【本編完結】異世界再建に召喚されたはずなのになぜか溺愛ルートに入りそうです⁉︎【コミカライズ化決定】

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番外編

西方見聞録 16

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僕の名前をリンリンさん!と間違えたユーリ様はもの凄く恐縮して謝ってくれた。

「ごめんなさい!シーリンさん‼︎」

シーリンさん、シーリンさん、と記憶に刻みつけて覚えようとするように何度も呟いてくれるのは嬉しいけど、一番お近づきになりたい人に覚えられていないのはどうなんだ・・・と少し悲しくもあり複雑な心境だ。

するとそんなユーリ様の視界から僕を隠すかのようにテーブルの上に身を乗り出したシェラザード様が、

「ユーリ様、オレの目の前で別の男の名を連呼されるのはなんとも悲しくなりますのでそこはオレの名を呼んでいただけませんか?ほら、このように素晴らしいネックレスも一刻も早くお見せしたいと持参した、あなたへ唯一の愛と忠誠を捧げるオレこそがその名を呼ばれるにふさわしいはずですよ。」

そう言いながらユーリさまの首元へさっき小箱から取り出したあの金糸のネックレスを鮮やかな手つきでサッと付けてしまった。

「なっ・・・何恥ずかしいこと言ってるんです⁉︎」

名前を呼んでくれとか唯一の愛だのなんだのと、聞いてるこっちが気恥ずかしくなるような事をあの色気たっぷりの微笑みで臆面もなく言うシェラザード様にユーリ様は真っ赤になってうろたえている。

ちなみに僕の背後からは他の騎士達の呟く

「今すぐ自分の耳をちぎり捨ててェ・・・」

「なんで俺たちのユーリ様を目の前で口説いてるのを見せつけられなきゃならないんだよ・・・」

「あー、レジナス様、早くあの隊長を殴ってくれないかなぁ・・・」

という愚痴なのか恨み言なのかよく分からない声が聞こえてきている。

だけどシェラザード様はそんな声もユーリ様のうろたえている様子も気にすることなく、付けたネックレスの位置を調整してついでにユーリ様のポニーテールも綺麗に後ろへ流して整えると満足げにまた座り直した。

「元々シンプルな騎士服ですが黒一色なだけにそのネックレスの金色がよく映えますね。ユーリ様の瞳の色にもお似合いで、ぐっと華やかになりました。いかがです?元が羊毛なだけに軽くて重さも気になりませんでしょう?」

そう説明している。その言葉に今までシェラザード様に振り回されて赤くなっていたユーリ様も

「えっ?あ、そうですね。まるで付けてないみたいに軽いです、首元に近いんで自分ではよく見えないんですけどこれ、すごく細かく編み込んでありませんか?」

とネックレスを触って確かめ、傍らのレジナス様へどうですか?とそれを見せている。レジナス様も、

「金毛大羊から作られた糸で編んだネックレスか?すごいな、細身の物なのにところどころ厚みも模様も変えてある。」

と感心していた。おお、大柄で無骨ないかにも騎士然とした風体のレジナス様なのにそんな細かいところまで気付いてくれるとは。ウチの職人達に聞かせてあげたいなあ。

そう思っていたらレジナス様やシェラザード様とネックレスについて話していたユーリ様が、シェラザード様の肩越しにひょいと顔を覗かせて笑いかけてくれた。

「ありがとうございます!こんなに素敵なネックレス、他にお仕事もあるのに作るのは大変だったでしょう?作ってくださった皆さんにもお礼を伝えてもらえますか?大切にしますね!」

お世辞とかじゃない、心からの本当の感謝が伝わる言葉と笑顔だ。

確かにこれは超絶技巧が駆使されたネックレスだけど、小さな宝石一つ付いていない・・・言ってしまえばただ糸を編んだだけのものなんだけど。

それでも嬉しそうにまだそれをレジナス様達に見せているユーリ様に心が温かくなる。

今度皇子に出す手紙には、そんなユーリ様の素敵な人となりも報告出来そうだなあ。なんて考えていたら、僕の前でレジナス様がカタンと席を立った。

「ではシェラも来たことだし、俺もそろそろ行こうと思う。ユーリ、騎士団の食事は量が多い。あまり食べ過ぎるなよ、腹が満ち過ぎて動けなくなるとシェラに抱えられて帰ることになるぞ。」

「しっ、失礼ですね⁉︎子どもじゃあるまいし食べられる量はわきまえてますよ!」

レジナス様の言葉に反論したユーリ様だったけど、

「本当か?」

と言うレジナス様の視線の先に生ハムやチーズ、葉野菜の乗った皿を目の前にフォークを握りしめている自分の手があるのに気付くと

「これは前菜ですから!まだ食べたうちに入りませんし大丈夫ですよ⁉︎せっかく騎士団のご飯を楽しみにして来たんですから全部ちゃんとおいしく食べて自分の足で歩いて帰りますから‼︎」

と力説している。・・・なんかそれ、誰がどう見ても言い訳にしか聞こえないんですけど。

ていうかユーリ様、小鳥のエサ程度の量の野菜サラダしか食べなさそうな綺麗な見た目に反してやっぱり食いしん坊なんだな?

言い訳の仕方がなんか調子に乗って食べ過ぎては腹痛を起こす時のウチのジェン皇子に似てる。大丈夫かな。

レジナス様もちょっと心配そうにユーリ様を見ていたけど、その頭をぽんとひと撫でするとシェラザード様に

「頼んだぞ」

と言って食堂を後にした。ユーリ様はそんなレジナス様を「心配し過ぎですよ!」と見送っていたんだけど、

「それで?」

とにこにこしながら聞いてきたシェラザード様に「え?」と向き直った。

シェラザード様はそんなユーリ様に、ユーリ様の目の前のお皿からチーズを一つつまみ上げながら続けた。

「そんなにも騎士団の食事を楽しみにしておられたんですか?言ってくだされば体力作りにもオレが最初から付き合い昼食もきちんと用意しましたのに。」

「な、なんの話ですか?」

心なしユーリ様の目が泳いでいるような気がするけどなんでだろう?

するとふふ、と含み笑いをしたシェラザード様は手にしたチーズをユーリ様の口へひょいと差し入れた。

「殿下とレジナスが昼から視察に出ることなど、元より分かっていたでしょうに。本当は体力作りをした後の昼食は奥の院に帰ってから向こうで取ることになっていたのでは?」

「ぐっ・・・」

うぐ、とユーリ様が喉を詰まらせたような声を上げたのは突然シェラザード様にチーズを食べさせられたからなのか、それとも言われたことが図星だったのか。

シェラザード様はそんなユーリ様に

「体力作りが昼食前に終わって帰ろうとするのをなんとかして阻止しようと考えた結果、オレが今日ここで訓練なのを知って昼食の誘いをしたんですよね?そんなに騎士団の昼食が食べたかったのですか?」

と更に聞いている。するとユーリ様はチーズを咀嚼して飲み込むと、観念したように

「だって・・・なかなかここでご飯を食べる機会ってないですし。結婚式の後は新婚休暇で、また当分ここには来れないでしょう?でも視察の入っているレジナスさんを付き合わせるわけにはいかないし、そしたらシェラさんが今日は一日ここにいるって聞いて・・・」

とごにょごにょとシェラザード様から視線を外して口ごもった。

するとそんなユーリ様に

「本当に、可愛らしいことを考えるお方ですねぇ」

とシェラザード様は愛おしくてたまらないといった口ぶりで見つめながら微笑んでいる。

あ!これは。これと同じことをさっき部屋で呟いていたぞ。

あの時は確か、騎士が「ユーリ様がシェラザード様と昼食を取りたいと言っている」って伝えに来た時だった。

どうやらその時点でシェラザード様はユーリ様が自分と昼食を取りたいと言ったのはただの口実で、実はなんとかして騎士団でご飯を食べるために考え出した理由だと分かっていたらしい。

「そんなもっともらしい理由を考えずとも、最初から騎士団の食事をしたいと言ってくだされば良かったのに。」

そう言われたユーリ様はだって、と叱られた子どものように上目遣いでシェラザード様を見た。

「私が最初からここでご飯を食べるって言うと騎士さん達と違うご飯を出されちゃうんですもん。私は騎士さん達と同じ物を一緒に食べたいので・・・」

その発言に僕の後ろで二人のやり取りをこっそり盗み聞きしていた騎士達が

「ユーリ様・・・!」

「そこまで俺達と一緒に?」

「こんな味も素っ気もないオトコメシを⁉︎」

「てぇてぇ・・・」

と口々に感動の言葉を漏らしているのとじーんと感じ入っているのが聞こえてきた。

ていうか「てぇてぇ」って何?ルーシャ国的な褒め言葉とか崇め奉っている的な意味?

一部意味不明だけど、まあ感動しているのには違いない。

よく考えればユーリ様が単にここでご飯が食べたいがために絞った知恵で、要するに食いしん坊ってことだけど・・・?

だけどそんな食いしん坊感満載で悪あがきがバレて小さくなっているユーリ様をシェラザード様始め騎士の人達はなぜかほのぼのとした目で見つめているのだった。

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