるなんて、ヒルダ様も案外ロマンチックなところがあるなあと思っていたら、むしろ勇者のレンさんに憧れて自分の子にレニ様と名付けた大声殿下みたいな発想だったとは。
「ヒルダ様のように真冬の最中でも野山を駆け回って氷瀑竜を探し回るような無謀な公子様に育たないことを祈るべきでしょうかねぇ」
わあわあ歓声が上がる中、手を振っているヒルダ様を見ながらそんなことまでシェラさんは言っている。
うーん、ヒルダ様のことだからないとは言えないのが怖いところだ。ジークムント様が物心ついたらすぐにでもおんぶして魔物狩りにも連れて行きそう。
そんな事を考えていたら笑顔のままヒルダ様がこちらへくるりと向き直った。ん?
「さあユーリ様、領民の皆にも伴侶のお二人をよく見せてやってください。ここはあまりにも王都から離れていて、ユーリ様の結婚式に参列して直に祝うことの出来ない者も多いですからね。良い機会です。」
「⁉︎」
マリーさんの言っていたやつだ。でも確か祭壇から降りるのを二人にエスコートされて、そんな私とレジナスさん達をみんなが眺めて「あれが召喚者とその伴侶か」って認識する程度のことなんだと思っていた。
「あの、でも今回はジークムント様のための式典ですし・・・?」
さすがに壇上で式典の最後に召喚者とその伴侶が注目を集めるのはちょっと違うんじゃないかな?
そう怯んだ私にお構いなく、とヒルダ様は壇上の真ん中を私達に譲った。
祭壇はその左右から出入りするようになっているけど、真ん中にも階段があってそこから祭壇の下にも降りれるようになっている。
本来の打ち合わせではレジナスさん達に挟まれてエスコートされながら祭壇の脇にはけて行くはずだったんだけど、ヒルダ様の促し方はどう見ても真ん中の階段を使ってよりはっきりと集まっているみんなにレジナスさんとシェラさんが見えるようにする感じだ。
すでに集まっている人達の間からも「ご結婚おめでとうございます!」とか「ユーリ様万歳!」とか言う声が聞こえて来ている。
いやこれ、ホントに結婚式の予行演習みたいになってるし。
予想外の注目を集めて思わず体が固まる。
とりあえず取り繕うような笑顔は顔に浮かべることが出来るけど足が動かない。
レジナスさんがこっそりと大丈夫かユーリ?と声を掛けてくれたけど今動いたらものすごくギクシャクしたおかしな歩き方になりそうな気がする。
と、レジナスさんの反対側からも耳元に口を寄せたシェラさんにひそひそと
「ユーリ様、動かないといつまでもこのままですよ。」
と囁かれた。
「わ、分かってますけど・・・!」
だけど観衆の目が。え?本番の結婚式ってこれよりもっとたくさんの人達がいるんだよね?
そう思ったらまだ半年も先のことなのに緊張してきた。
「仕方ありませんね、オレ達で連れて行くことにしましょうか。とりあえずユーリ様本人からオレ達の方へ注目を集めてその後はレジナス、あなたに任せますよ。」
「俺でいいのか?」
「致し方ありませんね、ユーリ様に告白して伴侶になったのはあなたの方が先ですから。こう言う時に伴侶は平等、と言えないでしょう?そのかわり、オレから先に動かせていただきますが。」
「・・・分かった」
シェラさんが先に動くとか後はレジナスさんに任せるとか、主語のない意味不明なやり取りが盛り上がっている観衆には分からないようにひそひそと私の頭越しにされている。
その間も私は緊張したままビジネススマイルでみんなに若干固い笑顔を見せながらかろうじて手だけは振っていた。
二人ともこういう時だけ息ピッタリだけど一体何の話だろう、と思っていたら話のついたらしい二人が互いに頷いた。そしてシェラさんが、
「ではユーリ様、失礼いたします。」
言うが早いか私の顎にくいと手をかける。
「え?」
そのままシェラさんの方へ上向きに顔を向けられると、ポカンとして僅かに開いた唇におもむろに口付けられた。
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