【本編完結】異世界再建に召喚されたはずなのになぜか溺愛ルートに入りそうです⁉︎【コミカライズ化決定】

sutera

文字の大きさ
660 / 777
番外編

西方見聞録 32

しおりを挟む
僕がぐったりしているのは皇子の攻撃性の強い水魔法が原因なのに、腹が減っているせいだと勝手に勘違いしたままのジェン皇子は

「歓迎ありがとう!じゃあ悪いけど、すぐにシーリンをどこか休めるところに運んでもいいかな⁉︎」

と言ってびしょ濡れのままの僕をその背に背負った。

ちなみにジェン皇子を始めとした、この場にいる面々の中で雨と皇子の水魔法で濡れているのは僕だけだ。

皇子は元から自分の魔法で濡れることはないし、リオン王弟殿下やルーシャ国の人達もシグウェル様の保護魔法で綺麗に雨が弾かれている。

だからなのか、リオン王弟殿下とレジナス様の陰から背伸びをしてちらりと顔を覗かせたユーリ様が

「先にシーリンさんを拭いてあげるタオルみたいな物はないですか?濡れているままだとかわいそうですよ!」

と声を掛けてくれた。その声に僕を背負って歩き出そうとしていたジェン皇子が

「あれ?女の子?ボクの気のせいかな、どこからか声が・・・」

と辺りを見回したので、このままここでユーリ様と会わせたら面倒なことになると思ったのかレジナス様が

「まだ静かにしていてくれ、少し様子を見よう。」

と小声でユーリ様に囁いてまたあの大きな体でさっとその姿を隠してしまった。

リオン王弟殿下もさりげなくその背にユーリ様を隠して

「皇族を迎え入れるには簡素かも知れないけど、一番近いのは魔導士院の応接室だからそこへ行こうか。ユリウス、彼を乾かしてあげて」

と指示を出し、それにはいはいと頷いたユリウス様があっという間に僕を乾かしてしまう。

そうすれば姿の見えない謎の声のことはあっさりと放置してジェン皇子は

「ありがとう!君、いい人だね。ルーシャ国の魔導士かい?その紺色の制服、よく似合ってるねぇ!」

と、促されて案内について行きながら邪気のない笑顔を先導するユリウス様に見せている。

「さっきまで自分の部下が酷い目に遭わされていると思って慌ててここまで飛んで来たのに、たかが服を乾かしたくらいでその相手を褒めるとは良く分からない奴だな・・・」

そう呟いて冷たい目で皇子を見たシグウェル様にユリウス様も、

「俺もまさかこの程度のことで褒められるとは思ってなかったっす。ていうか、濡れネズミの部下を自分が濡れるのも厭わずに躊躇なく自ら背負っちゃうあたり、かなりのお人好しなんじゃないすか?」

困惑したように返している。

そうだよ、ウチの皇子殿下は人が好くて悪巧みなんか絶対に出来ないタイプの人間なんだ。

だからユーリ様にガラス鉢を通じて求婚したのも決してユーリ様の結婚式を邪魔したり混乱させたりしたかったわけじゃない。

だけどまあ、期せずして騒ぎの張本人が来ちゃったんだし、もうこの際本人に「余計な騒ぎを起こしてごめんなさい」って謝ってもらおう。

「ジェン皇子・・・ここにいる人達、僕を乾かしてくれたユリウス様以外は全員例のユーリ様の伴侶ですからね、くれぐれも粗相のないように・・・」

服は乾きはしたけど不意打ちの皇子の魔法で強引に引き戻されて体力を持って行かれぐったりとまだ背負われたまま、皇子にこそこそと耳打ちをする。

するとちょうど魔導士院の接客用の応接室に通された皇子がええ‼︎と大きな声を上げた。

「あ痛たぁ!」

そのままどさりと僕をソファに降ろし・・・って言うか、取り落とすようにして背から落とされたので、僕も思わず声を上げたら

「それホントかい、シーリン!もっと早く言っておくれよ!」

そう言うとリオン王弟殿下達をきょろきょろと見渡した。

「シーリンから聞いていた特徴だと、この気品のある人がリオン殿下で・・・こっちのちょっと冷たい顔付きの銀髪の人がシグウェル殿?それからクマみたいに大きなこの人がレジナス殿・・・うわあホントだ、手紙で読んでた通りだ!顔、怖っ!」

ちょっと!何最後に余計なこと言ってんの⁉︎僕、手紙でちゃんとレジナス様のこと褒めてたよね⁉︎

あまりにもあんまりな皇子の言葉に部屋の空気が凍った気がする。そしてユリウス様が

「いや、レジナスの顔が怖いのは今に始まったことじゃないっすけど初対面で堂々と本人にそれを言った人は初めて見たっす・・・」

と言い、レジナス様の方をちらりと見た。

レジナス様も、面と向かってさすがにそんな事を言われることはあまりないのか、皇子の言葉に怒るというよりも複雑そうな顔をしている。

そしてジェン皇子は、そんな周囲の視線を物ともせずにこの国の王族であるリオン王弟殿下に改めて挨拶をしようと片手を胸に当てピシッと綺麗なお辞儀をして名乗っていたんだけど・・・

「・・・そんなわけでボクはこの中で一番歳下だし、どうか気楽に愛称でジェンと呼んで欲しい」

と言いながら顔を上げた時、リオン王弟殿下とレジナス様の立ち位置が不自然なことに気付いて首を傾げた。

「あの・・・二人とも、どうしてそんなにもくっついて並んで立ってるの?暑くない?」

実は二人ともまだその背後にユーリ様を隠したままだった。いや、こうなったらいい加減ユーリ様のことも紹介しなきゃいけないと思うんだけど?

ウチの皇子にごく当然な疑問を呈されて、顔を見合わせた二人はどうやってユーリ様を紹介しようかと明らかに迷っている。

そりゃそうか。初めてのプレゼントを贈ると同時に求婚までしてきたような相手がホンモノのユーリ様を目にしたらまた何を言い出すか分からないし。

だから僕が、

「あのー皇子?自己紹介が終わったんなら、とりあえずいきなりここに乗り込んで来た謝罪でもしたらどうです?僕はここでかなり良い待遇で過ごさせてもらってたんで、絶食させられて虐待されてたとか拷問されてたとか、そんなことは決してないんですよ?」

と口を出したら

「でも今のキミ、すごくぐったりしてるじゃない!僕のお願いのせいで大変な目に遭ったんでしょう⁉︎」

と眉根を寄せて心配された。

「ああ、ハイ。アンタのせいで僕は今すっかり疲れ切ってますけどね?」

ぐったりしてるのはアンタが僕に向けて水魔法を放ったせいだよ、と皮肉を言ったら

「シーリンさん、疲れてるんですか?じゃあ私が治しますよ?」

と目の前のリオン王弟殿下とレジナス様の背後からユーリ様が声を上げた。

それをレジナス様が

「待てユーリ、先に俺とリオン様がまずお前を紹介するから・・・」

と制したけどその声に被せ気味に

「今『ユーリ』って言った⁉︎えっ、あのお姫様がここにいるの⁉︎」

とジェン皇子がソファから立ち上がる。

するとレジナス様とリオン王弟殿下の間からユーリ様が二人の肩を掴んで隙間から顔を覗かせた。

「あ、はい。こんにちは初めまして。こんな格好での挨拶でごめんなさい、私がユーリです。」

そう言いながら二人の肩口の間でちらちらとあの黒曜石みたいな黒い瞳を見せながら「ちょっと、何で二人ともまだどかないんですか⁉︎」と抗議をしていた。

「えっ、可愛い‼︎瞳しか見えないけど可愛いよシーリン、手紙で書いてた通りだね⁉︎」

とジェン皇子は僕をバンバン叩いて、

「こんにちはお姫様!ユーリ様、って名前を呼ぶ許しを貰っても?出来ればその姿もきちんと見せて欲しいんだけどいいかな⁉︎」

とまだユーリ様の前に立ち塞がっている二人越しに声を掛けた。

すると、さすがにそのまま話させるわけにはいかないと諦めたのかリオン王弟殿下は仕方ないね・・・とため息を一つついて

「ジェン皇子、ユーリを驚かせないためにもこのテーブルを挟んだそれ以上はこちら側に来ないでもらえるかな?それが出来なければユーリには会わせられないけど。」

と念を押した。

「女性に突然距離を詰めるような失礼な真似はしないよ!いつだってボクは紳士だからね!」

皇子はそんな事を言って胸を張ったけど・・・いやアンタ、初手から求婚して思いっきり会ったこともない相手への距離の詰め方間違ってたからね?

よくそんな事が言えるな、と半ば呆れてしまったけどリオン王弟殿下はそんな皇子の言葉を信じたのか、自分とレジナス様の背中に隠していたユーリ様の姿をようやく見せた。

「やっと視界が開けました!二人とも何なんですか、もう!シーリンさん、疲れて動けなくなってるんですよね。大丈夫ですか?私が今治しますからね。」

ちょっとだけ頬を膨らませて自分の両脇に立つ二人を見やった後にユーリ様は僕に笑顔を見せてくれた。

その様子にジェン皇子は頬を紅潮させて何かを言おうとしては言えずに口をぱくぱくさせたかと思うとやっとのことで

「か、可愛い・・・!今までに見てきたどんな人よりも可愛いし美人だよ、どうしよう・・・!」

小さく叫ぶようにそう声を上げた。

おお、この皇子様が言葉を失くすくらい目を奪われるなんてさすがユーリ様だ。

どうやら噂に聞いていた以上のユーリ様の可愛らしさと美しさに圧倒されているみたいだし、これはもうそうおかしな事を言う気力もないんじゃないかな?

そう思っていたのに、次の瞬間ジェン皇子はテーブルに身を乗り出すと 

「やっぱりボクも伴侶にして!ここにお婿に入るから‼︎」

とバカな事を前のめりに勢い込んで言った。

しおりを挟む
感想 191

あなたにおすすめの小説

魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました

iru
恋愛
小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。 両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。 両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。 しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。 魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。 自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。 一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。 初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。 恋人になりたいが、年上で雇い主。 もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。 そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。 そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。 レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか? 両片思いのすれ違いのお話です。

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

結婚後、訳もわからないまま閉じ込められていました。

しゃーりん
恋愛
結婚して二年、別邸に閉じ込められていたハリエット。 友人の助けにより外に出ることができ、久しぶりに見た夫アルバートは騎士に連行されるところだった。 『お前のせいだ!』と言われても訳がわからなかった。 取り調べにより判明したのは、ハリエットには恋人がいるのだとアルバートが信じていたこと。 彼にその嘘を吹き込んだのは、二人いたというお話です。

転生皇女セラフィナ

秋月真鳥
恋愛
公爵家のメイド・クラリッサは、幼い主君アルベルトを庇って十五歳で命を落とした。 目覚めたとき、彼女は皇女セラフィナとして生まれ変わっていた——死の、わずか翌日に。 赤ん坊の身体に十五歳の記憶を持ったまま、セラフィナは新しい人生を歩み始める。 皇帝に溺愛され、優しい母に抱かれ、兄に慈しまれる日々。 前世で冷遇されていた彼女にとって、家族の愛は眩しすぎるほどだった。 しかし、セラフィナの心は前世の主・アルベルトへの想いに揺れ続ける。 一歳のお披露目で再会した彼は、痩せ細り、クラリッサの死を今も引きずっていた。 「わたしは生涯結婚もしなければ子どもを持つこともない。わたしにはそんな幸福は許されない」 そう語るアルベルトの姿に、セラフィナは決意する。 言葉も満足に話せない。自由に動くこともできない。前世の記憶を明かすこともできない。 それでも、彼を救いたい。彼に幸せになってほしい。 転生した皇女が、小さな身体で挑む、長い長い物語が始まる。 ※ノベルアップ+、小説家になろうでも掲載しています。

【完結】お見合いに現れたのは、昨日一緒に食事をした上司でした

楠結衣
恋愛
王立医務局の調剤師として働くローズ。自分の仕事にやりがいを持っているが、行き遅れになることを家族から心配されて休日はお見合いする日々を過ごしている。 仕事量が多い連休明けは、なぜか上司のレオナルド様と二人きりで仕事をすることを不思議に思ったローズはレオナルドに質問しようとするとはぐらかされてしまう。さらに夕食を一緒にしようと誘われて……。 ◇表紙のイラストは、ありま氷炎さまに描いていただきました♪ ◇全三話予約投稿済みです

聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい

金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。 私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。 勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。 なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。 ※小説家になろうさんにも投稿しています。

おばさんは、ひっそり暮らしたい

蝋梅
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。 たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。 さて、生きるには働かなければならない。 「仕方がない、ご飯屋にするか」 栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。 「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」 意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。 騎士サイド追加しました。2023/05/23 番外編を不定期ですが始めました。

竜王の「運命の花嫁」に選ばれましたが、殺されたくないので必死に隠そうと思います! 〜平凡な私に待っていたのは、可愛い竜の子と甘い溺愛でした〜

四葉美名
恋愛
「危険です! 突然現れたそんな女など処刑して下さい!」 ある日突然、そんな怒号が飛び交う異世界に迷い込んでしまった橘莉子(たちばなりこ)。 竜王が統べるその世界では「迷い人」という、国に恩恵を与える異世界人がいたというが、莉子には全くそんな能力はなく平凡そのもの。 そのうえ莉子が現れたのは、竜王が初めて開いた「婚約者候補」を集めた夜会。しかも口に怪我をした治療として竜王にキスをされてしまい、一気に莉子は竜人女性の目の敵にされてしまう。 それでもひっそりと真面目に生きていこうと気を取り直すが、今度は竜王の子供を産む「運命の花嫁」に選ばれていた。 その「運命の花嫁」とはお腹に「竜王の子供の魂が宿る」というもので、なんと朝起きたらお腹から勝手に子供が話しかけてきた! 『ママ! 早く僕を産んでよ!』 「私に竜王様のお妃様は無理だよ!」 お腹に入ってしまった子供の魂は私をせっつくけど、「運命の花嫁」だとバレないように必死に隠さなきゃ命がない! それでも少しずつ「お腹にいる未来の息子」にほだされ、竜王とも心を通わせていくのだが、次々と嫌がらせや命の危険が襲ってきて――! これはちょっと不遇な育ちの平凡ヒロインが、知らなかった能力を開花させ竜王様に溺愛されるお話。 設定はゆるゆるです。他サイトでも重複投稿しています。

処理中です...