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番外編
好きだと言って 5
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「・・・ねぇユーリ、僕のこと好き?」
夕食後、ソファに腰掛けたリオン様が隣に座らせた私の手を取ってそう聞いてくる。
「き、嫌いです!」
「そっか。じゃあレジナスは?」
顔を赤くしてキッとリオン様を見つめて言えば、リオン様はご満悦そうにそうかそうかと頷くと、ちらりとレジナスさんを視線の端で捉えながら更に私に尋ねてきた。
「すっ、好きじゃないですよ⁉︎あ、いや違う、じゃなくて違わない?・・・ああもう!」
これじゃ結局二人のことを好きだと言っているようなものだ。
少し離れたテーブルで私達のやり取りを見ながら静かにお茶を飲んでいたレジナスさんも、若干落ち着かない表情でいつもは進んで手を伸ばさない甘いお菓子を口に運んでいる。
その隣では面白そうな顔をしたシグウェルさんがお酒を飲みながら
「どうだレジナス、俺の魔法薬もたまには役に立つだろう?いつもは自分の気持ちを滅多に口に出さないユーリが本心を話しているも同然だからな。」
なんて言っている。そんなシグウェルさんにレジナスさんはむすりと硬い顔付きのまま
「お前の魔法薬が『たまに役立つ』などと自分で言うあたり、普段は迷惑をかけている自覚があるということか?」
と答えて「照れ隠しか?誤魔化すな」とまたシグウェルさんに面白そうに目をすがめられていた。
うーん、なんて厄介な薬なんだろう。
リオン様に自分のことを好きかと聞かれれば、いつものように照れ隠しで「嫌いじゃないですよ!」と言おうとすればそこに乗っている感情はつまり「好き」ということなので、それとは逆の「嫌いです」という言葉が口からこぼれ出る。
だからリオン様は「それって僕のことが好きってことだよね?」と嬉しそうにして更に私の気持ちを聞き出そうとしてくるのだ。
私の手を取りその指先にちゅ、と小さく口付けるとそのまま上目遣いで私を見上げ
「これは嫌い?」
と聞かれたので反射的に
「も、もー!・・・離さないで⁉︎」
と声を上げれば
「そう?じゃあお言葉に甘えて続けるね?」
と瞳を笑ませる。いやいや、思ってるのと逆の言葉が出てるんだから私が離して欲しいって言いたいの、分かってますよね⁉︎
都合の良いように私の言葉を解釈しながらリオン様は取っていた手をくるりと返し、今度は手のひらから手首へと更に口付けてくる。
「う・・・っ」
くすぐったくて声を漏らせば
「気持ちいい?これは好き?」
とリオン様はまた上目遣いで私の反応を見てくすりと笑っている。わ、わざとだ。
絶対にリオン様の思い通りに言うもんか、と意地を張れば
「好きです、もっとして・・・!」
いつもの天の邪鬼と照れ隠しがまた逆に働いて、テーブルの方ではなぜかレジナスさんも動揺してガチャッ!とティーカップの音を派手に立ててソーサーに置いた。
そうすればいつもは何をするにも無音で落ち着いているレジナスさんの、そんな動揺した姿をシグウェルさんが
「君、お茶をこぼしているぞ」
とからかっている。ご、ごめんなさいレジナスさん・・・!
「うー・・・リオン様、好きになりますよ・・・!」
調子に乗ってさらに私の首筋に口付けてきたリオン様の胸元に手を置いて、ストップをかけるため制するようにしながら恥ずかしさに限界まで赤く染まった顔のままリオン様に忠告するように訴える。
そうすればリオン様はピタリと動きを止めて
「ごめんごめん、からかい過ぎたね。いつも以上にユーリがあまりにも可愛いからつい。本気で嫌われたくはないからもう止めるよ。」
よしよしと私の頭を撫でながら抱きしめてきた。かわいいと言えば全て許されると思わないで欲しい。
リオン様の腕の中でそう思いながらむくれていれば、
「どうです殿下、面白い薬でしょう?」
とシグウェルさんがレジナスさんと一緒にこちらにやって来た。
「まあ面白いと言えば面白いけど・・・。でもいくら好きって意味で言われていると分かっていても、ユーリにずっと『嫌い』って言われ続けるのはちょっと悲しいかなあ。ね、ユーリ本心から好きって言って?」
顔を覗き込まれるようにしてリオン様にお願いされたけど例え魔法薬を飲んでいなかったとしても何もない時にそんな事、恥ずかしくて言えるわけがない。
「言えますよ⁉︎」
「やっぱりダメか。それでシグウェル、この薬の効き目はいつまでなんだい?」
私の返事に肩をすくめたリオン様がシグウェルさんに向き直る。レジナスさんも知りたそうにしてシグウェルさんの後ろで腕組みをしながら見つめていたけど
「さて・・・明日の朝には元通りになっているとは思いますが。ほぼ一口分の原液の効力がどの程度持続するのか、俺も今夜はここに泊まり、たまにユーリを起こして会話をしながらその効果を見守りたいところです。」
ふむ、と思案顔のシグウェルさんがわりと酷いことを言った。
それって、寝ている私を夜中に何度か叩き起こして話をして、会話がまともに成り立つかどうかで魔法薬の効力切れを確かめるってこと?絶対に明日の朝は寝不足になる。
呆気に取られた私を尻目に、シグウェルさんは堂々と
「ですから殿下、今夜はユーリの寝室に俺が入ることをお許しください」
なんてリオン様に申し出ている。
「何を言ってるんだい君は!」
「そんなの駄目に決まっているだろうが‼︎」
リオン様とレジナスさんが同時に声を上げた。
「いくら魔法薬の調査のためとはいえ君、ユーリと同衾するつもり⁉︎まさかそんな下心を持ってユーリに薬を飲ませたんじゃないよね⁉︎」
リオン様に問い詰められたシグウェルさんは
「いえ、テーブルで徹夜の書類仕事をしながら二時間ごとにユーリを起こすつもりですが。添い寝をしてもいいのであれば勿論喜んでそうさせていただきます」
同衾、と言われてそれは考えていなかったとばかりにシグウェルさんは答えている。
どうやら私への下心以上に新しい魔法薬の効果を知りたいらしい。こういうところは本当に魔法バカだ。
いずれにせよ二時間ごとに起こされるなんてこっちは迷惑この上ないんですけど。
レジナスさんも、
「二時間ごとに起こすなど、ユーリが体調を崩したらどうするつもりだ?魔法実験よりもユーリの方が大事だろうが。黙って寝かせてやれ!」
と言ってくれた。
「ユーリを好きになってやっと普通の人並みに常識をわきまえるようになったと思っていたけど、そういうところがまだまだだよね君は・・・」
とリオン様も呆れて、レジナスさんに「シグウェルがおかしな事をしないように君も今夜はユーリに付き添ってあげて」と頼んでいる。
そうしたら今度はレジナスさんが一瞬、目を見開いて動揺したので
「いや、違うから。ユーリに添い寝をしろって言ってるんじゃないからね?」
とリオン様は釘を刺していた。
「本当は僕がユーリの側にいてあげたいけど明日は早朝から会議が入っているし、僕の寝起きにユーリを付き合わせて起こすのはかわいそうだから君に頼むんだよ。」
その言葉にレジナスさんは
「しっかりとユーリの安眠を守ってみせます」
と深々とリオン様にお辞儀をしている。
その生真面目で忠実な様子がなんか、なんていうか、ベッドのそばに寄せた椅子に腰掛けて一晩中私の寝顔を凝視して、ずっと見つめ続けていそうな予感しかしないんですけど・・・?
大丈夫かな、と一抹の不安を覚えた私の耳がその時更に不安しかない人の声を捉えた。
「おや珍しい。レジナスはともかく、なぜシグウェル殿までこちらに?ユーリ様に何かありましたか?」
今朝方この世の終わりみたいな別れをして仕事へ出掛けて行ったシェラさんだ。
ただでさえややこしい薬なのに、さらにややこしい人までやって来てしまった。
夕食後、ソファに腰掛けたリオン様が隣に座らせた私の手を取ってそう聞いてくる。
「き、嫌いです!」
「そっか。じゃあレジナスは?」
顔を赤くしてキッとリオン様を見つめて言えば、リオン様はご満悦そうにそうかそうかと頷くと、ちらりとレジナスさんを視線の端で捉えながら更に私に尋ねてきた。
「すっ、好きじゃないですよ⁉︎あ、いや違う、じゃなくて違わない?・・・ああもう!」
これじゃ結局二人のことを好きだと言っているようなものだ。
少し離れたテーブルで私達のやり取りを見ながら静かにお茶を飲んでいたレジナスさんも、若干落ち着かない表情でいつもは進んで手を伸ばさない甘いお菓子を口に運んでいる。
その隣では面白そうな顔をしたシグウェルさんがお酒を飲みながら
「どうだレジナス、俺の魔法薬もたまには役に立つだろう?いつもは自分の気持ちを滅多に口に出さないユーリが本心を話しているも同然だからな。」
なんて言っている。そんなシグウェルさんにレジナスさんはむすりと硬い顔付きのまま
「お前の魔法薬が『たまに役立つ』などと自分で言うあたり、普段は迷惑をかけている自覚があるということか?」
と答えて「照れ隠しか?誤魔化すな」とまたシグウェルさんに面白そうに目をすがめられていた。
うーん、なんて厄介な薬なんだろう。
リオン様に自分のことを好きかと聞かれれば、いつものように照れ隠しで「嫌いじゃないですよ!」と言おうとすればそこに乗っている感情はつまり「好き」ということなので、それとは逆の「嫌いです」という言葉が口からこぼれ出る。
だからリオン様は「それって僕のことが好きってことだよね?」と嬉しそうにして更に私の気持ちを聞き出そうとしてくるのだ。
私の手を取りその指先にちゅ、と小さく口付けるとそのまま上目遣いで私を見上げ
「これは嫌い?」
と聞かれたので反射的に
「も、もー!・・・離さないで⁉︎」
と声を上げれば
「そう?じゃあお言葉に甘えて続けるね?」
と瞳を笑ませる。いやいや、思ってるのと逆の言葉が出てるんだから私が離して欲しいって言いたいの、分かってますよね⁉︎
都合の良いように私の言葉を解釈しながらリオン様は取っていた手をくるりと返し、今度は手のひらから手首へと更に口付けてくる。
「う・・・っ」
くすぐったくて声を漏らせば
「気持ちいい?これは好き?」
とリオン様はまた上目遣いで私の反応を見てくすりと笑っている。わ、わざとだ。
絶対にリオン様の思い通りに言うもんか、と意地を張れば
「好きです、もっとして・・・!」
いつもの天の邪鬼と照れ隠しがまた逆に働いて、テーブルの方ではなぜかレジナスさんも動揺してガチャッ!とティーカップの音を派手に立ててソーサーに置いた。
そうすればいつもは何をするにも無音で落ち着いているレジナスさんの、そんな動揺した姿をシグウェルさんが
「君、お茶をこぼしているぞ」
とからかっている。ご、ごめんなさいレジナスさん・・・!
「うー・・・リオン様、好きになりますよ・・・!」
調子に乗ってさらに私の首筋に口付けてきたリオン様の胸元に手を置いて、ストップをかけるため制するようにしながら恥ずかしさに限界まで赤く染まった顔のままリオン様に忠告するように訴える。
そうすればリオン様はピタリと動きを止めて
「ごめんごめん、からかい過ぎたね。いつも以上にユーリがあまりにも可愛いからつい。本気で嫌われたくはないからもう止めるよ。」
よしよしと私の頭を撫でながら抱きしめてきた。かわいいと言えば全て許されると思わないで欲しい。
リオン様の腕の中でそう思いながらむくれていれば、
「どうです殿下、面白い薬でしょう?」
とシグウェルさんがレジナスさんと一緒にこちらにやって来た。
「まあ面白いと言えば面白いけど・・・。でもいくら好きって意味で言われていると分かっていても、ユーリにずっと『嫌い』って言われ続けるのはちょっと悲しいかなあ。ね、ユーリ本心から好きって言って?」
顔を覗き込まれるようにしてリオン様にお願いされたけど例え魔法薬を飲んでいなかったとしても何もない時にそんな事、恥ずかしくて言えるわけがない。
「言えますよ⁉︎」
「やっぱりダメか。それでシグウェル、この薬の効き目はいつまでなんだい?」
私の返事に肩をすくめたリオン様がシグウェルさんに向き直る。レジナスさんも知りたそうにしてシグウェルさんの後ろで腕組みをしながら見つめていたけど
「さて・・・明日の朝には元通りになっているとは思いますが。ほぼ一口分の原液の効力がどの程度持続するのか、俺も今夜はここに泊まり、たまにユーリを起こして会話をしながらその効果を見守りたいところです。」
ふむ、と思案顔のシグウェルさんがわりと酷いことを言った。
それって、寝ている私を夜中に何度か叩き起こして話をして、会話がまともに成り立つかどうかで魔法薬の効力切れを確かめるってこと?絶対に明日の朝は寝不足になる。
呆気に取られた私を尻目に、シグウェルさんは堂々と
「ですから殿下、今夜はユーリの寝室に俺が入ることをお許しください」
なんてリオン様に申し出ている。
「何を言ってるんだい君は!」
「そんなの駄目に決まっているだろうが‼︎」
リオン様とレジナスさんが同時に声を上げた。
「いくら魔法薬の調査のためとはいえ君、ユーリと同衾するつもり⁉︎まさかそんな下心を持ってユーリに薬を飲ませたんじゃないよね⁉︎」
リオン様に問い詰められたシグウェルさんは
「いえ、テーブルで徹夜の書類仕事をしながら二時間ごとにユーリを起こすつもりですが。添い寝をしてもいいのであれば勿論喜んでそうさせていただきます」
同衾、と言われてそれは考えていなかったとばかりにシグウェルさんは答えている。
どうやら私への下心以上に新しい魔法薬の効果を知りたいらしい。こういうところは本当に魔法バカだ。
いずれにせよ二時間ごとに起こされるなんてこっちは迷惑この上ないんですけど。
レジナスさんも、
「二時間ごとに起こすなど、ユーリが体調を崩したらどうするつもりだ?魔法実験よりもユーリの方が大事だろうが。黙って寝かせてやれ!」
と言ってくれた。
「ユーリを好きになってやっと普通の人並みに常識をわきまえるようになったと思っていたけど、そういうところがまだまだだよね君は・・・」
とリオン様も呆れて、レジナスさんに「シグウェルがおかしな事をしないように君も今夜はユーリに付き添ってあげて」と頼んでいる。
そうしたら今度はレジナスさんが一瞬、目を見開いて動揺したので
「いや、違うから。ユーリに添い寝をしろって言ってるんじゃないからね?」
とリオン様は釘を刺していた。
「本当は僕がユーリの側にいてあげたいけど明日は早朝から会議が入っているし、僕の寝起きにユーリを付き合わせて起こすのはかわいそうだから君に頼むんだよ。」
その言葉にレジナスさんは
「しっかりとユーリの安眠を守ってみせます」
と深々とリオン様にお辞儀をしている。
その生真面目で忠実な様子がなんか、なんていうか、ベッドのそばに寄せた椅子に腰掛けて一晩中私の寝顔を凝視して、ずっと見つめ続けていそうな予感しかしないんですけど・・・?
大丈夫かな、と一抹の不安を覚えた私の耳がその時更に不安しかない人の声を捉えた。
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