【本編完結】異世界再建に召喚されたはずなのになぜか溺愛ルートに入りそうです⁉︎【コミカライズ化決定】

sutera

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番外編

西方見聞録 7

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今の今までユリウス様と僕らの会話に無関心だったシグウェル様が、僕が魔法を使えると知るやいなやこちらに目を向けた。

その表情は相変わらず感情の動きが見えないけど、あの綺麗な顔でじっと見つめられていると何だか落ち着かない。

「軽さのあるものが散逸しないように集めて固定するということは風魔法だな。それはどれくらいの範囲に対して有効だ?ある程度の時間は持つのか?それとも短時間か?コントロールの精度はどれほどのものだ、羊毛のような小さいものでも一つも取りこぼしなく集められるのか?」

え、なんか急にすごく喋り出した・・・。

相手はルーシャ国の宮廷魔導士団長だし、これ、全部答えなきゃいけないのかな?

でもそうしたら僕がただの技術者や工房責任者じゃないってバレちゃいそう。

迂闊なことを言ってしまったなあと内心後悔する。

僕の風魔法は自分で言うのもなんだけどかなり強い。勿論、ルーシャ国でいうところの魔導士団長ほどではないけれど、少なくとも皇族であり神獣様の加護を受け膨大な魔力を持っているジェン皇子の使う魔法を、足手まといになることなく補助できる程度には。

僕の隣では使用人も

「シーリン様は魔法が使えるのに工房務めなんですか?」

って驚いている。まあ、魔法が使えたらこんな布なんか織ってないで普通は王宮仕えの仕事をしてるよね・・・。

ユリウス様も、

「風魔法だなんて、攻防どっちもイケるしめっちゃ恵まれてる能力じゃないっすか。そんな人がただ技術者をしてるなんて勿体無いっすね。または東国ってそういう魔法を使える人がその辺にいっぱいいるから魔導士的な職にあぶれてるとか?」

と目を丸くされた。

「あー、いえ・・・。僕の魔法はそんな凄くもないですよ?ほうき代わりにゴミを集めるとかそんな程度の・・・だから羊毛集めにも便利っていうか・・・」

ゴニョゴニョと言い訳をするように口ごもりながら答えれば、

「嘘だな」

シグウェル様に一刀両断にズバッと言い切られた。

え?なんで分かるの?バレないようにルーシャ国に来てからはずっと魔力を最小限に抑えてるのに。

魔力を全て隠すのは無理だから、それこそその辺を歩いている「ちょっと魔力がある一般人程度」に偽装しているんだけど?

するとおもむろに執務机から立ち上がったシグウェル様はスタスタ近づいて来ると、座っている僕の目の前にずいっと顔を近付けてきた。

ひえっ、唇を奪われる⁉︎

あの白皙の美貌が僕の鼻先にくっつきそうなくらい間近に迫ってきて、輝くような銀髪は絹糸のようにさらさらと流れてその美貌に色を添えている。

男同士なのに一瞬もの凄く焦った。か、顔、近っ‼︎

だけどシグウェル様はそんな僕の焦りも全く意に介さず、何かを探るようにひたすら僕の瞳の中を覗き込んでいた。

そのアメジスト色の怜悧な眼差しは恐ろしいほど鋭いけど、顔が良過ぎて目が逸らせないし息をするのも忘れそうになりながら、まるで何かの我慢比べのように見つめられ続ける。

そしてそんな僕とシグウェル様を目の前にしている使用人もなぜか赤面している。すると、

「何してるんすか団長!また距離感がおかしいっすよ⁉︎」

ユリウス様の声と共に僕とシグウェル様の間にズバッと手刀が割り込んで、シグウェル様の顔が見えなくなった。た、助かったー!

ぷはっ、と息を吐く。どうやら緊張のあまり無意識のうちに本当に息を止めていたらしい。

「なんだユリウス、邪魔をするな」

「なんだじゃないっすよ、初対面の人に顔が近過ぎるって言ってるんです、失礼でしょうが!そういうことをするのはユーリ様だけにしておくっす!」

「ユーリが相手ならもっと別のことをしている」

「ひぇっ!止めるっす、ユーリ様がかわいそう‼︎」

「何故だ?自分好みの顔がすぐ近くで自分に愛を囁くのをユーリは見られるんだぞ?頬を染めて喜ぶと思うが」

「まじユーリ様がいないところでもそういうこと言うの止めて欲しいっす、最近団長のそれがノロケなのか嫌がらせなのか本気で分からなくなってきたっすよ・・・」

「嫌がらせなわけがないだろうが。今度お前の目の前で今言った事をユーリにして見せるから、ユーリが喜ぶところをよく見ていろ」

「いや、それ俺にもユーリ様にもマジで嫌がらせっすから・・・」

最初の勢いはどこへやら、ユリウス様はげんなりして僕とシグウェル様の間に差し込んでいた手を降ろした。

え?何この会話、ていうかシグウェル様の言動。

顔は無表情のままで何の感情も浮かんでない上に淡々と喋っているのに、言ってることはユーリ様に対する愛情を感じるものだ。それもわりと深く。

あまりにも顔の表情と話してることがかけ離れていたので思わずシグウェル様を二度見してしまった。

するとそれに気付いたシグウェル様が、

「なんだ?君もユーリに対する俺の態度が嫌がらせの類だとでも言うつもりか?もっと他人にも分かりやすく、ユーリには愛情を持って接していると見せなければいけないのか?どうにも難しいものだな、一度シェラザードにも聞いてみるか・・・」

と呟いた。そしてそれを聞いたユリウス様は青くなって

「いや団長、それだけは止めるっす!それ、一番相談しちゃいけない人ですから‼︎」

と大慌てで止めている。シェラザード様もユーリ様の伴侶の一人なのになんでそこまで騒ぐんだ?

ていうか、シグウェル様はユーリ様のことで何か気になる時はシェラザード様に相談するんだな。伴侶同士で仲が良いのはいいことだ。

ただ、どうにもその中にウチの皇子殿下が混ざっている図っていうのが想像できないけど。

あ、でもシグウェル様は魔法への興味が深いみたいだから魔力の多いジェン皇子は会話をしてもらえるのかな?

皇子は水魔法が得意で渇水地方や干ばつ地域ではとてもありがたがられている。

その魔力の強さたるや、どれだけ神獣様のご加護が篤いのか知らないけど昔から皇宮で皇子がべしょべしょと泣きべそをかけば皇都全域に雨が降って湿っぽくなるほどだ。

あれ?それだけ魔力が強ければもしかするとこの気難しそうなシグウェル様に会話をしてもらうだけでなく興味も持ってもらえるかも。

初めて僕が一抹の希望を持ったその時、突然シグウェル様は指先でトン、と僕の額を小突いてきた。

顔と同じくひんやり冷たい指先で僕の額を押しながら、シグウェル様はユリウス様に向かって説明している。

「ともかくだ。目を見て確信したがこいつは魔力を隠しているぞ。いや、何かの理由で制限をかけられているのか、それとも無意識のうちに魔力を押さえつけているのか。いずれにせよ、表立って感じられるもの以上の魔力を内包している。」

ひぇっ、僕の魔力の話ってまだ終わってなかったんだ⁉︎

「ええ?そうなんすか?団長って相変わらず人様の魔力に敏感っすねぇ・・・」

褒めているというよりは呆れたような面持ちでそう言ったユリウス様を、表情を変えずにフンと鼻で笑ったシグウェル様は、

「そろそろお前もこの程度のことは分かるようになれ。」

と言ってまだ僕の額に指先を当てたままこちらをちらりと見た。

「皇国は白い虎の姿をした神獣の加護を受けた国だったな。それはまるで、我が国の王族が勇者様の血を引きグノーデル神様の加護を受けているのに似ていて実に興味深い。さて、もし君もそのグノーデル神様に似た姿の神獣の加護を受けているならば・・・」

このまま額にグノーデル神様を体現する雷魔法で刺激でも与えれば、制限されている魔力が解放されるか?

そんな恐ろしいことを言われた。や、やめてやめて、そんな事されたら多分僕死んじゃうから!

シグウェル様の言うように、確かに僕も自国の神獣とルーシャ国のグノーデル神という神様には共通点があるなあと思ったことはある。

神獣様は別名を聖なる雷獣とも言われているし、皇帝陛下や皇太子殿下の使う魔法は強力な雷を操る魔法だ。

でも、だからってそれで僕の体に雷を流して試そうっていうのは乱暴な話だ。

そもそも僕は皇族じゃないから神獣様のご加護を受けていないので、そんな事されてもシグウェル様の期待しているような魔力が爆発的に増えるとか解放されるとかは起こらないよ?

だって自分で自分の魔力を押さえ込んで隠しているだけだし。

だけど目の前のシグウェル様は本気でヤル気だ。

ついさっきまでは無表情だったのに、僕に魔力を流そうとしている今は、その瞳に初めて人間らしい面白いものを見つけたような楽しげな色が乗っている。いや、なんでだよ⁉︎

人に魔力を流してその反応を見て楽しそうにするなんてとんでもないサディストか魔法バカのどっちかだ。どっちも嫌すぎるけど。

「や、やめてください!僕はしがない布工房の人間ですよ⁉︎そんな事をされて万が一ケガでもしたらこの後の作業に支障が出ます、ユーリ様のご衣装が期日までに納品出来なくなります‼︎」

なんとか魔力を隠したまま誤魔化せないものかと必死でシグウェル様の説得を試みる。

そもそも僕はただ珍しい金毛大羊の羊毛から作られた糸を取りに来ただけなのにどうしてこうなった?

するとそこでやっとシグウェル様は思いとどまってくれたらしく僕の額からすい、と指が離れた。た、助かった!
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